逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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いつものハチャメチャ日常
時行、宇宙に行く


 時行は考えるのを止めていた。

 

 事の発端は数時間前、両津と時行が勘兵衛に呼ばれたところから始まった。

 

「時給5万って本当だろうな?」

「もちろんじゃ。早速あれに乗ってくれ。」

 

 勘兵衛が案内した先にはジャンボジェット機があった。時行は興奮してジャンボジェット機に乗る。初めての旅客機に凄い燥いでいた。

 

「ジャンボジェット機で行くってことは海外か。」

「凄い!こんな大きい乗り物があるんですね!」

 

 両津は席に座りシートベルトを締める。

 

「時行、出発する前はシートベルトを締めないとダメだぞ。」

「はい!…ジャンボジェット機って見た目は大きいのに中は意外と狭いのですね。」

「何!?」

 

 両津が後ろを向く。よく見ると後ろは絵だった。両津は慌てて内装を調べる。完全密閉された空間にAIによる操縦、そして時行が見つけた宇宙服。

 

「まずい!また宇宙か!?」

 

 時行は?を浮かべる。すると、ジャンボジェット機の翼や後部が外れロケットが出てきた。そのまま垂直になり発射台へと設置される。

 

「勘兵衛!また宇宙かよ!時給5万は安いぞ!」

「学習せん奴だな。」

 

 無慈悲にジャンボジェット機風ロケットが宇宙へと飛び立つ。そして、両津と時行はその先にあった宇宙ステーションに連れて行かれた。宇宙服を着て宇宙ステーションに入る。初めての無重力体験。もちろん、鎌倉にいた頃は宇宙なんて想像も着くわけなかった。

 

「空の上は天国だと思ってました…」

「天国は別にある。」

『聞こえるか勘吉?』

「やい勘兵衛!今度は何をさせる気だ!?」

 

 2人は宇宙服を脱いで宇宙ステーション内を浮きながら移動する。慣れない無重力に時行は苦戦している。そこにインカムで通信してきた勘兵衛に両津が文句を言う。

 

『そこは日本とアメリカが共同で製作、打ち上げた世界中の通信施設を中継する無人宇宙ステーション“不知火”だ。そこが突然不良になってな。時折ノイズが走るようになってきた。その原因究明と修理がお前の仕事だ。』

「時給50万にしろ!そうじゃないとやらんぞ!」

『完遂すれば考えてやる。』

「本当だな!?」

 

 両津は通信を切る。時行は既に無重力を楽しんでいた。

 

「時行は最年少で宇宙に行った人間ってことになるな。」

「凄い!凄い!体が浮いてます!」

「その分、酔いやすくなっているから気を付けろよ。」

「はい!」

 

 そして、今に至る。両津は早速不知火内を調べている。その横では酔ってしまった時行が宙に浮きながら考えるのを止めていた。

 

「これが…酔う…うぷっ。」

「吐くなよ。吐いたら吐瀉物がこの中を漂うことになるぞ。」

 

 両津がいろんなところを調べる。すると、通信制御室で勘兵衛から聞いたコードとは違うコードが伸びているのを見つけた。どこに繋がっているのか確かめると謎の機械と繋がっていた。両津は勘兵衛に報告する。

 

『どうだ?分かったか?』

「勘兵衛。お前から聞いた物にはなかった装置があるぞ。」

『なんじゃそれは?」

 

 両津は装置を写真に撮り勘兵衛に送る。

 

『…確かにそんな物は不知火には着いていない。』

「勘兵衛、これ明らかに人為的なものだぞ。」

『なら原因は…』

「両さん…」

 

 なんとか酔いが覚めた時行が両津のところに行く。

 

「外に何か来てますよ。」

「何!?」

 

 両津が外を見る。確かに何かが接近していた。よく目をこらして見ると知らないシャトルが不知火に着いた。

 

「まずい!宇宙海賊だ!」

「なんですかそれ?」

「簡単に言えば強盗だ。ここの通信を傍受して情報を奪っているんだ。」

『勘吉!そいつらを捕まえろ!』

「武器も無しにか!?」

『A地区ロッカーに武器がある。それを使え。』

「なんでただの通信中継地点に武器があるんだよ。」

 

 2人は勘兵衛の言う通りに移動しロッカーを開ける。いろんなところに引っ掛けて無重力内を移動するための杖があった。

 

「…これのどこが武器だ!おかしいと思ったよ!」

「両さん、何か光ってますよ。」

 

 時行が指差すと赤いランプが光りながら回っていた。2人は杖を取る。

 

「宇宙海賊が侵入したな。警報が鳴ってないということはその辺りの設備は完全に乗っ取られたか。」

 

 2人は宇宙海賊を捜すため移動を開始した。時行は両津と分かれ廊下を舞って移動している。すると、2人組の男がいた。2人とも宇宙服を着てライフルを持っている。こいつらが宇宙海賊だ。

 

「子供!?」

「構わん!撃て!」

 

 2人は時行に向かってライフルを撃つ。すると時行は無重力内を縦横無尽に動いて弾丸を躱した。

 

(宇宙で鬼ごっこ…凄い楽しい!)

 

 時行は目をキラキラさせている。2人は時行の動きが読めない。時行は2人に接近すると杖でヘルメットを弾き飛ばした。そのまま不知火内を逃げる。すると、広いところに出た。

 

「こんなところもあるのですね。」

 

 宙をくるくる回りながら見回す。そこにさっきの2人がやって来た。さらに、他のドアからも宇宙海賊が出て来る。リーダーらしき男が時行の真上に行く。

 

「宇宙にこんな子供が来るとはな。運が悪いぜ。」

 

 リーダーがライフルを向ける。それに合わせて仲間もライフルを向けた。相手は6人。前後左右上下から時行を狙っている。それでも時行は恐怖よりもワクワクが勝っていた。一斉に撃つ。それを時行は華麗に躱した。

 

「なに!?」

 

 無重力の鬼ごっこ。人生初の体験に時行は興奮が止まらない。全く当たらないことに宇宙海賊達は驚愕している。

 

「なんだこいつ!?」

「ボス!全然当たりませんよ!」

 

 時行が船内を飛びまくっている。そこに両津からインカムで通信が来た。

 

『時行。今から無重力を切るからタイミングを見計らって何かに掴まれよ。』

「分かりました。」

 

 時行が逃げていると警報が鳴った。それが合図だと察した時行は近くに杖を引っ掛けた。その瞬間、無重力が切れ宇宙海賊達は落下した。それてもライフルを時行に向ける。しかし、重力のある世界では逃げ上手の時行に当てれるわけもなく全て避けられた。

 

「マジでなんなんだ!?」

「そこか!」

 

 そこに両津が来て宇宙海賊達をあっという間に制圧した。宇宙海賊達は縛り上げ中央通信室に向かい勘兵衛に連絡する。

 

「捕まえたぞ!」

『さすが勘吉。これで解決じゃな。そっちに応援送るから宇宙海賊の見張り頼んだぞ。』

「時給50万にボーナス50万付けろ。」

『考えとく。』

 

 通信が切れる。両津は待つ間暇だと宇宙海賊のボスに話しかけた。

 

「宇宙海賊って儲かるか?」

「儲かるぞ。スペースデブリは再利用出来るしこういう施設を占拠すれば数百万手に入る。それに、不知火はいろんな情報が来るから物によっては数億で売れるものだってあるぞ。」

「そんなに儲かるのか。」

 

 両津が驚く。時行が興味本位で機械を操作する。すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

『…というわけだ中川君。今度の新年会には両津を呼ばないように適当な理由を付けてくれ。』

『分かりました。』

「部長!わしを除け者にしようなど…」

 

 両津は急いで大原部長に電話する。

 

『なんだね?』

「部長〜。わしを除け者にするなんて酷いじゃないですか〜。新年会、わしも行きますよ。」

『両津!?何故それを!?』

「ちゃんと聞こえてましたよ〜。」

『どこにいる!?』

「捜してみたらどうです?まぁ、見つかりませんけど。」

 

 両津が通話を切る。時行に代わり操作する。麗子と中川の通話音声が聞こえてきた。

 

『部長から先輩には内緒で新年会を開くから先輩にはそのことを悟られないようにと。』

『分かったわ。』

『麗子さん、何話しているんですか?』

『新年会の話よ。』

『あ〜、絶対原始人は呼ばないでくださいね。』

 

 両津はイラッとした。早速中川に電話する。

 

『先輩?』

「わしを仲間外れにしようとはいい度胸だな。新年会は絶対わしも参加するぞ。」

『なんでそれを!?』

 

 両津は麗子にも電話する。

 

「麗子。」

『何?両ちゃん?』

「わしを仲間外れにすると新年会どうなるか分かっているだろうな。」

『嘘!?』

「なぁ、あの人、凄い嫌われてねぇか?」

「少しハチャメチャなだけです。」

 

 悪い顔している両津を見てボスが時行に聞く。両津はさらに調子に乗って操作する。

 

『…で、どうでしょうか?』

『構いません。それで協定を結ぶことにしましょう。』

「なぁ…これってC国とR国の密会じゃねぇか?」

「おいマジか!?それ録音しろ!5億で売れるぞ!」

「5億!?」

 

 両津は慌てて録音する。そこに勘兵衛から連絡がきた。

 

『勘吉。今から言う場所にシャトルを着けるからそこに…』

「待て勘兵衛!今、それどころじゃねぇ!俳優Jの不倫電話だぞ!」

「それも録音しろ!マスコミに2千万で売れるぞ!」

『おい勘吉!何不知火を使って盗聴しとるんじゃ!?』

「手が足りねぇ!お前らも手伝え!」

「おう!」

 

 勘兵衛の忠告を無視し宇宙海賊達を解放した両津は金になりそうな情報を傍受していた。

 

「これはどうだ!?」

「…百万ってところか。優先度は低い。それよりもこっちは1億の価値がある。こっちを録音するぞ。」

「よっしゃあ!時行!手伝え!」

「は、はい!」

『勘吉!300万でどうじゃ!?帰ったら時給50万にプラスして300万ボーナスをやる!』

「うるせぇ!300万より5億だ!」

 

 勘兵衛の言葉などもう両津の耳には届かない。勘兵衛は呆れていた。

 

「どうするんですか?」

「…仕方ない。」

 

 勘兵衛は応援として送る予定の宇宙警察に連絡した。

 

「現在、不知火を占拠した宇宙海賊は世界中の情報を盗もうとしておる。全員逮捕でいいぞ。」

 

 後日

 

『国際宇宙ステーション不知火を占拠した宇宙海賊を全員逮捕しました。不知火に搭載されている通信システムを悪用し世界中から…』

「まさか、宇宙にいたとは…」

「もう二度と地球に帰ってくるな。」

 

 テレビのニュースで両津達が宇宙海賊として逮捕されたと報じられた。それを見て呆れる中川達であった。

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