ある日、派出所で大原部長が手紙を見て微笑んでいた。中川が気になり聞いてみる。
「どうされたんですか?」
「あ、あぁ…四季島君から結婚式の招待状が届いたのだよ。」
「四季島?誰ですか?」
「四季島花織。わしが昔教育係として指導した警察官だ。」
大原部長の言葉に反応した両津が振り向く。
「そうなんですか部長?わしが来た時にはいませんでしたよ。」
「そうか。お前が来たのは彼女が辞職した後か。」
大原部長が嫌な顔をする。時行が四季島のことが気になり聞いてみた。
「どんな方なのですか?」
「オッチョコチョイでドジなところがあったが優しくてよく気がきいて周りから愛される警察官だったよ。両津とは正反対だったぞ。」
「嫌味な言い方ですね。」
「彼女がわしのところにいたのはほんの3年だけだった。」
大原部長は四季島との思い出を語る。
「優しい警察官になりたいと言ってきた彼女にいろいろと教えていたよ。結局、わしが指導した3年間一度も犯人逮捕なんて出来なかったがそれでも素晴らしい警察官だった。」
「検挙数0ってわし以下じゃないですか。」
「バカモン!彼女はお前と違って始末書など一度も書いたことない優等生だぞ!」
大原部長の大声に耳を抑える両津。
「その彼女が久しぶりにわしに手紙をくれたのだ。嬉しい以外の言葉が見つからん。」
「お相手は…麗子さんの会社の人じゃないですか?」
「本当だわ。和泉彰司さんね。彼は真面目で優しいいい人よ。」
「それは良かった!麗子君がそういうなら安心だ。」
みんなでワイワイ楽しんでいた。
「どうやら、新葛飾署のみんなにも来てほしいということらしい。」
「いいですね!」
「署長もOKしてくれたよ。」
大声部長が笑って話す。しかし、両津を見た瞬間表情が強張り睨んだ。
「両津。出来ればお前には来てほしくないが今回は特別に許してやる。」
「そんな言い方しなくていいじゃないですか部長。さすがのわしもそんなめでたい場所ではっちゃけませんよ。」
疑心暗鬼の大原部長。でも、今回の結婚式には新葛飾署全員が参加するためもし両津が何かやらかしても対処出来るだろうと判断した。
そして、結婚式当日。大原部長は礼服で電車に乗り結婚式場に向かっていた。手元には祝辞の言葉が書かれた紙。四季島が祝いの挨拶を大原部長に是非してほしいということで一生懸命書いたものだ。
「懐かしいな四季島君。」
大原部長は物思いに耽る。スマホで時間を確認する。問題ない。そう思った時だった。急にアナウンスが流れる。
『只今、踏切内で事故が発生したため緊急停車致します。』
「何!?」
電車が緊急停車する。そのはずみで大原部長はスマホを落としてしまいよろけた人がそのスマホを踏んでしまった。突然のことで慌てる人達。大原部長もスマホを拾うも画面が割れてしまっていた。
「ど、どうしよう。」
大原部長も他の人達と一緒に出てタクシーで向かおうとする。しかし、既に多くの人がタクシーを利用していて待っていたら結婚式に間に合いそうになかった。近くに公衆電話はない。
一方、両津達は結婚式場の前で大原部長を待っていた。時行も礼服に身を包み両津の隣で待っている。しかし、なかなか大原部長が来ない。
「おかしいなぁ。開始まであと30分。部長ならとっくに着いている頃だぞ。」
「何かあったのでしょうか?」
心配する両津達。そこに中川がスマホを見せてやってきた。
「先輩!これ!」
両津が見ると踏切で事故が起き電車の運転を見合わせているというニュースが流れていた。運転見合わせの電車を見る。
「部長が乗っていた電車だ!」
「じゃあ、遅れているのは…」
「スマホでも連絡出来ない状況なのか。」
「部長さん、折角この式を楽しみにしていたのに。」
どうするか考える。すると、両津は時行を見て笑った。
「中川!麗子!今すぐ部長を捜して迎えに行け!」
「分かりました!」
「両ちゃんは!?」
「わしはここでやることがある。」
中川と麗子が急いで迎えに行く。
「でも、間に合うのですか?もうすぐで式が始まってしまいますよ。」
「安心しろ。式は部長が来るまで始まらない。」
「?」
結婚式場では新葛飾署の署員達や新郎新婦の親戚、和泉の会社の人などたくさんの人達が出席していた。しかし、両津達がいないことに署員達はヒソヒソ話し始めている。
「両津がいないのはいつものことだが大原さんもいないって。」
「中川さんや麗子さんは?」
「両津先輩…」
「大原君まで遅刻なのか?連絡もないし…」
大原部長が居ないことを不思議に思う屯田署長達。それを1番心配していたのは四季島…いや、和泉花織だった。
「大原さん…」
何かあったのかと思う反面、自分に会ってくれないのかとも思ってしまっている。もう結婚式の時間だ。仕方なく結婚式を始めようと屯田署長が壇上に立つ。
「え、え〜、これより…」
「ちょっと待ったぁ!」
その瞬間、両津が派手に登場した。突然の両津に全員が驚く。
「りょ、両津君!いきなりなんだね!?」
「いや〜、初めまして!私、大原大次郎さんの元でビシバシしごかれています。両津勘吉と申します。」
花織の前でヘコヘコお辞儀する両津。両津は屯田署長のところに行くと屯田署長から祝辞の挨拶に使うカンペを取った。それは大原部長が来ないということで急いでAIに作ってもらったものだ。
「両津君!?」
「え〜、折角のおめでたい日なのでここは1つゲームでもしませんか?」
両津の言葉に会場、というより新葛飾署の署員達からブーイングが来る。そんなこと気にせず両津はカンペを時行に渡した。
「ゲームは簡単。ズバリ鬼ごっこです!今から時行にカンペを持たせて逃げるので皆さんで捕まえてください!時行を捕まえることが出来た人にはここで花織さん、彰司さんに祝辞を述べることが出来ます!」
周りから勝手に決めるなと愚痴愚痴言われる。それを無視して両津はゲームを開始した。
「では…ゲームスタート!」
両津の合図で時行が逃げる。仕方なく捕まえようとするも時行はヒョイッと避けて逃げる。屯田署長が両津に詰め寄る。両津は屯田署長にはコソコソと話をする。
「そういうことなのか?」
「今、中川と麗子が迎えに行ってますのでここは。」
「正直に言えばいいじゃないか。」
「この結婚式を1番楽しみにしているのは部長ですよ。それが遅れますなんて寂しいでしょ。」
両津の言うことに一理あるため屯田署長は仕方ないと飲み込んだ。時行は逃げている。小町達が追いかけるも全然捕まらない。そこにボルボが来る。時行に1番迫っていた。それを両津が見つける。
「さすがにボルボは厄介だな。」
両津はマリアを見つける。
「マリア。」
「両様!」
両津はマリアにヒソヒソ何かを話す。マリアは頷くとボルボに近付いた。すると、ボルボを自分の胸に押し込んだ。
「な、な…」
ボルボはそのまま鼻血を出して仰向けに倒れた。
「よし!次は…」
両津は根画手部を見つける。
「根画手部!」
「なんですか?」
「この結婚式場の避難経路をもう一度確かめてくれ。」
「分かりました。」
根画手部はブツブツ言いながら会場の防災設備を見回りに行った。
「よし。これで厄介なボルボと根画手部は封じた。」
一方、大原部長は走っていた。電車は使えずタクシーも待てない。それでも一生懸命走っている。それを空から捜している麗子が見つけた。
「いたわ!圭ちゃん!」
麗子はすぐに中川に大原部長の居場所を伝える。大原部長が走っているところに中川がフェラーリで追いつく。
「部長!」
「中川!」
「早く乗ってください!」
大原部長をフェラーリに乗せる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、しかし…これで遅刻は確定か。」
「いえ。まだ始まってすらいませんよ。」
中川の言葉に大原部長はキョトンとする。麗子が両津に中川が大原部長を乗せて向かっていることを報せた。
「よし!…時行!今すぐ会場入口に向かえ!」
『はい!』
時行は避けながら会場入口へと逃げる。中川が会場に到着する。大原部長が急いで会場入口に行くと丁度時行が逃げていた。中川が両津から指示を受ける。
「部長!時行君を捕まえてください!」
「お、おう!」
時行が大原部長の前まで行く。大原部長が時行に飛び掛かると時行はわざと捕まった。
「捕まってしまいました〜。」
「おおっ!なんと時行を捕まえたのは部長ではありませんか〜!」
両津が嬉しそうに叫ぶ。それを知った署員達はヘトヘトになりながら式場へ戻って行く。改めて結婚式が始まる。屯田署長が始めの挨拶をする。そして、挨拶が終わり祝辞の言葉をと大原部長を指名した。
「では大原大次郎君から祝辞の言葉を。」
「はい。」
大原部長が壇上に立ち祝辞を述べる。AIが作ったものではなく自分が考えた言葉を花織に伝える。結婚式は大成功に終わる。大原部長と花織が会話しているところを両津達は離れたところから見ている。
「良かったですね。」
「まったく世話がやけるよ。」
「その結果はあったじゃない。」
「それで両津先輩。あの鬼ごっこは何だったのですか?」
「折角の晴れ舞台ならいい記憶にしたいと思っただけだ。」
両津達は笑いながら去る。椎名が?を浮かべて両津達を見る。
「おめでとう花織君。」
「ありがとうございます大原さん。」
花織は何となく感じていた。
「いい後輩ですね。」
両津を見て笑う。大原部長も両津を見るとフッと笑う。
「君と違って世話のやける奴だよ。」
「でも、優しい人だと思いますよ。」
花織が微笑む。大原部長も微笑んでいた。
「これからも幸せに。」
「大原さんも。」
結婚式が終わり昔を懐かしむ大原部長。
「今日からお世話になります!四季島花織です!よろしくお願いしましゅ!」
「まずは落ち着きなさい。」
「は、はい!」
「優しい警察官になりたいです。どんな人とも仲良くなれる警察官に。」
「君ならなれるよ。」
「巡査長昇進おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「すみません。警察官を退職することになりました。」
「そうか…どこに行っても君なら大成するよ。」
「ひゃ、ひゃい!」
「まずは落ち着くところからだね。」
大原部長の目から涙が流れる。沈む夕日が涙を照らす。もうすぐ夜だ。宴会が終わり会場を出る両津達。それを見つけた大原部長は涙を拭い両津達に近寄る。
「両津。」
「部長!」
「今日は飲んでいかんか?もちろん、わしが奢ろう。」
「本当ですか!?」
両津がニッコニコで駆け寄る。
「君達もどうだ?折角のめでたい日だ。いい思い出にしないか?」
「じゃあ、お供します!」
「私も!」
中川と麗子は顔を見合わせると笑顔で答えた。
「時行君もどうだ?」
「ひゃ、ひゃい!」
「まずは落ち着きなさい。」
「す、すみません。」
突然の誘いに噛んでしまい顔を真っ赤にする時行。そんな彼を見て大原部長は微笑む。
「両津、折角わしが奢るのだから一日中わしの愚痴に付き合ってもらうぞ。」
「そ、そんなぁ!」
「嫌ならお前だけ自腹だ。」
「も〜、さすが部長!部長からは逃げられないや!」
笑う両津。中川も麗子も時行も笑っている。夕日が沈み夜になる。大原部長達5人は夜を照らすネオンの光の中へと消えて行った。