逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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葛飾1日軍事訓練

 今日、新葛飾署に1日署長が来ることになっていた。両津達が待っている。どんな人が来るのかは知らされていない。署員達はソワソワしながら待っていた。

 

「この前も時行を1日署長にしたばっかりだろ。」

「まぁ、そう言わずに。」

 

 耳を穿る両津に後ろから中川がそう言う。

 

「なぁ、聞いたところまた爆乳が1日署長するらしいぞ。」

「ま〜たパンテルか。」

 

 両津が呆れる。ジープが来る。またあの人かと思っていたら出て来たのは爆竜大佐だった。署員達の顔が真顔になる。

 

「今日!貴様らの教官となる爆竜だ!」

「今度はそっちで来たか。」

 

 爆竜大佐の威圧に署員達は震える。

 

「誰ですかあの人。」

「爆竜大佐。ボルボの教官で別名鬼軍曹と呼ばれる軍人だ。」

 

 椎名に教える両津。それを新葛飾署の入口から時行が見ていた。爆竜大佐は屯田署長と握手する。そこに両津が質問した。

 

「署長。何故今更爆竜なんですか?」

「最近、武装強盗が相次いでいる。今までの強盗は包丁やバットだったがここ最近の強盗の多くは拳銃だけじゃなくライフルや手榴弾など軍事的武装が増えている。」

 

 屯田署長が説明する。確かに最近の強盗は拳銃やライフルの他に手榴弾、ロケットランチャー、装甲車まで使っていた。

 

「その対策のために今回、ボルボ君と彼の教官だという爆竜さんに指導してもらいたい。」

「爆竜に頼んだら警察署が軍事演習場になりますよ。」

 

 反対する両津に爆竜大佐が詰め寄る。

 

「貴様!上官に逆らう気か!」

「くそっ!今回は本当に上官だ!」

 

 爆竜大佐が両津の顔面に鞭を振るう。両津は顔を覆いながらのたうち回る。時行と椎名が両津を心配して駆け寄る。爆竜はボルボと握手しようとした。すると、ボルボは警戒して下がった。

 

「どうしたんですか?」

「爆竜は袖に拳銃を隠している。」

「ええ!?」

「なかなか用心深いな。感心だ。だが今回は袖には何も仕込んでいないぞ。」

 

 爆竜が両手の袖を捲り何もないことを見せる。それでも両津は警戒している。

 

「帽子は?」

「もちろんない。」

 

 帽子を脱いで見せる。

 

「もう全部脱げ!」

「いいだろう。」

 

 爆竜が上着に手をかける。その時、うなじのところが光った。それを見た両津とボルボはすぐ逃げた。

 

「襟首だ!」

「正解だ!」

 

 爆竜大佐は拳銃を取り出し両津達を撃つ。急いで逃げる署員達。

 

「毎回そんな物騒なもん仕込むな!」

「軍人たるもの常に警戒すべし。」

「わしらは警察官だ!」

「今日は軍人だ!」

「チクショー!」

 

 ぜぇぜぇ言いながら立ち上がる両津達。すると、残念が爆竜大佐の靴紐が解けているのに気付いた。それを指摘すると爆竜大佐はしゃがんだ。じっと見る時行。すると、裾から一瞬何か見えた。その瞬間、危機を察知して時行は逃げた。それに反応し両津とボルボも逃げる。

 

「見事だ!」

 

 そこに爆竜大佐が裾に隠していた拳銃を取り出し撃ちまくる。それに驚きまた署員達は逃げた。

 

「二段構えかよ!」

「いつ何時襲われてもいいように訓練してやる。」

「あの大佐。」

「なんだ?」

「今回はジョディーやパンテル大佐は来られないのですか?」

 

 ボルボが息を整え聞く。内心ジョディー達が来るのを楽しみにしているようだ。

 

「後から来る。まずは私が貴様らしごいてやる。北条時行!貴様も来い!」

「私もですか!?」

 

 逃げようとする時行を呼び止める。それでも逃げようとしたため両津が捕まえた。

 

「離してください両さん!」

「待て!ここで逃げたら後からヘリで追っかけて来るぞ!ここは大人しく従え!」

 

 仕方なく従うことにした。

 

「不本意です。」

「世の中そんなもんだ。」

 

 爆竜大佐は早速ライフルを持たせる。一応ゴム弾しか撃てない模擬銃だがそれでも重い。慣れている両津達は普通に持っているが触れる機会などない小町達は苦戦していた。

 

「このまま演習場へ向かう。」

「ここじゃやらんのかい!?」

「ここは狭すぎる。」

 

 さすがに署員全員で行くのはどうかと屯田署長も進言する。全員が行けば葛飾のパトロールはどうなるのかと聞く。

 

「安心しろ。今日だけ治安は私の部隊がする。」

「おい。葛飾だけGHQの支配下から抜け出せてねぇぞ。」

「笑えませんね。」

 

 爆竜大佐の後ろにいる軍人達を見て先行き不安だと感じる両津達。爆竜大佐はそんな両津達を連れて進行する。着いた先には一目で軍事演習場と分かるぐらい殺伐としていた。両津達は嫌な顔をする。

 

「おい爆竜。一応聞くけど…ここで何するつもりだ?」

「もちろん軍事演習だ。」

「やりたくねぇ。」

 

 両津がやる気を無くしているとジープが来た。そこからジョディーとパンテル大佐が降りて来る。2人のナイスバディに男性署員達は興奮する。

 

「鎌倉にもあんな人はいませんでしたね。」

「あんなのが昔からいてたまるか。」

 

 重いライフルを持ったせいかフラフラしている時行。両津はライフルを時行の代わりに持ってあげる。爆竜大佐は有刺鉄線が張り巡らされた場所の前に立つ。

 

「まずはここを匍匐前進で通り抜けろ。」

「アホか!一歩間違えれば傷だらけだぞ!」

「なら一歩も間違えるな!」

 

 爆竜大佐が両津に向けて発砲する。仕方なく匍匐前進するが制服の上にライフルを担いで匍匐前進なんて初めての人ばかりのため全然進まない。そんな中、両津とボルボは難なく進んでいた。

 

「さすがだな。」

 

 ボルボが1位、両津が2位で通り抜けた。そこからも何人かは抜け出せたがほとんど途中で力尽きた。それを見て爆竜大佐は情けなく思っている。

 

「これぐらいも出来んか!?」

「一般人にはこれぐらいも無理だろうが!」

 

 両津が叫ぶ。有刺鉄線の下で屯田署長は葛飾区は大丈夫なのか心配していた。

 その葛飾区では銀行強盗が発生していた。マシンガンを乱射しながら警察官達を攻撃する。

 

「くそ…このままじゃ…」

「隊長!新葛飾署から応援が来るそうです!」

「そうか!」

 

 隊長が喜ぶ。そこにジープが駆け付け爆竜大佐の部下の兵士達が降りてきた。警察隊が呆然としている中、兵士達はライフルを構え強盗達を狙っていた。

 

「え?待て…なんでアメリカ軍がいるの?」

 

 強盗はビビリながらマシンガンを乱射する。兵士達はジープに隠れ連絡を取り合う。作戦が決まると強盗の前に閃光弾を投げた。閃光弾が爆発し強盗の目が眩む。

 

「GO!」

 

 一斉に突入する兵士達。同時に裏口からも突入し強盗達のマシンガンを撃ち落とす。ナイフで応戦する強盗も体術であっという間に組み伏せ捕まえる。突入から2分で強盗達7人を逮捕した。

 

「新葛飾署はいつからアメリカ軍人を編入させたんだ…」

 

 その光景を見て隊長は唖然としていた。

 場所は戻り軍事演習場。ライフルを背負った状態で壁を越えたりよじ登ったりロープを消防士みたいに渡ったり完全に軍事訓練になっていた。

 

「先輩…これはさすがに…」

「何も言うな中川…」

 

 崖登りを終えた両津達がヘトヘトになっている。爆竜大佐は椎名に詰め寄る。

 

「立たんか!」

「無理です!」

「逆らうか!」

 

 爆竜大佐が鞭を振るう。椎名は避けるも眼鏡が取れた。

 

「調子に乗るな!」

「ほう。いい動きだ。」

 

 椎名の蹴りを避け追撃を受け止めると椎名を倒した。

 

「さすがの椎名も爆竜には勝てんか。」

「お前は筋がいい。私が鍛えればいい兵士になるぞ。」

「なりたくないです!」

 

 椎名がやられた。時行はその光景を見るとそ〜と逃げようとした。そこにパンテル大佐が来た。時行とパンテル大佐の目が合う。

 

「お前が爆竜の言っていた北条時行か。」

「え、え〜と…どのように?」

「全裸で逃げることに喜びを感じる少年だと。」

「尾ひれ!?」

「時行、言うほど尾ひれは付いてないぞ。」

 

 時行が赤面して否定する。他の男性署員達がパンテル大佐の胸を見てヒソヒソ言っている。その内の1人がパンテル大佐のところに来た。

 

「すみません!水泳の訓練をしたいのですがご指導ご鞭撻よろしいでしょうか!?」

「構わんぞ。」

 

 喜ぶ男性署員達。女性署員が冷たい視線を送る。両津が屯田署長と大原部長に鼻の下を伸ばしている男性署員達を指さして話しかける。

 

「部長、署長。あれでいいんですか?」

「毎度うちの署員は…」

「両津、なんとかならんのか?」

「多分大丈夫です。今回は爆竜がいますから。」

 

 水着になる署員達。麗子達も嫌々ながら水着になる。もうすぐ冬なのに水着で水泳だからほとんど震えている。そこに水着姿のパンテル大佐とジョディーがやってくる。2人の水着姿に興奮する男性署員達。ボルボは鼻血を出している。

 

「両さん。今の時代の人達って鎌倉の人達よりも欲に忠実なのですね。」

 

 時行の言葉に両津と近くで聞いていた大原部長と屯田署長が呆れてしまう。そこに水着姿の爆竜大佐が来る。署員達は震え上がるが両津はやっぱりと思っている。

 

「今からこの装備で100m先のゴールまで泳ぎ切れ!」

 

 爆竜大佐はライフルだけではなく防弾チョッキや手榴弾などを装備させる。普通なら泳ぎ切る前に沈んでしまう。けれど、ほとんどの署員は余りの怖さにそれが言えない。しかし、両津だけは真っ向から反対した。

 

「バカヤロー!こんなもん着けて泳いだら全員藻屑になるぞ!」

 

 いいぞーと言う署員達。

 

「貴様!上官に逆らう気か!」

「逆らうじゃなく進言だ!」

「シャラップ!」

「ぎゃあ!」

 

 文句を言う両津にパンテル大佐が鞭を打つ。さらに、爆竜大佐がゴム弾を両津に撃つ。両津は背中を抑えのたうち回る。

 

「行け。ここを乗り越えた者はジョディーの婿候補に加える。」

 

 その発言に男性署員達はジョディーを見る。ジョディーはニコッと笑い手を振る。真っ先に反応したのは左近寺だ。ノリノリでプールに飛び込む。

 

「行ってやる!」

「左近寺が行った。ボルボは行かんのか?」

「行くが…両津、あれが見えるか?」

 

 ボルボが指差す先に何か浮いている。左近寺が邪魔だと払う。その瞬間、爆発し左近寺が吹き飛んだ。青ざめる署員達。

 

「…おい爆竜。あれはなんだ?」

「機雷だ。」

「ふざけるな!なんてもんを仕込んでんだ!?」

「あれぐらい出来なければ候補には入らん。」

「入る気ない奴はどうすんだ!?」

「撃つ。」

 

 署員達が戦慄する。そんな中で動いたのはボルボだ。装備してプールに飛び込む。機雷を避けスイスイと泳ぎ切った。

 

「さすがボルボ西郷。」

「やるじゃないボビー。」

 

 ボルボが泳ぎ切るも次は誰が行くか揉め合っている。それを見て呆れた爆竜大佐が決める。選ばれたのは根画手部だった。

 

「その体格。軍人になるのに相応しい。」

「いえ!鍛えたのは逃げるためです!」

「次はお前だ!」

「爆竜に気に入られたか。」

 

 無理矢理プールに飛び込みさせられる根画手部。普通に泳ぎ切った。

 

「泳ぎ切ったよ…」

「凄いですね根画手部先輩。」

「次!」

 

 誰も行かない。仕方ないとパンテル大佐が手本を見せる。豪快だが機雷を見事に避けた泳ぎで100mを泳ぎ切った。爆竜大佐がやれと言うが普通は無理だと首を振る。どうするか悩んだ結果、両津は時行を出した。

 

「両さん!?」

「行け時行!お前なら逃げ切れる!」

「この場から逃げたいです!」

「頼んだぞ!」

 

 両津が時行をプールに放り込む。機雷が次々と爆発して行く。そんな中を時行は逃げながら泳ぎ切った。

 

「機雷に触れ爆発する前に泳ぎ切るとは。将来有望だ。」

「見事だ北条時行。」

「さすがね。」

 

 爆竜大佐もパンテル大佐もジョディーも時行を褒める。時行はゼェゼェ言って倒れている。もう機雷はない。それなら安全だと両津が先頭に泳ぎ切る。爆竜大佐から逃げたいと思った署員達も次々とプールに入る。

 

「今日はここまでか…」

 

 爆竜大佐の1日署長が終わる。署長というより教官になっていたがもうどうでもいい。やっと終わると一安心する両津達。そこに爆竜大佐が来る。

 

「見事だったボルボ、両津。あと…」

 

 爆竜大佐は根画手部を捜すがいつの間にか居なくなっている。

 

「お前達をジョディーの婿候補に入れる。」

「はい!ありがとうございます!」

「わしはパス。」

「来い!今から試験に行くぞ!」

「いやだぁ!」

 

 爆竜大佐が両津を引きずって行く。こうして、爆竜大佐の1日署長は終わった。

 

 それから…

 

「両さん!?」

「キツかった〜!1ヶ月ヒマラヤ山脈生活は死ぬかと思った…」

「大変でしたね両津先輩。」

「その1ヶ月は無断欠勤になったぞ。」

 

 ボロボロの状態に帰って来た両津を心配する時行達で会った。

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