ある日、両津と時行が何かを食べていた。気になるも変な物だと嫌だと思いなかなか聞く勇気が出ない椎名。そんな椎名に気付いた時行が何かを渡す。恐る恐る食べてみるも普通に美味い。
「時行様、これは?」
「芋けんぴというお菓子です!」
「芋けんぴ?」
「高知県の名産だ。」
両津が答える。今までのと比べると美味しいため椎名も一緒になって芋けんぴを食べる。そこに中川が来た。
「先輩、芋けんぴですか?」
「そうだ。態々高知から取り寄せた物だぞ。」
「でも何故今更高知?」
芋けんぴを食べながら椎名が聞く。
「今、高知が注目されているからな。らんまんで牧野富太郎が、あんぱんでやなせたかしが朝ドラの主役となった。次は吉田茂が主役でわんまんという朝ドラが来るかもしれん。」
「高知ってそんなに有名な人がいたんですね。てっきり坂本龍馬だけの県と思ってました。」
「それがでかいのはある。」
両津が高知県のことを椎名に教える。
「有名人もそうだが高知県には最後の清流と呼ばれ絶滅したと言われるニホンカワウソが最後に目撃された四万十川があり約84%が森林という日本で1番森林面積が大きい県でもある。」
「何故そんなに高知県に詳しいんですか?」
「先輩は日本全国全てが庭みたいなものですから。」
後ろから中川が教えてくれる。
「実は高知県でうちが主導でやっているプロジェクトがありますよ。」
「なんだ?」
「南海トラフ地震に備えた浮島避難所計画です。高知県沖が1番震度が高く来る津波も大きいのでそれに備えた施設が必要になってきました。そこでうちが高知県沖に浮島を作りそこを避難所にしようと計画しています。」
「どれぐらい進んでるんだ?」
「その試作品が近くにありますから行ってみますか?」
「おお行く!時行も来るか!?」
「はい!行きたいです!」
中川は両津、時行、椎名を連れて東京湾から離れた場所にある浮島に到着した。まだ人は少ないが様々な施設があり1つの街としての機能は充分にあった。
「凄いですね。」
「これで約50万人を避難させることが出来ます。」
「高知県の人口より少なくないか?」
「ええ。高知県の人口は約70万人です。でもご安心を。これと同じ物を複数作って浮かしています。これなら被害を分散させることが出来ます。」
「なるほど。1つがダメになっても違う浮島に避難出来るというわけか。」
「その通りです。それに加えてこの浮島はいくつかに切り離して16区域に分裂させることも出来るのです。これで一部が浸水してもすぐ建て直すことが出来ます。」
中川が案内する。
「高知県沖に配置する予定なので高知県を意識した造りになっています。例えばレストランも高知県の名産を使った郷土料理を中心にしています。」
「高知県なんて全然考えることないからなぁ。」
「私も高知県には行ったことありませんね。」
中川の説明を感銘を受ける時行と椎名。両津は施設を見回しながらニヤリと笑う。十中八九…いや確実に金儲けに関する笑いだ。
(これは使えるかも。)
「中川!まずは知ってもらうのが1番だろ!だからここはわしらでこの施設をPRするってのはどうだ!?」
「か、構いませんけど。」
中川は両津に圧され了承した。両津は早速時行をPR大使にして施設内を回って楽しむ映像を撮りYouTubeなどに投稿する。すぐに人気になる。
「高知県はカツオや地酒が有名だからな。わしと相性がいい。」
両津は観光客を案内しながらいろいろと売り込む。時行や椎名も一緒になって手伝う。屋台が並ぶところで野菜や果物の他に金物、打ち刃物、植木なども売る。
「何でも売りますね。」
「これは高知県の日曜市を再現したものだ。その名の通り日曜日にやる市場だから日曜市。高知じゃ有名だぞ。」
「そうなんですね。」
椎名がスマホで調べている。両津はさらに時行に坂本龍馬のコスプレをさせる。両津に言われて坂本龍馬の真似をする時行。それがネットでバズる。
「私は一体何をしているのでしょうか?」
時行は遠い空を眺める。その間も写真を撮られまくっている。両津はこの催しが成功したことを喜ぶ。かなり儲けることが出来た。その日、時行、椎名と一緒にカツオのたたきや地酒でパーティーをする。
「前も高知には行ったがやっぱりカツオと酒が美味い!」
「本当に美味しいですね!」
「程よく乗った脂と弾力が素晴らしいです。」
みんなでパーティーを楽しむ。高知の名産がずらりと並んでいる。
「高知県は竜とそばかすの姫の舞台にもなった場所だ。自然豊かで商業施設もある。高知城などの歴史もある。人や物だけではなく場所も魅力的な県だ。」
両津はウツボの唐揚げを食べながら話す。時行も椎名もだんだん高知県に興味を持つようになった。両津はこれも成功だと思っている。
「このままだんだん事業を拡大させて…」
翌日、両津はさらに売上を伸ばすために高知県からいろいろと仕入れ売り飛ばす。さらに、移動する商業施設として売り出すために海底に繋いでいたアンカーを外し一区域を移動出来るように切り離した。
「これでどこにでも行ける高知県になったぞ。」
「両津先輩。これ、元々は避難所として建設された施設ですよね?なんか迷ってません?」
「大丈夫だ。GPSもあるから迷うことはない。」
「いえ。迷っているのはこの施設の方向性です。」
両津が迎え入れる準備を進める。切り離した浮島をスクリューで動かし予定していた場所に行く。しかし誰も来ない。おかしいと思い今日の予定を調べる。ちゃんと団体客が来る予定になっている。
「おかしいぞ。時間になっても来ない。」
「両津先輩。流されてます。」
椎名に言われて外を見る。なんと、突然の強風と波に流されだんだんと違う場所に行ってしまったのだ。
「まずい!」
両津は浮島を戻そうとする。しかし、波の方が強く戻ることが出来ない。そこに電話が来る。両津は時行に出るように指示する。時行が電話の対応をする。その間に両津と椎名で舵を取る。
「固す…ぎ…る…」
「椎名!眼鏡取れ!」
「は、はい!」
椎名は眼鏡を取りヤンキーモードになる。
「行け椎名!」
「おらぁ!」
思いっきり舵を回す。その瞬間、バキッという音と共に舵が折れた。取れてしまった舵を見て呆然とする両津と椎名。時行が戻って来る。落ちた舵と呆然とする2人を見て状況を判断しアワアワする。
「ど、どうするのですか?」
「大丈夫だ。こういう時のGPSだ。」
両津はスマホで位置情報を確認する。既にかなり離されていた。しかも、電波が届かない。
「電話も出来ない…」
「GPSが機能していない。」
「先程予約のキャンセルが来ましたよ。」
黙る3人。
「助けてー!」
「落ち着け椎名!」
「無理です!」
椎名が騒ぐ。どうするんだと言いながら周りを見ると時行がカツオのたたきを食べていた。
「時行様何でそんなに冷静なんですか!?」
「騒いでも仕方ありません。ここはどこかに流れ着くのを待ちましょう。」
「諦めてる!」
「本当にまずいぞ。中川にも連絡出来ん。気付いてくれるはずなんだが…」
両津が何か無いか探す。すると、ジョン万次郎博物館が視界に入った。
「確かジョン万次郎って幼い頃に漂流したところに来たアメリカの捕鯨船に乗って渡米していたな。…完全に現状と一致しているぞ。」
両津は意気消沈する。そのまま浮島は風と波が行くまま流されて行く。
それから…
「中川、両津達は知らんか?」
「それが…南海トラフ地震用緊急避難浮島の一区域を切り離した状態でどこかに行ってしまったようでして…」
「あのバカ。」
大原部長が呆れていた。
「あの…両津先輩…今、ここどこなんですか?」
「海の上だ。」
「もう魚飽きました。」
「カツオ、美味しいですよ。」
完全に漂流してしまい無人島生活状態になっている両津達であった。