逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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霧の町の時行

 時行はバスで亀有に戻っている。少し遠出していたみたいで到着するまで寝ることにした。

 

『亀有〜、亀有〜、ご乗車の際は…』

「亀有…ここだ!」

 

 寝過ごしかけていた時行は慌ててバスから降りる。しかし、なんかおかしい。周りは霧で覆われ建物が見えない。ここは本当に亀有なのかと思いながら歩く。

 しばらく歩いていると見慣れた道が見えた。その道に沿って歩くと派出所が見えた。いつの間にか霧も晴れている。

 

「戻って来れました!」

 

 時行はルンルン気分で派出所に入る。すると、両津がいるはずの席に違う上半身裸の警察官が座っていた。丸刈りで、顔には大きな傷、背中には刺青と、およそ警察官とは思えない風貌をしている男に時行はビビる。

 

「なんだ坊主?」

「え、いや…あの…両さんは…?」

「両さん?両津のことか。あいつなら…」

 

 男が答えようとした瞬間、見たことないゴツいパトカーが派出所に突撃した。時行が慌てて避けるとそこから2人の男が出てきた。

 

「バカヤロー!飛ばしすぎだ!」

「やっぱりアメ車は日本じゃ飛ばし難いぞ。…でも見てみろ。こんな事故なのにかすり傷だけだぞ。」

「車の前にわしらの体を気にしろ前田!」

 

 見た目も口調も両津にそっくりだが知っている両津よりも荒々しい男が前田という男に文句を言っている。前田は手を振って去って行った。

 

「いたたた…。あいつに頼むんじゃなかった。」

「えらい派手な登場だな両津。」

 

 ボロボロになった派出所など気にもしない男が両津と呼んだ。時行はそれを聞いて驚いた。両津は時行を見つける。

 

「ん?戸塚、なんだこのガキは?」

「知らん。お前の知り合いじゃないのか?お前を捜していたぞ。」

「知らん!わしの知り合いのガキにこんな小綺麗な奴はいない。わしの周りのガキは…」

 

 そう言う両津の頭に小石が投げつけられる。数人の子供がいたずらで投げていたのだ。それに対し両津は拳銃を取り出し乱射した。子供達は慌てて逃げて行く。

 

「あんなクソガキしかいない。」

 

 時行はびっくりして下がる。そこに今度はバイクに乗った女性がやってきた。彼女が乗っているバイクのサイドカーにいる犬が時行を見ている。女性は両津に話しかける。

 

「両さん。」

「おお!本口か!どうした!?アフリカに行ってたんじゃないのか!?」

「この前戻って来たの。それで本田さんどこにいるか知らない?」

「あんたの親父のところだろ。」

「あ〜。ありがとう!」

 

 本口が去って行く。入れ替わりに寺井がやって来た。やっと話せる相手だと時行が感激する。

 

「あれ?部長は?」

「部長なら本署だ。」

 

 両津はラジコンで遊びながら答える。そこに電話が来た。戸塚が乾かしていたらしい上着を着ながら両津を見る。

 

「なんだ中川?…おっ!そうか!行く行く!」

 

 相手は中川のようで両津はニコニコになって通話していた。

 

「戸塚!中川がアメリカから取り寄せた拳銃を見せるってよ!」

「おっ。それは面白そうだな。俺も行く。」

「というわけだ寺井。ここの留守番は任せた。」

「え!?」

 

 両津と戸塚は派出所を出て走って行く。時行はその後を追いかけて行った。2人は他愛もない会話をしながら歩く。公園に入るとボサボサ髪の浮浪者がやってきた。

 

「おう、フータロー。元気か?」

「元気だよ。」

「今度、いい仕事紹介してやるよ。」

「本当かい!?」

「やっぱり両さんなのかな?」

 

 周りから慕われているところを見た時行は知っている両津と同じだと思っていた。それでもなんか雰囲気が違うところに困惑している。フータローがバイバイ言って去って行く。2人がまた歩き始めるので時行もついて行く。その時、両津が振り向いて時行を狙い乱射した。

 

「うわっ!?」

 

 時行は全弾回避して2人の前に出る。それを見て両津と戸塚は驚いている。

 

「マジかよ。わしの弾を全部避けやがったぞ。」

「信じられん。」

「お前、わしに用か?」

「あ、その…私は北条時行と言います!知りませんか!?」

「知らん。」

 

 両津が即答する。時行はおかしいと思い観察する。睨んでくる両津。

 

「あ、あの…私も一緒に行っても…よろしいでしょうか?」

「いいんじゃないか両津。あのガキ共に比べればまだマシだろ。」

「確かにマシか。」

 

 頭を掻きながら了承する。2人の後ろを歩く時行。両津が近付いてきた犬をしっしと追い払う。2人が歩いていると隣にパトカーが止まった。そこから婦警が顔を出す。

 

「両さん!どこに行くの?」

「洋子か。中川がいいもん見せてやると言ってな。そこに行く。」

「私も行きたいかも。小町さん、行っていい?」

「いいんじゃない。行きなよ。」

 

 洋子は相棒の大柄の先輩婦警から許可を貰うとパトカーから降りて両津達と同行した。時行が気になるのか時行をチラチラ見ながら両津に聞く。

 

「あの子は?」

「知らん。わしのことを知っているようだが会ったことなどない。」

「ふ〜ん。私は葛飾署交通課所属の佐々木洋子。よろしくね。」

「よ、よろしくお願いします!北条時行です!」

 

 笑顔で自己紹介してくれた洋子。時行もお辞儀しながら自己紹介する。

 

「そういや、こいつのことは知ってるか?」

「い、いえ。初めてお会いしました。」

 

 両津が戸塚を指差して聞く。

 

「お前のことは知らんのか。」

「マジかよ。俺は戸塚金次。好きな物は任侠映画。両津よりはまともだ。」

「同じだろうが!」

 

 戸塚が自己紹介してくれる。洋子が寄りたい場所があると言う。2人はOKして寄り道する。洋子はタバコ屋のおばちゃんと会話していた。両津と戸塚がタバコを買って火を着ける。

 

「両さんってタバコ吸うのですか?」

「吸うぞ。」

(初めて見た。)

 

 時行は目を丸くして見る。よく見ると周りもいろんなところでタバコを吸う人がいた。確かタバコは決められた場所じゃないと吸ってはいけないはずなのに

 

「タバコというのはこんなところで吸って大丈夫なのでしょうか?」

「あん?…ああ、最近喫煙に対して厳しくなったよな?」

「まぁ、こんなにタバコの煙が出ればそうなるのも分かるがな。」

 

 町中タバコの煙で白くなっている。しかし、時行にはタバコの煙だけじゃなく霧も見えていた。タバコを吸い終え中川がいる場所へと向かう。着いたのは近くに大きな川がある土手だった。そこに中川と知らない人がいた。

 

「冬本も来てたのか!」

「まぁな。中川がアメリカで買った拳銃見せてくれる言うから飛ばして来たぜ。」

 

 ヘルメットにサングラスを掛けた男、冬本がゴツい拳銃を持っていた。それを興味津々で見る両津達。時行は中川を見る。中川もどこか雰囲気が違って見える。

 

「中川!これがその銃か!」

「でけえな。」

「この銃は…」

 

 両津さが拳銃で小一時間話している。時行は全然分からず?を浮かべている。中川が時行に気付いた。時行はお辞儀するも時行のことを知らないようで両津に聞いた。

 

「誰ですかあの子?」

「わしに懐いたガキだ。」

「北条時行って言ってたな。」

「昔の人間にそんな名前の奴いただろ。」

「知らないな。」

「同じく。」

 

 あまり興味を持っていないみたいだ。

 

「おっと、俺はそろそろ行かないとまずいな。」

「また後でな!」

「おう!」

 

 冬本がハーレーダビッドソンの白バイに乗って去って行く。中川が試し撃ちと言って遠くに立てた複数の空き缶を狙う。凄まじい銃声と共に放たれた弾丸は空き缶を全て吹き飛ばした。

 

「やっぱり銃をバンバン撃てるのは気持ちいいですね!」

「見た目通りのでけえ音だな。」

「アメリカの銃は派手だぜ。」

 

 両津達が耳を塞ぐ。離れたところにいる時行と洋子も耳を塞ぐほどの大きな銃声だった。そんな状態でも両津を笑って見ている洋子。

 

「すみません洋子さん。もしかして両さんが好きなのですか?」

「う〜ん。どちらかと言えば好きかな?私が学生の頃からうちのタバコ屋によく来てくれたのよ。私は両さんを見て警察官になろうと思ったからね。」

「中川!わしにも撃たせろ!」

「俺にもだ!」

 

 中川から拳銃を受け取り子供のように燥いでいる両津。あんな状態の両津を見て憧れるんだと時行は驚いている。しばらくして楽しんだ両津達は派出所へと帰ることにした。洋子は途中で別れ待ってくれてた先輩婦警のところに行く。

 

「結局、あのガキのことは全然分からなかったな。」

「本当に知らないんですか先輩?」

「全然知らん。」

 

 時行を見て会話する両津達。派出所に戻ると大原部長が怒って待っていた。

 

「両津。これはなんだ?」

 

 大原部長が指差した先には崩れた派出所の壁があった。最初来た時に傷付けたところだ。両津はまずいと思い逃げる。

 

「待て両津!」

「逃げるぞお前ら!」

「俺は関係ねぇだろ!」

 

 両津が戸塚と中川を引っ張って逃げる。時行も流れで一緒に逃げた。すると、突然霧が時行を覆った。また真っ白になり迷ってしまう。

 

「え、えっと、ここは…」

 

 迷いながらも走っているといつの間にか霧が晴れ派出所が見えた。しかし、崩れていたはずの壁は直っていた。不思議に思い派出所に入る。そこにはいつもの両津達がいた。

 

「りょ、両さん?」

「どうした時行?」

 

 恐る恐る聞くと普通に答えてくれた。それを見て安心する時行。両津達は何があったのか聞く。

 

「良かった〜!」

「どうしたのよ?」

「今まで変な両さんと一緒でしたから不安で。」

「両津はいつも変だろ。」

「ひどいですよ部長!」

 

 時行は周りをキョロキョロ見回す。

 

「あの…戸塚さんという方は?」

「え?戸塚?」

「え?」

 

 両津達が目を丸くする。

 

「なんでお前戸塚を知っているんだ?」

「さっきまで一緒でしたよ。あと、洋子さんに冬本さんに前田さんや本口さんという方もいましたね。」

「嘘だろ…もうほとんど出てこねぇキャラのオンパレードだぞ。」

「懐かしい名前ですね。」

 

 時行は両津達の反応を見て不安になった。あの時の両さん達は一体誰なのか?自分はどこに行っていたのか?その答えは今となってはもう分からない。時行は霧の中で不思議な体験をしたのであった。

逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜が150回を突入した記念としてアンケートします!逃げ上手の転生記の新シリーズの候補として銀魂とルパン三世のどちらかに時行を行かせたいと思います。どちらの逃げ上手の転生記が見たいですか?

  • 銀魂
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