逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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校庭に野良犬がやってきた!

 ある日、雪長が登校していると威嚇しているカマキリに土下座している時行と渚を見つけてしまった。

 

「あれは…穏便に済ませようと…」

「だからって土下座はないでしょ。」

 

 学校であれはなんだったのかと聞いた。2人は恥ずかしそうに訳を話す。昼休みのいつものメンバー。しかし、今日は静が居ない。

 

「あの…静さんは…」

「静なら飼育小屋だよ。」

 

 飼育小屋が気になったので亜矢に連れてってもらう。飼育小屋に着くと静と檸檬がいた。2人とも檻の中に入って兎達にご飯をあげていた。

 

「静さん、檸檬さん。」

「時行か。どうしたのじゃ?」

「飼育小屋が気になりまして。」

 

 今日は2人が世話の担当することになっているようで朝、昼、放課後にご飯をあげることになっているらしい。時行が兎を見る。愛くるしい仕草に一発でKOされた。

 

「可愛い。」

「じゃろ。」

 

 兎達は2人に凄い懐いているみたいだ。その姿に雫を思い浮かべる。日本古来の神であるミシャグジだった雫。常にどこか優雅な雰囲気すらあった彼女と2人を重ねる。

 

「お二人は優しい神様になれるかもしれませんね。」

 

 突然の時行の発言にドキッとする2人。

 

「なんじゃいきなり。」

「そうね。もし私が神様なら…人間をミジンコの支配下におきたい。」

「「いきなりどうした(のじゃ)!」」

「おい。絶対静を神様にするんじゃねぇぞ。」

「「うん!」」

「そもそもどうやって神様になるんですか。」

 

 静の爆弾発言に狼狽える時行達。その時、時行と渚が何かに反応した。2人とも同じ方向を見る。弧太郎達も気になり見てみると白い犬が現れた。大型犬で毛が長く汚れが所々に着いている。

 

「犬!?」

「野良犬みたい。」

 

 突然の野良犬にみんな駆け寄る。人懐っこいのかビビらずに舌を出して何かおねだりしている。試しにと静が兎達が残した人参を差し出す。野良犬は嬉しそうに人参を食べ始めた。

 

「可愛いかも!」

 

 亜矢が野良犬をナデナデする。人間を全く怖がらない野良犬は静と亜矢に懐いた。尻尾を振ってのしかかる。野良犬と遊んでいると昼休みが終わるチャイムが鳴った。慌てて教室に戻る。

 その放課後、時行達が飼育小屋に行くとさっきの野良犬が行儀よく待っていた。大人しくしていたのか兎達も野良犬を怖がることなく見てみる。

 

「お利口さんじゃん!」

「これなら先生に言って飼ってもらうのもありかもしれんの。」

 

 檸檬達も野良犬が気に入ってしまったのかなんとかして飼いたいと言い始める。悩んだ時行達は飼育担当の先生を呼んできた。

 

「この犬を飼いたい?」

「はい!すっごく可愛いです!」

「お願いします!桃井先生!」

 

 担当の男性教諭桃井は悩んでいる。

 

「とりあえずいろいろと調べてみるか。もしかしたら誰かの飼い犬の可能性だってあるしな。」

 

 そう言って桃井は野良犬を調べ始めた。オス、雑種、大型犬、長毛、年齢はおよそ10歳、首輪は無し、目ヤニなし、病気も今のところ無し、人懐っこい、暴れない、自分で待てが出来るほど賢い。

 

「•••元飼い犬の可能性がある。」

「そうなんですか?」

「ああ、散歩中に迷子になったか飼い主から逃げたか…どっちにしろ一度人に飼われた経験がある犬だ。」

 

 桃井は時行達にバケツに水を入れて持ってきてもらうよう指示する。時行達がバケツを持ってくると野良犬を洗い始めた。ある程度汚れが落ちると真っ白い綺麗な犬になった。

 

「やっぱり元飼い犬だ。予防接種の跡がある。」

 

 桃井が注射の跡を見つける。

 

「え〜!じゃあ飼えないのかな…」

 

 亜矢達が寂しそうに言う。それを聞いた桃井は頭を掻きながら考える。

 

「じゃあ、飼い主が見つかるまでここで保護しよう。」

「やったー!」

「その代わり、ちゃんと世話すること。俺も飼い主捜しの傍ら手伝う。」

「やったー!」

 

 喜ぶ亜矢達。それからは野良犬をシロと名付け兎小屋の隣に犬小屋を建てて飼うようになった。

 それから1週間後、シロの世話をしている時行達のところに桃井がやってきた。

 

「シロの飼い主が分かった。」

「えぇ!じゃあ…」

「その飼い主は2ヶ月前に亡くなっている。」

 

 桃井の言葉に時行達は言葉を失う。

 

「子供を助けるために飲酒運転の車に轢かれたそうだ。この子はそれをまだ知らないのか…受け入れられないのか。家から飛び出して行方不明になっていたらしい。」

 

 桃井がシロに写真を見せる。飼い主と思われる若い男性だった。シロは写真を見て嬉しそうに尻尾を振る。桃井が言うには彼には頼れる親族がおらず飼ってくれる人がいない。

 檸檬がシロに寄り添う。その顔はどこか悲しげだった。弧太郎が気付き檸檬に声を掛けようとする。そこに時行が弧太郎の肩を掴み首を横に振った。聞かれたくないことがあるのだろうと直感していた。弧太郎は頷き檸檬に何も聞かない。

 

「シロ…」

「このままだと殺処分される可能性がある。だから、俺達で飼おう!」

 

 亜矢達が驚く。

 

「そもそも飼い主が見つかるまでと言ったからな。もう亡くなってしまったら見つけるのは無理だ。だから、俺達で育てようじゃないか。」

「先生、ありがとう!」

 

 亜矢が桃井に抱き着く。シロも尻尾を振って桃井に抱き着いた。檸檬の表情も明るくなる。

 

「それと、この子の名前はモモらしい。」

「先生と一緒だ!」

「偶然な。」

「そうだ!」

 

 嬉しそうに亜矢がモモの頭の毛を逆立てる。

 

「桃井先生と一緒のリーゼント!」

「これはリーゼントじゃない!寝癖だ!」

 

 時行はリーゼントの武将を思い浮かべ笑いを堪える。飼育に必要なものは飼い主の親族から譲り受けてもらいモモを学校で飼うことにする。犬小屋には飼い主の写真が貼ってある。こうして、この学校に新しい仲間が出来た。

 翌日、弧太郎達がモモの様子を見に犬小屋に行くと…

 

「ワンッ!」

「はい。」

「ワンッ!」

「はい。」

 

 モモにお手されている時行と渚がいた。

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