ある日、丸井が両津にキャンプの雑誌を見せていた。
「今度、こういうキャンプに行きたいんだ。どうかな?」
「グランピングか。お前にはピッタリじゃないか。」
「そうだよね!次の日曜日に家族でグランピングに行く予定なんだ!」
「楽しんでこいよ。」
「うん!」
丸井が去った後に時行が来た。
「どうかされたのですか?」
「丸井がグランピングに行くんだとよ。」
「グランピング?」
「簡単に言えば手ぶらで行けるキャンプだ。既にテントやバーベキューの用意もあるし専門のシェフなんているところもあるぞ。」
両津がいろんなグランピングを見せる。時行は興味津々で見ている。両津には何度かキャンプに連れて行ってもらったことはあるがグランピングなんて経験がなかった。
両津が時行にグランピングを教えているところに中川が来た。中川も丸井からグランピングの話を聞いていたらしく両津が時行に見せていた雑誌を見た。
「来週丸井さんがキャンプに行くと言ってましたけど…」
「確か…霞ヶ浦キャンプだったな。」
「あれ?そこはグランピングじゃないですよ。」
「え?」
両津が調べる。普通のキャンプ場だった。おそらく予約する際に間違えたのだろう。時行はそんなに気にしてないが両津と中川は頭を抱えていた。
「あいつのキャンプは…」
「大変でしたね。」
中川が濁すも両津は知っている。丸井が以前行ったキャンプは散々な結果になっていた。両津がどうするか考える。良い案が思い付いたのか時行と中川にその案を話した。
キャンプ当日。丸井一家がキャンプに向かっている。その車の中に時行がいた。両津が時行を同行するように丸井にお願いしていた。
「時行君はキャンプとかよくするの?」
「両さんがよく連れてくれました。」
丸井の妻と会話する時行。2人の息子が妻に外を見るように言った。妻も外の景色を楽しんでいる。その間に時行は両津に電話した。
「あと30分で到着するみたいです。」
「よし。こっちも準備は出来ているぞ。」
両津は中川、椎名、ボルボを連れて予め大きめのテントを立てていた。いくつか仕掛けたカメラから離れた場所に停めてある車に映像が送られる。それを中川が見ていた。
丸井一家が到着した。目的地へと歩く。時行が先導して前を行く。そこに両津達が立てたテントがあった。
「本当にテントがある!」
「グランピングはテントからバーベキューなんでもあるんだよ。」
「キャンプが苦手なパパでも大丈夫だね!」
長男が辛辣な一言を浴びせる。テントには中川が呼んだシェフが待っていた。
「初めまして。こちらを担当致します。白川と申します。どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
お互い挨拶とお辞儀をする。
「こちらでは既に野菜やお肉、マシュマロなどを用意していますがご希望でしたら近くの川で魚を釣って焼くことも出来ますよ。」
「釣りしたい!」
「もちろん、釣り用具もご用意しております。」
丸井達は釣り用具を持って川に行く。それを中川が両津に報せる。両津はダイビングスーツを着てボルボと待機していた。
「まったく、ちゃんと確認しとけよ。」
「丸井もリベンジしたくて空回りしたんだろう。」
丸井達の後ろから椎名が監視している。
「この辺りでは鮎がよく釣れるって聞きましたよ。」
「じゃあ、鮎をいっぱい釣ろう!」
「両津先輩。丸井先輩達が釣り始めましたよ。」
「よし。ボルボ、行くぞ。」
「OK。」
両津とボルボは予め捕まえていた鮎を持って川に入った。丸井達にバレないように近付く。時行が会話して両津達から目を反らせる。
「キャンプとかよく行かれるのですか?」
「前にね。ちょっと…」
丸井が話していると鮎を引っ掛けた両津が糸を引いた。丸井がかかったと釣り竿を引く。狙い通り鮎が釣れた。それを見て喜ぶ子供達。
「本当に釣れた!」
「よ〜し!このままいっぱい釣るぞ!」
そこから両津とボルボはバレないように丸井達の釣り針に鮎を着ける。大量に釣れたことで丸井達は満足しているようだ。時行が両津にOKとサインを出す。
「前もそうだが大変だったぞ。」
「前よりはマシだ。」
2人は川から上がって次の準備をする。テントに戻り白川が焼いてくれた鮎やバーベキューを楽しむ。
「美味しいね!」
「うん!」
子供達の笑顔を見て丸井とその妻は喜んでいる。食事を終えるとキャンプを楽しみたいと子供達が森の中へ入る。その後ろを時行がついて行く。
「先輩。子供達が森に入りました。」
「よし。とにかく危ないものは排除するぞ。」
両津はボルボと椎名を連れて森に入る。すると、早速ボルボがマムシを捕まえた。
「この季節、冬眠するから夏よりは被害は少ないがそれでもまだいるな。」
「あいつらのためにも…」
「両津先輩!ボルボ先輩!」
椎名が呼ぶ。2人が振り返ると大量の蜂から逃げている椎名がいた。
「あれなんとかしてください!」
「こっち来るな!」
両津達も逃げる。その間に時行達はどんどん森の奥へと向かっていた。上を向くと松ぼっくりが大量に実っていた。それを見つけた時行はスラスラと木をよじ登って松ぼっくりを取った。
「大きい松ぼっくりがありましたよ!」
「時行君って凄い運動神経抜群だね。」
「お父さんと全然違う。」
松ぼっくりを粗方取った時行は木から飛び降りた。
「松ぼっくりって意外と食べれるんですよ。」
「い、いや…」
「僕はいいかも…」
2人は遠慮する。
「時行君って森とか詳しいの?」
「多少は。昔は森の中でよく遊んでいましたので。」
「昔は…?」
「意外と野生児だった。」
3人がいろいろと遊んでいた。すると、時行が蜂の巣を発見した。まずいと判断し2人を下がらせる。巣の周りには憤った蜂の群れがいる。
「離れましょう。」
「う、うん。」
そ~と離れる。しかし、蜂に気付かれてしまった。こっちに向かって来る蜂の群れ。時行は2人を走らせると自分はスピードを落とした。蜂は時行を狙う。時行はそれを避けた。気配を感じ蜂の群れに囲まれないように森の中を縦横無尽に駆け回り逃げる。
一方、逃げ切れた2人は急いで丸井達のところへと走る。丸井は白川からバーベキューに関する知識を教えてもらっていた。そこにゼェゼェと息を切らした2人が来るものだから心配して駆け寄った。
「どうしたの!?」
「は、蜂が出た!」
「時行君は!?」
「あれ?いない!?」
まさか逃げ遅れたのか。そう思い急いで捜す。大声で時行を呼ぶ。すると、声が聞こえた。その声を頼りに走ると無傷の時行が手を振っていた。
「良かったー!」
「蜂は?」
「逃げ切りました。」
ドヤ顔で自慢する時行。それを聞いて唖然とする丸井達。一方の両津達はまだ蜂から逃げていた。そこからは丸井も同伴して森の中で遊ぶ。すると、向こうにキャンプしている人達を見つけた。
「あそこにもキャンプしている人達がいる!」
「僕らの貸切じゃないから当たり前だけどね。」
「でも、あの人達はグランピングじゃないような…」
「た、多分この辺りは普通のキャンプをする人達用なのでしょう!」
慌てて時行が誤魔化す。内心嘘を付いたことに罪悪感が生まれる。丸井達は納得していた。時行は邪魔になないようにとその場から遠ざける。
「ナイスですよ時行君。」
カメラで見ていた中川がガッツポーズしている。
「先輩。時行君が丸井さん達を連れて戻って来ますよ。」
「こっちも蜂の巣の駆除が出来たところだ。」
ボルボが蜂の巣を袋に入れる。そして、夕方。白川が用意してくれた鍋料理を楽しむ。
「美味しいね!」
「山菜も鴨も滅多に食べないから新鮮だね。」
食事が終わると時行は夜空を眺めた。丸井達も焚き火をしながら見上げる。
「綺麗…」
「雲もないし空気が澄んでいるから一層綺麗に見えるね。」
(私が鎌倉で見た空と同じですね。)
時行は昔を懐かしみながら夜空を眺める。両津達は疲れたと車の中で寝転んでいた。
「カップラーメンがこんなに美味く感じることなんてなかなかないぞ。」
「大変でしたね。」
「お疲れ様です。」
中川がコーヒーを両津達に渡す。両津達も夜空を眺める。綺麗だと椎名が言う。
「どれだけ時代が変わっても空は変わることはありませんね。」
「自然の神秘だ。」
両津達と同じように自然の神秘を感じている丸井達。そこに白川がカメラを持ってやってきた。
「記念に1枚どうでしょう?」
「いいですね!」
丸井達は折角だから焚き火の前で記念写真を撮ろうと準備した。その時、丸井がスプレー缶を蹴り飛ばし焚き火に入ってしまった。それに気付かずに焚き火の後ろに座る。
「では、いちにのさーん…」
丸井達はピースする、白川がはい!と言った瞬間、スプレー缶が爆発し丸井達を巻き込んだ。
後日、吹き飛ぶ直前のみんなの顔が写った写真を見る両津達。
「今度からはバーチャルキャンプにしろ。」
最後の最後で散々な目にあった丸井達を心配する両津達であった。