ある日、時行が悩んでいた。珍しく悩んでいるなと思った両津が時行に声をかける。
「どうした時行?」
「実は…お金が欲しくて。」
「何!?」
時行の発言を聞いた大原部長達が後ろでヒソヒソ話し合っていた。
「時行君が借金を…」
「やはり両津に任せるのが間違いだったのか?」
「何をやらかしたのかしら?」
「なんでわしも原因になってるんだ!」
両津が叫ぶ。すると、時行がこの前学校で飼育することにしたカエデの写真を見せた。
「カエデちゃんの小屋を建てたいのです。いつまでも鳥小屋に入れるのは可哀想と思いまして。」
それを聞いた大原部長達がホッコリした。両津は大原部長達を睨んでいる。それはそうと両津はいい案があると時行にスマホを見せた。そこには『親子でアスレチック!』という題名で賞金1億と表示されていた。
「わしもこれに参加したいと思っていてな。わしとお前なら絶対優勝間違い無しだ。」
「はい!やります!」
時行はすぐ返事した。
「先輩と時行君なら確かに優勝出来ますね。」
「存在自体がイレギュラーな2人だからな。」
(あの猫の小屋ならわしが建てれば費用はほぼゼロ。残りは全部わしが…)
優勝出来ると笑っている2人を見てそう思う大原部長達であった。
アスレチック当日
会場には多くの参加者達がいた。ルールは簡単。小学生以下の子供とその親が一組となり時には協力し時は別れてアスレチックロードを制覇してゴールしろというものだ。
優勝候補と言われた親子を取材している人達を両津が見る。
「やっぱりというか、だいたいが父親だな。」
「凄いですね。」
「オリンピック選手にマラソン日本記録保持者にラグビー元日本代表…アスリートばっかりだな。」
両津が周りを見る。ほぼ全員が筋肉ムキムキのマッチョ達だった。中には子供もムキムキマッチョの親子もいる。
「でも、優勝するのはわしらだ時行。」
「はい!」
両津も時行もやる気満々だ。みんな、位置に着く。
『では…よーい…スタート!』
一斉に走り出す参加者達。最初に見えたのは別れ道だ。子供用と親用に別れていた。その先を見る。子供用は普通のアスレチックだが親用はSASUKEの数倍えげつない地獄のアスレチックとなっていた。それを見た両津は真顔になる。
「子供と親の差半端ねぇ!落差酷すぎるだろ!」
両津は文句を言うも賞金のために突っ走る。重い壁を上げ垂れ下がるロープを伝って渡り坂を駆け上がる。一方の時行は段差をジャンプし1本橋を渡る。
「くそ…これ、アスリートが有利過ぎるぞ。」
両津の前を走るアスリート達。時行の前にも数人走っている子供がいる。
『やはりトップを走るのは八木選手親子です!父親の八木敏郎選手はオリンピック陸上金メダル!息子の八木勝久選手も父親の背中を追い5歳から陸上を続けてきた今大会一のアスリート少年です!』
「こっちには時行がいるんだ!負けてたまるかぁ!」
両津が走る。それを高いところを走っていた時行が見ている。時行も負けじと走る。目の前に滑り台がある。滑り台を滑って梯子を登るみたいだ。先頭の勝久が梯子に手をかける。このままでは差は縮まらない。そう判断した時行は滑り台からジャンプした。約5mはある距離を何の躊躇いもなくジャンプしたのだ。
「!?」
それを見た勝久達はびっくりした。時行は向かい側に転がりながら着地して走る。その様子をモニターで見ていた大原部長達もびっくりしている。
「さすが時行君。」
「相変わらず無茶苦茶するわね。」
『信じられません!北条時行選手!なんとダウンアップゾーンを飛び越えました!父親は…両津勘吉選手ですね。…両津勘吉選手も物凄いスピードで八木敏郎選手に迫っています!』
「あれはアリなのかよ!?」
敏郎が文句を言うも想定していなかった大会側はOKにした。時行は雲梯を渡り坂を駆け上がる。トップを独走していた。その後ろから勝久が追いかける。両津もタイヤを引っ張りながら走る。
「これ…完全に鉄人レースだぞ。親子でやる奴じゃない。」
敏郎が両津の前を走る。すると、道が1つになった。ここで親子が合流して次のステージに向かうみたいだ。敏郎が先に着くも次に着いたのが時行だった。両津は笑いながら到着すると二人三脚で次のステージに向かった。
「何してんだ!?」
「さすがにあれは反則だよ!」
後から遅れて勝久が到着する。2人も二人三脚で両津と時行を追いかける。次は50mプールを泳ぎ切れというものだった。両津1人だけなら数十秒で着けるが時行を待っていては追いつかれる。
「行くぞ時行!」
「え?あ、はい!」
両津は時行を担ぐと時行を投げ飛ばした。時行はプールに着水して泳ぐ。両津もプールに飛び込み物凄い速さでプールを泳ぐ。それをモニターで見ている大原部長達は両津の無茶苦茶さに呆れていた。
「なんて奴だ。」
「両ちゃんらしいと言えばらしいわね。」
「時行君も先輩に似てきました。」
両津は時行とほぼ同時にプールを上がる。しかし、疲労が溜まってきたのか足取りが重い。そうしていると後ろからだんだん参加者達が追いついてきた。先頭はもちろん八木親子だ。
「待てぇ!」
「賞金は渡さんぞぉ!」
両津はなんとか走る。目の前にはゴツゴツした岩山のステージが見えた。それを見た時行は目をキラキラさせている。
(頼継殿との鬼ごっこを思い出す!)
時行は何の迷いも無く岩山を駆け上がる。それには両津も唖然としている。
「南北朝の子供はみんな、あんなのか。」
両津も時行の後を追って岩山を登る。既に時行は頂上に着いている。次は岩山を降りるみたいだが時行はなんとジャンプして落ちた。頂上に着いた両津がそれを見て驚く。
「おい!」
飛び降りた時行に会場は騒然とする。時行は上手く岩山を蹴り地面に着地する。立ち上がった時行は楽しそうに降りている両津に手を振っている。会場はその姿に恐怖すら感じている。
「現代の子供じゃあの度胸は付きませんね。」
「あそこまでしても生き残れない南北朝って恐ろしいわね。」
中川と麗子もさすがに時行に恐怖を感じている。両津も負けじと途中から飛び降りた。後ろから八木親子が追いかけるもさすがに飛び降りるなんてことが出来なかった。
「わしらがトップだぞ!このまま突っ切れば優勝だ!」
「はい!」
そうは言うも両津は既にゼェゼェと息を荒げていた。最後のポイントに到着する。そこにいたスタッフが時行に重りを着ける。時行は初めて鎧を着た時のことを思い出す。
「お、重い…」
「まずいな。時行の機動力が落ちてしまう。」
「あの、ここからはあなたが息子さんを背中に担いで走るんですよ。」
「え…」
両津は目を点にする。
「何キロあるの?」
「重りが10キロですので息子さんと合わせると約40キロですね。」
40キロなら行けると判断する両津。すると、スタッフが両津の両手足に重りを着けた。
「何これ?」
「親にもそれぞれ5キロの重りを着けることになってます。」
「じゃあ…20キロもプラスされるの?」
「そうなります。頑張ってください。」
両津は時行をおんぶする。時行は既に重みでぐったりしていた。両津は時行をおんぶして走り出す。既に疲労がマックスに達している両津の足取りが重い。その後ろから八木親子が来ている。もうこの2組の対決だ。
「ここまで来て…負けてたまるかぁ!」
会場に着き大原部長達からも両津が見えた。両津は最後の馬鹿力を発揮して最後の直線を走る。八木親子がだんだん追いついてくる。
「両さん…私は…信じています…」
「任せろぉ!」
両津は時行の応援で踏ん張り1位で走りきった。会場は大歓声で両津と時行を称える。両津は疲れで声が出ない。時行は重りを全て外すと気持ちいいと天を仰いだ。
「優勝おめでとうございます!」
2人に記者達がインタビューする。両津は声が出ないため代わりに時行が答える。
「あ、ありがとうございます。」
「ズバリ、1億円は何に使いますか!?」
「学校で飼っている猫のカエデちゃんの小屋作りと…学校の修繕に使いたいと思います!」
時行の発言に両津はえ?という顔をする。
「そうなんですか!?」
「はい。学校も老朽化で修繕が必要だって先生が言ってましたので。」
「素晴らしいですね!」
「ありがとうございます。」
両津は口をパクパクさせていた。
「息子さんの学校のために頑張る父親は最高ですね!」
「は、はい…」
なんとか声が出るも今更自分のためなんて言えない両津は時行に同意した。それから…
「あれ?両さんはどうされたのですか?」
「多分、疲れが出たんだと思います。肉体的にも精神的にも…」
「両津の物になるより学校のために使った方が有益だろう。」
派出所に来ていない両津を心配する時行だった。