「アーバインか…懐かしいな。」
「爆竜、知ってるのか?」
「昔、合同任務で一緒になった。既婚者でなければジョディーの婿候補に入れたいぐらいの男だ。」
ニューヨークに向かう途中の輸送ヘリの中
両津達は爆竜の手助けでニューヨークに向かう。ニュースではまだウェンディが逮捕されたどころか彼女が実行犯であることすら報道されていない。
「ロスでは我が部隊が未だ北条を捜索している。」
「頼むぞ爆竜。」
両津達はニュースを聞きながらニューヨークに向かっていた。
一方、時行とウェンディも車でニューヨークに向かっている。夜になりホテルで一夜を過ごすことにする。時行は服を元に着替えている。
「折角可愛かったのに。」
「私はこれがいいです。」
時行が着替えを終えて振り返る。そこにはバスタオル1枚のウェンディがいた。時行は顔を赤らめ慌てて顔を反らす。ウェンディは気にせず時行に近付く。
「初心な子だぜ。」
「着替えてください!」
時行に言われてウェンディは服を着る。
「そ、そう言えばウェンディさんは日本語が出来るのですね。」
「日本のアクション映画を見て学んだんだぜ。」
「その“ぜ”というのは?」
「その映画の主人公の口癖だぜ。かっこいいと思ってるぜ。」
ウェンディが答えてくれる。
「う〜ん。どうでしょう?」
「あれ?そうなのかぜ?」
「サンディさんとの思い出を聞きたいです。」
時行に聞かれウェンディは渋々話し始めた。初めて会った高校の時の彼女は明るく誰にでも気さくに話せる人だったという。メキシコ人の血が流れ褐色肌の自分にも話しかけてくれたことが嬉しかったという。
「サンディさんも見た目で判断しない方なのですね。」
「未だに白人主義や黒人差別が多い大学で彼女のような人はあまりいなかったぜ。」
「それから…」
「私の話はここまでだぜ。次は北条時行の番だぜ。」
ウェンディが顔を近付ける。
「君のことが知りたい。」
「え、え〜と…」
時行は本当は南北朝時代の人間だということを隠し両津と出会ったところから話し始めた。親を失い両津に拾われ楽しいことも辛いこともあったと話す。
「君は拾ってくれた人が良かったんだぜ。私もそういう人に会えれば…」
「会えましたよ。」
「ん?」
「私です。」
時行の発言にウェンディは笑う。
「面白い奴だぜ。でも、ありがたく思っておくぜ。」
2人はそのままベッドで眠った。ちなみにシングルベッドのため時行はウェンディの近くで寝ることになりドキドキしていた。
翌日、買い物と給油を済ませた2人は次の街までの距離を調べていた。すると、時行が目の前の店を見た。ウェンディも見ると日本の刀や鎧などを売っている店だった。
「気になるのか?」
「はい!」
2人は店に入る。
「ここは…日本ブームの店か。」
ウェンディが振り向く。時行は弓矢を見て目をキラキラ輝かせていた。
「それが好きなのかぜ?」
「はい!私は弓矢が得意なのです!」
「へぇ~。」
時行にせがまれウェンディは弓矢を買った。痛い出費だったが時行が満足しているようなのでまぁいいかと呟いた。街を出て長い道路を走る。
「ここからアイオワ州だぜ。やっと半分だせ。」
そこそこ飛ばした結果、思ったより早く着いたらしい。街に入り食事する。外に出て車に乗ろうとした。その時、2人は気配を感じた。こちらを見ている人がいる。1人や2人じゃない。そう感じた瞬間、2人は車に乗り飛ばした。その後ろを複数の車が追いかけた。
「追われてたか!」
「あれは…」
「オンドゥルの手下だ!しくじった私を始末に来たかぜ!」
爆走させて振り切ろうとするもなかなか距離が離せない。その時、前にも車が出て来て体当たりされた。そのまま2人が乗る車は電柱に激突した。車からぞろぞろと男達が出て来る。リーダーと思われるオールバックの男が前に出た。
「どこに行くつもりだウェンディ?」
「仕事だベック!」
「子供を連れてか?お前の仕事は保育士じゃねぇだろ。」
英語で話し合う両者。マシンガンを2人に向ける。すると、時行が弓矢を構えて車の屋根に立った。それを見たベック達が大笑いする。
「時行!?」
「凛々しいインディアンじゃねぇか!そんなお前にいいこと教えてやる!
ベックが拳銃を向ける。時行は冷静だ。ベックが脅しとして一発撃つ。時行は動じていない。その瞬間、時行が矢を拳銃に命中させた。
「あのガキ…殺れ!2人纏めて殺っちまえ!」
ベックが叫ぶ。マシンガンが火を吹く。街の人達が逃げ惑う中、時行は弾丸の雨を避けていた。避けながら冷静に次々と矢をマシンガンに当てていく。それにウェンディは驚いていた。
「凄い…あれ、本当に本人が演っていたんだ。」
生で見る時行のアクションに惹かれた。ウェンディはすぐに拳銃を構え時行の援護をする。時行はベック達の前まで来て挑発する。
「もっと撃ってきていいよ。」
「こ〜の〜ガ〜キ〜!」
日本語は分からないが恍惚とした表情で挑発していると分かったベックは狙いを時行だけにした。時行はベック達の弾丸を避けながら矢を射る。すると、矢が無くなった。
「馬鹿め!もう何も出来ねぇぞ!」
時行を集中して狙う。すると、時行は落ちている矢を弾丸の嵐を避けながら拾った。
「何!?」
時行は落ちた矢を拾い再び射る。それを繰り返しベック達を翻弄していた。その隙にウェンディがベック達の車を盗む。そのまま走り出すと同時に他の車のタイヤを撃ち抜いてパンクさせた。
「時行!」
時行は開いているドアから後部座席に飛び乗る。ベック達が撃つもウェンディはそのまま走らせて逃げ切った。ベックはウェンディが乗っていた車にゴルフバッグを見つけると舌打ちした。
「くそっ!ギッタンとジョシュに連絡しろ!あいつらがアイオワを出るぞ!」
ベック達から逃げ切ったウェンディ。とりあえず一安心だと見つけたガソリンスタンドに立ち寄る。
「それにしても凄かったぜ。本当にそれ得意なんだな?」
「はい。小さい頃から学んでいましたので。」
「小さいって…今も充分小さいのぜ。」
給油を終わらせてすぐに車を走らせる。一方の両津達は爆竜達のおかげでもうすぐでニューヨークに着こうというところまで来ていた。
「さすが爆竜。1日もしないうちにニューヨークに到着か。」
「両さん!あなたに挨拶したいって!」
サンディがズームを両津に見せる。それを見た両津は喜んだ。
「マーちゃん!」
『久しぶりだ両ちゃん。』
相手はマックス。サンディと同じ両津がアメリカに研修に行った時に仲良くなったCHPの警官だ。
「元気か!?」
『元気だ。両ちゃんが来ると聞いてこいつも挨拶したいってさ。』
『ひ、久しぶり両さん。』
「ジョンか!」
マックスの前に来た子供が挨拶する。彼はジョン。以前、両津達が助けた子供だ。
「日本語上手くなったな!」
『ジョンはあの事件の後、俺が養子として引き取ったんだ。今じゃ2人で日本の映画を見るのが日課になってるぜ。』
2人がピースする。
『両ちゃん。俺達は今、ニューヨークにいる。ロスの暗殺事件の後、カリフォルニアとニューヨークで合同捜査が行われることになったんだ。』
「わしらもニューヨークにもうすぐで着く!待っていてくれ!」
『待ってるよ。』
ズームが切れる。その後、サンディのところに新しい情報が来た。それをスマホで受け取る。それを見た瞬間、サンディは自分の目を疑った。両津が気になりサンディに声をかける。
「どうしたサンディ?」
サンディは黙って見せる。そこにはアイオワの街でマフィアの銃撃戦が発生したというニュースだ。そこに時行とウェンディが映っていた。さらに、ロスの暗殺事件の時ゴルフバッグを担いでいるウェンディが映った監視カメラの映像も送られてきた。
「時行…と…」
「ウェンディが…暗殺の実行犯…」
信じたくないサンディはそんなことあり得ないと呟く。そんなサンディに両津が肩を掴んで励ます。
「止めるぞ。まだ、間に合う。」
「う、うん!そうね!」
「爆竜!」
「分かってる。」
爆竜の目にニューヨークのビルが見えてきた。そのビルがまだ見えない広大な砂漠を走っている時行とウェンディ。お金も食料ももうすぐで尽きそうだ。もうこのままニューヨークまで寄り道せずに直行する。
「あと、100キロってとこね。燃料もなんとか保ちそうだぜ。」
「これからどうするつもりですか?」
「…考えないぜ。マッサッカーに追われ狙撃銃も無し。もう私の帰る場所は…」
そう言って拳銃を握った。
「まだですよ。」
「何が?」
「私が帰る場所を見つけます。無けれは作ります。なので、生きることを諦めないでください。」
時行の真っ直ぐな目を見たウェンディは拳銃を懐にしまった。その時、大量の車が行く手を塞いだ。ウェンディはブレーキを踏み車を急停車させる。車からアニキと弟分が出て来る。兄貴がギッタンで弟分がジョシュだ。
「待ってたぜぇウェンディ。お前の逃げ場所などもうどこにもねぇよ。」
「無いなら作るまでだ。」
2人は拳銃と弓矢を構えて車の陰に隠れる。そこに反対方向からも車が来た。そこからはベックが出て来る。
「手間かけさせやがって。」
「挟み打ちか。」
時行とウェンディが背中合わせになる。すると、ギッタンがロケットランチャーを取り出して撃った。2人は逃げるも車に命中し大爆発した。その衝撃で2人は倒れ気絶してしまう。
「こっちも時間がねぇんだ。」
「アニキ!さっさと殺っちゃいましょう!」
「待て。ボスから生け捕りにしろって命令だ。」
「まだ使い道があると?」
「あるみたいだぜ。」
ギッタン達は2人を連れてその場から離れて行った。両津達はニューヨークに着くとマックスとジョンに握手した。
「両ちゃん…」
「ウェンディのことか?」
両津ぎ後ろを振り返る。サンディがジョディー達と会話していた。その姿はいつもと一緒に見える。
「気丈に振る舞ってるが内心動揺している。」
「無理もない。友達がこんなことしているんだからよ。」
「それなんだが…」
マックスが両津を連れて警察署に入る。そこでマッサッカーファミリーの暗殺事件を見せた。
「マッサッカーファミリーの殺り方はまず狙撃で脅す。そこで脅しに屈すればなんともないがそれでも抵抗するなら1人になったところをマシンガンで蜂の巣だ。」
「その狙撃がウェンディの役目だと?」
「多分な。マッサッカーが傭兵や殺し屋を雇った記録は無い。そらにこの狙撃手、狙ったところが耳や肩、足と比較的死傷率が低い位置だ。」
「つまり、彼女は今まで誰一人殺したことがない?」
「そこが希望だ。」
マックスからの情報は両津にとっては嬉しいものだった。
その希望は…
「おい、起きろ。」
椅子に縛り付けられていた。水をかけられ起きるウェンディ。そこにはベックとオンドゥルがいた。
「最後のチャンスだというのにふいにするとは。」
「チャンス?それってあんた達にとってのチャンスよね?」
「君にとってのチャンスでもある。これが成功すればまた可哀想なメキシコ人達を救うことが出来るんだよ。」
「麻薬を持たせて密入国のどこが救いだ!」
ウェンディが暴れるがベックの部下達が抑える。
「それでも嫌というなら君と一緒にいたあの日本人の子供がどうなるのか…分かるだろ。」
「な…」
オンドゥルは時行を人質にした。そこにベックが狙撃銃が入ったゴルフバッグをウェンディの前に投げる。
「最後の仕事だ。それでアーバインを暗殺しろ。今まで誰一人殺してないのにお咎め無しにしてやったんだ。1人ぐらい殺してみろ。」
ウェンディにはもう選択肢がなかった。その時行は縛られ地下室に監禁されていた。ギッタンとジョシュが見張りをしている。
「アニキ、本当にこいつ男なんすか?」
「みてぇだぜ。俺もびっくりしたぜ。こいつ、結構高く売れるぞ。」
2人のゲスな会話を時行は聞いていた。そこにウェンディが入ってきた。覚悟を決めた目で時行を見る。
「何の用だ?」
「彼は起きているのか?」
「知らねぇ。」
ウェンディは時行に近付くと膝を着いて話しかけた。
「私は今からアーバインの暗殺をする。明日の15時に開かれる演説会でアーバインを狙撃する。」
ウェンディが日本語で話す。ギッタン達には理解出来ていない。最後にウェンディは時行の耳元に近付き囁いた。
翌日、PM3時
ニューヨークの一角で演説を行うアーバイン。そこがよく見えるビルの屋上に狙撃銃を持ったウェンディがいた。