「チャリティーですか?」
「そうだ。親の居ない子供達にサンタとなってプレゼントを配る催しが今日開催される。」
「最近、空き巣が増えているから気を付けないといけないですよね。」
「そのパトロールも兼ねている。」
ある日、大原部長が中川達に孤児院チャリティーの案内を説明していた。両津は興味無いようで始末書を書いていたが案内を見た瞬間、目の色を変えた。
「部長!このチャリティー、わしが行きます!」
「両津!?」
両津は大原部長の制止を振り切り派出所を出て行った。
「いきなりなんだ?まさか、また良からぬことを…」
「いや、違うと思いますよ。」
案内を見た中川が大原部長にその案内を見せる。それを見た大原部長は納得した。
両津は時行を連れて孤児院に向かう。両手にいっぱいのプレゼントを抱え向かった先には古い教会があった。もう使われていない教会を孤児院に変えたみたいだ。
その孤児院には7人の子供達と顔に傷のある男がいた。男は机の書類とにらめっこしている。そこに1人の子供が来た。
「院長先生、院長先生。外にお巡りさんがいるよ。」
「お巡りさん?」
院長先生と呼ばれた男が出る。そこには両津と時行がいた。男は驚いた表情で両津を見た。両津は男を見ると笑いながら名前を呼んだ。
「久しぶりだな賢坊。」
「両ちゃん。」
男の名は村瀬賢治。両津の小学校の頃の友人で元ヤクザだ。村瀬ら驚くも両津と時行を孤児院に招いた。
「いきなりなんだ両ちゃん?」
「忘れたのか?今日はクリスマスチャリティーだ。」
「…それ、今日だったのか。忙し過ぎて忘れてた。」
両津はプレゼントを置くと村瀬が気になっている時行に話しかけた。
「時行、わしは賢坊と話したいからあの子達と一緒に遊んでいてくれ。」
「分かりました!」
両津は子供達を時行に任せて村瀬と2人でテーブルに座った。
「残念だがここには酒なんてない。リンゴジュースで我慢してくれ。」
「構わねえよ。わしも仕事中だしな。」
2人でリンゴジュースを飲む。
「それにしてもやっと孤児院の夢が叶ったんだな。」
「ああ、突然7億の寄付金がきてな。この廃教会を買い取り改装して孤児院にすることが出来た。身寄りの無い子供達も集まった。」
村瀬が時行と遊ぶ子供達を見る。両津も一緒になって見ている。
「もう不動産はしないのか?」
「いや、基本は不動産で帰りにここに寄る程度だったんだが任せていたお手伝いさんが事故で入院してしまって退院するまでこっちを優先することにした。」
村瀬は書類を片付けると時行を見る。
「彼は?」
「北条時行。家族親戚みんな亡くなって1人になったところをわしが養子として迎え入れた。」
村瀬が驚く。
「両ちゃんもか。立派だな。」
「賢坊も立派じゃねぇか。今もアジアの孤児達に義援金を寄付しているんだろ。」
「ああ。だが、たまに思うんだ。これは俺の自己満になっていないかってな。」
「自己満で何が悪い。それで誰かが困っているわけじゃない。もっと胸を張ろうぜ!」
「さすが両ちゃんだ。」
2人は笑っている。
「ここまで長かった。両ちゃんに諭されなかったら俺は今でもヤクザだったんだろうな。」
「お前はわしより賢いんだからいくらでも道は作れる。もっといい道を作ればいい。」
「フッ。その楽観的なところが欲しかったよ。」
「いつでもやれるぞ。」
両津が笑う。
「そうだ両ちゃん。まだ、これ持ってるんだ。」
そう言って村瀬は両津にベーゴマを見せた。それは両津が転校する村瀬にあげたベーゴマだ。
「まだ持っていたんだな。」
「お前と俺を繋ぐ大切な宝物だからな。」
「聞きたいですね。」
いつの間にかいた時行が2人を見る。後ろには子供達が待っていた。
「いいのか村瀬?」
「俺が悪だったところはもう話してる。話してないのは…両ちゃんとの思い出だな。」
「じゃあ、わしが話してやろう!」
時行達が拍手する。両津は話した。自分と村瀬が初めて出会ったところから。小学校の頃から賢かったが力が弱いため周りからは浮いていた。そんな村瀬に両津がベーゴマを教えた。左利きの村瀬は低いペチャを使うことで連戦連勝していた。そんなある日、突然転校することになった。そこで一緒に浅草神社の境内に今まで勝ち取ったベーゴマを詰めた箱をタイムカプセルとして埋めてまた会おうと約束した。
「…まぁ、ざっとこんなもんよ。」
「いいお話ですね!」
「お前はオーバーなんだよ。」
簡単に2人の思い出を話した両津に時行が感動している。
「今日はバーっとクリスマスパーティーを開こう!」
「良いのか両ちゃん。」
「任せろ!クリスマス用イルミネーションは麗子から貰えるしケーキも問題無い!」
両津は早速孤児院をイルミネーションで飾る。時行が麗子の手作りケーキを持って来る。これで準備は完了だ。夜になりライトアップされる。孤児院がイルミネーションで綺麗に彩られる。周りには殆ど明かりが無いのがさらに際立たせる。
「どうだ賢坊。」
「さすがだ両ちゃん。本当になんでも出来るんだな。」
「わしは多才だからな!」
孤児院に入りみんなでクリスマスパーティーを楽しむ。楽しむ時行達を両津と村瀬が見ている。
「俺達もあんな風に楽しくしていた時もあったな。」
「また出来るさ。それに、あの子達がいつもあんなに笑える時代にするのがわしらの仕事だ。」
「本当に両ちゃんは立派だよ。」
夜も遅くなり時行と両津は孤児院で寝ることにした。みんな、二階で寝ている。すると、物音が聞こえた。時行が起きる。まだ誰か起きているのかなと思い階段を降りる。壁の陰から覗くと知らない男が侵入していた。
「なんだここ?孤児院かよ。」
どうやら、空き巣のようだ。子供達が作った折り紙や積木を壊す。それに腹を立てた時行が出て来た。空き巣は時行を見ると安心してナイフを取り出した。
「坊主。金目のものはどこだ?金庫とかでもいい。どこにある?痛い目には会いたくないだろ。」
「子供達が作った物を壊したこと、謝ってください。」
「は?これ見て強気だな。」
空き巣が近付く。そこに村瀬が来た。時行の前に出る。村瀬を見た空き巣はビビっている。
「おいおい。この孤児院はヤクザが仕切っているんかよ。」
「半分正解だ。」
村瀬が空き巣を殴ろうとする。そこにサンダルが飛んできてナイフを弾き飛ばした。村瀬が振り返ると両津がいた。両津はすぐに空き巣を背負投げして捕まえた。
「ここを狙うか。手癖も運も悪い奴だ。」
空き巣を捕まえた両津を見て村瀬はため息をつく。
「折角彼にかっこいいところを見せようと思ったのによ。」
「村瀬。その拳は二度と悪いことに使うな。その拳は子供達を守るために使え。」
両津が中川を呼ぶ。村瀬は時行を見てしゃがむ。
「かっこ悪いところを見せてしまったな。」
「どこがかっこ悪い?お前は一度転んでもその足で立ち上がり前に進んでるじゃねぇか。かっこいいぞ。」
「はい。私も凄くかっこいいと思いました。」
時行の顔を見る。真っ直ぐな目だ。村瀬は自分もそんな目をしていた頃を思い出す。中川達が来て両津が空き巣を引き渡す。そこに子供達が起きて来た。
「どうしたの院長先生?」
「なんでもない。」
「わしが転んだ!」
村瀬と両津が誤魔化す。
「さぁ、早く寝ろ。夜更かしする子にはサンタさんは来ないぞ。」
「「「はぁ〜い。」」」
「大丈夫だ。サンタさんならわしが呼んでおくよ。」
「「「やったー!」」」
子供達が二階に上がって行く。時行も両津と村瀬を残して二階に上がった。両津と村瀬は外を見る。雪が降っていた。両津はしゃがみ壊れた積木や折り紙を拾う。
「直さんとな。」
「俺も手伝う。」
2人で直す。
「今年はいい聖夜になりそうだ。」
「来年もこんな聖夜を迎えたいな。」
「それはわしらに任せろ。」
2人は直しながら雪降る夜空を見上げる。月にサンタさんが乗るソリを引くトナカイが見えたような気がした。