ある日、両津達は千葉県にある大原部長の家に招かれていた。みんな、クリスマスパーティーに参加するためだ。大原部長の妻、良子が出迎えてくれた。
「いらっしゃい!待ってたわよ!」
「お邪魔します!」
良子がリビングへ連れて行く。そこには大原部長とその娘家族が待っていた。両津達は買ってきた食材や電飾を机の上に置く。すると、大原部長の娘、角田ひろみが時行に気付く。
「あら?もしかして、あなたが時行君?」
「は、はい!」
「話はお父さんから聞いてます。両津さんが凄く可愛い男の子を養子にしたって。」
時行が照れている。
「私がお父さんの娘、角田ひろみよ。」
「私がひろみさんの夫の英男です。」
「それでこの子が長男の大介でこの子が長女の桜よ。」
それぞれ自己紹介する。大介が時行と握手する。中川達がクリスマスツリーの飾りを大介達に頼む。その間に両津は料理を台所に持って行く。それを時行が手伝う。
「これでよしと…」
両津が置くと少し大きめの箱を見つけた。興味本位で開けて見る。そこにはショートケーキがあった。大原部長がこの時のために買ってきたもののようだ。
「美味しそうですね。」
時行が覗き込む。その時、置いてあった荷物に足をとられ時行が転けてしまった。その時に両津を掴んでしまう。両津も一緒に転けてしまうが2人とも怪我はないようだ。
「大丈夫か時行?」
「はい。私は大丈夫です。」
無事を確認して一安心した。しかし、2人は足元に落ちている箱を見て青褪める。恐る恐る開けるとケーキがグチャグチャになっていた。
「ど、どうしましょう…」
「誤魔化すぞ。」
「え?」
両津はケーキを見てどんなケーキか予想する。
「材料や見た目は普通のケーキのようだ。これなら今ある材料で作り直せる。」
両津は買ってきた材料を見て確信する。
「時行、わしがケーキを作っている間、なんとしても時間を繋げ。誰もここに入れるな。」
「わ、分かりました。」
時行はリビングに入る。既に装飾はかなり仕上がっていた。時行に気付いた麗子が声をかける。
「あら。時行君、両ちゃんは?」
「両さんなら!台所で料理してます!」
「両津が?」
大原部長が台所に行こうとするのを時行が止める。
「両さんがみんなを驚かせたいと誰も台所に入るなって言ってました!」
「そうなのか?」
大原部長は台所を見るも時行の発言を信じて装飾の手伝いをした。その頃、両津はケーキの生地を作っていた。スマホで記憶に残っているケーキを検索するも出てこない。
「どこで買ったケーキなんだ?とりあえず生クリームは元の奴で再利用すれば問題ないが…」
両津が見たケーキは形はシンプルな丸だからやりやすい。両津は型をとる器具を見つける。一方の時行は誰も台所に行かないように見張っている。すると、大介がゲームをしようとやってきた。
「わ、分かりました!」
大介と一緒にゲームする。しかし、テレビゲームでするFPSは初めての時行は苦戦する。そうしていると椎名が台所に向かってしまう。
「両津先輩!手伝いましょうか?」
「大丈夫だ!」
「そうだ!皆さんでゲームしませんか!?」
時行が提案する。大介も賛成する。
「じゃあ、人生ゲームがあるよ!」
「それで行きましょう!」
時行が全員を巻き込んで人生ゲームを始める。
「頼んだぞ時行…」
両津はケーキの生地を焼く。その間に崩れていた大原部長のケーキの生地を纏め別のケーキを作る。
「これで誤魔化すぞ。」
「両津!お前も来んか!?」
「いえ!わしはここで作ってます!」
「何を作ってるんですか?」
中川が聞く。
「ケーキだ!」
「ケーキならあるだろ?」
「わしもケーキを作ってみたくなったんですよ!」
両津が必死に誤魔化す。時行が大原部長達の気を引く。
「次は大原さんの番ですよ!」
「そ、そうだな。」
時行がチラチラ台所を見ながらゲームを進める。両津は生地が焼き上がるのを待っている。やっと焼き上がった。両津は急いで生地に生クリームを塗り、イチゴなどを乗せ記憶通りに形を整える。
「よし。これで一先ずなんとか誤魔化せるか。」
「両津!もう料理が来たぞ!」
「はい!」
大原部長に呼ばれて両津が飛び出る。既にローストチキンなどクリスマス定番の料理が並んでいた。
「では…クリスマスと中川の誕生日を祝って…乾杯!」
「「「乾杯〜!!」」」
みんなでグラスを持って乾杯する。久しぶりの乾杯だと両津が英男にジュースを注ぐ。椎名が中川の誕生日が今日と知り驚いていた。
「中川先輩ってクリスマスが誕生日なんですね。」
「ええ。」
「なんかプレゼント用意した方が良かったですよね?」
「気にするな。中川は欲しい物は全部自分で買うから。」
「ああ。」
椎名が納得してしまう。大介がジュースを溢してしまった。慌てて布巾を取りに麗子が台所に向かう。もしもを考え両津が時行にも行かせる。
「な、何か手伝いますよ!」
「大丈夫。ありがとう。」
麗子は台所に置いてあるケーキを見る。時行が麗子の背中を押してリビングに連れて行く。料理も粗方食べ終えた。そこで両津が立ち上がった。
「そうだ!実はわしが作ったケーキがあります!」
「両津が?ケーキなら…」
「そのケーキを見てわしも作りたくなったんですよ!なぁ時行!」
「は、はい!そうですね!あのケーキ、とても美味しそうでした!」
「そうか!」
大原部長が嬉しそうにしている。両津は早速自分が作ったケーキを持ってくる。チョコなどでコーティングしたロールケーキ風のクリスマスケーキだった。
「美味しそうですね!」
「だろ!」
早速みんなで食べてみる。
「本当に美味しいですね!」
「この酸味が絶妙に生クリームに合います!」
みんな美味しそうに食べてくれて両津と時行はホッとした。大原部長も美味しそうに食べている。次は自分の番だと大原部長が立ち上がった。
「実は今日のためにわしが作ったケーキをみんなに食べてもらおうと思ってな。」
中川達はおぉ〜と感嘆するも両津と時行はえ?という顔をしていた。
「まさか、あれって部長の手作り…」
(道理でどこを検索しても見つからないわけか。)
「わしのアレンジでケーキに隠し味を加えてみたんだ。」
(なにぃ〜!?)
両津は驚く。見た目だけを真似たため味見したらすぐにバレてしまう。そう考えた両津は必死にバレない方法を模索した。
(そうだ!)
すると、何か閃いたようだ。大原部長が台所に行く。すると、両津が時行を連れて台所に向かった。
「部長!わしと時行で持って行きますよ!」
「構わん。折角わしが作ったケーキだ。ひろみに手伝ってもらって一生懸命作ったんだ。最後までわしにさせてくれ。」
罪悪感が両津と時行を襲う。そんな大事なケーキをぐちゃぐちゃにしてしまった挙げ句誤魔化そうとしたのだ。無理もない。両津は必死に箱を大原部長から取ろうとする。
「部長!部長は座って!わしがやりますから!」
「なんかおかしいぞ両津。何か隠しているのか?」
「い、いえ!」
大原部長が箱を開ける。
「ケーキに変なところは…ん?フルーツの配置が変わって…」
「あぁ〜!」
両津はわざと転けて大原部長を巻き添えにした。倒れる音を聞きつけ中川達が来る。そこにはぐちゃぐちゃになってしまったケーキを見て項垂れる大原部長がいた。
「ケ、ケーキが…」
「すみません部長!こんなつもりじゃ…」
両津は必死に謝るも内心これでバレることはないだろうと確信していた。
「折角隠し味として生地にレモン果汁を混ぜたのに…」
「あれ?それって…」
涙ながらに語る大原部長の言葉に中川が反応する。
「さっき先輩のケーキを食べた時に感じましたよ。」
「私もよ。両ちゃんのケーキからレモンも風味がしたわ。」
両津と時行がドキッとする。ひろみが自分も味見した時と同じ味がしたと発言した。冷や汗の量が凄いことになる両津と時行。大原部長は両津を睨むと再び両津が作ったケーキを食べる。中川がぐちゃぐちゃになったケーキを試食する。
「確かによく味わってみるとレモンの風味がするぞ。」
「このケーキからはレモンの風味は感じられませんね。」
両津はそ〜と逃げる。時行も両津の後ろをついて行く。それを大原部長が止めた。
「両津。聞かせてもらうぞ。」
「そ、それは…」
「白状しましょう両さん。」
「バカ!」
両津が時行の口を抑えるももう遅い。全員が両津を睨む。
「両津。」
「部長!これは事故です!わざとじゃありません!」
「じゃあ、その時に言ったら良かったじゃないですか?」
椎名に言われて時行はそうだと思った。でも、時間は戻らない。
「お前達の仕業か。」
「あ、あの…すみませんでした!」
「落ち着いてください部長!」
「問答無用!」
両津と時行の悲鳴が大原家から響き渡る。そして…
「いやぁ、済まなかった。みんなに迷惑をかけたお詫びとしてわしから新しい料理を出そう。…両津の丸焼きと時行君ケーキだ。」
「部長!わしを焼いても美味しくありませんよ!」
「両さんに加担するんじゃなかったです…」
大原部長がニコニコしている。中川達はアハハハと呆れている。鉄柱に縛り付けられ焼かれる両津と全裸で生クリームやフルーツをトッピングされた時行がみんなの前に出されるのであった。