いつもの派出所
この日は大原部長は新葛飾署へ、中川と麗子はパトロールへ行っているため両津と時行の2人だけだった。時行が両津をジーと見る。さすがの両津も時行に見られた状態では仕事をサボるわけにもいかず真面目に取り組んでいる。そこに渚がやってきた。
「こ、こんにちは〜。」
「なんだ?」
「渚!」
そ〜っと派出所に入ってきた渚の手を引く。
「友達か。」
「はい!同じクラスの潮田渚です!」
「し、潮田渚です。」
「おぅ!わしは両津勘吉だ!」
お互いに自己紹介する。どうやら渚は時行が世話になっている両津が気になってきたみたいだ。渚も両津の仕事を見る。仕事と言っても今は資料を纏めているだけだ。それでも時行と渚はジーと見ている。
「両様〜!マリアが弁当を作ってきまし…」
そこに1人の婦警が来る。かなりの巨乳に時行と渚は顔を背ける。マリアは両津と時行、渚を交互に見ていた。
「もしかして…両様の子供!?」
「どこからその発想に至った。」
マリアが驚く。しかし、両津は冷静だった。
「だって噂で両様が子供を作ったと…」
マリアの発言に両津は飲んでいたお茶を吹く。
「ち、違うぞ!作ったわけじゃない!」
「噂は噂…そんなことないと思っていましたのに…」
「人の話を聞け!」
両津がマリアを落ち着かせる。
「子供と言っても養子にしただけだ。こっちがその養子の…」
「ほ、北条時行です!よろしくお願いします!」
「潮田渚です。時行君のクラスメイトです。」
「そうでしたの!良かったですわ〜!」
((ハ、ハイテンションな人だなぁ。))
ウッキウキのマリアが自己紹介する。
「はじめましてですわ!私、麻里愛と言いますわ!音読みでマ•リ•アとお呼びください。」
「「は、はい。」」
麻里愛、通称マリア。新葛飾署に所属している婦警で両津に惚れている数少ない女性でもある。料理をはじめ家事全般が得意だ。
そんな彼女の色気に2人は見蕩れている。特に豊満な胸からは目が離せない。
「お前ら、1つ言っておく。マリアは男だ。」
その言葉に2人は目を丸くする。両津を見た後マリアを見る。豊満な胸、美しいかみ、整った綺麗な顔、スラリとした腰、妖艶な雰囲気の太腿、どっこからどう見ても女性だ。
2人はマリアの顔を見る。両津の言っていることは嘘だと思っている。マリアは何も言わずウインクした。
そう。マリアは男である。生まれつき女性的な顔や声と厳しい母親による教育の結果、普通の女性よりも女性らしくなっていた。
「「えぇ〜!?」」
「元ですわ!」
「ああ、あの天国じじいがやりやがったからな。」
両津の言葉など入らない。2人は互いを観た後にまたマリアを見る。そして、また互いを見る。マリアほどではないが女性的な顔をしている。何故か相手が可愛く見える。2人は互いの顔を見て赤面した。
「おい。戻ってこい。変な世界に入ってるぞ。」
両津が2人を正気に戻す。2人はハッとして我に返る。マリアが両津に弁当を渡していた。両津も丁度腹が減ったと美味しそうに弁当を食べる。
「やっぱりマリアの唐揚げは上手いな。」
「良かったですわ!」
やっぱりどこから見ても女性だ。本当に男なのか?その疑問がまだまだ拭えない。その時、悲鳴が聞こえた。なんだと派出所を出るとバイクに乗った男が女性のカバンをひったくりしていた。
「あのバカ!よりにもよって今ここでひったくりか!」
両津が何故かひったくり犯を心配する。2人が両津発言に?を浮かべているとバイクの前にマリアが立った。2人が危ないと叫んだ瞬間、マリアは蹴り一発でひったくり犯を吹き飛ばした。粉々になるバイク、十数m飛ばされるひったくり犯、唖然と見る2人、ひったくり犯に合掌する両津。
「りょ、両さん…あれは…」
「マリアは元キックボクサーだ。」
「あの人がいたら鎌倉奪還できたかも…」
(マリアは南北朝でも通用するのか。)
キラキラした目でマリアを見る時行。ボソッ呟いた言葉に驚愕する両津。心配してひったくり犯を起こそうとする渚。ひったくられたカバンを女性に返すマリア。
とりあえず、ひったくり犯は呼んだ応援に連行してもらう。その前に病院に行くことになるのだが。一仕事終えやることがなくなった両津。チラッと横を見ると2人がマリアにいろんな質問をしていた。
「何故女性に?」
「憧れの人にプロポーズされたからですわ!」
「どうして警察官に?」
「両様に惚れたからですわ!」
「憧れの人ってもしかして…」
「両様と似ている素敵な方ですわ。」
マリアが質問に答えている。すると、カサカサと音がした。何の音だと探していると渚の足元をゴキブリが通過した。
「「うわぁ〜!」」
「きゃー!」
2人は両津に飛び乗りマリアが椅子を持ち上げ叩きつけた。ゴキブリはおろか床が抉れていた。そのパワーに2人は震える。
「マリアはわしが知っている中で1,2を争うほどの強者だ。」
「まるで亜也子みたいだ。」
「亜也子?亜也じゃなくて?」
「亜也子は私が鎌倉にいた頃の友達だ。」
両津から降りた時行が鎌倉にいた頃を思い出す。
「凄いぞ!亜也子は私と同い年だが背が凄く高くて素手で大人の首を捩じ切ることが出来るぞ!」
「殺しちゃってるよ!」
「さすがにそれは嘘ですわよね?」
(恐ろしいな南北朝。)
時行の発言に両津達はゾッとする。そこに麗子が帰ってくる。
「あらっ。マリアちゃん!」
「麗子さん!」
「来てたのね!」
楽しげに挨拶する2人。時行と渚はマリアと麗子を見比べる。やっぱり女性だ。元だとしても信じられない。
「どうしたの?」
「わしがマリアが元男だと言ったらこうだ。」
「なるほどね。」
麗子がマリアに肩を寄せて微笑む。2人は麗子のマリアの胸を見る。凝視する。両津も凝視していた。麗子は両津だけをチョップする。
「なんでわしだけ!?」
「目がやらしい。」
「あっ!もう帰る時間だ!」
我に返った渚が時計を見て慌てる。もう夕方だ。子供はそろそろ帰る時間だ。時行も超神田寿司に帰らないといけない。
「わしは自転車だから2人一緒は無理だ。」
「ごめんなさい。私も今日は車じゃないの。」
「なら、私が送ってさしあげますわ。」
マリアが提案する。時行と渚はありがたいとマリアを見ているが両津と麗子は目を点にして見ている。
「時行、渚。」
「「はい。」」
「気を付けろ。」
「「はい?」」
派出所から離れられない両津は2人に助言する。麗子も気不味そうに頷いている。どういうことか分からずマリアが運転する車の後部座席に座る。
「では、行きますわよ!」
「「え?」」
マリアが発進させる。その瞬間、猛スピードで爆走した。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「やっぱこうなるか。」
「相変わらずねマリアちゃん。」
叫びながら消えて行く2人を両津と麗子は見届けていた。