逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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荒れた学校に改革を

「わしが卑差志蛮高校に!?」

 

 ある日、派出所で両津が大原部長から聞かされる。

 

「そうだ。最近、未成年による迷惑行為が多発していてな。そのほとんどが卑差志蛮高校の生徒だった。そこで両津と纏君に卑差志蛮高校に行ってもらうことになった。」

「何故わしと纏が?」

「君達2人は直接卑差志蛮高校の生徒から被害を受けていたからだ。話が早く済むだろ。」

 

 大原部長に言われて両津は渋々了承した。纏と合流し卑差志蛮高校に向かう。その途中、時行が2人を見つけた。気になって跡をつける。

 

「まったく、面倒な事になった。」

「でも、これ以上、被害を出すわけにはいかないだろ。」

「そうだが…卑差志蛮も全員が不良ってわけではないようだ。」

 

 2人の会話から卑差志蛮高校に行くことが分かった。時行はバレないように追跡する。2人が卑差志蛮高校に到着した。すると、校門に男子生徒がいた。

 

「お前は?」

「お待ちしておりました。卑差志蛮高校生徒会長を務めます。足賀直利と申します。」

 

 礼儀正しくお辞儀する直利。

 

「両津勘吉だ。」

「擬宝珠纏。」

「よろしくお願いします。」

 

 直利が2人を案内する。

 

「その前に…この度はこちらの学生がご迷惑をかけたこと、誠に申し訳ありません。学校を代表して謝罪申し上げます。」

「やけに素直だな。」

 

 突然の謝罪に驚く両津。

 

「てっきり、責任を有耶無耶にすると思ってたぞ。」

「トップが責任をとれない組織は瓦解します。私はそのような愚図ではございません。」

 

 直利が再び案内する。その後ろを時行が追う。

 

「私も気になってましたのでいい機会です。」

 

 時行は周りをキョロキョロ見回し誰も居ないことを確認して学校に潜入した。両津は案内している直利に気になっていたことを聞く。

 

「おい。校長や理事長はどうした?」

「あんな無能を仲介する時間が無駄です。」

「学校のトップを無能扱いか。」

 

 両津がから笑いする。

 

「無能です。そもそもここが関東一荒れている学校と言われる原因の1つがトップが無能だからです。現実を見ない。対策をしない。責任をとらない。」

 

 直利の辛口評価が炸裂する。

 

「なので私が代わりのトップとしてここに君臨したまで。私がこの学校を改革します。その第一歩として男子校から共学に変えます。」

 

 直利のマニフェストに纏が質問する。

 

「待て!あんたなら知ってるだろ!ここの学生は他校の女子生徒に数々の問題を起こしているんだぞ!」

「まず1つがそこ。その理由として人間は無い物を欲しがる傾向がある。その結果、女子の居ないこの学校は他校に女子を求めるようになる。」

 

 直利の説明に一理ある。

 

「しかし、急に共学すると言っても女子が来るとは…」

「既に3名女子が在籍しています。」

「待て!それは…」

「私が選んだこの学校でもやっていける女子です。例え問題が起きたとしても我が校のみの問題で他校に迷惑がかかることはありません。」

 

 直利が説明していると女子の声が聞こえた。

 

「はい!もう一度!念じなさい!」

「涼宮の姉御…超能力者とか宇宙人とか未来人とかSF映画じゃないんですから。」

「御託はいいから!物浮かすか宇宙人と交信するか未来予知しなさい!」

「確かにここでやってイケそうな女子だな。」

 

 教室で何か怪しい儀式している女子を見て両津と纏は引いている。直利が生徒会室に連れて行く。そこには数人生徒がいた。その1人を見て両津と纏が嫌な顔をする。その先にいた斯波崎が2人に向かってニコニコで手を振った。

 

「久しぶりだね。」

「何が久しぶりだ。」

「あんたのせいでこっちは迷惑してんだぞ。」

「あれから渋谷先輩にゲンコツ食らったから帳消しということで。」

「「なるか!」」

 

 2人が叫ぶ。斯波崎の後ろで彼を睨んでいる男子生徒がその渋谷なのだろう。直利が生徒会長席に向かうと1人の女子高生が書類を見ていた。

 

「どうした黒神。」

「足賀直利生徒会長、貴殿に予算を削られた部からクレームが来ているぞ。一部の生徒だけを贔屓しているとな。」

「有能な奴、将来有望な奴を贔屓して何が悪い。自分の無能を棚に上げて文句を言うだけの輩など無視だ。そもそも何故自分が贔屓される側になろうとしないのかが疑問だ。」

「厳しい奴だな。」

 

 書類をパッと見て捨てた直利。直利は席に座ると両津と纏をソファに座るように促した。2人がソファに座ると斯波崎がお茶を出した。

 

「さて、話の前に…少年、入ってこい。」

 

 直利に言われて時行がヒョコッと出て来る。それに驚く両津と纏。時行は恥ずかしそうに両津の隣に座る。

 

「なんでお前がここにいるんだ?」

「興味本位…でしょうか。」

「久しぶりだね北条君。」

「そうですね。」

 

 斯波崎が時行にもニコニコで手を振る。時行も一応手を振り返す。

 

「まずはこれまでの数々の迷惑行為に対する処分だが…生徒への処罰はこちらで一任してもらいたい。」

「あんたが処罰すると?」

「そういうことだ。被害を受けた者には納得出来る額の提示、補償などをする予定だ。」

 

 直利が全面的に詫びる形で話はあっさりと終わった。確かに話を聞く限り謹慎やゲンコツなどの処罰はされているようだった。

 両津は話が終わるのならそれでいいと判断する。両津は話を変え直利が考えるマニフェストについで聞いた。

 

「あんたは学校を変えるつもりみたいだが具体的にはどうするつもりだ?」

「まずは共学にするに当たって名前も変える。これからは…寿志番高校にします。」

「名前まで変えるのか…」

「当たり前です。卑差志蛮なんて名前、受け入れ難い。」

「まぁ、分かるけど…」

「こういうのは根本的に変えなければならん。」

 

 そこに割り込んで入ってきた男子生徒。眼鏡を掛けた真面目そうな男だ。

 

「あんたは?」

「岩塔良範。卑差志蛮高校3年生徒会書記担当。」

 

 岩塔が自己紹介する。発言も佇まいも堅物な感じが出ている。両津達がそのオーラに息を飲む。岩塔が振り返り直利の方を向く。その瞬間、背中にプリントされていた美少女キャラが目に写った。それを見た両津達は吹く。

 

「会長、やはり…」

「待てぇ!」

 

 すかさず両津がツッコむ。時行は笑い過ぎてお腹が痛くなっている。しかし、岩塔は微動だにしない。

 

「ダウンタウンのガキ使かぁ!?なんだその背中!?」

「こいつは天才肌だが努力家で日本一のアイドルに上り詰めながらも俺達の全てを肯定し、常に優しく鼓舞してくれる次世代バーチャルアイドル白拍子天女鶴子ちゃんだ。」

「設定盛りすぎだろうがぁ!」

「そもそも制服の改造は校則違反だろ!」

 

 なんとか落ち着いた纏が指摘する。

 

「うちの校則には制服の改造を罰するものは無い。」

「なんでだよ!?」

「我が校の制服と分かれば個性をどれだけアピールしてもよいのだ。」

「確かに今まで会った生徒は全員制服を改造していたな。」

 

 両津が斯波崎を見る。制服の改造というよりは私服の上に制服を着ていた。それもアリなのかと聞くとアリだと答えた。

 

「寿志番高校に変えるに当たりこちらで作った校則を適応させる。」

 

 そう言って渋谷が両津達に校則が記載された書類を渡す。そこには一般的な校則に加え独自の校則や罰則が記載されていた。

 

「これ…ほとんど法律じゃねぇか。」

「そう。法律だ。学校とは1つの国家と同じだ。生徒という国民を生徒会という政治家が纏める。風紀委員会は警察組織、担任はそれぞれのクラスという市の長だ。」

「そして、あんたが総理大臣か?」

「そうだ。」

「校長や理事長は?」

「この学校では学校外からのクレームを受け付ける係としてだけにしている。」

 

 直利の改革には合理性があった。しかし、両津はどこか納得していない。

 

「確かにあんたの改革は凄い。が、こんなギチギチの校則だと生徒の気持ちを考えていないんじゃないか?」

「気持ち?そんな曖昧で計算出来ないものなど考慮していません。」

 

 直利がバッサリ言う。

 

「あんた、効率とかを優先して人の気持ちとか考えないタイプか?」

「当たり前です。気持ちなど十人十色。全ての人が納得させるなどほぼ不可能です。特に自分勝手で自己中な生徒が多い我が校ではあからさまです。」

 

 直利の考えは分かるがどこまでも効率性、合理性を追究するタイプが苦手な両津は頭を抱えていた。

 

「分からんでもないが…」

「多様性は言い換えれば混沌です。全てを受け入れると纏まりが無くなります。なので多少排除し纏める必要があるのです。」

「その考えは苦手です。」

 

 そこに時行が発言した。直利が反応する。

 

「苦手?」

「はい。確かにあなたの言っていることは理解できます。問題の対象も改革も凄いと思います。けど、どこまでも感情を排除した政策はいずれ瓦解すると思いますよ。」

 

 時行はこのどこまでも理詰めで物事を進める人を知っていた。雰囲気が完全にその人だ。時行はもしかしてと思い質問してみる。

 

「あの…話は変わりますが…直利さんはお兄さんがいたりしますか?」

「兄?…確か俺が産まれてすぐ離婚し去って行った父に引き取られたと母から聞いている。」

「お名前は?」

「知らん。覚えていない。」

 

 そこは違うんだと心の中で思う。話を戻す。

 

「少しは感情を考えた方がいいと思います。」

「必要ない。今の日本の法律がそれを証明している。消費税のように最初は文句を言っても今となっては慣れてきている。どれだけ文句がある校則でも時が経てば自然と受け入れるものなのだ。」

「やっぱりその考えは苦手です。」

「まぁ、時行。話はここまでだ。」

 

 両津が切り上げる。立ち上がり生徒会室から出ようとする。

 

「また来るかもしれん。」

「構いません。その際には事前に連絡をお願いします。」

「あぁ。それと、時行の言う通りたまには合理性を忘れて感情的になってみろ。違う世界が見えるぞ。」

 

 そう言って両津は退室し去って行く。扉が閉まると直利は渋谷に聞いた。

 

「儀季、俺には感情が必要か?」

「俺は今のあんたのままでいいとは思う。が、あの少年の言葉にも一理ある。」

「そうか。」

 

 直利は窓から帰る両津達を見ていた。

 

「時行、珍しいな。お前があんなこと言うとは。」

「私の知っている人と雰囲気が同じできたので。」

「どんな人だ?」

「…苦手でしたね。」

 

 時行がそっぽを向いて答えた。

 

「まぁ、今はあいつの手腕を拝見するだけだ。変わらなければまた行けばいい。」

「そうだな。」

「腹へった。何か食ってから帰ろう!」

「そうですね!」

 

 両津は時行と纏を連れて街を歩いて行くのであった。

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