「お、抑えてください両さん!」
「大丈夫だ!わしがしっかり掴んでいるぞ!」
ある日、両津は檸檬と一緒に公園で時行の自転車の練習をしていた。一応、補助輪は付けていも時行は怖く感じていた。隣で檸檬も自転車に乗って時行を励ます。
「頑張るのじゃ。檸檬も自転車に慣れるまで時間がかかったぞ。」
「は、はい!」
時行はフラフラしながらも自転車に乗る。時行が後ろを振り向く。離れたところに両津がいた。時行は目を丸くする。時行は前方不注意で滑り台にぶつかる。
「両さん!?」
「わしが居なくても出来るようになったじゃねぇか。」
「そのいきじゃ時行。」
檸檬も補助輪無しの自転車で頑張って漕いで来た。
「わしもこれぐらい乗れるようになったんじゃ。時行もすぐ乗れるようになるぞ。」
「ありがとうございます。」
時行はもう一度自転車に乗る。もちろん、南北朝に自転車など存在しない。自身の足か馬ぐらいしか使っていない。そのため、自分の足で漕がないと進まない自転車に悪戦苦闘していた。そこに弧太郎達が来る。
「おっ!時行が自転車に乗ってるっすよ!」
弧太郎達が来た。
「これは…凄い難しいです。」
「分かるっす!俺も進むだけで何回転けたことか。」
「最初は皆さんそんなものですよ。」
「わしは比較的簡単に乗りこなせたぞ。」
「さすがっすコーチ。」
両津は試しにといつも使っている自転車でウィリーを始めた。それを見て拍手する時行達。両津は調子に乗り手放し運転に鉄棒渡り、さらには爆速で滑り台からの大ジャンプを披露した。しかし、跳びすぎた結果、公園から出てしまいトラックに激突、吹き飛ばされた。
「両さーん!?」
「コーチィィィ!」
慌てて駆け寄る時行達はバカヤローと罵声を浴びせ立ち去るトラック。両津は痛てててと言いながら起き上がる。
「跳びすぎた。」
「あれでかすり傷だけって凄いよ両さん。」
「たまに両津さんは普通を逸脱しますね。」
亜也達が唖然とする。自転車もそんなに壊れてないようで再び両津が乗り方を教える。
「怖いと思うから足が動かなくなる。前向いて足をペダルから離さないようにして漕げば自然と前に進む。」
両津が手本を見せる。時行と檸檬も両津の後ろを自転車に悪戦苦闘しながらもついて行く。
「檸檬もいいんじゃないっすか?」
「ありがとうなのじゃ。」
「そう言えばその自転車見たことないような…」
「これはカンキチが作ってくれたのじゃ。」
檸檬も発言に弧太郎達がえぇ〜!?と驚く。
「コーチなんでも出来るんすね!」
「天才、多才。」
「料理も製作も出来るとは…」
「わしは50以上の資格と免許を持っているからな。基本、料理、修理、接合、解体、販売、漫才なんでも出来るぞ!」
両津が自転車を漕ぎながら笑う。余所見をした結果、砂場にタイヤをとられ前に顔面から落ちた。
「コーチ!」
「こ、このように余所見すると危ないからお前らは絶対に余所見運転はするなよ。」
「「「はぁ〜い!」」」
よろよろと立ち上がる両津を見て危険性を把握した弧太郎達。そこに時行が突っ込んで来た。檸檬はなんとか止まるも時行は両津の上に倒れた。
「これが連鎖事故だ。すぐに事故を報せたりしないとこうなる。」
「その通り!」
突然、男の声がした。どこだと探すと階段の上に鎧武者姿の男が立っていた。
「お前は…石頭鉄岩!」
両津が驚く。男の名は石頭鉄岩。新葛飾署交通勤務の警官で交通安全指導教官も務めている。石頭は両津のところに行く。ズシン、ズシンと重い音が歩く度になっている。
「だ、誰っすか?」
「鎌倉武士!」
「なんで鎌倉?」
「あいつは自称安全指導師範七段やら走る交通法規を名乗っている危ないおっさんだ。」
石頭が両津の前に立つ。
「なんであんたがここにいるんだ?」
「交通指導セミナーの帰りだ。お前が危険運転していると直感して来たのだ。」
「どんな直感だ。」
石頭は丁度いいと両津達を連れてどこかに移動した。そこは運転免許の取得のための教習所だった。そこには様々な道や信号機などがあった。
「ここで自転車における交通ルールを教えてやろう!」
「別にいいです。わしらもう知っているので。」
「甘い!」
石頭が刀を抜いて振り回す。それを見て逃げる両津達。興奮して避ける時行。
「いいか!自転車と言えど立派な車!交通ルールを知らなければ人を傷つける危険な物だ!お前にそれを再度教えてやろう!」
石頭を両津に自転車に乗るように指示する。両津も乗ろうとするも自転車にはデカいサイドミラーやシートベルト、異常なほどのブレーキがあった。
「おい。こんなゴチャゴチャした自転車は初めて見るぞ。」
「本来、全ての自転車はこうであるべきだ。」
「あってたまるか!」
両津は反論するもまた刀を振り回され仕方なく自転車に乗る。石頭が何重にもシートベルトを締める。両津がツッコむ。
「まず自転車は車と同じ扱いとなるため基本は車道を通るようにしろ!特に通行人が多い歩道で自転車など言語道断!」
「え?俺、よくやってるっすよ。」
「確かによく見ますね。」
「言語道断!」
石頭が弧太郎と渚に刀を振り下ろす。2人は慌てて逃げる。
「次!自転車の法定速度は時速15kmだ!」
「初めて知ったぞその交通ルール!」
「そもそも自転車の速度ってどうやって計るのですか?」
「体感!」
石頭が雪長の質問に刀を向けて答える。
「信号機は車と同じ方の指示に従え!」
「私、やってない。」
亜也がボソッと呟いた。
「近頃は自転車だけじゃなく電動キックボードやトライクといった車両も交通ルールを守らない奴が増えた。特に電動キックボードはまだ交通ルールが甘いところがある!」
石頭が怒っている。ヘトヘトになっている両津に刀を向けながら時行達に問題を出した。
「お前らに問題だ!今、両津は自転車における交通ルールで違反している!それが何か分かるか!?」
突然の問題に時行達は悩む。
「握り方が悪い!」
「違う!」
「サドルがちゃんと締まってない!」
「違う!」
「ちゃんと洗ってない。」
「何の話だ!?」
両津が静にツッコむ。その時、檸檬が気付いた。
「もしかして…ヘルメットをしていないじゃ?」
「正解だ!」
「え?ヘルメットって別にしなくても良かったはずっすよ。」
「昔はな!しかし、今はヘルメットは義務となっている!」
「努力義務だから強制ではないぞ。」
「その考えが甘い!」
石頭が両津の頭狙って刀を振った。両津は倒れながら避ける。
「交通ルールよりあんたが危ねえぞ!」
「ヘルメットはバイクやスクーターだけじゃない!自転車や電動キックボードでも着用せねばならん!なんなら全ての車両にヘルメット着用の義務をするべきだ!」
「面倒過ぎるだろ!」
両津がツッコむもまた刀を振り回される。
「もし、自転車に乗っている途中に車が来たらどうする!?」
「逃げます!」
「甘い!」
石頭が時行に刀を振り下ろす。それを紙一重で避ける時行。その顔は頬が紅潮しニヤけていた。
「時行なら本当に車避けそうっすね。」
「実際、走ってる車を避けたところを見たことがある。」
両津の発言に驚く弧太郎達。両津が時行と初めて会った時がそれだ。
「私が自転車で見本を見せてやる!」
石頭が自転車に乗る。時行達に交通ルールを教えながら運転している。しかし遅い。一般人の歩行速度よりほんのちょっと速いぐらい遅い。これなら歩いた方が速い。
「いいか!自転車は人を轢くが車には轢かれる!常に周り全体を見渡せるスピードで走るんだ!」
「あれは走るとは言わないのでは?」
「あのスピードで転けないのが不思議。」
さすがにイライラしてくる。両津が石頭の背中をおもいっきり押した。
「何をする!」
「さっさと行けぇ!」
両津が凄まじいスピードで走らせる。そのスピードは凄まじかった。それを見て興奮する時行達。
「凄い!」
「速いっすよコーチ!」
「速すぎないですか?」
「やり過ぎじゃカンキチ。」
とうとう車と変わらないスピードにまで達した。その瞬間、石頭の様子が変わった。
「しまった!こいつは時速60kmを超えると性格が変わるんだった!」
「「「えぇ~!?」」」
「まさか、自転車でも性格が変わるとは…」
もう石頭は止まらない。爆走する自転車は教習所をめちゃくちゃにしていった。しばらくして元に戻った石頭が教習所を見る。信号機は倒れ地面は抉れ惨状になっていた。
「これは?…どこに行く両津!」
「は~い。みんな、帰りますよ~。」
「自転車って怖いのですね。」
「時行よ。あれはあの人が特殊なだけじゃ。」
石頭の忠告を無視して去ろうとする両津達であった。