逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行の年始め諏訪巡り

 時行が起きる。カーテンを開けて外を見た。一面銀世界だった。そこに両津が起きて時行を見た。

 

「明けましておめでとう時行。」

「え、おはようございます。」

「違う。新年の挨拶は新年明けましておめでとうだ。」

「そうなのですね。」

 

 時行は両津と同じように正座する。

 

「新年明けましておめでとうございます。」

「おめでとう。」

 

 そこに中川達が入って来た。

 

「先輩、時行君。新年明けましておめでとうございます。」

「おめでとう!」

 

 時行がみんなにも新年の挨拶をする。すると、中川が時行にお年玉を渡した。

 

「これは?」

「正月の恒例行事の1つ、お年玉よ。親戚の子供達に新年を祝うために贈るの。」

 

 麗子が説明する。檸檬も既に貰っているようだ。時行も貰う。大原部長が両津を見る。

 

「両津。お前からもお年玉をやらんか。」

「分かってますよ。」

 

 そう言って両津は時行と檸檬にお年玉をあげる。時行も檸檬も嬉しそうだ。

 

「ありがとうございます!」

「ありがとうなのじゃ!」

「じゃあ、支度して出るぞ。」

 

 着替えを済ませホテルを出る。雪はもう降ってないようだがそれでも寒い。

 

「う~。こんなに寒くなるとは。」

「久しぶりの寒波でしたね。」

「ここ数年で一番寒いみたいですね。」

 

 車に乗り秋宮に向かっていた。

 

「ここは昨日行った本宮がある上社とは違い諏訪湖を挟んだ北側にある下社に位置しているんですよ。」

「そうなんですね。」

 

 椎名が中川の説明を聞いている。諏訪湖を見ると一面凍っていた。スケートが出来そうだ。

 

「滑ってみたいな。」

「はしゃぐな両津。」

(久しぶりに諏訪湖に来れました。)

 

 諏訪湖を見て懐かしむ時行。秋宮に到着した。時行が最初に車から降りる。まだ朝早くだがそこそこ人がいた。

 

「何故上社と下社がこんなに離れているんですか?」

「もともと別々の神社であった上諏訪神社と下諏訪神社が明治初年に国の管理となり一つの神社となった名残とされています。」

 

 椎名の質問に中川が答える。

 

「諏訪湖南岸に位置する上社にはかつて大祝(おおほうり)と呼ばれる最高位の神官と、そのもとに置かれた5人の神職が奉仕していました。諏訪氏から出た上社の大祝は古くは祭神・諏訪明神の生ける神体とされ、現人神として崇敬されたんですよ。」

(頼重殿だ!)

 

 中川の説明に出た諏訪と現人神を聞いてすぐに諏訪頼重を思い出す時行。

 

「それに加えて上社の古い神事や祭祀では長野県を中心に東日本全域に分布していたミシャグジ信仰が盛んだったのよ。」

(雫だ!)

 

 麗子のミシャグジ信仰という単語に時行が雫を思い出す。

 

「それと水の神・風の神とされたことから諏訪大社の神を蛇、あるいは龍とみなす信仰は昔から伝わっていて、諏訪の神が蛇または龍として登場する伝承や民話は数多く残っているんだよ。」

 

 夏春都も説明してくれた。博識な3人に椎名は感嘆している。時行はあの時、本当に雨を晴らした諏訪頼重は凄かったのだなと思っている。

 

「そんなに凄い神社だったんだ。」

「凄い神社なんです。」

「なんで時行が誇らしげに?」

 

 胸を張っている時行に纒がツッコむ。諏訪頼重が褒められているようで誇らしいのだろう。両津がまたおみくじを引いていた。今度こそ大吉を狙うつもりだ。しかし、出たのはまた大凶だった。

 

「連続で大凶はさすがですよ両津先輩。」

「ある意味運がいいぞ両津!」

「なんで…なんでこうなる~!」

 

 両津は悔しがっている。諏訪神社を満喫していと中川が両津と時行に声をかけた。

 

「今から行ってみたいところがあるんですがいかがですか?」

「わしは構わんぞ。」

「私も大丈夫です。」

 

 中川が両津と時行を車に乗せて走る。着いた場所は何まない山の前だった。

 

「ここからは歩きになります。」

「どこに連れて行こうってんだ?」

「それは自分の目で確認してください。」

 

 しばらく歩いているとちょこんと建っている小さなお墓ぎあった。両津と時行が誰の墓なのか気になっている。両津はもしかしてと思い中川に聞く。

 

「中川、この墓…」

「ええ。北条時行の墓。君のお墓です時行君。」

「私の…お墓…」

 

 時行は唖然としていた。本来、北条時行は室町時代に死んだ人物。普通ならお墓があってもおかしくない。しかし、時行は不思議な感覚に陥っていた。本来なら絶対見るはずのない自分のお墓。それを見て時行は自然とお参りした。

 

「…不思議ですね。自分のお墓にお参りなんて。」

「普通なら絶対にありえんことだからな。」

「時行君のお墓がここにある理由は諸説あります。諏訪の関係者が時行を忍び建立した説や足利尊氏が北条時行を労りここに建立した説など様々です。」

 

 中川ぎ話してくれた。

 

「本来、ここは私有地なので来ることは出来ませんが所有者に特別に許可をいただきました。」

「ありがとうございます。」

 

 時行は立ち上がる。自分の縁の地が今じゃこんな風になっているなんてあの頃は思っていなかった。時行は諏訪大社にいた頃を懐かしんでいた。その時、両津のスマホが鳴った。

 

「部長?どうしたんですか?」

『両津!諏訪市にある諏訪宝石店に2人組の強盗が押し入り8億円相当の宝石が強奪された!今こっちに逃走しているようだ!わしらも至急現地へ向かう!両津!お前達も来い!』

 

 スマホが切れる。両津もキレる。

 

「なんで新年早々強盗なんてするんだ馬鹿野郎!」

 

 両津達は車に乗り込み至急現場に向かった。

 一方、宝石強盗犯達はスノーモービルに乗って逃走していた。パトカーが追いかけるま路面が凍っている上にまだ雪が積もっているため滑ったりしてしまい追いかけることが出来なかった。

 

「ざまぁねぇぜ!」

「気が緩んでる今が一番強盗しやすいぜ。」

 

 強盗犯達が逃げていると前にパトカーが停まっていた。大原部長達も既に合流していようだ。それを見た強盗犯達は脇道にそれて森の中へと入って行った。

 

「逃げられた!」

「大丈夫よ。あっちには…」

 

 強盗犯達が逃げる先には椎名がいた。強盗犯達を視認すると眼鏡を外した。

 

「かかってこいやぁ!」

「なんだあいつ!?」

 

 椎名は近くの木を蹴りで薙ぎ倒す。それを強盗犯達はなんとか避けるも1人が木にぶつかり倒れた。椎名は残りを追いかけようとするも雪に足をとられ動けない。

 

「くそ!動きにくい!」

 

 残りの強盗犯が諏訪湖に入った。それを両津達が見つけた。

 

「スノーモービルか!ここからじゃ間に合わんぞ!」

「私が行きます!」

「時行!」

 

 時行が車から飛び出す。両津も追いかける。いくら走っても強盗犯には追い付かない。その時、時行は凍った諏訪湖の表面を叩いた。その瞬間、氷が割れ次々とせり上がり筋になった。そのまま強盗犯に巨大な氷が命中する。

 

「なぁにぃ~!?」

 

 強盗犯は吹き飛ばされ強奪した宝石が散らばる。その様子を見ていた両津達は驚愕していた。

 

「あれは、御神渡りです!」

「なんだそれ?」

 

 両津が聞く。

 

「諏訪湖の厳冬期特有の自然現象です。氷の膨張と収縮を繰り返すことで湖面に氷の筋が形成される現象です。湖面に雪が少ないことや朝晩と日中の気温差が大きいことなどの地理的要因があります。」

「それを時行が起こしたのか?」

 

 強盗犯を捕まえに来た大原部長達も驚いていた。近年、御神渡りはほとんど見られない現象になっているらしい。それを起こした時行の周りに散った氷が降り注ぎ時行を輝かせる。その姿が一瞬、神様に見えた。

 

(頼重殿。私もあなたと同じようになれたのでしょうか?)

 

 時行は空を見上げる。事件は終息しいつも通りの日常に戻る。

 

「時行。お前、あんなことが出来たのか?」

「頼重殿がやっていたのを真似してみただけです。」

 

 時行が恥ずかしそうに話す。

 

「私の頃は御神渡りは頼重殿が起こす神秘的な現象でした。」

「科学が発達した今では神様がやってきたことの多くは自然現象として解明されています。」

「頼重殿もそう言っていました。」

 

 両津や中川達と一緒に飲む。

 

「何の話をしておるのじゃ?」

「ちょっとな。」

 

 やってきた檸檬の質問に両津が誤魔化す。

 

「今日は飲め!楽しめ!これからもこんな日々が続くんだ!人生楽しんだ者勝ちだ!」

 

 両津が檸檬にジュースを注ぐ。

 

「すっかり酔っているわね両ちゃん。」

「今年も大変な1年になりそうだ。」

「毎年騒がしいけどね。」

 

 みんなでワイワイ宴会を楽しむ。

 

(頼重殿、逃者党のみんな…いつか、私もそちらに行きますので

もう少しだけここに居させてください。)

 

 時行は窓から見える空を眺めながら両津達と一緒に新年を楽しむのであった。

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