ある日、時行が派出所に行くも両津はいなかった。両津を待とうと座っていると奥から麗子の叫び声が聞こえた。慌てて行く時行。
「どうかされました!?」
「ゴキブリ!」
麗子が指差す先にはゴキブリがいた。時行は気にせず素早く逃げるゴキブリを捕まえた。素手で捕まえた時行に麗子が驚く。
「凄いわね。」
「いつも飛んでくる矢などを見て躱しているので。」
「そこじゃないわ。」
確かに時行が言っていたことも凄いが麗子が指摘したところは違っていた。そこに椎名が戻って来た。時行と麗子が何かしているのかなと覗き込むと時行がゴキブリを持っていたので驚いて後退りをした。
「と、時行様!それ…」
「はい!ゴキブリです!」
「も、もしかして食べるんですか?」
「食べませんよ!」
時行はそう言ってゴキブリを逃がした。椎名は新聞紙を丸めて構えている。
「優しいですね時行様。」
「命あるものです。無駄に奪いたくありません。」
時行が笑う。その様子を逃がしてもらったゴキブリは見ていた。
翌日、時行が起きると枕元にポテトチップスが置いてあった。時行は不思議に思いながらもいただく。纒や檸檬に聞いてみるも誰も置いた覚えはないと言う。
「不思議っすね。」
「まるで鶴の恩返しですね。」
時行が気になった鶴の恩返しを雪長に聞く。鶴の恩返しとは助けられた鶴が美しい女性に化けて恩人のために働くが恩人にバレると去ってしまうという昔話だ。
「へぇ。そんなお話があるのですね。」
「多分、超神田寿司の誰かさんが置いてくれたのでしょう。」
そんな話をした日の帰り。時行と檸檬が帰っていると後ろに停まっていたバンから2人組の男が時行を見ていた。
「あの2人か?」
「そうだ。老舗有名店超神田寿司の看板兄妹だ。誘拐すれば数億はいけるぞ。」
2人は笑っている。覆面マスクをとって被る。すると、違和感に気付いた。覆面マスクの中に何かいる。とって確認するとゴキブリが入っていた。
「「ぎゃあぁぁぁ!」」
2人が叫ぶ。ゴキブリを振り払う。どこから来たとバンの中を見回すと車内がゴキブリだらけになっていた。バンから2人の男の叫び声がしたが時行と檸檬には聞こえていなかった。
超神田寿司に帰る時行と檸檬。帰ると夏春都達が何やら話をしていた。気になった檸檬が夏春都に聞く。
「どうしたのじゃ?」
「檸檬かい。時行の部屋に妙な物があってね。」
「妙な物?」
夏春都は2人におにぎりを見せる。コンビニで売っている普通のおにぎりだ。確かにいつの間にか時行の部屋にあるのはおかしいが何が変なのかを聞く。すると、大量のおにぎりを持ってきた。
「いつの間にかこんなに送られていたよ。」
「えぇ…」
唖然とする時行達。それからも不思議な事件は続く。忘れていたと思っていた筆箱がいつの間にか学校にあったり起きたらお菓子があったり部屋が掃除する前に綺麗になったりしていた。
「確かに不思議ですね。」
「世にも奇妙な物語ですね。」
そのことを派出所で両津達に話していた。両津も中川も不思議だと言っている。心当たりを聞くも2人とも知らないと言う。試しに時行の部屋に隠しカメラを仕掛ける。
「これで犯人が分かるぞ。」
時行は安心して寝る。翌日、時行が起きると煎餅があった。時行はすぐに隠しカメラを確認する。両津から映像はスマホに送られると聞いていたためスマホを見る。
「一体誰でしょう?」
見てみる。最初は何事もなかったが突然映像が乱れ消えた。時行が首を傾げていると映像が点いた。しかし、その時には既に時行の枕元には既に煎餅があった。
「えぇ〜。」
時行は困惑していた。本当に怪奇現象が起きたのかと言いたくなるぐらいだ。実はあの時、ゴキブリ達は両津達が隠しカメラを着けているところを見ていて煎餅を持ってくる際コードを抜いていた。そして、煎餅を置いた後にコードを差したのだ。さすがの時行もゴキブリがこんなことが出来るとは思っていないため真相は分からなかった。時行は怖くなってきた。
「確かにこれは怖いな。」
「不気味ですね。」
両津と中川は映像を見て唖然としている。時行の後ろにいる纏や檸檬も怖く感じていた。
「寝ずの番で見張ってみるか?」
「でしたら両さんの部屋で寝泊まりさせてください!」
時行がお願いする。両津は二つ返事でOKした。早速、時行は両津の部屋に行く。その日はなんともなかった。派出所では時行の身の回りで起こる怪奇現象について話していた。
「誰かが置いてくれたとかなら分かりますが…」
「いつの間にか部屋が綺麗になったとか大量のおにぎりとかはおかしいですよね?」
「そのことだが最近、わしが買いだめしていたおにぎりが消えていた。」
もしかしてと思い時行が撮ったおにぎりの写真を見せる。
「それだ!わしが買ったのはそのおにぎりだ!」
「さらに謎が増えましたね。」
「両津先輩の部屋からおにぎりを盗み時行様の部屋に持って来た。」
「ますます分からん。それでそのおにぎりは?」
「纒さん達と一緒に食べました。」
両津が愕然とする。時行が謝る。
「いや、悪いのはわしからおにぎりを盗んだ奴だ。絶対見つけてやる!」
両津は怒り狂っていた。時行は先に帰る。相変わらず汚い部屋に呆れている。早速、掃除を始める。すると、気配を感じた。振り返るも誰もない。しかし、家電やタンスの裏にはゴキブリが所狭しと張り付いていた。そこに両津が帰ってきた。
「どうだ時行?」
「汚いです。」
「お前もマリアも居ないからな。」
さすがに時行にやらせるわけにもいかないので両津も手伝う。時行が纏めたごみ袋を出しに行く。その間に時行が服を畳んだりした。その時にも気配を感じた。
「やっぱり誰かいます?」
時行が振り向くとゴキブリ達は時行の後ろに回り込んだ。気のせいかなと思う時行。カサカサと音がする。時行は周りを警戒しながらゴキブリ達が隠れた雑誌を拾う。すると、雑誌からカサカサと音が聞こえた。時行が雑誌を開けるとゴキブリ達がいた。時行は驚いてしりもちをつく。
「あなた達でしたか!」
時行が驚いているとこちらに近付く足音が聞こえた。両津が帰ってきたのだ。時行は慌てて窓を開けてゴキブリ達を逃がす。しかし、全部は無理だった。急いで逃げ遅れたゴキブリ達を隠す。
「戻ったぞ時行。」
「お、おかえりなさいませ!」
両津は様子がおかしい時行を怪しんだ。
「なんで窓が開いてるんだ?」
「か、換気です!」
「なんか物の位置が変わってるな。」
「掃除しました!」
両津が怪しむ。時行はごみ袋をまた出してほしいと両津に言って部屋から出した。
「ふぅ~。」
時行は逃げ遅れたゴキブリ達を逃がす。しかし、それを両津が見ていた。時行は両津の気配を感じ後ろを振り向く。冷や汗が止まらない。
「そういうことか。」
両津は窓を閉めバルサンを焚こうとした。さらに、マシンガンも装備する。
「いいか時行。こいつらは害虫だ。野放しにしてはいかん。」
「でも、生きてますよ。」
「問答無用!」
両津がマシンガンを撃つ。ゴキブリ達は避けながら天井に移動すると『我ら逃若党』と自分達の体を使って書いた。
「何が逃若党だ!」
「何故私の?」
「上等だ!てめぇら全員バルサンで燻してやる!」
両津がバルサンにお湯を入れる。そこにゴキブリ達が突撃した。両津がマシンガンを撃つと編隊を組み避けながら攻撃を仕掛けた。
「てめぇら戦闘機みたいなことしやがって!わしは怪獣か!」
両津が暴れる。時行は逃げようとするもいつの間にかドアや窓にガムテープが貼られていて逃げれない。バルサンの煙が部屋中に立ち込める。時行は近くにいたゴキブリ達だけでも守ろうと覆い被さった。
翌日、武装した両津が派出所にいた。額には『絶殺!ゴキブリ!』と書かれたハチマキが巻いてある。
「またゴキブリですか?」
「そうだ。時行におにぎりやお菓子をやってたのもゴキブリだ。あいつら、人並みの思考力を持ってるぞ。いずれ人間に変わって支配するかもしれんぞ。」
「嫌だ!そんな未来想像したくない!」
椎名が耳を抑える。
「そもそも時行がゴキブリを逃がそうとするのが間違いだ!」
両津は時行を叱る。時行はショボンとしていた。それをゴキブリ達が隠れながら見ている。その夜、武装した状態で寝ている両津のところにゴキブリ達が来た。静かにガス線を咬み切り器用にライフルに細工した。そのまま部屋から出て行く。ガスが充満した頃、細工したライフルが暴発し両津の部屋が大爆発した。
翌日…
「さすがの先輩も入院でしたか。」
「あんだけ武器持ってたらそうなるわよ。」
「時行様、それは?」
「さぁ?」
両津が全治1ヶ月の大怪我を負ったという見出しを見る中川達。汚い字で『ありがとう』と書かれた紙を見て不思議に思う時行達であった。