「広い!」
時行達は帆船に乗っていた。弧太郎達や纏達も一緒だ。船長になった両津が帆船を操縦している。
「冬休みに南の島なんて贅沢っすね!」
「だろ!普通の人生じゃまず味わえない体験が出来るぞ!」
両津が笑う。天気は快晴。波も静か。風も強すぎず弱すぎない絶妙な強さ。帆船で行くにはもってこいだ。
「帆船に乗るの初めてなんだ!」
「そうか!帆船はいいぞ!最近はモーターやスクリューで風が無くてもどこにでも行ける船が主流だが昔、コロンブスやマゼランが航海した時代は帆船しかなかった。船乗り達は風向きや星の位置から今いる場所を予測したり航海していた。」
両津が教える。なんでも知っている両津に渚が関心を持っていた。
「纏!ちゃんとサーフボードは持ってきただろうなぁ!?」
「もちろんだよ!」
「コーチ!サーフィン出来るんすか!?」
「出来るぞ!なんならわしが教えてやろう!」
弧太郎達が喜んでいる。もうすぐ目的地の島が見えてくる。そこには既に先客がいた。みんな、サーファーのようだ。中心にいる金髪の男が両津を呼ぶ。
「よぉ、ジョニー!」
帆船を停めジョニーに会いに行く両津。纏がジョニーを見て怪訝な顔をする。
「どうされたのですか?」
「あの人、普段は真面目な大学教授なんだ。何度聞いても信じられないけど。」
「へぇ。」
纏が時行達に本名は有栖川慧二郎で有名な大学で教授をしていて新葛飾署の有栖川京華の父親だと耳打ちした。弧太郎達は半分冗談だと思っている。その有栖川もといジョニーは両津達を歓迎した。
「今日はいい波が来てるぜ!」
「おぉ!楽しみだ!」
早速、水着に着替えて遊び始める。時行達は広く青い海を見て唸る。
「凄ーい!」
「わしらから離れるなよ!」
「「はぁーい!」」
ビーチバレーや水泳で遊ぶ。両津は高い波が来たと言って沖に行く。すると、大波がきた。その中を両津がサーフィンする。カールする波の中を突き進む両津。それを見た時行達は拍手した。
「凄いです両さん!」
「さすがコーチ!」
「だろ!」
両津が笑いながら出てくる。すると、サーファー仲間が歓声をあげた。なんだと思って見るとジョニーがさらに高い波な中を突き進んでいた。
「さすがジョニー。」
崩れる波の中から出てくるジョニー。
「Hey!!!どうだいボーイ&ガール!?」
「凄いっす!」
「カッコいい!」
弧太郎達に褒められ意気揚々としているジョニー。
「俺達もサーフィンやってみたいっす!」
「じゃあ教えてやろう!」
両津達が弧太郎達にサーフィンを教える。弧太郎達は苦戦しているも時行はあっさりサーフボードを乗りこなしていた。そらを見て呆然とする弧太郎達。
「時行ってサーフィン出来るっすか?」
「バランス感覚はずば抜けているな。」
時行の次に乗りこなせそうなのは渚だ。フラフラしながらもサーフボードの上でバランスをとっている。
「む、難しい。」
「最初はそんなものだ。」
「彼が特別凄いだけさ。」
ジョニーも時行を褒めている。砂浜でお城を作っている檸檬と静も時行達を見ていた。すると、また大波がきた。それに乗る時行。両津も時行と一緒に波に乗る。
「凄いのぉ。」
「うん。時行はなんでも出来る。」
波から戻って来る時行にやってくる弧太郎達。
「すげぇっす!時行サーフィンやったことあるっすか!?」
「え、え~と…似たようなことなら。」
照れている時行。
「南北朝にサーフィンなんてあったのか?」
「サーフィンという言葉はありませんでしたが荒れ狂う海の中を盾で波乗りしたことならあります。」
「南北朝どうなってんだ。」
両津が時行の話を聞くとえぇ~という顔をした。そこにサーファー仲間達がくる。
「バーベキューの準備出来たぞー!」
「バーベキュー!」
「食べたい!」
みんなで向かう。海で獲れた魚や貝などを焼く。
「旨いっす!」
「ホントだ!美味しい!」
海の幸をいただく。
「でも大丈夫なのですか?勝手に獲ったら…」
「大丈夫だ!この島の所有者とジョニーは友人同士でな。許可は既にとっている。」
雪長の質問に答える両津。両津は新しく獲れた魚を捌いて刺身にする。これも好評だ。
「やっぱり本職の方が作る刺身は美味しいですね。」
「本職は警察官なんだがな。」
両津が笑う。お腹いっぱいになったところでまた遊ぶ。弧太郎達は纏も加えてサーフィンの練習を再開する。少しずつだがサーフボードの上でバランスをとることができた。
「上手いじゃないか!」
「ほ、ホントっすか!?」
弧太郎がやったとガッツポーズするとバランスを崩して海に落ちた。
「気を抜くとそうなる。」
「うっす!」
サーフボードにしがみつく弧太郎。ジョニーは既にサーフィンの高難易度技をいくつも決めていた。時行達は拍手していた。
「凄いですね!」
「ジョニーは1年の半分を海で泳いでるからな。もう半魚人よ!」
「最後は余計だ。」
笑いながら説明する両津にジョニーがサーフボードに乗ったまま突撃した。両津は目が飛び出し吹き飛ばされる。両津が頭を抑えながら起き上がる。
「やりすぎだろ!」
「お前なら問題無い。」
そこからもいっぱい遊んでいっぱい食べて夜になれば星空を見上げた。
「綺麗!」
「雲1つない南の空だ。いろんな星が見放題よ。」
「綺麗じゃの。」
檸檬と纏も魅入っている。時行も南北朝ではよく見れなかった夜空に浮かぶ満天の星を見て感動していた。言葉が出ない。みんな、夜空を堪能して就寝した。
翌日も時行達は目一杯楽しんだ。サーフィンも波にはまだ乗れないがサーフボードには乗れるようになった。昼には素潜りして魚や貝を獲る。
「昨日も美味しかったすけど自分で獲るともっと美味しいっす!」
「だろ!狩りの醍醐味はここだ。自分で苦労した分、美味くなる。」
みんなでバーベキューを楽しむ。午後も昨日と同じように遊んでいる。すると、両津とジョニーが空を見て眉をひそめた。
「おい。」
「まずいな。」
両津とジョニーはサーファー仲間に指示を出すと時行達のところへと走っていった。
「お前ら!遊びは中止!コテージに戻るぞ!」
「えぇー!」
「もっと遊びたい!」
「おそらく台風が来る。」
両津達は時行達を連れて戻る。そこにはコテージを分解しているサーファー仲間達がいた。
「何しているんすか?」
「コテージをあの木に移動させるんだよ。」
そう言って大きな木を指差した。
「なんでですか?」
「このままだとコテージが台風に吹き飛ばされる可能性がある。あの木は防風林の役割をはたしてくれるんだよ。」
「ツリーハウスならもし島に海水が来ても安心だしな。」
「お前らも手伝え!」
時行達は両津達と一緒にコテージの壁を運ぶ。木に着くと人力で持ち上げ木にコテージを組み立てていく。人数もいるためあっという間にツリーハウスが完成した。そこに避難する時行達。しばらくすると台風が直撃した。ガタガタと鳴りながら揺れるコテージ。亜矢達は頭を抑え姿勢を低くしている。
「カンキチ。かなり大きいぞ。」
「大丈夫だ。これなら壊れることはない。」
纏が外を見て不安に思っているも両津は動じてない。
「お前ら、何かあったらわしに言え。勘違いでも何でもいい。本当に勘違いならわしが笑うだけだ。」
「は、はい。」
台風はしばらくして通過していった。両津達が外に出る。台風一過の快晴だった。
「いい天気だ!」
「島もそんなに被害はないようだし。」
「続きいくか!」
台風が過ぎいつものように遊び始める。そこからは何事もなく冬休みを過ごすことが出来た。
後日…
『…大学教授の有栖川慧二郎さんにお越しいただきました。』
『よろしくお願いいたします。』
「え!?あの人がジョニーさんなのですか!?」
「そうだ。別人と思った方がいい。」
テレビのワイドショーに出ている有栖川を見て驚く時行達。実際、本当に別人だからと付け加える両津。纏が言っていたことが本当なんだと驚愕している時行達であった。