急いで顕家の元へと向かう。到着するとあの顕家がボロボロになっていた。3mはあろうかという巨体の大男が大太刀でトドメをさそうとしている。そこに弧次郎達がいき顕家を助けた。
「あれが土岐頼遠。バケモノじゃねぇか。」
両津は避難する顕家の前に立つ。土岐は顕家を見た後、再び進軍した。顕家の仲間達が立ち向かうもなんと土岐は仲間を大太刀で拾い上げるとブンブン回して投げ飛ばした。両津は避けるも肉片や金具が飛び散る。
「なんだあれ!?仲間弾にするとか馬鹿かあいつ!」
両津は死んだ武士から刀をもらうと土岐に向かって走った。変わった形の刀を持った武将が挑むも一蹴される。後ろからもう1人が攻撃するも全然効いていない。土岐は仲間を掴んで投げる。また大太刀で仲間を拾い上げブンブン回す。そこに両津が石を投げた。石は土岐の手に命中し仲間は飛んでいく。そこに時行と弧次郎が来た。
「ギリギリまで近付いて視界を塞ぐぞ!」
「目障りだ。」
土岐と戦うつもりらしい。土岐は仲間の武士を向かわせる。そこに両津が来て馬に飛び乗り引きずり落とした。
「もらうぞ!」
両津は土岐から逃げる時行と弧次郎のところへと向かう。
「囃せ囃せ皆の衆!!これより北条時行がお逃げだぞ!!」
「楽しそうだなあいつら。」
土岐が大太刀で時行と弧次郎を攻撃する。2人ともなんとか避ける。弧次郎は必死だが時行は涼しい顔をしていた。
土 羅 南
岐 刹 北
鬼 朝
頼 鬼
遠 ご
っ
こ
「さすが時行。あれを楽しんでるか。」
両津すらビビってしまう土岐に時行は楽しそうに逃げた。拾って投げる隙を与えてはいけない。土岐の周りにいる雑兵を蹴散らす。弧次郎が土岐の顔に攻撃するも固い仮面にはヒビ1つ入っていなかった。土岐の攻撃を弧次郎は避けた。
「あれはもう人間って括りにしたらダメだろ。」
両津は左近寺やボルボ、マリアがいても対抗出来るか怪しい土岐に突撃する。刀で足を攻撃するも効いていない。土岐は両津を睨む。
「目障りだ。」
土岐は大太刀を振り下ろす。両津は避けて時行達のところに行く。すると、土岐は近くにいた仲間達を大太刀で一刀両断した。
「「「!?」」」
土岐の蛮行に驚く両津達。土岐はそのまま亡骸を大太刀で弾き飛ばした。
《
土岐の一撃は凄まじく両津達を仲間ごと吹き飛ばした。倒れる時行達。土岐は仲間の死体を拾い上げると時行目掛けて投げた。時行はダメージで動けない。そこに両津が時行と弧次郎の前に来て盾となり時行を助けた。
「やるじゃん繋がり眉毛のおっさん!」
「わしは両津勘吉だ!」
両津は立ち上がり土岐を指差す。
「仲間弾丸にするとか馬鹿かてめえ!そんなことしてると仲間が居なくなるぞ!」
「俺がいればそれが土岐軍だ。」
「ダメだこいつ。全然話が通じねぇ。」
土岐が近付く。両津は時行と弧次郎を連れて逃げようとした時、音楽が聞こえた。両津達が振り向くと楽器を奏でている人達がいた。こんな時に…と思っていたら派手な衣装に着替えた顕家がニョキニョキニョキと伸びてきた。
「はあ!?」
「お前は小林幸子か。」
時行は驚き両津がツッコミをする。
「防御は終わりだゴミ共!華々しく逆賊を征伐せよ!!」
顕家の周りが盛り上がる。両津はノリについていけてない。しかし、顕家の仲間達の士気は上がり土岐軍に突撃した。両津はそこで理解した。
「なるほど。トップが弱気だとどんな軍も瓦解する。意地でも立ち上がって仲間を鼓舞しているのか。」
顕家は土岐に弓矢を向けた。
「土岐頼遠。自分自身を武だけで語る天晴な武士よ。美しき余を飾り立てて御死に晒せ。」
「…つまらんハッタリを。目立つだけの良い標的だ。」
土岐は顕家のところへ突撃させる。そこに顕家軍が来て返り討ちにする。土岐のところに色黒の少年が来て刺股みたいな武器で攻撃する。土岐は避けたため首を少し斬っただけだった。今度は方言訛りがひどい武将が大量の武器を手に取り土岐に投げつけた。こちらを向いて何か言っている。絶対罵倒だ。
「南部の野郎。また若見て煽ってやがる。」
「あいつはいつもああなのか。」
「サボらず参加しろと言っている。行こう。」
「ホントか?」
時行と弧次郎が立ち上がる。両津は近くにいた土岐軍の騎馬隊2人を殴り飛ばし馬を奪うと時行と弧次郎に渡した。両津は暴れる土岐のところに行く。土岐が大太刀を振り下ろす。それを両津が受け止めた。
「すげぇ!あの土岐の一撃受け止めたぞ!」
周りが驚く。それを好機と捉えた顕家。土岐に矢を当てる。さらに変わった形の刀を持った武将が来て土岐の顔に刀を当てた。
「我が愛刀《七度凌遅》。解体はお手のものです。」
武将は体を捻り土岐の兜と大袖を弾き飛ばした。土岐の素顔が露になる。特徴がない。
「根画手部みたいな奴だな。」
土岐は大太刀を振り回して両津達を追い払う。その時、鋭い一撃が土岐の肩を貫いた。両津が振り向く。遥か遠くにいた顕家が矢だ射ち抜いたのだ。
「す、すげぇ。早矢でも出来ない芸当だろ。」
両津が驚いていると玄蕃が土岐に爆弾を置いて離れる。爆発し隙が生まれる。そこに時行と弧次郎が現れ土岐を斬った。まだ意識はあるみたいだ。しかし、土岐はヨロヨロとふらつき川に転落した。
「勝ったのか…」
「皆の盛り上げ大いに結構!青野原の祭事、これにて御仕舞!」
歓声が上がる。土岐軍が逃走していく。その夜、盛大な宴会が開かれた。みんな楽しそうに飲んでいる。両津も離れた場所で酒を飲む。そこに時行が来た。
「あの時は私と弧次郎を助けていただきありがとうございました。」
「いいって。わしが守らねばと思っただけよ。」
「奥州武士にもあんたのような奴がいるんすね。」
両津は黙る。本当は奥州武士どころかこの時代の人間でらないことをどう話せばいいか分からない。どう誤魔化そうか考えていると時行のところに方言訛りがひどい武将が来た。凄い唾が飛び散っている。両津は今のうちと離れた。
「この時代も酒癖悪い奴はいるんだな。」
両津は離れて再び酒を飲む。そこに弧次郎達が来た。弧次郎や亜矢子は知っているが後ろにいる少女や女性は知らなかった。
「え、ええっと…」
「あっ。自己紹介まだだったね!私、望月亜也子!」
「雫。兄様の執事。」
「秕です。」
「で、俺が根津弧次郎ッス!」
それぞれ自己紹介してくれた。両津は秕の足に着いている武器を凝視する。
「やっぱり気になるよね~!」
「こんな物着けて戦うなんて秕姉さん以外いないッスから。」
(やっぱりあの時見た武器だ。本当に使う奴がいたのか。)
両津は目を丸くして見ている。亜也子が両津を連れて宴会に戻る。
「あそこで酒飲んでるのが玄蕃!隣にいるのが夏!みんなで逃若党!」
「本当は…いや、ここで言わなくてもいつか会えるッス。」
弧次郎の表情を見て複雑な事情があるのかと判断する。やっと時行が戻ってきた。みんなで宴会を大いに楽しんだ。両津が飲んでいると時行が隣に座った。
「何故でしょうか?私はあなたと初めて会ったという気がしません。」
両津がギクッとする。本来ならあり得ないことだがそのあり得ないを何度も体験している両津はまたどう誤魔化すか考えていた。そこに玄蕃が来る。
「坊~!こんな顔の奴なんてそこら辺にいるだろ!」
「確かに。保科のおっさんのところに居ても違和感ないッス。」
「うん。若様を助けてくれるまで普通の奥州武士だと思ってたもん。」
亜也子が笑って喋る。それに続いて雫達も頷いた。
「顔がまさに奥州武士。」
「品の無さも奥州武士!」
「汚い身体も奥州武士。」
「学の無さも奥州武士。」
「やかましい!」
両津が叫ぶ。時行が笑っている。すると、両津はここに来た目的を思い出した。時行と2人きりになりたいと離れた場所に移動する。
「あの…どうかされました?」
「お前は将来多くの人の記憶に残る武将になる。」
「頼重殿と同じこと言ってる。」
「だから、足利尊氏に勝ったらお前の財宝をここに埋めてくれ。」
両津は地図を取り出し派出所の裏を指差す。初めて地図を見た時行はビックリして目が貞宗みたいに飛び出す。
「え?えぇ!?」
「これはわしとお前だけの秘密だ。」
「は、はい!」
時行は両津が指した場所を記憶する。
「わしがいれば足利尊氏なんて楽勝よ!」
「心強いですね。」
時行が微笑む。
「遠い未来。この国は平和になる。お前のような子供が戦に出ない時代が来る。」
「それは素晴らしいですね。」
両津を夜空を見上げて話す。時行も冗談半分で聞いている。
「その時代は命を賭けない鬼ごっこが楽しめる。」
「本当ですか!?」
時行が食いついた。両津はやっぱりそこかと呟く。しばらく楽しく会話した両津と時行が戻る。亜也子が2人を見つけると駆け寄った。
「何話してたの!?」
「秘密だ。」
両津が再び酒を飲もうとした瞬間、酷い頭痛がした。頭を押さえて膝を着く両津。時行達が慌てて介抱する。
「大丈夫ですか!?」
「やっぱり土岐の一撃が効いたんすよ!俺達は繋がり眉毛のおっさんのおかげであれぐらいで済んだけどこのおっさんが一番近くであれを受けていたんすから!」
「どうしよう!」
「わ、わしは大丈夫だ。」
両津は立ち上がってヨロヨロと歩き出す。時行達が心配するも両津は1人で近くの森に移動した。この頭痛はなんだと思っていると両津の目の前に小梅が現れた。
「やっぱりここにいた!」
「小梅!なんでここに?」
「迎えに来たんですよ!」
小梅は両津の腕を掴む。
「待て!まだ、時行達に何も…」
「時代を変えるのは違反です!」
小梅は両津と一緒に令和へと戻った。心配した時行が捜しに来るももう両津の姿はなかった。
「両さん…あれ?何故私はこのような呼び方を?」
時行は不思議に思っていた。
両津が令和に戻る。いつもの派出所だ。そこに時行が帰ってきた。
「ただいま…なんですかその格好!?」
時行が驚く。両津は南北朝にいた時の格好をしていた。両津は戸惑っている。
「これはコスプレだ!武士のコスプレ!」
「そんなことしてる暇があるならパトロールしろ。」
両津の言い訳に戻ってきた大原部長が怒る。両津は慌てて逃げた。それから派出所の裏に行く。周りには誰も居ない。両津はスコップを持って掘り出した。約束通りならこの辺りに時行の財宝があるはずだ。すると、スコップが何かに当たった。
「あった!」
両津が急いで開ける。そこには小さい箱だけがあった。これが時行の財宝かと思いながら開ける。中には手紙が入っていた。両津は手紙を読む。
「『両津勘吉殿。この度はあなたの願いに答えることが出来ず誠に申し訳ありませんでした。私はあれからも北畠顕家卿、新田義興殿、新田義宗殿達と共に足利尊氏から鎌倉を奪還するため奮闘してきましたがそれも叶わず私は多くの家族を失いました。そして、近いうちに私も討死か処刑されるでしょう。あの時、あなたは将来私は多くの人の記憶に残る武将になるとおっしゃってくれたことが嬉しかったです。敗北した私が後世に名を残せるとは思えません。歴史は勝利した者が創る物です。私の名はこの先忘れ去られるでしょう。でも、あなただけでも私の名を忘れないでください。出来ればあなたが話してくれた平和な時代で普通の子供として鬼ごっこがしたかったです。最後にあなたと会えて本当に良かったです。北条時行。』…あいつ。いつの時代でも律儀な奴だ。」
両津は手紙から当時の時行の心情を推察した。手紙の文字は所々滲んでいる。おそらく泣きながら書いたのだろう。文章からは時行は自分が未来から来た人間だと薄々察していたのだろう。
「悔しかっただろうな。」
両津はこれ以上何も言わなかった。時代は変わらなかった。時行が負け尊氏が勝った時代のままだ。両津は箱に手紙をしまう。振り向くと時行がいた。
「どうした?」
「両さんこそここで何をしているのですか?」
「神様からのお告げでここにとんでもない財宝があるって聞いてな!」
両津は箱を隠し慌てて誤魔化す。
「それで財宝はありました?」
「ああ。あったよ。」
「なんですか?」
「それは秘密だ。」
両津はその場から去る。
「気になります!もしかしてさっき隠した物ですか!?」
「違う!」
両津は誤魔化しながら帰る。時行の無邪気な笑顔を見るとあの時、戦争していた凛々しい少年とは別人に見える。それを見て両津は微笑んだ。
もう財宝はあったのだ。平和という財宝が。