逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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令和の私の父親

「弧次郎!」

 

 時行が叫ぶ。弧次郎がこっちを向いて笑う。

 

「久しぶりッス若!相変わらず楽しそうッスね!」

 

 時行が泣きながら頷く。すると、次々と誰かやってきた。

 

「若様に手出しはさせないよ!」

「天国も武士と同じで固くてやだねぇ~!」

「うん。そうだね。」

「はぁ。また、戦えるなんて。」

 

 両津と時行の前に誰かを抱えた亜也子、爆弾を持っている玄蕃と夏、恍惚とした表情をしている秕が来た。両津は気になったことを聞く。

 

「おい。抱えているそいつ誰だ?」

「え?あぁ、吹雪!」

「なんでそいつはその顔でおにぎり食ってんだ?」

 

 両津は気になっていた。亜也子に抱えられながら気まずそうにおにぎりを食べている男がいたからだ。

 

「吹雪の奴、一度野心のために若を裏切ったから会うのが気まずいって。」

「逃若党に戻ってきてくれたんだから大丈夫だって言ったんすけどねぇ。」

「ここに来るまでに5俵分のおにぎり食ってたんだよ。」

「食い過ぎだろ!」

 

 両津がツッコミをする。時行が吹雪の顔を見ようとすると吹雪が顔を反らした。

 

「吹雪ー!」

「…すみません我が君。戻って来たとは言え私はあなたに合わせる顔がごさいません。師冬の仮面が欲しい。」

「吹雪。若様見ないとおにぎり没収だよ。」

 

 亜也子が脅すと吹雪はあっさりと気まずい顔を時行に見せた。

 

「罪悪感より米か。」

 

 両津が呆れてツッコミをする。そこに天国護衛隊が襲ってくる。それを弧次郎達が返り討ちにした。両津は南北朝の時と同じだと拍手した。

 

「こっから先は…」

「若様に手は出させないよ!」

「ええい!相手は子供だけだ!さっさと引っ捕らえろ!」

「子供だけじゃなければいいんだな?」

 

 そこに濃い顔の武士達が現れた。

 

「保科殿!」

「お久しぶりです若!我ら保科党、我が主君北条時行の忠義のため、北条時行及び両津勘吉に加勢いたす!」

 

 保科が刀を前に突き出す。それを合図に保科党が天国護衛隊に斬り掛かった。天国護衛隊も応戦する。南北朝では経験したことのない魔法や空を飛んでの攻撃に苦戦するも持ち前のガッツで応戦した。

 

「そもそも何故こいつらが…」

 

 神は驚いていた。彼らは本来ここに居ないはずと呟く。両津も時行を守るために再び参戦する。天国護衛兵の杖を奪い魔法で次々と撃ち落としていく。

 

「ならば、私が相手だ!」

 

 神が指から魔法を出す。両津がまずいと思った瞬間、矢が魔法に当たり両津を救った。誰だと振り向く。そこには派手な化粧を施した、中性的で見目麗しい青年がいた。両津はその青年を知っていた。時行もその青年の名前を呼ぶ。

 

「「顕家!」卿!」

「余を呼び捨てにするな!」

 

 顕家が両津を射る。

 

「危ねえ!当たったらどうするつもりだ!」

「余が主役になる!」

「まずい。この小説が乗っ取られる。」

 

 両津が下がる。顕家は時行のところへと歩く。

 

「顕家卿…」

「北条時行。」

 

 顕家は時行に近付くと時行をアイアンクローした。

 

「余より目立つな!この作品で最も美しく眩しく目立つのは余だ!!!!」

「えぇ〜!!?」

「そこかよ!」

 

 顕家が時行を放す。顕家が手を挙げる。

 

「さっさと来い社会のゴミ共!天国だろうが地獄だろうが余がいるところが貴様らがいるべき場所だ!」

「「「おぉ〜!!!」」」

 

 顕家が叫ぶと彼と共に戦った武士達が参戦した。完全に勢力が逆転した。顕家が矢で飛んでいる天国護衛隊を次々と撃ち落としていく。その周りを奥州武士達が守る。

 

「さすがだ。」

 

 両津が感心している。すると、後ろでグシャグシャと音がした。気になったので振り向くと親子と思われる2人の武士が天国護衛兵をメッタ刺しにしていた。

 

「まさか、息子と一緒に殺せる日が来るなんて。」

「神様に感謝ですね。」

「お前らが殺してるのその神様の使いだぞ。」

 

 両津が親子を指差して時行達を見る。時行達は冷や汗を掻きそっぽを向いて知らないふりをした。そこに来た天国護衛兵を吹雪が二刀流で斬り倒した。

 

「我が君への不忠義。ここでもう一度、償いましょう。」

 

 吹雪が突撃する。計算された動きで天国護衛兵を次々と倒していく。天国護衛兵を上から二刀流で振り下ろし両腕を斬った後、胸をX状に斬り最後に首に刀を当てもう片方の刀で斬り倒した。

 

「なんだあのえげつない技は。」

「吹雪の必殺技《逆さ凶》ッスよ。」

 

 弧次郎が教えてくれる。吹雪が一騎当千の活躍をする。しかし、突然倒れてしまった。両津が慌てて駆け寄る。

 

「おい!大丈夫か!?」

「…お腹が減って力が出ない。」

「さっきおにぎり食ってただろうがぁ!」

「やっぱ燃費悪っ。」

「師冬の頃はどうしてたんだろう。」

 

 両津が持っていたカロリーメイトを吹雪に食べさせる。

 

「ほらっ!カロリーメイトだ!」

「元気2倍!」

「さっさといけぇ!」

 

 両津が吹雪を蹴り飛ばす。だんだんと圧されていく天国護衛隊。痺れを切らした神が再び魔法を放つ。それを時行を中先代と呼ぶ褐色肌の少年が天国護衛兵を盾にして防いだ。

 

「義興殿!」

「中先代様〜!楽しそうだから俺も来ましたよ〜!」?

「神に対して何たる無礼…両津よりはマシだが許せん!」

「わしこれ以上か!?」

「何したんだろう。」

 

 呆然とする両津を見る時行と義興()。神が魔法で両津達を攻撃する。すると、顕家が神に向かって弓矢を向けた。

 

「神だと…余はお前など神と認めん!御死に晒せ!」

 

 顕家が矢を放つ。矢は神の髪に命中した。その瞬間、髪がズレた。目が点になる時行達。ニヤニヤする両津。神はすぐに髪を戻した。

 

「え?あれって…」

「神はな…」

「言うな!」

 

 神が両津の言葉を遮る。そこに雫が来た。スマホを持っている。そのスマホを神に見せる。髪がズレた瞬間がちゃんと撮れていた。

 

「いいのが撮れた。」

「雫〜!」

「貴様〜!」

 

 時行が雫に抱き着く。雫はいきなりの抱き着き顔を赤くして目をグルグルさせた。神が雫からスマホを奪おうとするも秕が雫を守った。

 

「よく撮れてるじゃねぇか。」

 

 両津が覗き込む。そこに花山と小梅が来た。

 

「両津!これは何事だ!?」

「時行のために集まった勇士達だ。」

 

 両津が指差した先には弧次郎達と楽しそうに会話する時行がいた。

 

「それどうするの?」

「これを使って神を操る。」

「あいつ、わしと同じ発想だぞ。」

 

 可愛い顔で脅迫を考える雫に若干引く両津達。

 

「いや〜、三途の川でサーフィンして遅れました。」

 

 そこに胡散臭い顔の男が現れた。

 

「頼重殿!」

 

 時行が頼重に飛び付く。

 

「会えて本当に良かったです!」

「長らくお待たせしましたね。」

 

 感動の再会を果たす2人。両津はうんうんと頷いている。すると、頼重の顔を見て思い出した。

 

「あれ?あんたの顔、確か…時行がサボタージュで作った顔と同じだ。」

「日本版 This man…」

 

 雫が笑う。時行が顔を反らす。

 

「時行様…」

「すみません。」

 

 以前、おふざけで作った頼重の顔を日本中に送ったことのある時行は気まずかった。さらに亜也子が思い出したと言って玄蕃を見る。

 

「玄蕃に子孫がいるのが驚きなんだけど!?」

「そうッスよ!相手誰ッスか!?」

「候補1人しかいない。」

 

 雫の一言で逃若党全員が夏を見た。夏は顔を真っ赤にして全力で顔を横に振っている。和気藹々とした雰囲気になっている。それを神が壊した。

 

「待てぇ!」

「なんだ?折角いい雰囲気だったのに。」

「そもそも貴様らは地獄にいるはず!何故ここにいる!?」

「閻魔大王に地獄に両津勘吉を送り込むって言ったらすんなり通してくれた。」

「両さん…」

 

 時行が両津を見る。両津は目を反らす。神はプンプンになってモニターを出す。

 

「閻魔大王は何をやって…」

『我も行くぞー!』

『貴様だけは絶対地獄から出てはいかーん!』

 

 モニターには閻魔大王達地獄総出で足利尊氏を足止めしていた。三浦八郎を振り回し楠木正成や新田義貞、諏訪神党三大将を相手に大暴れしている。後ろでは貞宗達が酒を飲みながら観戦している。

 そのモニターは両津達からも見えていた。両津や時行、花山達の目が点になっている。

 

「あれは?」

「尊氏の奴、この前まで無限地獄で宴会してたけど若が現世にいると分かった瞬間、地獄を出て現世に行こうとしたんすよ。」

「あいつが足利尊氏…ちなみにあいつがこの時代に来たらどうなる?」

「…1週間で全世界の人口の8割が足利尊氏に心酔し配下になるでしょう。」

「恐ろし過ぎるだろ。」

 

 頼重の推測に両津がツッコミする。確かに足利尊氏の相手だけでも手一杯なのにそこに両津が来たら地獄は混沌と化してしまうだろう。時行が両津を見ているとそこに派手な着物の少女が現れ時行に抱き着いた。

 

「若ちゃ〜ん!」

「魅魔!」

 

 すぐに雫と亜也子が引き離す。

 

「こいつが手紙であんなことやこんなことされたと書いた奴か。」

「そうだ!魅魔!あれを書いたせいで私がド変態にされたのだぞ!」

「別に間違ってないよな?」

「若が変態なのは確定ッス。」

「片鱗はありましたね。」

「若がどんだけ変態でも私は好きだよ!」

「みんな!?」

 

 時行が涙目でツッコミした。

 

「その手紙、多分父上が保存してたのを師直が木箱に入れたんだと思う。」

「お前らの時代そんなのばっかだな。」

 

 両津は改めて南北朝の恐ろしさを知る。すると、気になったことが出来たので頼重達に聞いた。

 

「おい。お前ら今まで見てきたかのように言ってるが…」

「見てましたよ。地獄にも現世を見る映画館と呼ばれる施設がありまして。そこで皆さんと見てましたよ。」

 

 頼重から発せられた言葉に両津は止まる。時行も止まる。

 

「それってつまり…」

「こっちで等身大真っ裸刑事全バージョン作ったぜ。」

「若の変態行動集とかも玄蕃が作って売ってたよ。」

「結構地獄で人気ッスよ。」

「玄蕃ー!」

 

 顔を真っ赤にさせた時行が玄蕃を追いかける。神は固まっている。足利尊氏だけでも天国に来てないことが幸いしているからだ。これ以上騒ぎを起こせば足利尊氏が来るかもしれない。神は天国護衛隊を下がらせる。

 

「話だけでも聞こう。」

 

 神が両津と時行の捕縛を諦めた。両津が改めて要求する。

 

「時行はわしが責任持つ!だから令和にいさせろ!」

「しかし…」

「もし断れば…」

 

 雫がスマホを見せる。神が固まる。

 

「待て両津。天国警察としてそれを見逃すことは…」

「おじいちゃま、呪いのカメラのこと言うよ。」

 

 小梅の言葉に花山が固まる。

 

「いいって。」

「理香、わしに何を隠している。」

「何も…隠しておらん。」

「わしの目を見て言え!」

 

 両津が詰め寄る。花山はしらばっくれる。話が進まないので頼重が両津を止めた。

 

「両津殿の要求飲んでいただけますか?」

「…し、仕方ない。元を言えばこちらの不手際だ。今回は特別に認めよう。」

 

 神が渋々認めた。花山も文句が言えない。

 

「良かったな時行。」

「はい。でも…」

 

 時行が振り向く。弧次郎達は笑顔だ。

 

「いいッスよ若!俺達のことは気にせんでください!」

「若様の令和がもっと見たい!」

「こっちはいつでも来れるけどこっちからそっちには行けねぇからな。」

「普通はが付くけど。」

 

 それぞれ時行を励ます。両津がまた目を反らす。それを義興が見ている。?

 

「寂しくないでしょ!」

「時行様はもう1人ではありません。」

 

 頼重が両津を見る。

 

「時行様を守っていただきありがとうございます。」

「なぁに。いいってことよ!」

 

 両津が笑う。すると、時行は弧次郎から刀を借りた。その刀を両津に渡す。

 

「両さん。いえ、両津殿。私の髪を切ってくださいませんか?」

「わしが!?」

 

 両津は驚いていた。今まで誰にも切らせなかった髪を切ってほしいと言われたのだ。両津は頼重達を見る。みんな、異存はないようだ。両津は驚きながらも聞く。

 

「わしでいいのか?」

「はい。両津殿がいいのです。」

 

 時行にとって自分の髪を切ってもらうということは烏帽子親。つまり、親に等しい間柄になるということだ。そのための儀式を両津に頼んだ。

 

時に私を掌で転がし、時に自分勝手で独裁的で、時に勉強勉強とうるさくて、時に強く抱擁し、時に血相を変えて助けに来る。…頼重殿と同じだ。いつの間にか私は…あなたを…両さんを父親のように思っていたのですね。

 

 時行の心の中で両津への思いと感謝を述べる。南北朝時代の父親が諏訪頼重なら令和の時代の父親は両津勘吉だ。時行はもう心に決めていた。

 

「あなたに私の父親になってほしいのです。」

「…分かった。」

 

 時行の真剣な目を見た両津はそれ以上何も聞かなかった。両津は刀を受け取り時行の髪を切った。時行は短くなっても美しい髪をたなびかせ両津を見た。

 

「ありがとうございます。」

「両津勘吉殿。これからも時行様をよろしくお願いいたします。」

「任せろ!」

 

 両津は笑顔で親指を立てた。地獄から足利尊氏が出そうという報告を神が受ける。急いで頼重達や天国警察、天国護衛隊全勢力で止めに行く。その後ろ姿を見た時行は思いっきり叫んで感謝を述べた。

 

「皆さん!ありがとう御座いました!」

 

 みんな、振り向き笑顔で手を振る。これ以上別れの言葉などいらない。また、会えると確信して両津と時行は下界へと降りて行った。

 朝日が派出所に差し込む。そこには大原部長達や弧太郎達がいる。そこに両津と時行が走ってきた。2人の無事を喜ぶ大原部長達。時行の髪が短くなっていることに驚く弧太郎達。そこに両津と時行は帰ってきたのだった。

 

「ただいま!」

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