ある日、両津と中川が一緒にパトロールしていた。後ろには時行もいる。
「ハラへったな中川。」
「そうですね。」
「あそこなんかいいのではないでしょうか?」
時行が指を指す。そこには『うどんの佐藤』という看板がある店があった。
「うどんか。いいな。そこにしよう。」
両津達は店に入る。雰囲気はいい。綺麗。しかし、誰も居ない。時行と中川は席に座ろうとするも両津は出ようとした。
「両津さん?」
「出るぞ!」
「何故ですか?」
「こんな誰も居ないうどん屋など繁盛してないってことだ!」
両津が出ようとしたところに店主と思われる男性が現れた。男性は両津達を見ると泣いてすがりに来た。
「行かないでくださ~い!あなた達でやっと10人目のお客様なんです~!」
「まぁ、こんな感じだと1日10人いくかいかないかだな。」
「いえ。この1年に10人です。」
その発言に両津は必死に逃げようとした。店主は両津の腰に抱き付き泣いて止めた。
「お願いします~!このままだと夢だった店が潰れてしまいます~!!」
「分かった分かった。わしらが10人目の犠牲者になってやる。」
両津達は店主のお願いを受け入れうどんを食べる。両津は警戒していたが思っていたほど不味くない。というより普通に美味しい。
「なんだ?普通に美味いじゃねぇか。」
「このしっかりとしたコシとあっさりとした魚介出汁の組み合わせが最高ですね!」
「ありがとうございます!」
店主が泣いて喜んでいる。すると、中川が壁に飾ってある写真を見て驚いた。
「あの人は!もしかして老舗うどん店『讃岐八兵衛』の店主八代目伊東八兵衛さんではありませんか!?」
「はい。彼とは同郷で同じ夢を語り合った親友です。私が店を開くと言ったら喜んで協力してくださったのです。」
店主が教えてくれる。うどん粉の提供をしてくれると言う。中川はまだ驚いていた。
「このつゆに使われているのは高知県産の鰹から作られた鰹節と北海道の昆布を合わせた魚介出汁ですね。」
「このシンプルだけど深みのあるあっさりとしたつゆは正に日本の心ですね。」
時行もつゆを飲み干して満足していた。
「凄いな。味が分かる中川と時行もだがこれだけの材料と手間を惜しまない店長も凄いぞ。」
「凝り性なので。自分でも満足いくうどんを追究したらこうなりました。」
店主は褒められ照れていた。
「でもそれならもっと繁盛してもいいんだが…」
両津が店内を見る。誰も居ない。両津が聞くと店主は肩を落として話し始めた。
「実は開店初日に宇摩井満福さんが来られたのです。」
「凄いじゃないですか!」
「誰だ?」
両津と時行が聞くと中川はスマホで検索した宇摩井満福の写真を見せた。太った胡散臭そうな男だ。
「グルメライターで彼が上手いと言った店は瞬く間に人気店になるんです。その代わりに批評した店には客は誰も来なくなり潰れるんです。」
「こんな胡散臭そうな奴がグルメライターか。」
「それで何故こんなことに?」
時行が聞く。店主が続きを話す。
2年前、宇摩井がこの店に来た時に両津達にも出したうどんを提供した。すると、一口食べただけでどんぶりを床に叩きつけた。
「不味い!こんな不味いもの食べたことがない!」
「そんなぁ!?」
「こんな店、すぐにでも潰れるべきだ!」
そう言って金も払わず出て行った。
「ひでぇ話だな。」
「さらに酷いのはここからです。」
翌日、宇摩井の食べ歩きブログにこの店が載っていた。味も対応も最低と書かれていたのだ。その結果、この店はほとんど客が来なくなってしまったのだ。
「そいつ味音痴かよ。」
「それに、最近は店を荒らされたり身に覚えのない借金が増えたりどうすればいいのか…」
「その話、気になりますね。」
「それよりも夢だったこの店を畳みたくないんです!」
泣き崩れる店主。時行は同情し両津を見た。
「どうしましょう両津さん?」
「わしに任せろ。この店を日本一、いや世界一のうどん屋にしてやる!」
「本当ですか!?」
「任せておけ!」
「僕も手伝いますよ。」
「私もです!」
両津達は手を合わせてうどんの佐藤を改革することにした。まず、両津は外装から手を加えた。おどろおどろしい雰囲気に変え名前も『悪魔うどん』に変更した。
「なんですかこれ?」
「まず見た目で惹かないとダメだ。周りとかけはなれた見た目にして客を惹きあんたのうどんで落とす。このギャップは絶対話題になる。」
両津が店の内装も変えていると弧太郎達がやってきた。手には授業で作ったどんぶりがあった。
「コーチ!こんなので本当に良かったっすか?」
「問題ない!ここの雰囲気に合うぞ!」
弧太郎達も加わり悪魔うどんを造っていく。途中疲れたちめ店主が弧太郎達にもうどんを出した。弧太郎達は美味しそうにうどんを食べていた。
「美味いっすよ!」
「ホントだ!美味しい!」
「こんなうどんは食べたことないですね。」
弧太郎達の反応を見て店主は喜んでいる。
「ほら見ろ。あんたのうどんはみんなに通じるんだ。誇りを持て。」
「ありがとうございます!」
店主が泣いている。そこに中川が入ってきた。
「先輩!どうやら、この辺り一帯を潰してショッピングモールを建てようとしているところがあるみたいです。周りにも聞いてみたのですがそこでも店の妨害行為なんかがあるみたいですね。」
「地上げ屋か。」
「なんですかそれ?」
渚が聞く。
「地上げ屋というのは不動産会社や建設会社、開発業者などが、事務所用地や住宅用地を買収して、より大きな建物やマンション、ビルを建設するために依頼を受けて、地主や借地人などとの交渉で土地の売買や立ち退き契約を取り付ける不動産ブローカーのことだ。」
両津が説明するも難しくてみんな?を浮かべている。
「簡単に言い換えれば土地を買うためにいろいろする人のことだ。中には土地を安く買うために建物や住人にいちゃもんをつけたり無理矢理追い出したりする奴もいる。」
「ひどい!」
亜矢が憤る。
「今回もおそらくそれでしょう。」
「でも、宇摩井って人は関係ないのでは?」
「おそらく金で買収されたな。」
「なるほど。わざと不味いと言って客足を遠ざけ店を潰す算段ですか。」
「最低じゃん!」
「絶許。」
さらに憤る。
「だから、わしらが目にものを見せてやるのさ。」
「手伝いまーす!」
亜矢が率先して挙手した。そこから弧太郎達も手を挙げうどん屋改造に着手した。ちなみに資金は中川が全額負担するため両津達のやりたい放題となった。
そして、新うどんの佐藤改め悪魔うどんが開店した。最初はお化け屋敷みたいな店に面白半分で来た客だがうどんの美味さに感動していた。両津の狙い通りにだんだんと、しかし確実に人気が上がっていった。
「凄いっすね。」
「CMに時行を起用したからな。」
「時行君、完全に客寄せパンダになってますね。」
店の奥で両津達が客の反応を伺っていた。そこに宇摩井が来た。時行が来たことを両津に目で合図した。両津は頷き宇摩井を中川の隣に座らせた。
(おかしい。この店はめちゃくちゃに酷評して潰したはず。)
宇摩井が周りをキョロキョロ見回す。すると、隣にいた中川がうどんを絶賛した。
「素晴らしい!このうどんは今まで食べたうどんの中で最高です!」
中川は両津に束ねられた万札を出す。
「この美味しさにこれだけでは不釣り合いですが受け取ってください!」
「こ、こんなに!?」
両津と中川で芝居する。
「この店のうどんの味が分からない人は味覚がどうかしてますね。」
中川は去り際に宇摩井の耳元で囁いた。それを聞いた宇摩井は冷や汗が止まらない。いつの間にかテレビ取材もしている。両津がうどんの説明をしていた。
(そんな大層なうどんなのかよ!?)
宇摩井は震えている。また不味いというつもりだったがこの状況では言いにくい。宇摩井はどこかにメールした。その後、うどんが来たので食べる。
「これは…今まで食べたことのないうどんだ!
宇摩井はそこからもうどんの味を話すが全部両津が取材で言っていたことと同じだった。それを聞いて両津は確信する。グルメライターと称してあるが全くの味音痴だ。その時、突然ガラの悪い数人が店に入ってきた。
「おい!どうなってんだ!?さっさと立ち退けと言ったよなぁ!」
バットを持った男達は次々と店を破壊する。それを待ってましたと言わんばかりに両津が飛び出て背負い投げする。さらに、渚が猫騙しでしりもちつかせ時行が弓矢でバットを弾き飛ばす。
「店長!こいつらどうしますか!?」
両津が呼ぶと鎧武者の格好をした店長が現れた。
「我輩の店を荒らす不届き者には天罰だぁ!」
店長が玩具の刀を振り上げる。それにビビった男達は急いで逃げた。店長が宇摩井を睨む。
「し、失礼しました~!」
宇摩井も万札を置いて逃げて行った。
翌日、新聞には宇摩井が地上げ屋と組んで営業妨害や名誉毀損をしたとして逮捕された記事が載っていた。
「やっぱりな。」
「良かったですね。」
時行がニコニコで見ている。両津が他の記事を見る。そこには『“悪魔うどんの佐藤”大評判!』という見出しで鎧武者姿の店長が笑顔でうどんを提供している写真が載っていた。
「この店長、強かだな。」
「逞しいですね。」
両津と中川は呆れながらも微笑みながら新聞を読んでいた。
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