ある日、両津が中川達を派出所に呼んでいた。
「どうしたんです先輩?」
「もうすぐ部長の誕生日だろ。」
「そういえばそうね。」
中川と麗子は思い出したと言うが時行と椎名は初めて知った。
「部長にはいろいろとプレゼントしただろ。」
「そうですね。安土城やもう1人の部長をプレゼントしたことがありましたね。」
「とんでもないプレゼントですね。」
椎名が驚く。椎名がパトロールに行った。それを見届けた両津が中川に聞いた。
「そういえば、中川の会社で安土城に似たプロジェクトしてなかったか?」
「南北朝再現プロジェクトですね。未だ謎が多い南北朝の生活を再現しようというプロジェクトです。監修は時行君にお願いしています。」
「どの専門家よりも詳しいからな。」
胸を張って自慢気な顔をしている時行。そこで両津は中川に提案した。
「今度は部長に南北朝をプレゼントしてみよう。」
「先輩、それは…」
「部長は歴史好きだが大体が戦国時代か江戸時代だ。ここは南北朝を体験させるのもいいんじやないか?」
「両ちゃん。以前もやったわよ。」
「あれは庶民の暮らしだ。今度は時行や後醍醐天皇がやっていたような暮らしをさせるんだ。」
両津の提案に中川達は考えた。
「分かりました。やってみましょう。」
「よし。決まりだな。」
「でも、本来は住まわせるためのものじゃありませんよ。」
「いいよ。1日だけだしな。」
こうして、両津達は大原部長のためにお誕生日の準備を始めた。
後日
両津達は大原部長を乗せある場所に向かっていた。
「わしの誕生日のために用意してくれた場所とはなんだね?」
「きっと驚くと思いますよ。」
車が到着し大原部長達が降りる。そこには京都の街並みがあった。大原部長はそれを見て驚く。
「こちら、時行君監修で当時の京都を再現しました。」
「おぉ…」
中川が大原部長を案内する。その後ろでは両津達が観光気分で見ていた。
「昔はこんな感じだったのか。」
「はい。魅魔もこれぐらいの再現は出来ますよ。」
「時行君、よだれ。」
キラキラした目をしながらよだれを垂らす時行に麗子が注意する。
「部長、そろそろ着きますよ。」
中川が大原部長を案内した場所は、凄い豪華な装飾がされた屋敷だった。大原部長が驚く後ろで両津が時行に説明を求めた。
「こちらは西園寺公宗殿の屋敷です。私が京都に行った時に案内してもらった屋敷です。」
「その西園寺って奴は相当官位が高かったんだろうなぁ。」
大原部長が着替えて登場した。時行は後醍醐天皇と同じ格好だと頷いていた。
「これは素晴らしい。」
「本来は西園寺公宗の別荘らしいのですが今回は後醍醐天皇の屋敷ということにしています。」
「後醍醐天皇か。なんとも気分がいい。」
大原部長が笑っている。大原部長が座る。前には両津や時行を始め大原部長の誕生日を祝うために集められた人達が南北朝当時の格好をして頭を垂れていた。
「大原天皇。お誕生日おめでとうございます。」
「「「おめでとうございます!!」」」
「うむ!苦しゅうない!」
大原部長はご満悦のようだ。そんな大原部長の前に
「こちらは後醍醐天皇の故郷で採れた蓴菜の汁物と同じく故郷で獲れた鱸の膾でございます。船に飛び込んだスズキを食べると天下を取れると言われています。周の武王や清盛公に因んで船盛りの形にしました。後醍醐天皇が大変お好きだった一品でございます。」
「うむ。」
大原部長が蓴菜の汁物と鱸の膾をいただく。
「うん、美味しい。これほど美味しい料理があるとは…」
「時行君の監修で当時の料理を再現したんですよ部長。」
両津が美味しそうに食べる大原部長を見ながら時行に聞く。
「後醍醐天皇ってどんな奴だったんだ?」
「この時代で言えば天才、奇才って感じの方でしょうか。とにかく奇抜な政策を出していました。鎌倉幕府打倒や領地の支配を認める綸旨を出したり朝廷や公家、武家の借金をなかったことにしたり御成敗式目を廃止した結果、庶民や武家から批判を受けてましたね。」
「建武の新政ね。」
時行の説明に麗子が参加した。
「公家などの身内贔屓や新たな内裏のための増税が原因で武士や市民の反感を買ってしまったのよ。その結果、中先代の乱が起こり足利尊氏と対立、南北朝時代が始まったのよ。」
「お前って改めて考えると歴史を変えた重要人物なんだな。」
「…みたいですね。」
時行はから笑いしながら思い出す。中先代の乱で諏訪頼重を失ったことに涙するも久しぶりに会った頼重が楽しそうだったのも思い出し呆れた表情をした。
「足利尊氏に破れた後は顕家卿と共に後醍醐天皇側につき足利尊氏と何度も対立しましたね。」
「その後醍醐天皇が好きだった料理があれなのか。」
「はい。吉野にいた頃は故郷の味が懐かしいと…早く故郷に帰りたいと嘆いていましたね。」
時行は中川や椎名に命令する大原部長を見ながら言った。
「もし、あの時に両さんが後醍醐天皇の側にいたらまた歴史は変わっていたかもしれませんね。」
「当たり前よ!」
時行と両津が笑い合う。大原部長が両津を呼んだ。酒を飲んでいてかなり酔っ払っている。
「はい!」
「両津。折角だから後醍醐天皇がどんな人か教えてやろう。」
「け、結構です。時行から教えてもらっているので…」
「いいか!後醍醐天皇は混乱をもたらし南北朝時代の原因となった暗君と言われているが実は違う!後醍醐天皇は当時としては画期的な紙幣制度を設けたのだ!今まで土地などで報酬を与えていたがこれでは限りがあり不満に思う武士が多かった。そこで土地の代わりになる報酬として紙幣を活用しようとした。しかし、これは武士はもちろん、民衆からも非難される結果となり紙幣制度は頓挫してしまった。」
大原部長が両津にくどくど教授していた。
「そんなことがあったのですね。」
「全然知らなかったです。」
時行と椎名が両津の面倒くさそうな顔を見ていた。
「…という感じで後醍醐天皇は…」
「部長さん。そろそろ…」
さすがに両津の嫌な顔を見て察した麗子が部長を止めた。
「お風呂なんかどうかしら?檜風呂よ。」
「それは素晴らしい!」
大原部長は麗子と椎名を連れて風呂に向かった。
「それにしてもこれが南北朝の屋敷か。」
「はい!私が記憶しているところはほとんど再現出来ていると思いますよ!」
時行が自慢気に胸を張っている。
「さすがに落とし穴に刀は無理でしたね。」
「ん?落とし穴に刀?」
両津が聞く。中川も初めて聞いたようで気になっていた。
「私の叔父上、泰家殿がここの本来の持ち主西園寺公宗殿と一緒に後醍醐天皇の暗殺を企てていたのです。その方法が風呂場に落とし穴を作り入ったところを落として刀で刺すというものでした。」
「…おい時行。その落とし穴は作ったのか?」
「はい。落ちた先は刀ではなく肥溜めになっていますが…」
「あの…確か部長が…」
時行達は青ざめた。一方、大原部長はルンルン気分で風呂場に入る。綺麗な檜風呂に気分は正に後醍醐天皇だ。
「これも時行君がいてくれたおかげだな!」
大原部長が更衣室で着替えようとした。その瞬間、床が開き大原部長は声をあげる間も無く肥溜めにまっ逆さまに落ちていった。
「な、なんだこれはぁ!?」
大原部長の叫びを廊下で聞いた麗子と椎名が慌てて飛び出る。麗子は落とし穴に気付き立ち止まるも椎名が滑ってしまい2人一緒に肥溜めに落ちてしまった。
時行達が走るもその叫び声を聞いてしまい間に合わなかったと判断した。時行の汗が尋常じゃないぐらい流れていた。
「りょ、両さん。少し付き合ってもらえないでしょうか?」
「お、おう。」
「どうなっているんだ!?」
「何よこれ!?」
「臭い!」
落とし穴の中で叫ぶ大原部長達。時行は両津を連れて逃走した。
「当時は失敗した暗殺がまさか令和に成功するなんて…」
後日
「時行君はどこだぁ!あの大馬鹿暗殺者はどこにいるぅ!」
「時行君なら先輩と一緒に吉野に後醍醐天皇縁の地巡りに行きました。」
薙刀を振り回しながら派出所に突撃する大原部長に教える中川であった。
200話達成記念!人気投票!皆様のおかげで『逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜』は200話を達成することができました!これを記念して人気投票をしたいと思います!期限は決めてませんので気楽に投票してください。その他を選んだ場合はこちらにコメントお願いします!
-
北条 時行
-
両津 勘吉
-
中川 圭一
-
秋本 麗子
-
大原 大次郎
-
擬宝珠 檸檬
-
擬宝珠 纏
-
磯鷲 早矢
-
椎名 蘭
-
潮田 渚
-
諏訪 頼重
-
海パン刑事
-
星 逃田
-
佐々木 洋子
-
その他(コメントでお願いします)