逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行、風邪を引く

「38.6か…完全に風邪だな。」

 

 超神田寿司で顔が赤い時行の看病を両津がしていた。

 

「まぁ、インフルエンザでもコロナでもないようだからこのまま安静していればすぐ治る。」

「あ、ありがとうございます。」

「じゃあ、わしは派出所に行くから何かあれば夏春都に言うようにな。」

「は、はい。」

 

 そう言って両津は去って行った。既に檸檬も纏も出て行っていて家には寿司屋として働いている職人達と夏春都がいた。

 

「体が重いです。」

「南北朝には風邪に対する免疫がなかったみたいだね。」

 

 夏春都が入って来る。時行の額に乗せているおしぼりを変える。

 

「あ、ありがとうございます。」

「無理するんじゃないよ。」

 

 夏春都は時行を安静にさせるとお粥を作りに出て行った。

 

 一方、派出所では両津と纏が会話していた。

 

「心配するほどじゃない。」

「それならいいけど…」

「それより問題なのは時行がいなかったらこっちはただのこち亀になってしまうことだ。」

 

 纏が呆れて見ている。そこに麗子と椎名がパトロールから戻って来た。

 

「パトロール、戻りました!」

「ご苦労さん。」

「それで時行君、どう?」

「大したことない。」

「良かった。」

 

 麗子が両津と纏に買い物袋を渡した。

 

「なんだこれ?」

「生姜とか解熱剤よ。時行君に渡してね。」

「おう。」

 

 買い物袋を受け取った両津。

 

「風邪と言えばコロナの影響でかなり景気が変わったよな。」

「そうね。在宅勤務が増えたり新しい趣味を見つけたり健康に気を使うようになったわね。」

「私もコロナで休学になった時に読書する機会が増えましたね。」

「昔の人間も環境が変われば生き方が変わるようにいつの時代も環境が変われば生き方も変わる。人間って逞しいもんだよな。」

 

 両津が思い出しながら話す。

 

「でも、時行君は慣れてないからちょっと心配ね。」

「そうなんですか?」

「確かに時行が風邪を引くところを見たことなかったな。」

「ばあちゃんがいるから安心だと思うけど…」

「夏春都なら大丈夫だろ。わしらはいつも通りにすればいい。」

 

 その時行はボーとしながら天井を見ていた。南北朝では体験したことない病気にかなり参っているようだ。

 

「今の時代の人はこんな辛さを経験しているのでしょうか?」

「あんたが特殊なだけだよ。」

 

 夏春都がお粥を持って入ってくる。

 

「今まで無茶をたくさんしてきたからね。もうここは南北朝じゃないよ。」

 

 夏春都が時行にお粥を食べさせる。ホッとする味に時行は落ち着いた。夏春都が再度計ってみるもあまり変わっていない。

 

「まだ熱は冷めないね。しばらくは横になりな。」

「はい…」

 

 時行は言われた通りに寝る。

 

「鎌倉、諏訪にいた頃はこんなことなかったのに。」

「頑張り過ぎたんだよ。将としての重圧や周りの期待に答えなけれぼならないという責任があんたの身体を蝕んでたんだよ。その頃はまだやるべきことのために耐えれていたんだろうけどここに来てからは将も責任もなくなったから身体が弱くなったんだよ。」

 

 夏春都が解熱剤を飲ませる。

 

「そうでした。私はもう…軍を率いる将ではありませんでした。」

「これからは普通の子供として生きていきな。責任はカンキチや私が取るよ。」

 

 夏春都の言葉に時行は安心して眠ってしまった。そこに弧太郎達が見舞いに来た。夏春都がそれに対処する。

 

「そうっすか。」

「そうだよ。大したことないから見舞いは明日にでもしときな。」

「分かりました。」

 

 一方、両津達は…

 

「まずいぞ。中川が競馬で有金全部溶かしたわしみたいな顔をしている。」

「なんとかしないといけないわね。」

 

 しばらくして時行が起きる。今朝よりは大分楽にはなった。しかし、立ち上がろうとするとまだよろけてしまう。そこに檸檬が帰ってきた。

 

「どうしたのじゃ時行?」

「いえ。ちょっと厠に。」

「無理するでない。檸檬も一緒に行くのじゃ。」

 

 フラフラしている時行を支えトイレに向かう。トイレを済ませて出て来る時行。まだ、治ってはいない。

 

「風邪というのはここまで辛いのですね。」

「時行は今まで一度も風邪を引いたことはないのか?」

「はい。ありません。」

「それが重症化している原因じゃな。」

 

 檸檬が時行を連れて行こうとする。そこに纏が帰って来た。フラフラしている時行と檸檬を見て慌てて駆け寄る。

 

「危ないだろ檸檬!」

「すみません。私が厠に行きたいと…」

「分かったから落ち着け。」

 

 纏と檸檬で時行を寝かす。纏が時行の体温を計る。

 

「37.9。まだあるな。ちょっと待ってろ。」

 

 纏が出て行った。残った檸檬はまだ顔が赤い時行を心配して見ている。

 

「無理は禁物じゃ。」

「はい。」

 

 檸檬は飾ってある冠を見る。それは時行が顕家から貰った冠だ。

 

「お主は不思議な人じゃ。子供のように無邪気な時もあれば大人のように凛々しい時もある。まるで、早く大人にならないといけないみたいにのぉ。」

 

 檸檬の言葉に時行はドキッとする。

 

「檸檬も夏春都や纏、カンキチをよく見ておるから少し大人びた振る舞いをしておるがそれとも違う。本当に大人みたいじゃ。」

 

 時行は黙ってしまった。それもそのはず。本当のことだからだ。でも、正直に言っても信じてもらえるか不安だった。それに自分のことを知るのは少ない方がいい。もし、本当のことを言ってこれからの関係が壊れるのも怖いのだ。

 

「言いたくなければそれでよい。でも、檸檬はどんなことがあっても時行を信じておるぞ。」

 

 檸檬はそう言ってニコッと笑った。

 

 一方、両津達は…

 

「まずい!麗子がパチンコで大外れした時のわしみたいな顔をしている!」

「どうするんですか両津先輩!?」

 

 しばらくして時行が起きる。もう夜だ。身体を起こす。もう辛くない。自分の額を触る。熱もないみたいだ。時行は良かったと立ち上がった。そこに纏と桔梗が来る。

 

「大丈夫なのか時行?」

「はい。お陰様で元気になりました。」

「でも、まだ身体には気を付けてね。」

 

 桔梗が時行にお粥を出す。時行は正座するとお辞儀してお礼を言った。

 

「気にすることないよ。」

「時行君が辛くなるとみんな悲しむから。」

 

 時行はありがたく感じながらお粥を食べた。

 

 翌日

 

「皆様のお陰で北条時行、元気になりました!」

「それは良かった!」

 

 派出所に顔を出した時行に両津達が喜ぶ。

 

「良かったわ。」

「本当ですね。」

「これからは身体にも気を付けます。」

「わしの免疫力をあげてもいいんだがな。」

「先輩の免疫力はさすがの時行君でも厳しいと思いますよ。」

 

 中川が両津に進言する。そこに大原部長が現れた。

 

「両津!貴様という奴は~!」

「部長!まずい!」

「昨日、あんなことするからですよ両津先輩。」

「昨日、何があったのですか?」

 

 大原部長から逃げる両津。それを見て笑う中川達。時行はいつもの日常に戻ってこれたとホッとするのであった。

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  • 北条 時行
  • 両津 勘吉
  • 中川 圭一
  • 秋本 麗子
  • 大原 大次郎
  • 擬宝珠 檸檬
  • 擬宝珠 纏
  • 磯鷲 早矢
  • 椎名 蘭
  • 潮田 渚
  • 諏訪 頼重
  • 海パン刑事
  • 星 逃田
  • 佐々木 洋子
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