「花見が中止!?」
その日、新葛飾署が崩壊するかと思うほどの両津の叫びから始まった。
「そうだ。オーバーツーリズムで花見に来る外国観光客が桜の木を揺らしたりポイ捨てしたりした結果、我が署は花見を中止して治安改善パトロールを実施する予定だ。」
署長室で屯田署長が両津に理由を話した。両津は顎が外れるぐらい口を開き唖然としている。
「それにもう5月だ。そろそろお花見の時期も終わる頃だろう。丁度いいじゃないか。」
「よくないですよ署長!まだ5月です!桜はまだ見頃ですよ!」
「しかしだねぇ…」
「分かりました!でしたら今度の新葛飾署のお花見はわしが確保します!」
なんとしても花見を諦めたくない両津は断固として花見を決行しようとする。
「わしらもお花見を楽しみながらパトロールすればいいでしょう!わしが中心となって花見を成功させてみせます!」
「わ、分かった。そこまで言うなら両津君に頼もうではないか。」
両津の勢いに圧されて屯田署長は渋々了承した。
翌日、両津は意気揚々と花見の場所取りをするために水元公園に来ていた。後ろには本田、ボルボ、左近寺、中川、そして時行がいた。
「両津。もういいだろ。」
「お花見ですか。この前、渚達と一緒にやりましたね。あれは楽しかったです。」
「そうだ!お花見は楽しい!しかし、最近は騒音やゴミなどの景観問題、挙げ句の果てには桜の枝を折るなどマナーのなってない奴らが増えた!そのせいで毎年桜は減少し花見自体の開催が危ぶまれる事態になった!」
両津が竹刀を振り回し熱論する。
「花見は奈良時代から始まった!最初は貴族のみや演芸の場となっていたが江戸時代に庶民に広まってからは花を愛でることに重きをおいている。その文化が失われていいのか!?」
「確かに兼好おじさんもお花見は散った後まで美しいのに多くの人はそれを見ないでただ騒いでいるだけだと嘆いていましたね。」
「吉田兼好の徒然草第137段『花は盛りに』ですね。」
「徒然草を知っている小学生って…」
サラッとぼやく時行とその解説をする中川にボルボ達は呆然としていた。
「いいか!わしらの目的はマナーのなってない若者から花見を守ることだ!」
「大袈裟だろ両津。」
「そこで本田!」
「なんで僕!?」
竹刀を向けた両津に驚く本田。
「お前が暴走族を集めてこの辺りの治安維持部隊を編成しろ!ポイ捨てさえさせないように厳しく見張れ!」
「は、はい~!」
「次にボルボと左近寺!お前達はわしと一緒に場所取りだ!中川が署にここでお花見するように伝達している。その日まで寝ずの番をして死守するぞ!」
「おう!」
「分かった!」
ボルボと左近寺も仕方なく両津に付き合うことにした。ゴミを片付けシートを敷き地雷を仕掛ける。
「馬鹿野郎!水元公園を戦場にする気か!」
両津が竹刀でボルボをしばく。両津はボルボから拳銃や手榴弾を没収する。
そして、花見当日
花見に来た新葛飾署のメンバー達はまだ咲いている桜を見て唸っていた。
「ほぉ。素晴らしい。」
「5月でも桜は綺麗ですな。」
「どうぞ!お待ちしておりました!」
両津が屯田署長と大原部長を招き一番いい場所に案内した。既に中川が料理や酒を用意していた。
「少し遅れた花見もいいですな署長!」
「まったくだ!」
両津が注いだ酒を飲んで上機嫌になる。他の署員達も賑やかに花見を楽しむ。しかし、両津達はヘルメットや竹刀を持って巡回していた。
「いいか!わしらが花見の模範となるように見張る!花見に相応しくない行動は絶対にするなよ!」
両津が睨みを効かせる。早速見つけたのか竹刀を振り回しながら移動した。
「そこ!カラオケ禁止!」
「えぇ~!」
「俺達だけだからいいじゃないか。」
「そこ!バーベキューするな!」
「うるさい原始人!」
次々と禁止していく両津。その様子を時行は麗子達と一緒に見ていた。
「張り切ってますね。」
「実際にカラオケやバーベキューは花見では禁止されているわ。」
「でも、あれはやりすぎだな。」
纏が立ち上がり両津を説得しに行く。
「綺麗ですね。」
「桜と言えば桜の木の下には死体が埋まっているってよく言いましたよね?」
「えぇっ!?」
椎名の発言に時行が仰天する。
「それは大事件じゃないですか!?」
「違うわよ時行君。梶井基次郎の『櫻の樹の下には』という小説の冒頭文よ。『桜の木の下には屍体が埋まっている。』ね。実際に死体が埋まっているからと言って桜が綺麗になるわけではないわよ。」
「よ、良かったです。」
ホッと安心した時行が舞い散る桜の花びらを見て和んでいる。そこに椎名が「驚かせてすみません。」と謝りながらお茶を注ぐ。
「時行様って桜がお好きなんですね。」
「はい。吉野で見た桜が綺麗でした。」
「吉野の桜は海外でも大人気なのよ。」
時行が昔(南北朝時代)に見た桜を思い出している。そこに両津が来た。
「どうだ時行?」
「綺麗です。」
「だろ。温暖化や害虫のせいで減少しているが桜は日本が誇る文化だ。日本全国どこに行っても違う桜が楽しめる。そこが外国人にも人気の理由よ。」
両津が花見酒を楽しみ笑う。時行も一緒に花見を楽しむ。
「日本の桜を守ることは日本の文化を守ることに繋がる。時代がどれだけ経ってもこれは変えたらいかん。」
両津が熱く語る。既に酔っているようだ。何度も椎名に酒を注がせる。本田やボルボ、左近寺も呼んでどんちゃん騒ぎが始まる。それに時行も乗る。
「今日はわしらだけの花見だ!どんどん楽しむぞ!」
「「「おぉー!」」」
大原部長と屯田署長がトイレに行っているため両津を中心に宴会が始まる。さっきまでカラオケを禁止していたのに大声で歌い始める。時行も笑いながら飲む。すると、だんだん顔が赤くなってきた。
「私も〜歌っていいですか〜?」
「時行君?」
麗子が時行を心配する。纏がよく見ると時行はいつの間にか両津が飲んでいた酒を飲んでいた。
「時行、間違えてカンキチのを飲んだのか。」
麗子と纏が時行に水を飲ませる。その間も両津達は騒いでいる。水を飲んだ時行はフラフラした足取りで桜の木に近付く。
「桜は散る姿も美しいですよ〜!早く見てみたいです〜!」
「よぅし!それならわしが見せてやろう!」
時行の言葉に反応した両津がボルボ達を呼んで桜に登り始めた。そのまま桜の枝を振り強引に桜吹雪を演出した。
「どうだ時行!」
「綺麗です!」
「そうか!」
両津はさらに調子に乗り他の桜の木も揺らし始めた。中川達が止めるも両津はボルボ達も巻き込み派手に暴れた。
「これがホントの桜吹雪よ!」
ここまで酔った両津はもう止まらない。時行を喜ばせようと桜の幹を蹴り枝を振り桜を散らせていく。周りが文句を言うも聞こえていない。
「両津先輩!さすがにやり過ぎでは…」
「甘い!桜は散る姿が美しい!」
椎名が両津を宥めようとしても無駄だった。そして、全ての桜を散らせた両津達は酔いが覚めその光景を目の当たりにする。そこに大原部長と屯田署長が戻って来た。2人も目を丸くして散った桜を見ていた。
「これは…」
「一体…」
酔いが覚めやったことの大きさを知り青ざめる両津達。しかし、もう後の祭りだ。署員達の視線が刺さる。水元公園の桜が見る影もない。
「両津。」
「ぶ、部長…」
そして…
「1番の害虫は両津だったな。」
「責任をとって桜の養分となれ。」
「待ってください!わしらを養分にしても桜は咲きませんよ!」
「麗子さんが言っていた小説みたいになりましたね。」
「両ちゃん達じゃ綺麗な桜にはならないと思うわ。」
縛った両津達を埋めようとする大原部長達。それを見て呆れる時行達であった。
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