時行達は息を飲んでいた。目の前には大きくて煌びやかな神輿とそれを担ぐ屈強な男達がいた。
時行達は今、浅草の三社祭に来ていた。両津と纏の付き添いで弧太郎達と一緒にいる。
「スゲーっすよ!俺、こんな迫力初めてっす!」
「だろ!三社祭は浅草が一年のうち最も活気付く祭りだからな!」
時行達は離れないようにしっかりくっついて歩く。人の波にさらわれそうになる。それを手を繋いでなんとか離れないようにしている。
「凄い人だかりですね。」
「離れるなよ。迷子になるぞ。」
両津の忠告に全員で「は〜い!」と返事する。両津が腕時計で時間を確認しながら移動する。人混みを抜け前に出る。法被を着た男達がいる。そこに両津が行く。
「よぉ!」
「おぉ、両さん。」
男達と知り合いのようで両津は彼らと何か会話していた。両津が時行達を呼ぶ。すると、子供用の法被を渡した。
「お前達も神輿担いでみるか?」
「いいんすか!?」
弧太郎達がキラキラした目で両津を見る。両津は時行達を子供神輿に連れて行く。
「神輿を担ぐのは久しぶりじゃの。」
「子供神輿自体そんなに見かけることがないからな。」
しばらく神輿を担ぐと疲れたのか一休みする。
「スゲー疲れるっす。」
「この程度でバテるとこの先大変だぞ。」
両津がスポーツ飲料を渡す。
「いつもは見るだけでしたがたまには体験するのもいいですね。」
雪長がカメラで撮った写真を見て感想を言う。時行達が後ろから覗き込む。
「すっごく綺麗に撮れてるじゃん!」
「上手い。」
亜也と静が感嘆する。一休み終えて再び浅草内を見て回る。いろんな屋台が並んでいてどこに行こうか悩んでいる。そこに両津が注意喚起した。
「気を付けろよ。祭りはスリなどが多い。」
「そうなんすか?」
「あぁ。人が多いから近付いても警戒され難い。屋台や神輿に気を取られて財布とかに気を配ることがなくなる。スリにとっては1番やりやすい状況だ。」
「その通り!」
両津が弧太郎達に説明しているとどこからか声が聞こえてきた。どこだと周りを見て探すと「ソイヤ!ソイヤ!」と掛け声が聞こえてきた。両津が汗を流す。そこに神輿を担いだ男達が突入してきた。驚く時行達。神輿に乗っている男が両津を見下ろす。
「お前は!」
「そう!私が夏祭りの時季に出動するエリート刑事!お祭り刑事だ!」
神輿に乗っている法被に褌姿の男が自己紹介する。それより最初の迫力に圧された時行達が目を丸くしていた。時行は一応両津にも説明を求める。
「両さん。この人達は…」
「お祭り刑事。特殊刑事のメンバーだ。」
特殊刑事。その単語を聞いた時行は逃走を図るも両津が捕まえる。弧太郎達はお祭り刑事の周りをくるくる回って観察している。
「なんか凄くゴツい人達っすね。」
「当然だ。皆、警視庁の機動隊のエリート達だ。」
弧太郎の質問にお祭り刑事が答える。
「両津の言う通り夏祭りは犯罪が多い!特にスリやひったくりなどの窃盗が多い!だからこそ!我々お祭り刑事の出番なのだ!」
「いや、別にそんな格好しなくても普通の警察官の制服着て巡回すれば…」
両津が口出しする。
「甘い!制服姿の警官は確かに犯罪を抑制する効果がある!しかし!それでは純粋に祭りを楽しめない!だからこそ祭りに合わせた格好が必要なのだ!」
「そうなんですね。」
「いや、ただの屁理屈だ。」
渚が納得するも両津はまだ怪しんでいる。お祭り刑事は両津に法被を渡す。両津は嫌な顔をする。
「両津も用意しろ!」
「またやるのか!?」
「カンキチ、祭り好きだろ。」
「この祭りは参加したくない。」
纏に言われながらも法被を仕方なく着る。その様子を見ている時行にお祭り刑事は法被を渡した。
「君も着るんだ。」
「え?」
「そして、三社祭り刑事として共に祭りを犯罪から守るのだ!」
時行は目を点にする。後ろを振り向く。纏達は巻き込まれないように下がる。横を見る。両津が諦めろという視線を送る。
「あの、私ではその神輿を担ぐのは…」
「安心したまえ。」
お祭り刑事が口角を上げ笑うとまた「ソイヤ!ソイヤ!」という掛け声が聞こえてきた。しかし、さっきよりも若く幼い声だった。時行が声が聞こえる方向を見ると法被を着た少年達がやって来た。
「少年達の非行防止のため、僕達も出動しました!」
「こ、子供神輿…」
「そういやいたな。」
なんと、子供のお祭り刑事だった。
「時行君は子供お祭り刑事と一緒にパトロールしてもらう。」
「でも何故...」
「少年犯罪の多くは窃盗だ。万引き、ひったくり、スリ…その多くが未成年だ。」
お祭り刑事が教えてくれた。両津はお祭り刑事、時行は子供お祭り刑事のところに入る。纏は弧太郎達を連れて祭りの続きを楽しむ。
「まったく。ここまでする必要ないだろ。」
両津が文句を言う。その後ろでは時行が神輿を担ぎながらパトロールしていた。今までの特殊刑事の格好(真っ裸刑事)よりマシなので安堵している。
「あの、何故あなたは神輿に乗っているのですか?」
時行がリーダーの少年に聞く。
「僕は指揮をしている。」
「
「そうだ。オーケストラの指揮者と同じで全体の動きを統率している。」
「そ、そうなのですね。」
よく分かってないけど返事する時行。子供神輿は人気のようでいろんな人が写真や動画を撮っている。纏達も時行を撮影している。隣にいた檸檬も時行を見ていると人混みに押され少し前に出た。つい、後ろを振り返る。子供神輿を撮影している女性の懐に手を伸ばし財布を盗る男を見つけた。
「纏。」
檸檬は纏の服を引っ張る。「何?」と纏は聞いた。檸檬は財布を盗んだ男を指差す。
「あの人、スリじゃ。」
檸檬の言葉に纏はすぐ反応し男に近寄る。男の肩に手を伸ばし「あんたに聞きたいことがある。」と声をかけた。その時、纏の後ろにいた男が纏に体当たりした。その男は盗んだ男と一緒に逃げる。纏は体当たりした男を捕まえる。
「くそっ!スリ集団だ!」
纏が叫ぶと数人の男達が一斉に逃走した。その様子をお祭り刑事は見ていた。
「スリが出現した!お祭り刑事出動!」
「こちらも出動する!」
お祭り刑事が神輿に乗った状態でスリを追い始めた。子供お祭り刑事も神輿を担いだままお祭り刑事と同時に飛び出す。スリ集団は二手に別れる。お祭り刑事と子供お祭り刑事も二手に別れてスリ集団を追いかけた。
「なんだ!?神輿が追って来る!?」
スリは驚きながらも人混みを抜け車に乗り込む。
「おい!あいつら車で逃げる気だぞ!」
「両津。それをつけろ。」
両津の前で担いでいる男が両津にローラーブレードを渡す。両津は「まさか...」と言いながらローラーブレードを履く。
「ハイパー神輿!行け!!」
お祭り刑事の掛け声と共に猛スピードで駆け始めた。車が発進する。それを追いかけるお祭り刑事。
「神輿がまだ追ってきやがる!」
「なぁに。車には追い付けないさ。」
車に乗り一安心するスリ。しかし、お祭り刑事は逃がさない。車が道路に出てもお構い無し。猛スピードの神輿が追いかける。右に逃げても左に逃げても上手くバランスをとり追いかける。
「なんだあの神輿!?」
「相変わらずのテクニックだが怖い!」
だんじり祭の
「こちらお祭り刑事。犯人を逮捕した!」
一方、もう2人のスリを追いかけている子供お祭り刑事は路地へと入った。
「普通に追いかけた方がいいのでは!?」
時行が叫ぶも聞いていない。こっちもローラーブレードを履く。時行も言われて履く。
「ハイパー神輿!スピードアップ!」
子供お祭り刑事が叫ぶと神輿が猛スピードでスリを追いかけた。スリは狭い路地裏へ逃げる。すると、子供お祭り刑事は壁を伝い屋根へと上がった。これにはさすがの時行もビックリしている。
「私も似たようなことはしましたがここまでハチャメチャではありませんでしたよ。」
スリはまいたと思い笑っている。しかし、屋根から飛び下りた子供お祭り刑事を見て驚愕した。
「ガ、ガキならこのまま突破してやる!」
スリは子供お祭り刑事に向かって体当たりを仕掛ける。
「応戦!」
「え?」
子供お祭り刑事が叫ぶと一番前にいる2人が神輿からネットを発射した。スリは2人ともネットに絡まり身動きできなくなった。
「す、凄い…こんな神輿初めて見ました。」
当たり前だが初めて見る神輿に時行は呆然としていた。こうして、スリを全員逮捕したお祭り刑事は三社祭に再び参加する。時行も法被姿で纏達のところに戻ってきた。
「活躍したみたいじゃん!」
「いえ、まったくです。」
亜也が褒めるも時行は気まずい。時行は周りをキョロキョロ見渡す。両津がいない。
「あの、両さんは?」
「あそこじゃ。」
檸檬が指差す。そこにはお祭り刑事と一緒に神輿を担いでいた。「こんな祭りは嫌だぁぁぁ!」と叫んでいるのが聞こえる。
「多分、カンキチはあのままじゃ。」
「頑張ってください。」
無理矢理連れていかれた両津を見て苦笑いする時行達であった。
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