ある日、派出所で時行と両津はテレビを見ていた。ニュースで『老朽化などで多くの船が解体』と報じられている。
「まぁ、仕方ない。船…というより鉄の寿命がだいたい50年ぐらいだ。さらに雨風に晒されていればもっと寿命は縮まる。」
「私の時代は船の寿命なんて考えたことありませんでした。」
「お前はまず自分の寿命を考えないといけない時代だからな。」
両津は時行を見て顔をしかめる。すると、テレビに映る船に時行が興味を示した。漁船とは違い派手な見た目で椅子やテーブルなどの休憩場所がある大きな船だった。
「遊覧船か。」
「なんでしょうか?」
「主に観光のためゆっくりと動く船だ。」
両津が時行に遊覧船の説明をしていると「そうだ!」と言って立ち上がった。それに驚く時行。両津は中川も連れてどこかへ向かった。
着いた場所には大きな遊覧船があった。しかし、老朽化が原因なのか錆びだらけでとても綺麗とは言えなかった。「ここは?」と時行が聞く。
「確か古くなった遊覧船を東京都が解体しようとしたが所有者が頑なに反対してな。」
両津が遊覧船に近付くと海賊の船長みたいな服装、眼帯、フックを着けた男が「誰だ!?」と叫びながら遊覧船から現れた。両津達の前に華麗に飛び降りるが着地に失敗し前のめりに倒れた。
「え、え~と…あなたは?」
「わしか!?わしはこのグルージング号の船長、キャプテンホールドじゃ!」
「確か名前は加古井弁三。55歳。」
「その名で呼ぶな!」
無視して話を進める両津に加古井弁三もといキャプテンホールドが剣を振り回した。一応レプリカで危険性は無いものの両津は避けた。
「危ねぇ!」
「何度来ても無駄じゃぞ!絶対にこのグルージング号は渡さん!」
「違う!今回は儲け話を持ってきた!」
「嘘をつくな!どうせ船を解体すればその素材が金になるだろ!」
「違う!」
レプリカの剣を振り回し両津を追い払おうとする。そこに時行が割り込み落ち着かせる。
「本当に違うと思いますよ。」
「何?本当か?」
「何故、時行の言葉は信じるんだ。」
一安心した両津が再びホールドに話しかける。
「あんたの船を再び遊覧船として活用したい。」
「本当か!」
ホールドは目をキラキラさせて両津に近寄る。
「それはいい報せだ!是非、わしのグルージング号が世界に飛び立つのか!」
発想が飛びすぎているホールドを宥める両津。
「まずは船の修理だ。」
「船じゃない!グルージング号だ!」
「めんどくさい!」
両津は中川に頼みグルージング号の修理を行った。さらに、時行をマスコットキャラクターにしたポスターを作成し大々的に新しい遊覧船をアピールした。
その結果、グルージング号は外国人観光客を中心に人気となった。それにホールドは満足している。
「素晴らしいぞ!我がグルージング号がまた日の目を見るとは!」
「遊覧船自体数が減りこういう機会が少なくなっているからな。」
「水上観光は年々減り続けています。今こそこういう観光も復活させるべきなんでしょうね。」
中川が遊覧船から外の景色を撮影している観光客を見ながら話す。時行も遊覧船から眺める景色に夢中だ。スカイツリーが見えてきた。観光客達は我先にとスマホやカメラのシャッターをきる。
「どうだ時行?」
「素晴らしい眺めです!私が生きていた時代からは考えられませんでした。」
「だろうな。」
両津も時行の隣に並んでスカイツリーを眺めていた。
「何故、川の土手に桜の木が並んでいるか分かるか?」
「い、いえ。景観のため…でしょうか?」
時行が頭を捻りながら答える。両津は「いいや、違う。」と言い答えを教える。
「昔、大雨が多かった江戸時代では川の氾濫で土手が崩壊する事態が続いた。それを防ぐために桜の木を植えたんだ。そうすれば花見に来る客が土手を踏んで固めてくれるというわけだ。」
「なるほど。昔の人は凄いですね。」
「お前もその昔の人だぞ。」
両津の蘊蓄に時行は目を輝かせる。グルージング号を使った遊覧船商売は順調に進んでいた。両津は熱中症対策としてスポーツ飲料や汗ふきシートなどを販売し儲けている。
そんな商売を続けてから数日後、近年では稀な超大型台風が東京に接近していた。
『今年最大となる台風18号は…』
「かなりでかいな。」
「魅魔が起こした台風と同じぐらいの規模ですね。」
「南北朝にはあれを人為的に発生させれるヤツがいるのか…」
時行の発言に引く両津。そこに電話が来た。両津が出るとホールドからだった。
「どうした?」
『今すぐグルージング号に来てくれ!』
「無理だろ!今、台風が来ているだぞ!」
『いいから!』
電話が切れる。両津は中川を呼び急いで港に向かう。既に道路は冠水し車は思うように進まない。やっとのことで港に着くとホールドがグルージング号から水を出していた。
「来たか!早速だが水を出すのを手伝え!」
「意味無いだろ!晴れてからにしろ!」
「そんなの待ってられるか!」
ホールドがバケツを両津達に渡す。両津はやけくそだと水を汲んで出す。時行と中川も手伝うも嵐は次第に強くなっていく。
「ダメだ!もう逃げるぞ!」
両津が叫ぶも聞こえない。その時、グルージング号が大きく揺れた。なんだと思い確認するとグルージング号が高波によって港へ押し上げられたのだ。こうなってしまったら錨も縄も意味がない。グルージング号は風の向くまま冠水した道路へと出航してしまう。
「まずい!早く舵を!」
両津が命令する。慌ててホールドが舵を切ろうとするも固くて回らない。そこに時行が来て手伝うも全く動かない。時行は全体重をかけて回そうとした。その瞬間、バキッという嫌な音が聞こえた。「どうした!?」と両津がやって来ると折れた舵を持った時行がいた。
「馬鹿野郎!」
「すみません!」
「どうするんですか先輩!?」
中川が応援を呼ぼうとするも揺れた拍子にスマホを落としてしまう。雨も風もさらに激しくなっていく。グルージング号は道路に止まっていた車を踏み潰していく。
「なんだあれは!?」
「帆船が道路に!?」
通行人達が驚く。激しく揺れるグルージング号に中川が酔いそうになる。そんな中でも時行は凄まじいバランス感覚で姿勢を保っていた。
「南北朝の武士はこれぐらいじゃ動じないのか。」
両津が驚く。このままではどこかにぶつかってしまう。両津はもうダメだと判断して逃げようとする。しかし、ロープが足に絡まり動けなくなってしまった。
「まずい!助けてくれ!」
「すみません先輩!」
「わしもこれ以上は無理だ。」
「貴様らー!」
両津は逃げようとする中川とホールドを投げ縄の要領で捕まえた。しかし、時行は投げ縄を避けグルージング号から逃げることができた。
「先輩!?」
「何をする!?」
「くそ~!こうなったらお前達だけでも道連れだ!」
グルージング号はまっすぐ新葛飾署へと進んでいく。その新葛飾署には大原部長と屯田署長がいた。
「しばらくは止みそうにありませんね。」
「そうだな。現時点で死傷者0なのが幸いだ。」
大原部長と屯田署長が会話している。すると、こちらに近付いてくる何かが見えてきた。グルージング号だ。グルージング号がまっすぐこちらに向かってきていた。
「お、大原君。あれは…なんだね?」
「わ、私にもよく…」
「助けて~!」
「あの声は…」
台風の中きらでも聞こえる声。聞き慣れた特徴のある声。その声の主がチラッと見えた。
「両津!?それに中川君も!?」
「ぶ、部長~!」
「両津君!?」
両津が叫ぶももう遅い。グルージング号はそのまま新葛飾署に突撃した。
「両津~!」
「部長~!」
それからしばらくして
「あれ?両ちゃんと圭ちゃんは?」
「署をめちゃくちゃにしたからな。アフリカのアジスアベバ市警に転勤となった。グルージング号と一緒な。」
派出所に両津と中川がいないことが気になった麗子に大原部長が告げる。それを聞いた時行は気まずくなるのであった。
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