ある日、派出所で両津が競馬新聞を読んでいると中川と麗子が入って来た。その手にはミネラルウォーターのペットボトルがある。
「なんだそれは?」
「ミネラルウォーターですよ先輩。」
中川が見せる。
「近年雨不足な上に気温上昇の影響で水不足になってますからね。」
「今も令和の米騒動で備蓄米がどうのこうの言ってる時に次は水か。世も末だな。」
「止めてください先輩。」
中川が入れたミネラルウォーターを両津が飲む。
「味が全然分からん。」
「両ちゃんは何飲んでも一緒でしょ。」
「そう言うなら…椎名。」
「はい?」
休憩室から椎名が出て来る。両津が「飲んでみろ。」とミネラルウォーターを出す。椎名は恐る恐るミネラルウォーターを飲んでみた。
「どうだ?」
「普通の水ですけど。」
「嘘ぉ!?」
麗子が驚く。それに椎名も驚く。
「それ見ろ。わしら一般人は水の味なんて気にしないんだ。それをコンビニはやれ六甲の天然水だ霧島の天然水だと売ってるがわしらからしたら水は飲めればいいんだよ。」
両津が麗子からペットボトルを取りミネラルウォーターをガブガブ飲む。それを止めてペットボトルを奪い返す麗子。「あっ、パトロールの時間だ。」と言って椎名が出るのとすれ違いに大原部長がやって来た。
「どうしたんだね。」
「両ちゃんが私のミネラルウォーターをガブガブ飲むのよ。」
「ミネラルウォーター?」
大原部長が中川からもらったミネラルウォーターを飲んでみる。
「普通の水じゃないか?」
「部長もやっぱりそう思いますよね!こいつらはわざわざ水を買っているんですよ!水なんて水道水で十分です!」
「それは極端すぎますよ先輩。」
「そんなに凄いのかこの水は?」
大原部長が疑問に思っているので中川が説明する。
「ミネラルウォーターは天然水を原水とし、ミネラル分を調整・添加・除去したり、他の水をブレンドしたりといった人工的な加工が行われた水です。水源が明確で、品質管理が厳格に行われているので、安心して飲むことが出来ます。」
中川が大原部長にミネラルウォーターの種類を見せる。その種類の多さに大原部長は驚いている。
「こんなにあるのか!?」
「硬度や含まれるミネラルの種類によって様々な種類のミネラルウォーターがあります。例えばカルシウムやマグネシウムの含有量を示す硬度が低い軟水はスッキリ飲みやすく爽やかで高い硬水は苦味が強く飲みごたえがあります。また、シリカ水や水素水、pH値などで選ぶのもありです。」
「そこまでして水を選ぶのか。」
大原部長と一緒に説明を聞いていた両津が驚きながら呆れる。そこに時行がやって来た。両津は丁度いいと思い時行を呼ぶ。
「時行、これ飲んでみろ。」
「分かりました。」
時行がミネラルウォーターを飲んでみる。
「爽やかで喉越しがいいですね。」
「分かるのか。」
両津がもう一回飲むも「全然分からん。」と呟く。麗子が嬉しそうに近寄る。
「時行君は分かるのね。」
「えぇ。」
「南北朝じゃこんな水ばっかだったのか?」
「いい水もありましたけど基本は川の水ですね。」
「さすが南北朝。逞しいな。」
両津が驚く。大原部長はミネラルウォーターに興味を持ったのか中川と麗子からいろいろと聞いていた。
その夜、大原部長は自宅で中川と麗子にオススメされたミネラルウォーターを飲んでみる。
「これがミネラルウォーターか。普通の水と違う気がするぞ。」
ミネラルウォーターが気に入ったのか大原部長はさらにミネラルウォーターを調べる。良子が隣で気になって見る。「あなた…」と声をかけるも大原部長はミネラルウォーターに夢中になっていた。
後日
「部長がウォーターサーバーを買った?」
「はい。なんでも、もう普通の水じゃ満足出来ないと言って…」
「部長は凝り性だからな。」
両津と中川が会話していると大原部長がやってきた。いつものように席に座る大原部長。その手には水筒があった。両津が気になり「部長。何ですかそれ?」と聞く。すると、大原部長は自慢気な顔して説明した。
「これは最新のウォーターサーバーで入れた新鮮なミネラルウォーターだ。」
「変わらないでしょ。」
「バカモン!味音痴のお前には分からないだろうがミネラルウォーターというのは…」
大原部長が両津に叱責に似た口調でミネラルウォーターを説明する。その声に休憩室にいた時行が反応しヒョコっと顔を出した。
「中川さん。何があったのですか?」
「う~ん…いつも通りかな?」
大原部長は説明を終えると時計を見た。
「おっと。本署に書類を届けなくては。」
「僕もパトロールに行ってきます。」
大原部長と中川が派出所から出る。両津は机に置いてある水筒を見る。気になって水筒を手に取り蓋を開ける。それを時行が見ている。
「普通の水だろ。」
両津が水筒の水をコップに入れて飲む。「全然分からん。」と呟く。時行にも飲ませる。時行は「スッキリとした味わいがします。」と評価した。
「時行には分かるのか。」
両津がさらに飲もうとした瞬間、窓にいた猫が飛び出し両津に飛びかかった。そのせいで水筒は落ちミネラルウォーターが溢れてしまった。
「てめぇ!」
両津が猫を掴む。猫は両津の顔を引っ掻き逃げる。時行が慌てて水筒を持ち上げるもミネラルウォーターはほとんどなかった。
「ど、どうしましょう。」
「気にすんな。」
両津は台所に行くと水筒に水道水を入れた。
「これで誤魔化す。」
「ダメですよ!バレます!」
「お前が黙っていたらばれん。」
両津は水筒を元の場所に置く。時行が大丈夫かと思いながらドキドキしていると大原部長が戻って来た。水筒を取り水を飲む。
「いやぁ~。さすが、ウォーターサーバーのミネラルウォーターは違う!両津には分からないだろう。」
「そ、そうでね!」
両津は冷や汗かきながら答える。大原部長は違和感を感じることなく水筒を持って派出所をまた出て行った。それを見た両津は「ほらな。」と呟きながら時行を見た。
「水なんて飲めればいいんだよ。」
「本当にバレませんでしたね。」
「そもそも水道水が飲める国は日本を入れてもわずか9ヵ国だけだ。それほど日本は恵まれているんだぞ。それを態々ミネラルウォーターに頼る必要がない。」
「そうなのですね。」
時行が両津の蘊蓄に耳を傾ける。
「日本は水質基準が世界トップクラスで厳しいからな。アメリカは水道水に大腸菌が5%まで含まれてもいいが日本は0%だ。さらに、自然が豊かでいい水が出来る環境とトイレなどの下水もしっかり浄水する施設があるからな。大雨でマンホールから溢れた水まで綺麗だと世界から驚かれるレベルだぞ。」
「凄い国なのですね日本って。」
「その日本の礎となったのはお前達先人だぞ。」
両津が時行にツッコミする。
その夜も大原部長はミネラルウォーターに凝っていた。ウォーターサーバーからミネラルウォーターを飲んでは感極まっていた。
「素晴らしい!やっぱり日本のミネラルウォーターは世界一!」
良子はミネラルウォーターを飲んでも首を傾げている。そらからも大原部長はミネラルウォーターを買ったりウォーターサーバーを使ったりしてミネラルウォーターを飲み続けていた。
それから数日後
「う~ん。なんか違う。」
ミネラルウォーターを飲んでいた大原部長がしかめっ面をした。
「この水はわしには合わん。」
大原部長はウォーターサーバーのミネラルウォーターを飲むも同じようにしかめっ面になった。
「これもなんか違うぞ。」
凝り性の大原部長はさらに様々なミネラルウォーターを飲んでいく。良子が止めるも大原部長はミネラルウォーターを変えては飲み、変えては飲みを繰り返した。
数日後
「もう全部が同じ水に思えてきて…」
「ねっ。だから言ったでしょ。わしらに水の味なんて区別つかないって。」
「飲み過ぎはよくないですね。」
最終的に水道水を飲んでいる大原部長と指摘する両津。そんな2人を見る時行と中川であった。
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