ある日、派出所の休憩室で両津と中川がテレビを見ている。そこに時行がやって来た。気になって見てみるとニュースで大手商社の課長がパワハラで懲戒免職されたと報じられていた。
「最近こんなのばっかだな。」
「そうですね。」
「どうかされたのですか?」
時行が声をかける。両津と中川が振り向いた。
「最近のニュースは暗いものばっかりだという話をしていた。」
時行も一緒にニュースを見る。
「最近はハラスメントが流行語候補に選ばれるぐらい増加しましたからね。」
「パワハラやモラハラ、セクハラならともかく最近はなんでもハラスメントにする傾向がある。」
「ハラスメントハラスメントですね。」
「そんなんだから人と人との繋がりが消え疎遠になるんだよ。」
両津が煎餅を食べながら愚痴を言う。
「私の頃にはハラスメントなんて言葉ありませんでしたね。」
「だろうな。」
時行の言葉に両津が反応する。すると、何か思い付いたのか立ち上がった。
「そうだ!」
両津は休憩室から出ると麗子と椎名に声をかけた。
「久しぶりに一発芸大会するぞ!」
両津の提案に麗子は「また?」と答えるが椎名は?を浮かべていた。椎名は両津に「なんですかそれ?」と聞くと両津は手始めに中川に一発芸を披露するように言った。
「分かりました。では…」
中川は了承すると髪型を少し変えた。そして…
「一発芸。花輪クン。『ベイビー、どんな状況でも楽しむ事が、人生を有意義に過ごすコツさ。』」
「ちびまる子ちゃんの花輪クンか!」
中川のものまねに両津と麗子はもちろん椎名も笑った。
「あの中川先輩が…」
「中川はこういうのは得意だぞ。」
「えっと…」
「時行は知らないか。ちびまる子ちゃんに登場するキャラクターだ。中川のようにキザなお金持ちだ。」
両津は「次は麗子がやってみろ。」と無茶振りする。椎名が麗子もやるのかと驚いていると麗子は髪型をツインテールに変えた。
「月に代わっておしおきよ!」
「いいぞ麗子!」
「確かセーラームーンでしたね。」
両津達は盛り上がってるが時行はもちろん世代じゃないので分かっていない。
「両さん。」
「時行も何かやってみろ。」
両津が時行に無茶振りした。時行はう~んと考えると何か思い出したのか髪を前に乱し這いながら近付いてきた。
「う、う~。きっと来る~。」
「貞子だ。」
「時行様…」
「この前わしと見た映画のワンシーンだな。」
両津が時行に一発芸に感心していると大原部長が来た。
「何をしている?」
「部長!これはあれですよ!一発芸大会!」
「またそんなくだらんことをしているのか。」
「部長は前回大恥掻きましたからね。」
大原部長は両津を睨み仕事に戻る。両津は椎名にも一発芸を披露してみろと言う。椎名はしばらく考えもじもじさせながら両津達の前に立った。
「で、では…アルミ缶の上にある蜜柑。」
机にあった蜜柑とアルミ缶を持っておやじギャグするもヒュ~という風の音だけしかしなかった。
「え、え~と…おやじギャグですね。」
「だから、即興芸は苦手なんですよぉ!」
椎名が顔を真っ赤にして頭を抱える。そこにニコニコの大原部長が来て椎名の肩を叩き励ました。
「それでいいんだ椎名君!それが普通なのだよ!」
「部長、自分と同レベルを見つけて嬉しそうだ。」
両津が呆れた顔で大原部長を見る。
翌日
両津主催で新葛飾署一発芸大会が開かれた。ノリノリの署員達が各々一発芸を披露する。それを大原部長と屯田署長は呆然と見ていた。
「やはり分からん。」
2人とも今時のネタについていけない。以前、コントでやらかしたことがあるのを完全に記憶から消している。
「よしいけ中川!」
「分かりました。では…マジ卍!」
「いいぞー!」
両津達が盛り上がっている。すると、時行が大原部長と屯田署長にふった。
「大原さんも屯田さんもどうでしょうか?」
「わしはやらん。」
「大原君に同じ。」
「時行!部長と署長はこういうのは無理だ。今の笑いを全く理解出来ない古い人なんだから。」
両津が2人を挑発するように時行に話す。それにイラッときた大原部長がならばとステージに上がった。時行達が固唾を飲んで見守る。
「では…蕎麦屋はわしの
凍った。時行は真顔で両津達は凍えるような雰囲気に飲まれた。幸い早矢と恵比寿は笑ってくれる。次は屯田署長だ。ステージに上がり大原部長の隣に並ぶ。
「え~と…橋で走るな。」
さらに、凍えるような吹雪が両津達を襲う。麗子達なんか吹き飛ばされてしまった。
「やはり、ダメだ。」
「笑ってくれてるの早矢さんと恵比寿さんだけですね。」
「なら、時行君はどうだ?」
「私ですか?」
大原部長が時行にふった。時行は考えながらステージに上がる。みんなが時行を見る。時行は深呼吸をした。
「では、ここで小話を。」
時行が始める。
「昔、日本人は袴という物を大層大事にしていたそうです。」
「なんか始まったぞ。」
「ある人は遺言でこんなことを言ったそうです。」
時行がこそこそ話するように前屈みになった。
「わしの袴は
時行の渾身の駄洒落に両津達はクスッと笑った。時行は恥ずかしくなり顔を赤くする。
「部長さんと同じ駄洒落なのに面白いですね。」
「さすがです時行様。」
「部長や署長と違って駄洒落が上品だ。」
「うるさい!」
大原部長と屯田署長が叫ぶ。
「部長も署長もあの頃から全く変わってませんよ。」
「いいんだ!」
「そもそもそんな物自体必要ない!」
大原部長と屯田署長の言葉に両津が反論する。
「その考えが古い!人にとって大切なのはコミュニケーションです!人だけではない!動物や昆虫ですらコミュニケーションがあるのに最近の人間はコミュニケーション不足です!」
両津が力説する。
「人間のコミュニケーションで大切なのは笑顔ですよ。事実、笑顔になることで幸せホルモンが分泌されるという研究すらあります。なのに、最近は笑いがない!笑顔がない!」
「その通り。」
両津の力説に賛同する声がした。振り向くと絵崎がいた。
「両津君の言う通り。特に日本人のコミュニケーションは必要最低限。仕事のみが多い。ハラスメントや個人で完結する趣味の増加が原因だ。」
「珍しく意見が合うじゃねぇか。」
「ところで、何故絵崎さんが?」
時行が絵崎に質問する。
「私は最近の日本人には笑顔が足りないと思っていてね。人を笑顔にする薬を作った。」
「嫌な予感しかしない。」
「その薬を両津君に飲んでもらおうと思って来たのだ。」
両津がずっこけた。
「またかよ!わしはもうやらんぞ!」
「人を笑顔にする薬ってどんな物なのですか?」
「彼を参考にした。」
絵崎が恵比寿を指差す。
「彼は常に笑顔だ。それは周りの人も笑顔にする。」
「わしは昔、笑顔というより笑い過ぎて苦労したことがあるぞ。」
「まぁ、そう言わんとこの薬は大丈夫だ。…多分。」
「おい!今、多分と言ったぞ!」
絵崎がフラスコに入った液体を両津に飲ませようとした。
「待て絵崎!薬というからカプセルだと思ったがまさか原液か!?」
「さぁ飲みたまえ。」
「断る!」
両津がフラスコを弾く。フラスコは地面に落ち割れ液体が気化しガスが署員達を包む。両津達はなんとか逃げる。ガスはすぐに消える。ガスを浴びたはずの中川達の身体に異常は見られないようだ。
「失敗か?」
「何か一発芸してみたまえ。」
「じゃあ、部長。お願いします。」
「何故わしなんだ!?」
両津にふられ大原部長が仕方なくやる。
「オホンッ!…ビールを浴
大原部長のおやじギャグ。本来ならさっきと同じように吹雪が吹くだろうが中川達が大爆笑した。それに驚く両津達。ガスを浴びた署員は全員笑顔になっている。
しかし、怖い。全員が恵比寿のようにゲラゲラ笑い転がっている。それを見た両津達は引いていた。
「薬は成功したようだね。」
「不気味だ。」
「笑顔もほどほどにってことですね。」
笑顔になっている中川達を見て笑い過ぎもよくないと思った両津達であった。
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