土曜日の校庭
「それでわしが呼ばれたわけか。」
時行が呼んだ両津がいた。この場にいるのはいつものメンバーだけだった。結局、ドッジボールに参加するのはこのメンバーだった。ドッジボールに出場するチームには女子が最低1人は入れることとなっているため都合はいい。
両津がボールを持って立っている。その前には弧太郎がいる。昨日のことで元気がない。
「こんなのやって意味あるんすか?」
「ある!」
「確かに強い人からの指導はいい練習になりますね。」
雪長も賛成する。
「とにかく!弧太郎!両さんを鎌倉武士だと思って戦って!」
「何故鎌倉武士?」
両津が投げる。弧太郎は受け止めようと思いつつも気迫に負け取れない。
「おい!そんなのでいいんか!?お前は時行の期待を裏切るのか!?」
両津が叫ぶ。弧太郎はまだ震えている。両津がもう一発投げる。弧太郎は取れない。すると、弧太郎の周りに時行達が集まった。
「一緒にやりましょう!」
スマホで撮影している静以外が集まる。両津が頷く。時行達も頷く。両津は勢いよく投げた。雪長や亜矢がなんとか取ろうとする。時行と渚は避けている。両津の連投が激しくなる。渚達が必死になる中、時行は満面の笑みで避けていた。
「やっぱり時行君って逃げるのが好きな変態な気がする。」
「言わないであげましょう。」
雪長達は時行から目を反らす。しかし、弧太郎は時行に釘付けになっていた。どんな苦境でも楽しそうに逃げる時行に弧太郎は自分を奮い立たせた。
「ああ、もう!やってやる!やってやるっすよ!」
「その意気だ弧太郎!」
時行が笑う。両津が投げまくる。弧太郎もボールを取り投げ返した。それに合わせて雪長達も両津にボールを投げる。それでも両津の圧勝ではあった。しかし、みんないい笑顔をしている。
「つ、疲れた…」
「でも、いい練習にはなったでしょう。」
「凄いのお主ら。」
いつの間にか静の隣にいた檸檬が誉める。静はスマホで撮った動画を見ている。
「どうだ?上手く撮れたのか?」
「うん、撮れた。」
静が動画を見せる。が、いろいろと加工されていて両津が子供達を虐めているような動画になっていた。
「これでこの警官は私の下僕♡」
「脅迫する気か!」
「いきなりどうしたの!?」
頬を染める静に両津達がツッコミを入れる。気を取り直して練習を始める。両津が投げるボールを受け止めたり避けたりする練習。動く両津にボールを当てる練習。パスの練習。両津が考えた特訓を熟していく時行達。檸檬は練習に参加していない静に話しかける。
「お主は練習しないのか?」
「私は軍師。フィジカルで勝負はしない。雪長君と考えた作戦を遂行させるだけ。」
「なるほどじゃ。」
「檸檬さんはドッジボールに出るのでしょうか?」
「私は出ないぞ。」
2人でクスクス笑いながら会話する。
そして、ドッジボール大会当日
あれから猛特訓した時行達は強くなっていた。弧太郎を中心としたフォーメーションで次々と相手チームを撃破していく。対する6年3組も難なく相手チームを撃破する。その時の様子を静が時行達に報告する。
「やっぱり平野先輩は基本的に戦わない。戦闘は全て薙村先輩がやってる。」
「やはりそうですか。」
雪長が頷く。
「先週の実戦の目的は私達の心を折ると同時に私達の戦闘力を知るためでもあったでしょう。自分の手札を見せずに相手の手札を探る。なかなかの策士です。」
「君達、それ本当にドッジボールの会議?」
審判していた先生が雪長達の会議に唖然としている。そこからも難なく相手チームを全て倒して下級生部門で優勝した。平野達のチームも上級生部門で優勝した。
「それでは、特別マッチとして2年2組と6年3組のの対戦を始めます。」
両チームが並ぶ。先頭に立つ雪長が平野と睨み合う。
「君達と対戦出来て嬉しいよ。」
「私もです。」
平野は時行達を見て笑う。弧太郎の目は飢えた猛獣のやうだった。
(あの時よりも戦意が上がっている。面白い。)
弧太郎以外には目をやらない。雪長、弧太郎、亜矢、時行、渚、静はそれぞれ前にいる相手を見る。
「では、試合開始!」
「よろしくお願いします!」
平野チームへのリベンジマッチが今、始まった。