逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

220 / 229
やらせで見せましょうサバイバル!

 ある日、派出所で両津は求人チラシをしかめっ面で見ていた。

 

「どうかされたのですか?」

「今、金が欲しくてな。手軽に稼げるバイトを探している途中だ。」

 

 両津がペラペラ捲るとある求人広告に目が止まった。

『無人島ロケ 日給1万円 期間1週間』

 と記載されていた。

 

「1日1万円…1週間で7万円!条件は…体力のある方。これはまさにわし向けのバイトだ!」

 

 両津は両目を¥に変えている。両津は早速採用試験に参加した。内容は腕立て伏せや重量挙げなどの典型的な体力試験だ。もちろん、両津なら問題なく試験は合格した。

 

「合格者は君達5人だな。日時と場所、予定表を書いた冊子を渡す。くれぐれも遅れないように。」

 

 ディレクターが両津達に渡す。

 

「ディレクター。このロケにわしの子を連れていいですか?」

「何故?」

「わしの子もサバイバルのプロなんですよ。」

「まぁ。君が面倒見るなら許可しよう。」

 

 ロケ当日

 無人島へ向かうフェリーに時行がいた。海中を泳ぐ魚を見てはしゃいでいる。

 

「気持ちいいですね!」

「だろ!」

「子連れでくるとは。」

 

 時行と両津を見て呆れている他の合格者達。両津達は無人島に着くと準備を始めた。そこにディレクターがやってきた。

 

「改めて自己紹介するぞ!俺がディレクターの八良瀬太郎だ!」

「やらせたろう?」

「時行。アクセントは頭にしろ。」

 

 八良瀬が両津達に説明する。そこに1人の男がフェリーから降りてきた。周りにはメイクやマネージャー達がいる。その内の1人と八良瀬が握手する。

 

「あの人は?」

「確かタレントの河里児白だ。」

「かわりにしろ?」

「だからアクセントは頭にしろ。」

 

 八良瀬が戻ってくる。

 

「よし!お前ら!今から『河里児白の無人島サバイバル』を始める!お前らはまずキャンプ出来そうな場所を探せ!」

「おい。河里がサバイバルするんだろ?あいつが自分で探すべきだろ。」

 

 両津の発言に八良瀬がブチキレた。

 

「馬鹿か!?タレントに傷が着いたらどうするつもりだ!?」

「だったら何故この企画にした!?」

「何かありましたか?」

「いえ!何もありません!」

 

 さっきまで握手していた男性にペコペコ頭を下げる八良瀬。八良瀬は男性が去っていくと物凄い顔で両津に迫った。

 

「いいか。タレントに傷1つ着けてみろ。この番組はポシャりお前らのバイト代はパァだ。」

「分かりましたよ。」

「なら、さっさと行け。」

 

 両津は渋々他のバイト達と一緒に探す。その間、河里は優雅にお茶していた。両津達は荷物を持ちながら森の中を歩く。

 

「無人島って言うけど東京からフェリーで約2時間で着くレベルたぞ。」

「しかも、携帯が通じる。」

 

 両津の後ろにいる男がスマホで場所を確認している。その間も時行は坂道を登り周りをキョロキョロ見回している。すると、洞窟を見つけた。

 

「両さん。こっちです。」

「おっ。いいところ見つけたじゃねぇか。」

 

 両津達が洞窟に入る。思っていた以上に広くキャンプしても大丈夫だと両津が判断した。洞窟内を歩いて降りると泉を見つけた。

 

「水だ!」

 

 両津が泉を懐中電灯で照らしているとバイトの1人が駆け寄った。泉を飲もうとした時、時行が泉に何かいるのを見つけた。「両さん。」と声をかけ指を差す。両津が時行が指差した先を照らす。

 

「待て。」

「なんだ?」

「あれはクロダイだ。この辺りの海に棲む魚だ。…ということはこの水は海から流れているんだな。」

「…ホントだ。この水、海水だ。」

 

 指を着けて舐めて確認した。

 

「けど、ここでいいんじゃないか?」

「確かにな。ネタにはなるだろ。」

 

 両津が八良瀬達を呼ぶ。八良瀬達も満足している。

 

「いいぞ!ここをキャンプ地としよう!」

 

 八良瀬が仕切り撮影を始めた。。河里が苦労した雰囲気を出して洞窟を見つけている。それを見て時行は怪訝な表情で見ていた。

 

「あれ、両さん達が頑張って見つけたはずなのに…」

「それがやらせってもんだ。狙った画を自由に撮れるメリットはあるがバレたら破滅のデメリットもある諸刃の剣だ。」

「詳しい…」

 

 両津の隣にいるバイトがボソッと呟く。続いては海で魚を捕るシーンの撮影らしい。もちろん、河里の代わりに両津達が捕ることになっている。

 

「よゐこ濱口ぐらいの気概を見せろ。」

 

 両津達が潜って探すも海の底にいるカサゴやタコぐらいしか捕れなかった。

 

「もっと大物を捕るシーンがほしい。」

「こっちの大変さを知らないで…」

 

 河里の発言にイラッとくる両津。それならばと時行を連れて海に出た。それから数十分で戻って来るとマグロを持って来た。マグロを釣るための道具など持ってない。

 

「どうやって?」

「わしが作った弓矢で時行がマグロのエラを射貫いて仕留めた。」

「大変でした!」

 

 両津が銛みたいな矢を見せる。全員が驚愕し言葉を失った状態で時行を見た。

 

「これでどうだ?」

「う、うん。これはやり過ぎ…」

 

 八良瀬達もさすがに無理があると判断しサバやアジを釣ることにした。もちろん、釣ったのは両津達である。なんとか八良瀬が設定した目標数に到達したがもう日が暮れていた。

 

「疲れましたね。」

「前も似たようなバイトをしたがこっちもキツいぞ。」

 

 フェリーの中でステーキを食べる河里達を尻目に両津達はフェリーの近くに建てたテントの中で寝た。

 

「1日目でこれだとキツいぞ。」

 

 両津の発言通りそこからの1週間は過酷だった。河里がフェリーで優雅に暮らしている間、両津達は必死に木を切り、火を起こし、食料を調達した。

 

「大変ですね。」

「まだ甘いぞ時行。海外には全裸の男女をジャングルや無人島で1ヶ月サバイバルさせる番組などがある。そんなのと比べると日本のサバイバルは優しいもんだ。」

「さすがの私でもそこまではしませんね。」

 

 時行が引いている。両津達が準備を終えると河里が苦労した雰囲気を出してサバイバルするのを繰り返していく。両津達はさすがに疲れたのか木陰で一休みしていた。

 

 そして、最終日

 途中棄権したバイトもいたが両津と時行はなんとか最後まで乗り切れた。もうすぐで撮影が終わると思うと若干体が軽くなった気がした。  

 いつものように釣りや採取で得た魚に山菜を持っていくと河里と八良瀬が何か話し合っていた。話が終わると八良瀬が両津に近寄って来た。

 

「丁度いい。君、原住民になってくれ。」

「は?」

 

 両津が嫌な顔をする。

 

「さっき話し合ったがやっぱり無人島に1人でサバイバルだと絵面が地味でね。偶然出会った原住民と交流を深めるシーンがほしい。」

「もうそれ無人島じゃねぇだろ。」

「君はまさに原住民にぴったりだ!」

「話を聞けぇ!」

 

 両津の抗議も虚しく原住民を演じる羽目になった。蔓や葉で作った服に全身泥でそれっぽく仕上げる。信憑性を増すために他のバイト達や撮影クルー、時行まで原住民にされる。

 

「こんなの絶対やらせとバレるだろ。」

「もうここまで来たらやるしかない。」

 

 両津達はお手製の槍を持ちタイミングを計る。そこに河里が来た。両津達は八良瀬の指示通りに原住民を演じ偶然を装って河里と接触した。

 

「なんと!無人島と思われた島に原住民が!」

「わざとらしい。」

 

 両津はテキトーに出鱈目な言葉を話しそれっぽく振る舞う。他の原住民役に代わらせた両津が時行のところに来る。

 

「お疲れ様です。」

「これも金のためだ。」

 

 両津達のところに再び河里が来た。すると、時行が訛りまくった言葉で対応した。さっきまでの品ある雰囲気が消え完全に野蛮な感じを醸し出していた。それに両津達は唖然としている。

 

「凄いな時行。」

「南部殿を真似て見ました。」

 

 戻って来た時行は少し顔を赤らめている。それからも撮影はなんとか順調に進みロケは終了した。元の姿に戻った両津達はフェリーに乗り東京に帰る。

 

「これで7万は安いだろ。倍にしろ。」

 

 両津はビールを飲みながら愚痴っていた。

 

「けど、体験出来ないことだったので私は楽しめましたよ。」

「そうか。まぁ、貰えるだけマシだろう。」

 

 後日

 

 『河里児白の無人島サバイバルやらせ疑惑!?』という題名で新聞の1面を飾っていた。その結果、番組は降板。両津達へのバイト代も消えた。

 

「だろうなと思ったよ!」

「やらせ過ぎた結果ですかね。」

 

 派出所で中川が新聞の内容を読む。それを聞き怒りながら叫ぶ両津がいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。