逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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路上販売戦略線!

 ある日、両津達は大原部長に呼ばれ新葛飾署に集合していた。

 

「路上販売?」

「そうだ。地域交流のためにバザーを開くことはあったがそれだと署まで来れない人達との交流は難しいとなり移動車でこちらから販売しに行こうという試みをしようという企画だ。」

「何故わしらが?」

「署長から直々の指名だ。」

 

 大原部長が両津達に売り物リストを配る。2人1組となり移動販売車で地域内で販売を実施し試験するというものだ。両津はリストを見る。

 

「分かりました。わしに任せてください!」

「お前だと不安しかない。」

 

 後日

 両津は時行を呼び移動販売車で売る場所を探していた。時行はモニターを見ている。そこには中川と麗子ペア、大原部長と雑ペア、丸井と椎名ペアが準備を始めている。

 

「両さん。他の皆さんは準備を始めてますよ。」

「条件に合う場所がない。」

 

 両津が場所を探していると早速中川と麗子ペアが販売を始めた。場所は近くに高校がある通学路だ。2人を見た高校生達は足を止めている。

 

「さすが中川さんと麗子さん。見映え凄いですね。」

「両方モデル顔負けだからな。人の目は引く。」

『初めまして。新葛飾署の中川圭一です。』

『同じく秋本麗子です。』

『僕達が紹介する商品はこちら。エルメスのバッグです。』

『お値段は破格の400万円です。』

 

 2人が紹介した商品に両津と時行はずっこけた。

 

「売れるかぁ!どこが破格だ!?」

 

 両津が叫ぶ。案の定誰も買おうとしない。時行は次に大原部長と雑ペアのモニターを見た。2人は人通りの多い駅前で販売を始めていた。

 

『わしらが紹介する商品はこちら。』

『雪舟の水墨画の掛け軸です。』

 

 両津と時行は黙った。

 

『雪舟は室町時代に水墨画で名を馳せた有名な…』

『そもそも掛け軸とは…』

「だんだん人が離れて行ってます。」

「だろうな。あれは販売じゃなく雑学自慢だ。誰も興味など示さん。」

 

 時行は次にと丸井と椎名ペアのモニターを見た。2人は近くに商店街がある通りを選んでいる。

 

『え、えっと…』

『僕達は…この蜜柑を売ります。』

「両さん。」

「あれは普通に売り込みが下手だ。」

 

 おどおどしている2人を尻目に両津はいい場所だと言い移動販売車を止めた。すぐに準備すると両津は近くのスーパーから米を購入した。

 

「始めるぞ時行。」

「私は何をすれば?」

「その都度わしが指示するからテキトーに相槌を打て。」

 

 両津はそこそこ人が集まるのを確認すると判断を始めた。

 

「いらっしゃい奥様方!わしらが今日紹介するのはこちら!最新の炊飯器!」

 

 両津と時行の販売をモニターで見ている中川達は圧されていた。両津は見に来た主婦に話しかける。

 

「奥さん!最近、旦那さんがご飯気にすることありませんか?」

「え、えぇ。」

「そんな時はこの炊飯器!」

 

 両津がさっき炊いておいたご飯を茶碗に入れて時行に食べさせる。

 

「こちらはさっきあそこのスーパーで買った備蓄米で早炊きしたご飯でございます!どうだ時行?」

「美味しいですね!」

「早炊きでもこの旨さ!これなら時間に追われること無し!」

 

 時行効果も乗りどんどん人が集まっていく。それを中川達はモニターで見ている。

 

「先輩の独壇場ですね。」

「両ちゃん上手いわね。」

「凄い。人が集まってきてますよ。」

「こういう才能だけはあるからな。」

「さすがですね両津先輩。」

「やっぱり凄いよ両さん。」

 

 中川達のところはほとんど売れていない。両津はどんどん売り込みを続ける。やって来た人達に炊いたごはんを試食させている。

 

「新米でも古米でも備蓄米でもこれさえあればどんな味にうるさい旦那さんでも満足間違いなし!時行、これいくらだと思う?」

「え、え~と…12万…ぐらいでしょうか?」

 

 両津が時行に12万と書いたメモを見せる。その通りに時行が答えた。

 

「最新の炊飯器ならそれぐらいはするよね。でもこの炊飯器はなんと!68000円!」

「えぇ!?」

 

 両津の発言に驚く時行。

 

「でも、8000は微妙ですね。かと言って2000円上げると家計に響くでしょう。…ということでもう値切りに値切って半額の6万円!」

「安いですね!」

 

 両津の前に集まった人達が感嘆する。

 

「やり口がジャパネットたかただぞ。」

 

 大原部長が愚痴を漏らす。そこからは主婦達が次々と炊飯器を買っていく。両津と時行の移動販売車の前には凄い人だかりが出来ていた。

 そして、販売時間が終了し全員新葛飾署に戻った。結果は中川、麗子ペアと大原部長、雑ペアは0。丸井、椎名ペアは3セット売れた。それに対し両津、時行ペアは完売となった。

 

「どうだ!」

 

 両津が大原部長達に向けて高らかに笑いながら指摘を始めた。

 

「まず部長と雑は客を見ていない!鑑定団じゃないんですよ!誰が知らない人の雑学自慢を聞きますか!?」

「うっ…」

 

 何も言えない大原部長と雑。

 

「中川と麗子は売る物がおかしい!今時の学生に高級バッグなんか買えると思うか!?」

「圭ちゃん、言わせておきましょう。」

 

 両津の叱責に中川が震えているのを麗子が宥める。

 

「丸井と椎名はまだいいが蜜柑なら近くのスーパーで売っている。売る場所が悪い。それとおどおどしすぎだ。もっと自信を持って売れ。」

 

 両津が持論を述べ始めた。

 

「まず誰に売るか!?それを決めるべきです!わしは節約する主婦層を狙って売っている!だから、売る場所は主婦が多い団地が近い場所を選んだ!次に近くに家電販売店が無いところ!そして、近くに備蓄米が売られているスーパーがあるところに決めた!」

 

 両津がコンセプトを話す。

 

「とにかく家計と時間を節約したい主婦がどうしたら買ってくれるか考えて売っている!それがこの結果だ!」

「確かに一理ある。」

 

 大原部長が悔しそうに睨む。結果、両津が中心となって移動販売を行うことが決定した。

 

「頼んだぞ両津君。」

「了解しました!大船に乗ったつもりでいてください!」

 

 屯田署長の期待に両津が胸を張る。

 

 後日

 両津は時行を連れて移動販売を開始した。客層を絞り場所を選び持ち前の商才でどんどん売り込んでいく。大原部長達も両津の下で頑張ってはいるが中々売れない。

 

「部長!ここはわしに任せてください!」

 

 大原部長の代わりに両津が売り込んでいく。そこからだんだん両津が時行と2人でやっていくようになった。両津のおかげで新葛飾署移動バザーの評判が良くなり屯田署長も喜んでいた。

 しかし、両津はまだ満足していない。両津はここから儲かる方法を模索した。署から設定された金額より高く設定し浮いた売り上げを着服するようになった。

 

「いいぞ。このままじゃんじゃん売り上げていけば署長もわしも喜ぶ。」

 

 両津はいい小遣い稼ぎになると判断し笑っていた。両津は設定額をだんだん上げていく。それでも商才で売れていく。しかし、上げすぎた結果、時行にだんだん怪しまれていった。

 

「両さん。最初の節約はどうなりました?」

「相手による。値段が高くても客が満足すればそれでよしだ。」

 

 両津は時行を無理矢理納得させようとした。それでも、時行の疑念は消えない。大原部長に聞いてみようと署に行く。そこには署長室で大原部長達がなにやら難しい顔をしていた。

 

「確かに売り上げは伸びていますが…」

「合わないわよね?」

「どうかされたのですか?」

 

 時行が気になり聞いてみる。

 

「両津のバザーで仕入れた値段と実際の売り上げが合わないんだ。」

「報告書には問題はないんですけど。」

「もしかしたら…」

 

 時行は両津が仕入れた商品を売る際に設定額を上げていることを大原部長達に話した。全員、なるほどと納得したと同時に呆れていた。

 

「両津の奴め…」

「完全にアウトですね。」

「両さんに言わないと。」

「待て丸井。」

 

 大原部長が丸井を止める。

 

「わしに考えがある。」

 

 大原部長は両津を署長室に呼んだ。

 

「両津。次の場所が決まった。行ってくれないか?」

「分かりました部長!」

 

 両津はさらに稼げると意気揚々と返事した。

 そして…

 

「どうした両津?全部売らんと帰れないぞ。」

『部長…ここ…誰もいない…全く売れない…』

「悲惨ですね。」

「自業自得よ。」

 

 人どこか建物すらないどこか分からない場所で太陽に照らされながら移動販売車の中で干からびていく両津。それをモニターで見ている時行達であった。

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