ある日、時行が派出所にやって来た。
「おはようございます!」
「おう!おはよう!」
両津が雑誌を読みながら挨拶を返す。そこに中川と麗子、椎名も入ってきた。
「だんだん暖かくなってきましたね。」
「もう高知や岐阜じゃあ桜の開花宣言が出たようだしな。」
両津はそう言いながらもキョロキョロ見回していた。
「どうかされたのですか?」
「いや。違和感があるだけだ。」
時行が?を浮かべているとガロロロ…という音が聞こえてきた。
「このやかましい空冷の音は…」
「ポルシェですね。」
両津達が派出所の外に出ると一台のポルシェが音をたてながら近付いてきた。しかし、エンストしたのか途中で止まってしまう。それを見た両津は汗を流した。
「まさか、あのパールホワイトのポルシェは…」
ポルシェから1人の男が出てきた。
「久しぶりだなスーパー貧乏人よ!この私、スーパー金持ちの白鳥麗次が来た!」
白鳥麗次 華麗に登場!
「このやろう!」
タイトルバックに登場した白鳥。両津がすかさず飛び出し白鳥を殴った。
「何をする!?」
「お前か!タイトルが無いから読者が混乱するだろ!さっさと戻せ!」
両津が白鳥の胸ぐらを掴み言い寄るも白鳥は必死に「嫌だ!」と否定した。その後ろで椎名が中川に聞く。
「誰でしたっけ?」
「白鳥だ!以前会っただろうが!」
「ほら、見ろ。1年以上出てないお前のことなんて誰も覚えてない。」
白鳥が頭を抱えてしまう。さすがに哀れと思った時行が白鳥に話をふる。
「今日はどのようなご用件でしょうか?」
「よくぞ聞いてくれた!今日こそ麗子さんと夜景を見ながらランデブーだ!」
白鳥が自慢のポルシェを見せるもいつの間にか子供達によって落書きされていた。白鳥が怒り心頭で子供達を追い払う。
「ここの子供はどうなってる!?何故毎度落書きするんだ!」
「令和になっても変わらんな。」
拭いても拭いても落書きが落ちないと嘆く白鳥。しかし、すぐに切り替えて麗子を誘った。
「イタリアンレストランでランチをとってドライブして夜景を見ながらディナーと行こうじゃないか。」
「よし。わしらも着いて行くぞ。」
両津の発言に白鳥が困惑する。
「何故、貴様が着いて来る!?」
「お前だけじゃ心配だからだ。」
白鳥は麗子と2人きりになりたかったが両津に押され仕方なく同行を許した。白鳥は麗子をポルシェに乗せて発進する。その後ろで両津、中川、時行、椎名がレンタカーで追跡した。
「何故わざわざレンタカーなんですか両津先輩?」
「中川のフェラーリだとあいつのプライドが傷付くからな。いい気分にさせて奢らせてもらううぞ。」
「やってることホステスと変わりませんね。」
運転席の中川がボソッとつっこむ。そうこうしていると前方のポルシェの動きがぎこちなくなった。また、ガタガタしている。
「ダメだな。白鳥の奴、またエンストするぞ。」
両津の心配が現実になった。白鳥のポルシェは何度もガタガタした後、エンストして止まった。しかも、車道のど真ん中のためすぐ渋滞になってしまった。
「やっぱり。中川、見てやれ。椎名は交通整理だ。」
両津の指示で中川がポルシェのトランクを開けエンジンを再始動させる。
「エンジン自体に問題はありませんね。」
「お前に問題があるということだ。」
「うるさい!」
なんとかポルシェが動きドライブを再開する。白鳥がランチのため、イタリアンレストランに到着した。中に入るが何か揉めている。両津達も一緒に入る。
「予約されていない!?」
「はい。白鳥様ですよね?今日のご予約にはありません。」
白鳥が確認を求める。
「白鳥様は…明日の正午にご予約なさっています。」
白鳥が黙る。予約日時を間違えていた。肩を落とす白鳥。哀れに思った両津が近くのうどん屋で昼食にした。
「イタリアンレストランの予定が…」
「予定なんて上手くいかんこともある!こういう時こそ臨機応変に変える頭を持つことだ!」
「確かにそうですね。私も予定が上手くいかず変更する時が多々ありました。」
「時行君の場合、重みが違いますね。」
落ち込む白鳥を励ます両津。昔を思い出す時行。その隣で冷や汗を流す中川。
「でも、麗子さんは饂飩よりイタリアンですよね!」
「私は饂飩も好きよ。」
ニッコリ笑って答える麗子。それに白鳥は自信を着けた。昼食を終え再びドライブをする。ちなみに、支払いは白鳥がした。
ドライブを再開したもののやっぱりポルシェはガタガタしている。すると、黒塗りのベンツが隣に来てぶつかった。中きら体格のいいサングラスのやくざが2人出て来る。
「両さん…」
「あ~あ。カモられたよ。」
両津が出て2人組のところへ向かう。
「おい兄ちゃん。下手な運転でぶつけてんじゃねぇよ。」
「修理代払ってもらおうか?」
「ま、待て。待ってくれ。」
「払わなくていいわよ。相手がわざとぶつかったんだから。」
「なんだとこのアマ!」
やくざがドアを開けようとする。そこに両津が来た。
「何してんだてめえら?」
「あん?あ、あんたは…」
「両津さん!?」
2人組はたじろいでいる。
「話ならわしが聞いてやる。」
「い、いえ!なんでもありません!」
「すみませんでした!」
2人は逃げるようにベンツに乗り去って行った。
「さすが両さん。」
「両津先輩ってやくざよりもやくざしてますよね。」
両津の迫力に時行と椎名が感嘆する。それから、ガタガタしたりエンストしたりフラフラしたり道を間違えたりまたエンストしたりと不安しかないドライブが続いた。
「麗子さん。今から長野県で絶好の夜景スポットに連れて行ってあげるよ。」
白鳥が意気揚々と運転するもまたエンストした。さすがの中川も何度もチェックして直すのは疲れるようだ。すると、麗子が運転席に座った。
「今度は私が運転してあげる。」
「え?あ、はい。」
白鳥が助手席に座る。すると、ポルシェが爆走した。
「麗子に変わったな。」
「麗子先輩ってあんな荒い運転するんですか?」
「するぞ。わしや中川よりも運転は荒いぞ。」
椎名が冷や汗を流して驚愕する。そのまま1度もエンストすることなく目的地に着いた。
「白鳥の運転だったら日をまたいでいたな。」
「そこまで言うこととないだろ!」
後から来た両津の言葉に白鳥がつっこむ。気を取り直し麗子に夜空を見せた。雲はあるが綺麗な星空が見れる。
「綺麗ですね。」
「長野県の山間は空気が澄んで周りに建物もないのでよく見えるんですよ。」
「白鳥にしてはいい場所を選んだじゃないか。」
(この前、テレビを見て良かった。)
好評なことに白鳥はホッとする。両津達が夜空を眺めていると白鳥がどこから連れて来たのか分からないピアニストとバイオリニストに演奏を頼んだ。
「さぁ、麗子さん。美しい夜空と美しい演奏と共にディナーといきましょう。」
白鳥が指を鳴らすと今度はシェフが来た。
「こいつら、この時間までスタンバイしてたのか。」
「お疲れ様です。」
白鳥と麗子だけの予定だったが両津達も交じりディナーを始めた。
「白鳥にしてはいいデートだったぞ!」
「"にしては"は余計だ!」
「でも、楽しかったわよ。」
「本当ですか!」
「普段はメタルぐらいしか聴かないのでなんか優雅な感じですね。」
「意外ですね。」
ワインを飲んで上機嫌の両津が白鳥を褒める。その隣で時行が夜空を眺めて感傷的になっていた。
(私が生きていた時代と変わらず綺麗ですね。)
「今日はとことん飲むぞ白鳥!」
「よし!いいだろう!」
両津達はクラシックな演奏を聞き夜空を眺めながらディナーを楽しんだ。
それから数日後
派出所でいつものようにしているとまた白鳥が来た。しかし、服はボロボロで涙を流している。それに時行が驚き駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「ま、また会社が倒産してスーパー貧乏人に逆戻りだよ。」
「令和になっても悲惨な奴だ。」
この前まで楽しく飲んでいたためさすがに可哀想と思う両津達であった。