逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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残念の報告

「何!?警察官を止める!?」

 

 その日は寮が壊れるほどの両津の叫びから始まった。残念の部屋でゲームしていた両津の叫びに時行や同僚達が耳を抑え悶える。

 

「はい。司法書士になろうかと思いまして。」

「司法書士って何ですか?」

 

 時行の質問に残念が答えてくれる。

 

「司法書士は不動産や会社の登記手続きの代理や供託、相続・遺言のサポート、簡易裁判所での借金トラブルなどを行う職業だよ。」

「なんか大変そうな仕事ですね。」

「簡単に言えば簡易的な弁護士だね。法務局や裁判所へ提出する書類の作成や財産、権利を守るための手続きも代行するから身近な町の法律家でもあるんだよ。」

「全然分からん。」

 

 時行の後ろで両津達が頭を抱えている。

 

「今はその資格取得のために試験勉強しているんだ。」

「資格…と言えば両さんもいっぱい資格を持っていましたね。」

「わしはそっちの資格はあまり持たん。」

「まぁ、両津の資格なんてほとんどがどこで使うか分からんもんばっかりだしな。」

「確かに。」

「やかましい!」

 

 両津が叫ぶ。試しにとどんな問題があるのか覗いてみる。しかし、分からなさすぎて冷や汗をかきまくる。両津達はさっさとゲームに戻る。テレビ画面には様々な生き物がいた。その中に丸っこくて可愛い生き物がいる。その生き物がこちらに話しかけてきた。

 

『ゴハン、チョウダイ。』

「両さん。ご飯を求めていますけど…」

「食わせるな。」

 

 両津の発言に残念が信じられないものを見た顔をする。両津は他の生き物にはちゃんとご飯をあげているし一緒に遊んでくれていた。

 

(それって虐待じゃ…)

 

 それから、その生き物が何度もおねだりするが両津は完全に無視した。

 その夜、残念は1人で勉強していた。しかし、ゲームの生き物のことが気になり過ぎて集中できない。

 

「確か両さんは…」

 

 残念はゲームを起動させた。テレビ画面には昼に見た生き物が弱っていた。

 

『ゴハン、チョウダイ…』

「うん!今あげるよ!」

 

 残念はなんとか操作して生き物に食べさせる。

 

『アリガトウ!』

「良かった。」

 

 残念はホッとして勉強の続きを始めた。

 

 翌日

 両津達が来て再びゲームを始めた。すると、あの生き物が2匹に増えていた。

 

「あれ?増えてますよ両さん。」

「可笑しい。」

 

 両津はしかめっ面をしながらテレビ画面を睨む。他の生き物がなんか減っている。

 

『ゴハン、チョウダイ。』

『ゴハン、チョウダイ。』

「ダメだ!」

(酷い…)

 

 両津の行動を横暴だと思った残念は震えていた。

 その日の夜も残念はこっそり生き物のお願いに答えてご飯を上げていた。

 

『アリガトウ!』

『アリガトウ!』

「どういたしまして。」

 

 残念は良いことしたと喜びながら勉強の続きをした。

 

 翌日

 またまた両津達が来て再びゲームを始めた。すると、今度は生き物が4匹に増えていた。

 

「両さん。さらに増えています。」

「何故だ…」

 

 両津がログを調べる。すると、残念を見た。残念は顔を背ける。

 

「おい残念。まさか、お前。こいつらにご飯あげてないだろうな?」

 

 両津の質問に分かりやすいギクッ!をした残念。なんとかしらばっくれる。

 

「い、いえ。知りませんよ。」

「だが、夜遅くログインした記録が残っているぞ。この時間に部屋にいるのはお前だけだろ。」

 

 両津がログを見せた。そこには確かに遅い時間にログインした記録があった。

 

「そ、その時間なら気分転換に外を歩いていましたよ!」

「ほぅ…」

 

 両津は疑いの目を向けながらもゲームの続きを始めた。

 

「くそ~。減らしてやる。」

 

 両津は生き物をあの手この手で減らそうと試みる。しかし、なかなか上手くいかないのか諦めて別のゲームを始めた。次のゲームは敵が出す問題を四択で答えるゲームだ。

 

「何々?この画像の人物は誰でしょう?…高師直、高師泰、足利尊氏、足利直義…時行、誰だ?」

「おそらく足利尊氏ですね。」

「正解だ!さすが時行!」

 

 両津に褒められ満更でもない表情の時行。次の問題に行く。

 

「三権分立の三権とは司法、立法と後は何でしょうか?…裁判、行政、憲法、商法…時行、どれだ?」

「分かりません。」

「行政ですよ。」

 

 悩む両津と時行に残念が答えてくれた。

 

「おぉ!正解だ!さすが東大卒!」

「警察官なんですから知っててくださいよ。」

「よし!次だ!」

 

 両津が次の問題に挑む。

 

『内閣に関する次の記述のうち間違っているものはどれか?

 

1 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うため、ある国務大臣につき両議院で不信任決議案が可決された場合には、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

2 内閣総理大臣について、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をしたため、法律の定めるところにより、両議院の協議会が聞かれたが、そこでも意見が一致しなかった場合には、衆議院の議決が国会の議決となる。

 

3 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。

 

4 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し内閣総理大臣が連署することを必要とする。』

 

 両津と時行は茫然とした。もう読む気すら失せていた。

 

「分かるか時行…」

「私には無理です。」

「いきなり問題の難易度上がり過ぎだろうが!」

 

 両津がコントローラーを投げる。それを見た残念が問題を読む。

 

「これ、今勉強しているところだ。」

 

 残念がボソッと呟く。

 

「先輩、その問題の答えは1です。両議院ではなく衆議院です。」

「なに!?」

 

 両津が急いで解答する。正解だ。それに喜ぶ両津と時行。

 

「よくやった残念!」

 

 それからも両津と時行は残念に手伝ってもらいゲームをクリアして行った。時間が過ぎ両津と時行が帰って行く。残念は1人になるとあのゲームの生き物が気になり起動させる。そこには例の生き物がたくさんいた。

 

『ゴハン、チョウダイ?』

『ゴハン、チョウダイ。』

『ゴハン、チョウダイ!』

「分かったよ。今、あげるね。」

 

 残念が生き物にご飯を食べさせようとしたがもうご飯がない。それを報告しようとしたら丸っこい生き物以外居ないことに気付いた。

 

「あれ?他の生き物達は?」

『イナイヨ。』

『ソレヨリゴハン!』

『ゴハン!』

『ゴハン、チョウダイ!』

 

 何度もねだってくる生き物達。

 

「ごめんね。もうご飯がないんだ。」

『ゴハン、マダアル!』

『ゴハン、マダアル!』

「えっと…どこに…?」

『ツギノゴハンハ…』

 

 一方、両津と一緒に帰っている時行が気になったことを両津に質問した。

 

「そういえば…両さんは1種類だけ食べさせないどころか追い出そうとした生き物がいましたね。あれは、何故でしょうか?」

「あいつか。あいつはバグ。通称"侵喰者"だ。なんでも食べてねずみ算式に増えていく厄介者だ。終いには他の生き物達を食べプレイヤーも食べるヤバい奴だ。だから、さっさと駆除しないと手遅れになる。」

 

『オマエダ!』

「ひいぃ~!」

 

 突如豹変したバグの群れが残念を襲う。残念は必死に逃げるもだんだん増えていくバグは襲うのを止めない。その夜は一晩中、残念の叫び声が響いた。

 翌日、両津達が部屋に入ると《ゲームオーバー》の文字が映っているテレビ画面と干からびている残念がいた。それを見た両津は「やっぱり」と思っていた。

 

 それから、数日後

 残念は司法書士試験に挑むもバグがトマウマになり集中できなかった。その結果、試験は不合格となってしまった。

 

 それから、また数日後

 

「大丈夫ですか残念さん?」

「ゲームに没頭したんだ。自業自得だろ。」

「先輩のせいだと思いますよ。」

 

 派出所の机に俯せで絶望している残念の残念な報告を両津達は受けていた。

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