ある日の派出所
両津達はベーゴマを楽しんでいた。
「時行。こうやって巻くんだ。これをチンコ巻きと言う。」
「チンコ巻き…」
「先輩。さすがに男巻きと呼んでください。」
両津が時行に教えていると誰か来た。
「やぁ!久しぶりだね諸君!」
「逃げるな時行。」
「嫌です!」
時行が即逃げする。それもそのはず、やって来たのは海パン刑事だったからだ。両津が時行を抑える。
「海パン刑事。何しに来たんだ?」
「今日は自転車の取り締まり日だが人手が足りないと言う。私も出るが君達にも手伝ってもらいたい。」
海パン刑事の用事に時行はホッとする。そこに海パン刑事が赤い海パンとネクタイを取り出した。
「さぁ、真っ裸刑事よ。私と共に違反者を取り締まるのだ。」
「お断りします!」
全力で拒否する時行。両津達は取り締まり場所に指定している公園に向かう。そこでは既に多くの自転車ドライバー達が検挙されていた。
「やっとる。やっとる。」
「先輩。祭りじゃないんですよ。」
両津がキョロキョロしていると小町と奈緒子がいた。
「よぉ。」
「あっ!原始人!」
「何しに来たのよ!」
「人手が足りない言うから無理矢理手伝わされてんだ。」
小町と奈緒子を嫌な顔して両津を見る。
「いらないわよ!」
「さっさと帰って!」
「すみません。邪魔になるようなことはしませんので。」
「「中川さ~ん!」」
2人は両津をはねのけ中川に駆け寄る。
「中川さんなら全然迷惑じゃありませんよ!」
「ずっと居てください!」
中川に言い寄る2人を尻目に両津は起き上がり周りを見る。
「やっぱりだが検挙される奴が多いな。」
「4月1日に16歳以上の自転車ドライバーの違反に対し青切符が導入されたことで検挙される人が格段に増えた。」
「自転車の違反の前に少年法の改正をしろ。」
両津は海パン刑事の指示の元、違反者の取り締まりに入った。
「だ~か~ら~!いきなぁり青切符とかぁ言ってぇ自転車取り締まるのは間違ってるだろ~うぃ~!」
「青切符の前にあんたは飲酒運転なんだよ!」
「俺は車を運転してるんじゃぁないんだよ~!」
「自転車も車だ!」
両津の目の前には明らかに酔っ払った男が警察官と言い争いしている。
「青切符はんた~い!」
「もう嫌だ!誰か代わってくれ!」
「あ~、分かった。わしが代わってやる。」
両津が警察官の代わりに対応した。
「お前、飲酒したら自転車も乗るのも違反対象になることを知ってるか?」
「・・・ぐ~!」
両津が話しかけた瞬間、相手は寝た。両津は拳銃を取り出す。それを時行が止める。
「そんなに寝たいなら永遠に眠らせてやる…」
「落ち着いてください両さん!」
時行が必死に止める横で椎名も苦戦していた。相手は高校生の男女で並列走行していたため止められていた。
「そんないきなり罰金だなんて理不尽過ぎます!」
「並列運転自体は昔から違反になっていますので…」
「昔からっていつ!?何時何分何秒!?」
椎名がプルプル震えている。
「そもそも自転車に乗る際の違法は学校で習っていませんか?」
「知らない。」
「習ったことない。」
「以前注意されたことは?」
「ない。」
「ありませ~ん。」
愚痴愚痴言っている高校生達にだんだんイライラしてくる椎名。
「とにかく!自転車による並列走行は違反金3000円になります。」
「不当だ!」
「詐欺よ!」
とうとう椎名がキレる。眼鏡を外し踵落としで机を真っ二つにした。それを見た2人は青ざめる。椎名は落ち着くと眼鏡をかけ直しニコッと笑った。
「素直に従ってくださいね。」
「「は、はい…」」
一方、両津は飲酒運転の男をチョークしていた。
「さっきから下手に出れば調子に乗りやがって~!何が暇人だ!てめえらのせいで仕事が増えてんだろうが!」
「両さ~ん!」
時行が必死に止める。そこに海パン刑事が来て飲酒運転の男を解放した。
「両津君。落ち着きたまえ。」
「どいつもこいつも自分が違反者だという自覚がねぇ…もう、いっそのこと自転車にも運転免許証を導入したらどうだ?」
「そこまでいくにはまだまだ遠いだろう。とにかく、両津君は私と共にパトロールして違反者を取り締まってくれ。」
両津はイライラを解消するため仕方なく海パン刑事と共にパトロールすることにした。すると、海パン刑事が両津に海パンとネクタイを渡した。
「おい、まさか…」
「私とパトロールするんだ。当然だろう。」
両津が嫌な顔をする。時行が両津に同情していると海パン刑事が時行にも海パンとネクタイを渡した。
「えっと…」
「君も共にパトロールしようではないか真っ裸刑事。」
時行は大量の汗を流した後、逃走を図る。しかし、あっという間に海パン刑事に捕まってしまった。そのまま時行は真っ裸刑事にされる。両津も観念して海パン刑事と同じ格好になった。
「自転車の違反者の前にわしらが公然猥褻で取り締まられるぞ。」
「また、こんな格好をするなんて…」
恥ずかしがる時行を椎名が撮りまくる。小町と奈緒子は両津にドン引きする。
「変態…」
「最低…」
「言い返せないのが悔しい…」
両津は一刻も早く離れたいため海パン刑事と時行と一緒にパトロールに出た。パトロールに出て分かったが自転車に乗ってる人が前より減っている。
「仕方ないとは言え、自転車に乗る奴が減ったな。」
「違反者の中には何が違反になるのか分からないまま取り締まられる者も多い。自転車による交通事故を減らすのが青切符の目的だが自転車に乗る者も減ってしまうのは本末転倒かもしれん。」
「なら、皆さん馬に乗れば良いのでは?」
「時行。全員が馬に乗れるわけではないぞ。」
「それに馬も軽車両で自転車と同じ扱いになるぞ。」
海パン刑事の言葉に時行が目を丸くさせた。
「では…私は自転車に乗ってあんなことを…」
「意外と時行もわしと同じことをしていたのか。」
自転車で道路を爆走する両津と馬で戦場を駆け抜けた時行という意外な共通点に両津が気付く。すると、前を走行している自転車の女性を見つけた。両津がよく見ると耳に何かを着けている。
「おい!そこの自転車に乗っている女性止まれ!」
両津の呼び声に女性はキョロキョロ見回し両津を見て目を丸くさせる。海パンとネクタイだけの男に呼び止められたらそうもなる。
「あ…えっと…」
「安心しろ。こんな格好だが立派な警察官だ。」
「立派ですかこれ?」
時行がボソッと呟く。両津はそれを無視して女性に近付く。
「あんた、イヤホンしながら自転車に乗るのは違反だぞ。」
「あ…ち、違います…」
「どこがだ?」
両津が圧をかける。そこに海パン刑事が来て女性の耳を見た。
「なるほど...もしかして...」
海パン刑事は突然手を動かした。それに答える女性。すると、カバンから一枚の紙を取り出した。
「なんだ?…診断書?」
女性が取り出したのは診断書だった。両津がよく読む。
「あんた…難聴か?」
女性が頷いた。女性が耳に着けていたのはイヤホンではなく補聴器だったのだ。それにずっこける両津。
「紛らわしいな!」
「そう怒るな両津君。」
海パン刑事が手話で女性と会話する。女性はホッとして去って行った。
「なんて言ったのですか?」
「次から警察官に止められた時はすぐに診断書を出すと良いと言った。」
「お前が手話出来るなんて初耳だぞ。」
「滑らかな動きをするのに丁度いいのでね。」
会話しながらパトロールしていると突如悲鳴が聞こえた。振り向くとバイクに乗っていた男がバッグを引ったくっていた。
「引ったくりだ!」
両津達が捕まえようとするもバッグは反対側の車道に出て逃走した。両津は近くで自転車に乗っていた男性のところへと向かう。
「おい!自転車を貸してくれ!」
「えぇ!?」
男性が戸惑うも両津は自転車を借り猛スピードで引ったくりを追いかけた。男性はヘルメットを外し目を丸くさせた。両津は車道に出て引ったくりを追いかける。
「嘗めるなよ!」
車を避け右側通行し信号を無視し歩道に移り鳴り響く遮断機を通過し両津がだんだん引ったくりに追い付いていく。そして、とうとう引ったくりを捕まえた。
「逮捕だ!」
「ちくしょー!変態に捕まった!」
「うるせぇ!」
こうして、両津は引ったくりを逮捕したのだが…
「『海パン姿で自転車に乗りノーヘル、速度超過、逆走、信号無視、一時不停止、歩行者妨害、遮断踏切立入りなどを行った警察官を厳重注意』…両津先輩、かなりやらかしましたね。」
「一応、犯人逮捕のためということで減給だけで済んだようですが…」
「あのバカにこそ青切符が必要だな。」
海パン姿で自転車を爆走させる両津の写真が新聞の一面にドでかく載っていた。