ドッジボール大会特別マッチ
下級生の優勝チームと上級生の優勝チームが対決する最後の催し。下級生チームは渚と亜矢を外野に出す。平野達は予想通り主力メンバー以外の2人を外野に出した。
「俺達は蟻だ。軍隊蟻だ。ただ相手を殲滅するのみ。」
「「「おう!」」」
「私達は勝つ!勝ってみんなに希望を灯すぞ!」
「「「はい!」」」
(これ、ドッジボールだよな…)
審判の先生が両チームの円陣を見て唖然とする。ドッジボール最後のバトルが始まる。
先攻後攻を決めるじゃんけんをしようとする。すると、平野が先攻を譲った。ボールを持った雪長が弧太郎にボールを渡す。
「作戦通りいくぞ。」
弧太郎が頷く。弧太郎は深呼吸すると思いっきり投げた。それを志郎が受け止める。
「ほぅ…この数日でなかなか強くなったじゃねぇか。でも、俺には届かない。」
志郎が豪速球を投げる。弧太郎は避けない。その時、静が弧太郎の前に出て受けた。ボールは背中に命中し落ちる。それを雪長が拾う。
「盾か。」
志郎が笑う。静は外野から戻って来る渚とハイタッチして外野に出るとその場に倒れ込んだ。
「非道い…体を汚された。」
「あれはお前が勝手に…ってうおぉ!」
涙を流す静に志郎がツッコミを入れている途中に弧太郎が投げる。志郎は間一髪で避けた。弧太郎が舌打ちする。
「危ねぇ!」
「くそっ!」
亜矢がボールを拾う。そのまま高く投げる。パスだ。しかし、それを乱児が取った。
「残念だったなぁ!志郎の兄貴!やっちゃってください!」
「ああ。」
志郎が投げる。それを今度は雪長が弾いた。そのボールを弧太郎が取る。
「前と同じだと思うなよ。」
「そうみたいだな。」
弧太郎が投げる。それを取って志郎が投げる。これを繰り返していた。すると、雪長がボールを取り損ねボールが床に落ちてしまう。
「長くは続かなかったようだな。」
(作戦通り…)
雪長が亜矢と代わって外野に行く時、心の中で笑っていた。亜矢が背伸びする。弧太郎がボールを持って前に出る。
「来いよ。一撃で沈めてやる。」
「いい度胸だ。」
志郎が挑発に乗って前に出る。弧太郎が思いっきりボールを投げた。志郎が受け止めようとするもボールは志郎の脇を掠めた。
(外した!?)
志郎がしかめっ面する。それと同時に後ろにいた白骨にボールが命中した。油断してした白骨はそのまま沈む。志郎が弧太郎を睨む。
「おかしいなぁ。俺が挑発した相手はお前なのによぉ。」
弧太郎が挑発する。志郎は舌打ちすると豪速球で投げた。それを弧太郎は受け止めた。
「コーチの球に比べれば全然大したことないっす。」
両津との修業が効いていた。もう志郎は怖くない。弧太郎が投げる。平野が取る。すると、志郎ではなく乱児にボールを渡した。
「お前がやれ。」
「あいよ!」
(乱児…特徴がないただのチンピラ。)
ドッジボール大会中、特に目立った活躍をしていない乱児を警戒する。が、乱児が投げたのは普通のボールだった。もちろん、弧太郎は簡単に取る。
「なんだよ脅かせやがって。全然大した球じゃねぇぜ!」
弧太郎が投げる。また、平野が取ると乱児に渡した。乱児が投げる。さっきと同じように取ろうとした瞬間、ボールが曲がり亜矢に命中した。ボールが落ち亜矢は外野に出てしまう。
(なんだあの軌道!?)
「驚いたか?乱児は直球と変化球を使い分けることが出来る。」
「隠し球かよ。」
弧太郎が驚く。しかし、雪長は冷静にパスを求める。ボールを持った渚が投げる。それを取ったのは脇にいた沈めてだった。静は雪長にパスして雪長は亜矢にパスする。それを繰り返し始めた。
「こいつら…」
「数ではこちらが上だ。目で追えない速さでもない。」
パスを続ける亜矢達。平野達が真ん中に固まってボールを目で追う。何周も続けているうちに外野から戻ってきた女子が目を眩ます。その女子に気を取られた一瞬、亜矢が投げたボールを弧太郎が取った。そのまま平野に向かって投げた。
(狙いは大将!)
ずっと同じ行動をしていた平野達は反応が遅れる。ボールは真っ直ぐ飛び命中した。しかし、平野ではなく平野が盾にした女子にだった。
「ま、マジかよ…」
「仲間を盾に…」
「これがドッジボールだ。」
「いや、違うじゃろ。」
見物していた檸檬がツッコむ。外野に出た女子の代わりに入った男子も盾になることが分かっているのか抵抗しない。転がってきたボールを拾って弧太郎が投げる。やっぱり平野はその男子を盾にして防いだ。ボールは乱児が拾う。
「もうあれは効かねぇぜ。」
乱児が投げる。さっきの変化球のせいで取りにいけない。そのまま内野と外野から攻撃してくる。必死に逃げる弧太郎達。そんな時でも時行は冷静に乱児を見ていた。
(乱児が変化球を投げる時、直球の時よりも肘が少しだけ上がっている。)
時行は冷静に観察していた。そして、乱児が直球を投げようとした。そのタイミングを待っていた。
「弧太郎!次は直球だ!」
「何!?」
乱児が直球を投げる。時行を信じた弧太郎がボールを受け止める。
「ナイスだぜ時行!」
「弧太郎、あれをしたい。」
「OKっすよ。」
弧太郎と時行が並ぶ。警戒する平野達。弧太郎と時行が走る。弧太郎が投げる構えをした。平野達は来ると直感し構える。しかし、時行にパスするだけだった。驚く平野達。それでも時行のボールなら簡単に取れると判断した。しかし、時行はすぐに後ろへ投げた。そこには渚がいた。
(しまった!さっきからこいつを見てなかった!)
志郎が気配のしなかった渚に驚く。渚は弧太郎の背中からジャンプすると上から狙い澄ましたような精確な一撃を志郎に命中させた。志郎は仰向けに倒れボールが落ちる。
「やった!これで逆転だよ!」
亜矢が喜ぶ。遂に残りは平野の乱児だけになった。乱児は何度も投げるが既に見切った時行の相手ではなかった。弧太郎がボールを取り投げる。投げた先には雪長がいる。乱児はすぐ雪長を見るがボールを持っていない。
(ない!?)
「こっちだよ。」
亜矢がボールを持っていた。反応が遅れる乱児に亜矢が渾身の一撃をお見舞いした。これで残りは平野だけ。このままいけば勝てる。そう思っていた。時行と渚以外は。
「やるじゃないか。さっきのはバレーの要領で持たずに弾いてパスしたというところが。弱者なりに作戦を立て牙を研いだ。あっぱれだ。だが、ここから俺が全滅させらばいいだけだ。」
ボールを拾う。来る…そう思った瞬間、弧太郎の足にボールが命中した。弧太郎は反応すら出来なかった。すぐ渚が拾って投げると簡単に取られてしまう。そのまま外野にいる志郎にパスした。そのまま志郎が白骨に、白骨が乱児に、乱児が平野のパスを繰り返す。
「これは…」
「そうだ。お前達が使った作戦だ。使わせてもらう。」
パスのスピードが速く目で追いつけない。そして、
「焦りが見えているぞ。」
平野が投げたボールは渚に命中した。その威力に渚は倒れてしまう。これで残るは時行のみ。
「渚!」
「策を使うのは効率良く勝つため。真っ向からでも俺達は強いぞ。」
転がったボールを拾う平野。1人になった時行は震えていた。
「時行…」
「時行君。」
(震えている。そうだろうな。さっきから見てたから分かる。お前はあのツリ目より強くない。1人じゃ取ることすら出来んだろ。)
勝ちを確信する平野。制限時間も刻々と迫っている。そんな中、時行は…
(残りは私だけ…私が当たってしまうと負け…凄い…楽しい!)
興奮していた。
「平野とやら。」
「ん?」
「私は鬼ごっこが好きだ。逃げるのが好きだ。私は今の状況が楽しい!」
時行の意外な返答に驚く。平野はつい笑ってしまう。
「ハハハハハハ!そうか!楽しいか!鬼ごっこねぇ…さしずめ俺はドッジボール鬼ってところか。いいだろう。逃げ好きのお前は俺が狩ってやろう。」
「望むところです!」
和 鬼 ご っ
令 こ
ド 《平野 将》 鬼
ッ ル
ジ ボ ー
ドッジボール大会ラストバトルは最高潮に盛り上がりを見せた。