逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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再び愛(!?)の北海道三人旅

 ある日

 新葛飾署で両津がコーヒーを飲んでいた。隣には時行もいる。そこに早矢が来た。

 

「すみません両津さん。」

「なんだ早矢?」

「相談が…」

 

 両津は場所を変え早矢の相談に乗る。

 

「両津さんは北海道に詳しいとお聞きしました。」

「まぁ。北海道は何度も行ってるからな。」

「一緒に旅行に行ってもらえませんか?」

 

 その一言に両津はコーヒーを吹き出した。ケホッケホッと咳き込みながら聞く。

 

「北海道にか!?」

「はい。札幌時計台と小樽運河と知床と富良野ラベンダー畑など北海道の名所を見て回りたいのです。」

「見事にバラバラ…」

 

 早矢が地図を開き行きたい場所をピックアップする。その間、両津は凄い量の汗を流す。

 

「これは…泊まりになると思うけど…」

「是非、よろしくお願いします。」

「ちょっとコーヒーを…」

 

 両津はワクワクしていた。早矢と北海道デートなんてロマンチックだ。

 

「そ、その旅行って…2人きり?」

「いえ。今回は時行君も一緒に来てほしいのです。」

 

 早矢が答える。

 

「そ、そうか…ならホテルを予約しようね。」

「旅館でお願いします。」

「旅館ね。い、いいよ…」

 

 両津はネットで3人が泊まれる旅館を探していた。

 

「み、見つけたけど…1部屋しかないよ…」

「構いませんわ。」

「そ、そうか!ならそこで決定ね!」

 

 ネット予約を済ませた両津はまるで家族旅行だと妄想にふけた。

 

 函館港にて

「早矢、これが北海道の海鮮料理だ。」

「美味しいですわ!」

「素晴らしいです!」

「だろ?わしは毎日のように食べているぞ。」

 

 知床半島にて

「迫力ありますわ!」

「あれがシャチだ。」

「さすが両津さんです!」

 

 函館山にて

「綺麗ですわ…」

「これが100万ドルの夜景と言われる函館山から見る函館の景色さ。」

「凄いですね…」

「これを早矢にプレゼントしよう♡」

「素敵ですわ両津さん♡」

 

「…両津さん?」

 

 妄想にふけている両津に早矢が呼び掛ける。

 

「失礼。ちょっと旅行プランを考えていた。」

「そうでしたのね。」

「わしに任せろ!飛びっきりの北海道旅行にしてやる!」

「ありがとうございます!それと、お誕生日に差し上げた和服でいらしてくれますか?」

「もちろん!」

 

 両津は完全に浮かれニヤニヤしていた。

 

「北海道だから成田空港から飛行機で行くことになるがいいか!?」

「はい。」

 

 両津は飛行機の予約も済ませる。早矢と別れた後、ウッキウキで署内をスキップした。

 

 数日後

 

「やっぱりお前は和服が似合うな。」

「ありがとうございます!」

 

 両津と時行は和服で成田空港にいた。両津はウキウキ気分で早矢を待つ。そこに早矢が来た。彼女も和服を着ており凄く似合っている。

 

「おはようございます。」

「いやぁっ!待っていたよ!」

「うむ。おはよう。」

 

 両津が駆け寄ると早矢の隣に剣ノ介がいた。両津は勢い余ってずっこける。

 

「早矢のお父様!?」

 

 両津は顎が外れるレベルで驚いている。そこに時行が来る。

 

「おはようございます。」

「おはようございます時行君。」

「えっと…」

「私は父のお見送りにきました。」

 

 顎を直した両津が汗だらだらで聞く。

 

「ま、まさか…一緒に旅行する人って…」

「父ですわ。」

 

 両津が震え出す。

 

「そうなのですか?私は両さんから早矢さんと旅行と…」

「ちょっと待ったぁ!」

 

 両津が時行の口を塞ぐ。

 

「そうなのか?」

「い、いえ!とんでもない!お父様と一緒の旅行と時行にはちゃんと伝えてあります!」

 

 とんでもない勘違いをしていた両津は汗だらだらの状態で時行と一緒に剣ノ介に土下座する。

 

「本日はよろしくお願いします!!」

「うむ。」

「では、お父様。お気を付けて。」

「うむ。」

 

 早矢が去って行く。それを見送る剣ノ介。その剣ノ介を見て放心状態の両津。その両津を揺すっている時行。

 

(まずい。早矢の父は食事も礼儀作法も別格に厳しい。)

「両さん?」

「両津!」

「は、はい!」

 

 両津が我に返りビシッと気を付けの姿勢をとる。すると、剣ノ介が両津に近付いた。

 

「姿勢が曲がっているぞ。」

 

 剣ノ介が両津の姿勢を正す。

 

「背骨が地面に対して90°になるように。それと、顎は…」

「長くなりそうですね。」

 

 剣ノ介が両津の姿勢を正しているとそろそろ出発の時刻だということに時行が気付いた。慌てて両津に伝える。

 

「まずい!乗り遅れるとこれからの予定が全部パァだ!」

 

 両津と時行は慌てて向かうも剣ノ介は堂々と歩いていた。

 

「慌てるな。武道家とはいついかなる時でも堂々としているものだ」

「航空機は1分1秒が大切なんです!」

 

 なんとか旅客機に乗れた両津達。しかし、窓から外を覗いている時行に対して両津は隣の剣ノ介を見ていた。圧倒的なオーラで周りから浮いている。

 

「この状態で二泊三日なんて身体が持たん…」

 

 旅客機が札幌国際空港に到着する。両津はヘトヘトになり缶コーヒーを飲む。そこに剣ノ介が来る。

 

「両津。缶コーヒーの飲み方が違う。」

 

 剣ノ介は扇子を取り出し広げる。そこには角度が書かれていてまるで分度器のようになっていた。

 

「首は30°。手は腰に。缶コーヒーの角度は13°!」

「ごほぉっ!?」

 

 剣ノ介がいきなり缶コーヒーを上げたため両津はコーヒーを鼻で飲んでしまい噎せた。

 

「こ、コーヒーが鼻に…」

「相変わらず作法がなっとらんな。」

 

 両津は噎せながらも剣ノ介を案内する。

 

「そういえば…この前会った時は越後屋と名乗ってませんでした?」

「バレた。」

 

 両津の顔が青ざめる。時行はそれ以上何も聞かなかった。両津は剣ノ介に札幌時計台を見せる。それからすぐに移動し今度は小樽運河を見せた。

 

「チクショー…早矢とデートのはずが…」

「大丈夫ですか両さん?」

 

 両津は次に知床半島を案内する。一緒に案内しててくれるガイドが指を差す。その先には熊がいた。熊がこちらに来る。ガイドが落ち着いて行動するように促すも剣ノ介が熊を睨む。その瞬間、熊は慌てて逃げて行った。

 

「そ、それでは…次に参りましょう…」

「両さん。熊が逃げましたよ。」

「分かる。」

 

 ガイドは両津達をフェリーに乗せて知床の海を案内する。すると、シャチの群れを見つけた。

 

「シャチは獰猛な上に知能が高い。鮫すら獲物にする海のギャングだぞ。」

「鬼ごっこしたら楽しそう。」

 

 時行が頬を紅潮させ興奮している。その隣で剣ノ介がまた睨んだ。すると、シャチの群れが逃げるように去って行った。

 

「両さん…」

「まさか、海のギャングまで逃げ出すとは…」

 

 初日の案内が終わり両津は剣ノ介を旅館に案内する。

 

「もうすぐで夕食の時間です。今回も素晴らしい和食をご用意しております。」

「うむ。椀盛はすっぽんの冷製。浅葱と生姜汁だ。向附(むこうづけ)は鱸の洗い梅肉醤油でな。蒸鮑もあるとよいな!あと天魚(あまご)南蛮煮。京都の鱧の子の揚げ物。それから…」

(またこれだよ。)

「凄いいっぱいですね。」

 

 両津はすぐにメモして旅館の厨房に行く。コック達に見せるも全員が無理だと言う。両津は「やっぱり。」と呟き中川に連絡した。すぐに中川が食材と料理人を連れて両津の元に来た。

 

「すまん中川!」

「それとこちら!剣ノ介さんが好きな日本酒です!」

「助かる!」

 

 急いで剣ノ介が注文した料理を作り提供する。剣ノ介は満足している様子だ。

 

「た、助かった…」

「ここまで凄い料理は初めてですね。」

 

 時行も剣ノ介が食べている料理に驚く。それから日本酒を2升瓶を何本も飲む。その匂いで時行が酔いかけている。

 

「時行でこれなのにいくら飲んでも酔わんとは…」

 

 両津は「酒に強すぎる。」と呟く。時間はもう夜の9時になろうとしていた。すると、剣ノ介が道着に着替えた。

 

「両津。北条。着いてこい。」

「は、はい!」

 

 剣ノ介は両津と時行を連れて鍛練を始めた。

 

「まずは走り込み!」

「も、もう…3時間ぶっ続けで…走ってる…」

「もうダメです。」

 

 国道12号線を延々と走らされる両津達。

 

「次!正拳突き1万回!」

「ひぃぃぃ~!!」

「えっと…今何回目でしょうか…」

 

 暗い森の中で延々と正拳突きをする両津達。

 

「組手50試合!」

「ぎゃあ~!!」

「頑張ってください…」

 

 剣ノ介と組手をやらされる両津と応援している時行。

 

 約5時間も稽古をしてやっと剣ノ介が寝る。その隣で両津と時行はヘトヘトになって倒れていた。

 

「け、剣ノ介さんなら土岐頼遠と戦えますね…」

「さすが磯鷲流のトップ…」

 

 2人は息を整え寝ようと準備する。その時、剣ノ介が起きた。

 

「ど、どうされました!?」

「充分寝た。」

「まだ15分しか…」

「充分だ。行くぞ。」

 

 剣ノ介は身支度を済ませ竹刀を持つと両津と時行を連れて出る。両津は中川を急いで呼ぶ。

 

「まだ4時ですよ!」

「頼むから準備していてくれ!」

「来い!」

「はい!」

 

 剣ノ介に呼ばれ両津は後を着いて行く。

 

「素振り1万回!」

「死ぬ~!」

「無心で…」

 

 素振りをする両津達。

 

「遠泳40km!」

「オホーツク海で遠泳は無理です!」

「し、死にそうです…」

 

 稚内から飛び込み流氷をかき分け遠泳する両津達。時行は逃げようとこっそりと宗谷岬から離れる。そこに泳ぎきった剣ノ介が来る。

 

「北条!」

「はい!」

 

 時行はビクッとし背筋を伸ばした。剣ノ介は厳しい目で時行を見る。

 

「いい姿勢だ。早矢の目に狂いはない。」

 

 意外といい反応だったことに驚く時行。

 

「所作から気品が見て取れる。お前の親の教育が素晴らしい証拠だ。」

 

 時行は少し嬉しくなる。

 

「剣ノ介さんは…」

「おい!?人が浮いてるぞ!?」

 

 時行が剣ノ介に質問しようとした瞬間、騒がしくなった。駆けつけて見ると両津が浮いていた。

 

「両さぁん!?」

「情けない。」

 

 剣ノ介が飛び込み両津を連れて来る。

 

「両津!」

「は、はい!」

「次だ!」

「はいぃ~!」

「次は富良野まで走り込み!」

「もうやだぁ~!」

 

 両津は剣ノ介に付き合わされ延々と稽古をされる。その結果、もう観光する気力すらなかった。結局、残りは時行と途中参加の中川でなんとか持たせた。

 

 後日

 

「お疲れ様でした。」

「三途の川が見えた…諏訪頼重が手招きしてた…」

「その相手は私ではないでしょうか?」

 

 ぐったりとなっている両津。そこに早矢が来た。

 

「ありがとうございます両津さん、時行君。おかげさまで父は大変満足していました。」

「良かったです。」

 

 ホッとする両津達。すると、早矢が世界地図を広げた。

 

「次は香港、モスクワ、マドリード、ロンドン、カイロ、リオデジャネイロ、ニューヨークの磯鷲流道場支部視察に是非両津さんと時行君もお連れしたいと…」

「い、いやぁ~…その日は予定がびっしりで…」

「空輸が大変ですね…」

「身体も持ちませんね。」

 

 早矢からの誘いをやんわり断る両津であった。

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