「空き家?」
両津がコーヒーを飲みながら中川の話を聞いていた。
「はい。最近、日本各地で空き家の問題が発生していまして…」
「そもそも空き家などとっとと解体してしまえばいいだろ?」
「そうはいかないんです。」
中川が空き家の説明をする。
「居住者が急死したり相続の放棄などで誰も使うことが無くなった建物は管理が難しく簡単に解体はできません。ですが、このまま放っておくと倒壊の危険や景観問題、さらには犯罪に使われる危険性まであるんです。」
「話は分かったがそれをわしにどうしろと?」
「葛飾区にも空き家が大量にありそれをどうにかしてほしいと区長から先輩にお願いが…」
「空き家で町起こししてほしいってことか。」
両津は缶コーヒーを飲み終えると中川が空き家の画像を見せた。その空き家の画像に文句を言う。
「多すぎだろ!どんだけあるんだ?!」
「最近はマンションに住む人が多くなったのでその影響かと。」
「まぁ、まずは現物を見ないと始まらん。」
両津は中川と椎名、さらに時行も連れて画像の場所に向かう。空き家がずらりと並んでおり廃墟郡となっていた。
「まるで終末世界ですね。」
「人類がいなくなって百年後とかにありそうだ。」
(初めて吹雪殿と出会った村みたいですね。)
両津達は1つ1つ空き家を見て回る。どの空き家もかなり古く廊下を歩けばギシギシと鳴り響き壁を触ればボロボロと剥がれ落ち扉を開ければ埃が舞っていた。
「両津先輩。これ、もう業者案件では?」
「その業者の怠慢が重なってこうなったんだ。」
他の空き家もほとんど似た感じで最早ゴーストタウンになっていた。一通り見て回った両津達が話し合う。
「これを町起こしに使うのはかなり厳しいぞ。いっそのこと更地にして新しい施設建てた方がよっぽどいいぞ。」
「それも厳しいですよ先輩。この辺りは立地もあまり良くないのでスーパーや娯楽施設に向いていません。」
「どれもお化け屋敷みたいでしたね。」
両津が椎名の発言を聞く。その瞬間、何か閃いたようだ。
「それだ椎名!空き家をそのままお化け屋敷にすればいい!」
「先輩。それも無理があるかと。お化け屋敷にするにしても改装やスタッフなどに費用が…」
「わしに任せろ。」
両津はニヤリと笑う。少し時間が経過すると両津の祖父の勘兵衛が来た。
「いきなりいい儲け話があると聞かされたから来たが…これをどうしろと?」
「勘兵衛のところで引っ越し先の部屋にVRで家具とかを配置するシステムを作ってただろ。」
「VR内見のことか。」
勘兵衛がタブレットで両津達に見せる。実際は何もない部屋に勘兵衛が机や椅子などを簡単に配置していた。それに時行は驚いている。
「凄いですね。」
「これのおかげで引っ越しする際に想像しやすくなる。昔は実際に足を運んで見るしかなかったからな。」
「人手不足の今では重宝されてますね。」
「それで、これを使ってどうするつもりだ?」
勘兵衛は両津に頼まれていたVRゴーグルを渡す。両津はVRゴーグルを被り空き家に入る。
「いいぞ。これはピッタリだ。」
「何にですか?」
VRゴーグルを外した両津が時行達を見て提案をする。
「これを使って空き家をお化け屋敷にする!」
両津の提案にみんなポカンとしている。
「両津先輩。それも無理がありませんか?」
「大丈夫だ!VRなら客にゴーグルを着けるだけ!人件費はほぼかからん!それにVRなら人間ができない動きで驚かすこともできる!これからはVRの時代だ!」
両津が力説する。
「そもそも他の人の空き家ですよ。そんな勝手にしたら…」
「まずこんな物を放って置く奴が悪い!そっちが無視するならこっちも好きにやらせてもらう!」
「大丈夫なのですか両さん?」
時行が心配するも両津は強硬した。中川と勘兵衛の協力で舞台を作り宣伝した。
参加者はVRゴーグルを装着し空き家に入り奥にある判子を押し別の空き家でも同じように集め最後の空き家に奉納したらゴールで景品がもらえるという催しだ。
早速、時行と椎名ペアでやってみた。ビクビク怯えている椎名に対して時行は堂々としている。
「時行様。大丈夫なんですか?」
「はい。平気です。」
時行は御札の形をしたスタンプシートを手に進む。すると、何も無い空間から突然妖怪が現れた。椎名は悲鳴をあげるも時行は慣れている様子だった。チラッとVRゴーグルを外して見るもそこには何もいない。VRゴーグルを着け直すと妖怪がいた。
「VRって不思議ですね。」
震える椎名を連れて奥に行き判子を押す。すると、御札が少し出来上がった。時行と椎名が帰ろうと振り返った瞬間、落武者がいた。
「…」
椎名は無言でVRゴーグルを少し外して眼鏡を外した。
「どりゃー!」
「椎名さん!」
椎名が蹴りをするも当たるわけがない。そのまま壁を蹴破った。そこに監視カメラで見ていた両津が来て椎名を殴った。
「バカやろう!何壊してんだ!」
「すみません!」
両津は空き家を破壊しないように、眼鏡を外さないようにと椎名に言い聞かせた。椎名は頷き時行と一緒に次の空き家に入った。
「ここは大丈夫…ここは大丈夫…ここは...」
椎名がブツブツ言っている。その時、床を這ってくる髪の長い女が襲ってきた。「ぎゃー!」と叫び逃げようとするも時行は?を浮かべていた。どうやら、時行のVRゴーグルには椎名が見た女は映ってないようだ。
「時行様は見えてないのですか!?」
「はい。私には何も見えていません。」
眼鏡を外さない椎名は最早叫ぶだけの女になっていた。椎名のVRゴーグルにのみ映る魑魅魍魎。時行が次の判子を押す頃には叫び過ぎて喉を痛めていた。
「これは面白いぞ。」
「確かに普通のお化け屋敷と違って人によって見えているものが違うというのは新鮮ですね。」
「わしのVRゴーグルなら簡単に好きな時に好きなものを出せるぞ。」
別の場所で見ていた両津がこれならいけると確信した。
そして、『VR空き家お化け屋敷』という名前で催しを開いた。早速、噂が噂を呼び客足が激増した。1人でも複数人でも楽しめるように様々な工夫をする。
「いいぞ。ちゃんと動いてる。」
「今までのお化け屋敷とは違うからな。予算もそんなにかからないし空き家の再利用できて金も儲かる。」
「VRゴーグルがあればどこでもお化け屋敷になるってのはいいアイデアだ。」
両津と勘兵衛がモニターを見てニヤニヤしている。
「よし!これを流行らせる!空き家の新しい使い方だ!」
「空き家の内装を元にしたVRを体再現することで持ち主に懐かしい気持ちにさせることができるかもしれませんね。」
「それだ!」
両津は中川の提案に乗る。空き家の持ち主から当時のことを聞きそれをVRで再現させることで空き家に対する考えを改めてもらったりした。
空き家はVRのおかげでお化け屋敷や思い出作りなど様々な活用法ができた。テレビや雑誌も挙って両津のアイデアに乗る。
「どんどん空き家に対する考え方が変わっていったな。」
「そうですね。私の時代はすぐに取り壊すか没収、盗賊や武士が占領してました。」
「だから、お前の時代は特殊すぎるんだよ。」
雑誌を見て南北朝の空き家の末路を考える時行。両津のアイデアは様々なところで使われていき…
「こちら、VRペットにVRテニス、VRチャンバラ…」
「なんでもVRになりますね。」
「最早、空き家では収まりきらなくなりましたね。」
勘兵衛と協力しVRを使った様々な催しを開く両津であった。