ある日、時行が新葛飾署に行くと麗子達が踊っていた。みんな、汗をかきながら鳴子を振り踊っている。
「これは…」
「よぉ時行!」
時行の後ろから両津が声をかける。
「今、わしらがやっているのはよさこい踊りだ。」
「よさこいって確か…」
「毎年夏に高知で開催される祭りだ。今年は葛飾署も踊る方で参加する。」
両津が服を脱ぎ汗を拭う。
「前、行ったことあるだろ。」
「はい。」
時行は以前、よさこい祭りを生で見たことがある。そのよさこい祭りに今度は両津達新葛飾署のメンバーが参加することになった。
練習が終わり麗子達が水を飲む。時行は椎名から借りた鳴子を鳴らしている。
「私よりも亜也子なら凄く綺麗に鳴らせそうです。」
「いや。時行もできる。」
両津はニヤリと笑う。屯田署長にヒソヒソ何か吹き込んでいる。屯田署長がため息混じりに頷いた。両津は時行のところに来る。
「時行。」
「はい?」
「お前もやってみないかよさこい?」
「いいのですか!?」
「構わん!よさこい祭りには子供も参加しているんだ!それに、時行がいれば絶対よさこい大賞に輝く!」
両津の目がキラキラしている。何か企んでいるなと時行は警戒している。しかし、時行もよさこい祭りに参加したい気持ちはある。だから、時行は両津の誘いに乗った。
「時行様も参加されるんですね!」
「時行君なら問題ないでしょう。」
周りも時行の参加に賛成した。早速、次の練習から時行が参加する。麗子達の動きに合わせて鳴子を鳴らし踊り舞う。呑み込みの早さに小町達が驚く。
「凄い。時行君、覚えるの早…」
時行の踊りを見て両津はニヤニヤしている。また、屯田署長にヒソヒソ話している。屯田署長がまたため息混じりに頷く。両津はニヤニヤさたまま時行のところに行く。
「時行!」
「は、はい。」
「お前、センターやってみろ。」
両津の提案に時行は唖然とする。周りを見ても反対する人はいない。時行は「分かりました。」と了承した。すぐに時行は一番前に来て練習を再開する。練習が終わり水を飲む。
「そういえば、両さんは練習しないのですか?」
「わしは別の役割がある。踊るのは中川のようなイケメンや麗子のような美女、それとついでの婦警だ。」
「「私ら、ついで呼ばわり!?」」
両津が小町と奈緒子を指差す。それに対して抗議する小町と奈緒子。
「うちの署は婦警が多いからな。見映えさせるには婦警に踊らせるのが一番だ。残りの男共はほとんど裏方だ。」
両津に言われて再び周りを見る。確かに、中川や風見のようなイケメン以外は婦警だった。残りの男性署員はどこだろうと見回すと端っこで何か準備している本田達がいた。
「バテるな本田!そんなんだと本番倒れるぞ!」
「無理ですせんぱ~い!」
ぜぇぜぇ言っている本田に喝を入れる両津。時行も来て見ると機材が並んでいた。
「これは?」
「あれに乗せるやつだ。」
両津が指差す先にはトレーラーがあった。側面には《葛飾よさこいクラブ》と書いてある。
「葛飾よさこいクラブ…?」
「わしらのチーム名だ。時行にとっての逃若党みたいなものだ。」
「なるほど。」
時行が近くに寄る。様々な企業やお店の名前がズラリと書かれている。
「これは…中川さんや麗子さんの名前もありますよ。」
「それはスポンサーって言ってわしらの活動にお金を出してくれる企業だ。」
「それって身内に出しているってこと…」
「何も言うな。」
「は、はい…」
時行が言い切る前に顔を近付けて牽制する両津。纏が練習を再開すると言ってきたので両津も練習に戻って行く。本田達はフラフラしながらも別の練習に戻って行った。時行は両津の後を追って練習に戻る。
その日の練習は終了した。全員がフラフラした状態で水を飲む。時行は両津がいつの間にかいなくなっていることに気付き早矢に聞いた。
「両津さんならあちらの方へ行きましたわ。」
早矢がトレーラーの方を指差す。時行はお礼を言ってトレーラーの方へ行った。両津は左近寺達と何か打ち合わせをしている。
「両さん!」
「ん?どうした時行?」
「えっと…何をしているのかなと思いまして…」
「本番に向けての打ち合わせだ。」
両津は左近寺達と別れ時行と2人になる。
「どうだ時行?初めてよさこい踊りをするのは?」
「楽しいです!ここに亜也子と雫がいたらもっと楽しくなりそうです。」
時行は亜也子や雫が鳴子を持ってよさこい踊りをする想像をした。両津も時行と一緒に想像し笑っている。
「確かにあの子達なら楽しむだろうな!」
こうして、両津達は本番に向けて練習を続けた。
そして、本番当日
両津達はバスで高知に向かう。ワクワクする者、緊張する者、振り付けを確認する者と三者三様だった。時行は両津の隣で外を眺めている。
「人がいっぱいいますね。」
「そりゃあ、高知で一番の祭りだ。去年は天候があまり良くなかったが今年は天候にも恵まれている。来場者数は100万を超えるだろうな。」
「まるで頼重殿と共に最後に戦った中先代の乱みたいですね。」
「その例えができるのはお前だけだ。」
懐かしむような表情で呟く時行に両津はツッコミした。バスが会場に着く。そこには既に多くの参加者が様々な衣装を着て準備していた。
「す、凄い…」
「全198チーム、約18000人が参加するんだ。圧巻だぞ。」
「鎌倉奪還の直前を思い出します。」
「だから、その例えができるのはお前だけだ!」
時行は両津と別れ中川達と一緒に衣装に着替える。サラシを巻き赤と黄色と青が基調の和装に着替えた。全員、鳴子を持ってトレーラーの周りに集まる。両津はトレーラーの上に乗っている。
「いいか!今日のわしらは一番最後に踊るチームだ!一番派手に魅せて締めくくるぞ!」
両津がみんなに発破をかける。観客やテレビ局のクルー達がよさこい踊りを盛り上げる。いざ、本番となるとだんだん緊張してくる。時行も緊張している。しかし、同時に楽しくなっている。
とうとう両津達の出番となった。トレーラーが前に出る。両津はマイクを持ち纏と保可炉に合図を送った。
保可炉が歌い出す。それに合わせて纏が和太鼓を叩く。ボルボと左近寺が大きな旗を振る。そして、時行を先頭によさこい踊りが始まった。
「本当に時行が踊ってるっすよ!」
「綺麗!」
「これは、映える。」
見に来ていた弧太郎達が時行を見て興奮している。テレビ局のカメラも時行達を映し出す。時行はカメラを見るとウインクしてサービスした。
軽快な鳴子の音、纏が叩く和太鼓の音、保可炉の歌い声、踊るみんなの声、観客達の声援で盛り上がる。
(楽しい!)
時行は昔見た亜也子や雫の踊りを思い出す。2人のように華やかに麗しく…そして楽しく踊った。後ろで踊っている中川と麗子も時行と同じように楽しそうに踊った。
保可炉の歌に両津が交わる。ボーカロイドの歌声に男らしさが加わる。それに合わせて踊りも激しくなる。全身から汗が噴き出してもお構い無し。この一瞬に全てを込める。
そして、時行達のよさこいパレードが終わる。みんな、汗を拭いたり水を飲んでいる。
「よくやった。」
「ありがとうございます。」
「次はステージだ。」
「はい!」
時行は大きく頷く。よさこい祭りは前夜祭、後夜祭、昼の部、夜の部と分けられている。両津達は次に向けて休憩と踊りの再確認をする。
夜になり次の出番がきた。
そして、全ての踊りが終わった。時行達は全力で踊ったことに満足する。
翌日の後夜祭が始まる。時行達は固唾を呑んで受賞を待つ。結果はよさこい大賞は受賞できなかった。時行はは少し残念と思いつつも受賞したチームに拍手を贈る。
「今回も向こうが凄かったな。」
「はい。でも、楽しかったです。」
「なら、やったかいがあった!」
両津が笑う。時行も続けて笑った。受賞チームが最後に踊る。一糸乱れぬ踊りに時行は見惚れている。
「来年も踊りたいですね。」
「もちろんだ。わしは日本中の祭りという祭り全てに参加してやるからな。時行も一緒についてこい。」
「はい!」
時行は夜空を見上げ楽しかったと満足している。こうして、時行達のよさこい祭りは楽しく終了した。