逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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ドッジボール大会 その4

 ドッジボール大会特別マッチ

 残るは時行対平野。ボールを持っているのは平野。まずは軽く投げる。時行は取ることなく避けた。今度は志郎が投げる。それも避ける。内野と外野からのボール攻撃を時行は避け続ける。

 

「す、凄いよ時行君。全部避けてる。」

 

 亜矢が感嘆する。時行は頬を赤く染め楽しそうに避けている。対する平野達はなかなか当てれないことに焦りを見せていた。観戦していた他の生徒達や先生も時行の逃げに見入っている。

 

「凄いですな時行君。」

「ええ…あんな生徒は初めてです。」

「さすが時行じゃ。」

 

 みんなが見守る中、白骨が投げるのをミスってしまった。投げ続けた結果、疲れてしまったのだ。時行はボールを拾うと平野に向かって投げた。

 

「せいや〜!」

「「「•••」」」

 

 逃げ腰で投げたボールは平野に届くことなくコロコロと転がっていく。全員が目を•にする。平野はボールを拾って投げると時行はすぐ避けた。

 

(やはり大したことないが…このまま逃げ続けられる引き分けになる。奴は全滅を防ぐための駒か。)

 

 このまま引き分けを狙うのも有りだ。しかし、当てることが出来ずに引き分けになるなんてプライドが許さない。すると、時行の長い髪を見てニヤリと笑った。

 

「先生。」

「なんだ?」

「顔面に当てるとセーフだけど髪はアウトですよね?」

「そうだな…当たったと分かればアウトになるな。」

 

 平野は笑う。いつ来るのか楽しみにしている時行の顔面を狙って投げた。時行はそれを仰け反って避けた。

 

「その長い髪がアダとなったなぁ!そこに当てても俺達の勝ちだ!」

「ひでぇ!先生!いきなりなんで髪アウトにしたんですか!?」

 

 弧太郎が審判の先生に抗議する。先生は冷静だった。

 

「よく見てみろ。さっきからその髪にすら当たってないぞ。」

「え?」

 

 先生に言われてもう一度時行を見る。先生が言っていた通り平野達のボールは時行の髪にすら当たってなかった。

 

「だからあれはハンデでもなんでもない。」

「時行マジすげぇ。」

 

 だんだん疲れていき集中力が落ちてくる。そのせいで精度も落ち時行が簡単に取れるようになった。弧太郎がこっちに投げろとジェスチャーする。時行がパスしようと投げる。しかし、それを平野はあっさりと取った。

 

「残念だな。俺は豪速球も変化球もないが体力と瞬発力はあるのだよ。」

 

 ボールを持ってラインギリギリのところまで歩く。

 

「教えてやるよ。ドッジボールが強い奴が学校を支配するのだよ!」

「いや、無理じゃろ。」

 

 檸檬が冷静にツッコむ。

 

「支配して何がしたいのですか?」

「なんだと思う?」

「親を殺して子供を奴隷にする。」

「そこまで外道じゃない。」

 

 真面目に答えた時行に即否定する。

 

「確かに俺のクラスは学校1荒れてるがそんな賊みたいなことはせんぞ。」

「すみません。名前と見た目でそう思ってしまいました。」

「酷い偏見だね!」

「うん。さすがにそこまでしていない…はず。」

 

 平野のクラス担任の女性が自分に言い聞かせていた。気が弱そうだ。時行のクラス担任の先生がジト目で見る。

 

「支配は楽しいぞ。給食のおかわりも掃除当番も宿題も自由に出来る。」

「真面目にやりましょうよ。」

「真面目がバカを見る時代だ。」

 

 平野がボールを投げる。時行が避けるも受け取った乱児がすぐに投げた。それを体を捻ってまた避けた。

 

「なんだあいつ!?」

 

 ボールは床をバウンドして平野のところに転がっていく。そこに向かって時行が走り出した。しかし、間に合いそうにない。平野が笑う。その時、時行がボールを蹴った。ボールは平野の股を抜き弧太郎の前に転がる。

 

「なっ!」

 

 平野はすぐに振り返り弧太郎のボールを避けた。そこには時行がいる。時行はボールを受け取って構える。

 

(大丈夫だ。奴のボールは取れる。狙おうがパスしようが俺なら取れる。)

 

 平野はまだ余裕があった。すると、時行が方向を変えて外野にいる志郎達の方へと走り出した。突然の行動に困惑する弧太郎達。時行が志郎の前に立つ。

 

「ボール、いる?」

 

 興奮で赤面しハァハァ言っている時行にゾワッとすると同時にイラッともした。しかし、内野のボールを奪うわけにはいかない。志郎はチラッと平野を見る。平野は待てと目線で指示する。時行はその時を待っていた志郎の目線が自分の真後ろにきた瞬間、後ろ向きで走り出した。

 

「「「!?」」」

 

 全員が困惑する。そのままラインギリギリまで走ると真後ろにボールを投げた。困惑しすぎて反応が遅れる。そのままボールは平野の胸に命中する。高く上がるボール。平野が目線で追いかけているとこちらを見た時行が視界に入った。その顔はあどけなくどこか神々しさすらあった。

 

(あれは…仏…様…)

 

 平野が前のめりに倒れボールが落ちる。

 

「勝者、2年2組!」

 

 審判の先生が手をあげてゲーム終了を宣言する。その瞬間、喜んだ弧太郎達が時行に駆け寄った。みんなで時行を撫でたりハグしたりする。

 

「すげぇぜおめぇ!」

「カッコよかったよ!」

「さすがです。」

 

 みんなに褒められて照れる時行。

 

「最後のあれ、なんだったの?」

「あれはその場で思い付いた技です。私は常に逃げようとするからどうしても前に投げ辛くなってしまうので。そこで後ろに逃げながら後ろ向きに投げればいけるのかなぁって。」

(吹雪殿の策が役に立った。)

「さすがミスター逃げ上手!」

「へっぴり腰万歳!」

「なんか嬉しくない!」

 

 騒いでいる時行達の後ろで平野を心配する志郎達。平野は澄み切った目で時行を見ている。

 

「俺の…完敗だ。」

 

 こうして、ドッジボール大会は幕を下ろした。

 

 後日

 

「どうです時行?」

「いい子ですよ。たまに心臓に悪いことしてますけど。」

 

 迎えに来た両津が檸檬と一緒に先生と会話しながら歩いていた。

 

「いい子ですけど…」

「どうかしたのか?」

「それが…」

 

 先生が教室の扉を開ける。そこには…

 

「時行様〜!」

「「「時行様〜!」」」

 

 担任の先生を含めた6年3組全員が時行の写真を崇めていた。

 

「あんな感じで時行君を信仰する宗教団体が出来てしまいまして…」

(う〜む。さすが将軍の器。)

 

 ヤバい宗教団体になっている6年3組を見て両津は改めて時行の凄さを実感するのであった。

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