「何!?わしにお見合い!?」
その日、新葛飾署が崩壊してしまうぐらいの両津の叫びが聞こえた。
口をあんぐり開けて呆然とする両津。大原部長があり得ないという顔をしながら両津に話す。
「あ、あぁ。昨日、両津を父親に紹介したいという少女が来てな。」
「しかも、少女かよ。」
「何したんだ両津の奴?」
「脅迫?洗脳?」
「人質か?」
「聞こえとるぞ貴様ら!」
こそこそ話す署員達に両津が叫ぶ。そこにマリアが猛スピードで突撃してきた。
「両様!私という者がありながらどういうことです!?」
「ま、待てマリア。わしにも全然記憶がない。」
「どんな人だったんですか部長。」
マリアと一緒に来た纏が大原部長に聞く。
「小学生ぐらいの子でな。派手な格好をしていたよ。」
「カンキチ。それは犯罪だぞ。」
「だから、わしは知らん!」
纏が引いている。
「そもそも誰なんだそいつは!?」
「ウチでーす!」
両津の問いかけに答える声。その声の主は小学生の女の子だった。金髪にツインテール。改造しまくりの露出が多く派手な制服を着こなすギャルっぽい少女だった。
「ウチ、佐々木摩魅っていいまーす!」
「もしかして、VASALAの?」
「そうでーす!」
麗子の質問にウインクして答える摩魅。
「麗子。なんだVASALAって?」
「今、ファッション界で有名なブランド企業よ。ファッションだけじゃなくコスメやアクセサリーでも常に流行を作っている企業よ。」
「そこのトップがウチのパパの佐々木
「なに!?」
両津が驚く。周りも驚く。何せ、大手企業のトップの娘が両津にわざわざ会いに来ているのだ。
「そもそも何故両津を?」
大原部長が摩魅に聞く。
「前~、一目見た時絶対この人だと思ったんだよね~。」
いたずらっ子みたいに微笑みながら両津を見る摩魅。周りの署員達は何故両津が…?という視線を送っている。そんな視線など全く気にせず両津は高らかに笑う。
「見たかお前ら!流行の先駆けとなる企業のトップの娘がわしを認めたんだぞ!」
両津が上から目線で他の署員に言う。
「じゃあ。明後日の土曜日にVASALAの本社ビルに来て~。昼過ぎなら何時でもオッケ~。」
摩魅は手を振りながら帰って行った。その様子を偶然新葛飾署に来ていた時行が目撃している。
「あの後ろ姿は…」
土曜日
両津はウッキウキで似合わないタキシード姿でVASALA本社ビルに向かう。その周りには時行に麗子、中川にマリアや纏、椎名までいた。
「なんでお前らまで着いてくるんだよ。」
「両様を守るためですわ!」
「それに両ちゃん。VASALAのビルがどこか分からないでしょ。」
麗子の言葉に両津はウッと図星をつかれた顔をする。
「私は佐々木摩魅という方に興味があります。」
麗子の案内でVASALAビルまで着いた。中に入り受付に話を通す。言われた場所に向かう。すると、その道中で見たことある制服の少女達を見つけた。St.フェアリー女学園の制服だ。
少女達が会話しながらこちらに向かっている。すると、こちらに気付いた。そして、キラキラした目で時行に駆け寄ってきた。
「時行君!」
「時行君だ!」
「中川さんと麗子さんもいる!」
「庶民もいる。」
「わしだけ反応がおかしいぞ。」
両津を一瞬だけ見た少女達は両津を無視して時行の周りに集まった。そのまま時行を連れてどこかへ行ってしまった。
両津達はその様子を見届けた後、受付に指定された場所に行く。
「ここか。」
両津はコンコンッとノックして入る。
「どうも~!両津勘吉…」
元気良く自己紹介しながら入る。そこにはSt.フェアリー女学園の理事長、飛燕と派手なファッションの男がいた。スポット照明に照らされても顔面が真っ黒な男。その男と飛燕の2人を見た両津は目を・にさせた。
「え、え~っと…」
「何故、飛燕さんが?」
「St.フェアリー女学園とVASALAは業務提携しています。VASALAの開発した商品をうちで試し彼女達の意見を反映して改良や販売を行います。」
「あ~!来た来た~!」
困惑している両津に摩魅が手を振りながら来た。よく見ると改造はしているがSt.フェアリー女学園の制服を着ていた。摩魅は飛燕と男の間に入る。
「紹介するね~。うちのパパでここの代表の佐々木誉道だよ~。」
「あぁ。あなたが両津勘吉さんですか。」
「なんだあのイカ墨かけられたような顔は。」
両津が圧倒的に黒い…いや最早、闇みたいに暗い顔をしてている誉道に両津がツッコミする。摩魅が誉道に両津を紹介する。
「パパ。どう?いけそうじゃね?」
「…プッ。確かに。」
「なんだその笑いは?」
ニヤリと笑う誉道を両津は不服そうに見る。
「今、我が社では様々なファッションの最先端を取り込んでいましてね。今回のコンセプトはぶ男ファッション。どんなぶ男でも、着こなせるファッションを開発していてね。娘から丁度いいモデルがいると紹介された次第です。」
「ってことは…」
「合格です。」
「やったー!」
喜ぶ摩魅とは逆に膝を着き項垂れる両津。早い話、お見合いではなくファッションモデルとして両津を呼んでいたのだ。それを知り安心するマリア。飛燕が席を外してどこかへ行く。
「では、早速モデルになってもらいましょう。」
誉道が服を用意させる。スタッフ達が両津を連れて様々なファッションに着替えさせた。
「両様!全部、似合ってますわ!」
「あらっ。可愛いわよ両ちゃん。」
「服だけでここまで変わるんだ。」
両津を褒めるマリア達。しかし、肝心の両津はなんか思ってたのと違うと真顔になっていた。摩魅と誉道はニコニコしている。
「どうよパパ~?」
「いいですね。まさに、婆娑羅!彼に合うファッションならほとんどに人間が婆娑羅になるでしょう!」
「婆娑羅ってなんですか中川先輩?」
聞き馴染みがないようなのか椎名は婆娑羅が分からない。隣にいた中川に聞く。そこにSt.フェアリー女学園の生徒達から逃げていた時行が来た。
「婆娑羅というのは南北朝時代から室町時代初期にかけて流行した、常識や身分秩序を無視して派手で自由奔放に振る舞う美意識や社会風潮のことです。サンスクリット語でダイヤモンドを意味するバジラが語源とされ伝統的な服装よりも派手な格好を好むようになりました。」
(まさに、魅摩と同じだ。)
隣で聞いていた時行が魅摩を思い出す。その時行を摩魅が見つけた。すぐに興味を持った。
「凄い可愛い子いるじゃ~ん!もしかして、君が時行君?」
「は、はい。北条時行と申します。」
「私より若いじゃん!じゃあ、若ちゃんって呼ぶね~!」
摩魅は時行も参加させる。すぐに服を大量に用意して時行を着替えさせた。それを連写する椎名。
「いいよ!いいよ~!若ちゃん、凄く似合ってるよ!」
「時行様!こっちに視線お願いします!」
「完全にわしが蚊帳の外だ。」
全員が時行に夢中だ。
「パパ~!この子なら新しい流行になるよ!」
「摩魅が言うなら間違いない。」
「そうなのですか?」
「もちろん。摩魅は未来予知と言われる程流行を先取りできる先見の明がある。そして、その流行を私が作るのだよ。」
「流行を…作る?」
「そうだ。我が社では流行は乗るものではなく作るものだ。流行に乗るだけの企業は二流。一流の企業は常に世間に流行を作って与えるのだ。」
誉道の持論を聞く時行。時行は考える。今まで流行に乗ったことがない。そもそも何が流行っているかすら分からない。
その時だった。摩魅がうっかりハンガーラックに足をかけてしまいハンガーラックが倒れた。それにいち早く反応した時行がハンガーラックの下敷きになる前に摩魅を助けた。
「え…」
自分を助けてくれた時行を見る。キリッとしている。時行は服を脱ぎ丁寧に畳む。いつもの服に着替えると恥ずかしそうに摩魅を見た。
「すみません。私には流行というものがよく分かりません。何せ、私は古い人間ですから。」
(い…一周回って婆娑羅~!)
摩魅は一目惚れした。周りにいた中川達もハンガーラックを立て直したり無事を確認したりして安心していた。ただ1人、取り残された両津を忘れて…
それから、数日後
「なぁ。今日、三年に転校生が来るんだって!」
「時行以来っすね。」
「どんな子なんだろ~?」
「聞いた感じ、凄い可愛い女の子みたいだぞ。」
神田姉ヶ丘小学校では新しい転校生の話で持ちきりだった。
「時行はどう思うっすか?」
「私は…」
「若ちゃ~ん!」
時行が口を開いた瞬間、摩魅が教室に入ってきた。どうやら、転校生ってのは摩魅のようだ。全員が時行を見る。いや、睨む。
「摩魅さん!?」
「若ちゃんに会うために転校してきたよ~!また、あれやろうね~!」
「時行…あれってどうことっすか?」
「時行!あの子誰!?どんな関係!?」
「時行、不純。」
「時行君…」
「待ってください!別に変なことは…」
「うちならいつでもOKだよ~!」
「逃がすな!捕まえろ!」
顔を真っ赤にさせる摩魅。詰め寄る亜也達。追いかける弧太郎達。そして、必死に逃げる時行であった。