派出所
いつものように時行が入る。しかし、雰囲気が重い。みんな、両津を見ている。両津はブツブツ言いながら机の上にある書類とにらめっこしている。
「あ、あの…これは?」
「実は...」
中川が経緯を語る。
数日前
「何!?署員旅行の旅費がない!?」
両津は屯田署長の発言に驚いていた。
「それは婦警に旅費のほとんど持っていかれてるからですか!?」
「いや違う。今回は婦警も一緒に旅行だ。」
「じゃあ、何故!?」
「両津君がいつも物を壊すからだ。その賠償金を旅費から引き出してなんとか払えている状況だ。」
屯田署長の発言に署員全員が両津を睨む。両津は大量の冷や汗をかき「アハハ…」とから笑いする。
「で、でしたらわしが署員旅行の幹事をしましょうか?」
「両津君が?」
「はい!」
こうして、両津が署員旅行の幹事をすることになったのだが...
「それであのように悩んでいるのですね。」
「そうなのよ。」
「ちなみに、おいくらなのでしょうか?」
「1人100円よ。」
麗子が言った値段に時行がずっこける。
「待ってください。それって自給自足で野宿するつもりですか?」
「本来は旅行費250万円の旅行になる予定でしたが…」
「だから、両ちゃんが責任を持って幹事をすることになったのよ。」
「御愁傷様です。」
時行が哀れむように合掌する。すると、椎名が時行の肩を強く掴んだ。
「時行様も一緒に行きましょう。」
「え?」
「野宿なんて嫌です~!せめて時行様を抱き枕にしたい~!」
「遠慮しておきます!嫌な予感しかしません!」
「大変な旅行になりそうですね。」
「心配だわ。」
中川と麗子が時行に泣きつく椎名を見ていた。
旅行当日
結局、時行も参加して署員旅行が始まった。心配していると両津が二階建てバスまで案内した。予想と反し豪華なバスに戸惑いながらも乗る時行達。バスが走り出し目的地に向かう間、両津はご機嫌な顔でカラオケをしている。
時行は両津がどうやって豪華なバスを手配できたのか気になり近くにいた署員に聞いてみた。
「あの…両さんはどうやってこんな豪華なバスを手配できたのでしょうか?」
「さぁ?」
署員も知らないようだ。
「だ、大丈夫なのでしょうか?」
「両さんは前もこんな感じの署員旅行したことあるからもう気にしてないよ。」
「気にするべきなのでは?」
「まぁ。こういう格安には基本何か裏や曰くがある物だ。」
署員が時行にコソコソ話す。
「例えば、このバスなんかも昔、人を轢いたか前の会社の社長が自殺したとか謂れている。」
「それは、本当ですか?」
「そういう噂だ。両津ならなんとかなるだろ。」
署員は全然気にしてない。一方、後ろの席にいた麗子達はシャンパンを飲んでいた。
「これ、1本で240万もするシャンパンよ。」
「あの原始人、どうやってこんなの買ったのよ。」
「絶対ヤバいやつじゃん。」
警戒はするものの周りが気にせず飲んでいるので一緒に飲んではいる。その近くで早矢は外を眺めていた。その一瞬、狐のお面が窓に写っていた。
「どうした早矢?」
「窓に一瞬、狐が…」
早矢がもう一度見るも何もいない。気になった纏も窓を見るが何もいない。
「この辺り、狐とか出るのか?」
バスが長野県にある古びた旅館に到着した。両津が先頭になって旅館に案内する。古いが立派な旅館だ。こんな高そうな旅館にどうやったら泊まれるのだろうと考える時行達。
両津が受付にいる女将から鍵を貰う。時行は気になって女将に聞いてみる。
「すみません。こんな素晴らしい旅館に格安で泊まらせてくれるのですか?」
「はい。素泊まり51円で泊まれます。」
「絶対ワケありだ…」
時行と女将の会話を聞いた中川達がぞ~っとする。両津が別館に続く渡り廊下で止まる。そこには何やら胡散臭い男がいる。両津が「お願いします。」と頭を下げると男は数珠を振り回しブレイクダンスのように激しく動きながら聞いたことない呪文を唱え…叫んでいた。
「これで強い怨念以外は憑くことはないでしょう。」
「うむ。よろしい。」
「よろしいんですか?」
椎名がツッコミする。両津は並んでもらい鍵を渡す。
「屯田署長、大原部長…は桔梗の間ですね。」
「うむ。」
どうやら、数人の大部屋で泊まることになるようだ。両津が時行を見る。
「時行は中川達と一緒だな。…百日紅の間か…耐えれるだろう。」
「待ってください。耐えれるだろうってなんですか?何があるのですか?」
時行がビビりながら聞くも無情にも流され百日紅の間に入ることになる。先頭の中川に続いて時行、本田、雑、丸井、残念が入る。中は広々とした和室で6人で寝るのに問題はなかった。
しかし…
「天井のシミが不気味ですね。」
「至るところにお札が張ってある…」
あからさまと言えるほど怖い雰囲気になっていた。時行が飾ってある鎧武者を見つける。鎧武者にもお札が張ってある。気になった時行が興味本位でお札を剥がそうとした時…
「いけません!」
「ぎゃあ~!!」
後ろにあった壁に着いていた鏡が開き女将が現れた。それに驚く時行達。
「何故そんなところから!?」
「ここはもしもの時用に使う従業員専用の非常口でございます。」
「もしもの時ってなに?」
「そんなこととよりもそのお札を剥がしてはいけません。もし…剥がしてしまったら…夜な夜な鎧武者が独りでに動きだし…」
「ひぃいい~!」
「…ということがあるかもしれませんのでご注意を。」
「そんなもしもいらない。」
雑が中川の後ろでガクブル震えている。
「それと時折子供の笑い声が聞こえるかもしれないのでそこにある数珠を持って唱えてください。」
「下手なお化け屋敷よりも怖いよ。」
女将が鏡の扉を閉める。その時、本田は見てしまった。鏡に写った自分の後ろに狐のお面を被った少年がニッコリとこちらを見ていることに。
「ぎゃあぁぁぁ!」
本田の叫びに時行達が驚く。本田はすぐに数珠を持って南無阿弥陀仏…と唱える。
「どうしたんですか本田さん!?」
「鏡に子供が~!」
「私ではなく?」
本田がなんとか落ち着き宴会場へ向かう。その途中も「狐の幽霊を見た。」や「なんか視線を感じるわ。」など周りからボソボソと聞こえてきた。
宴会場に入る。既に鯛の活け造りやステーキ、鮑や松茸など豪華な夕飯が待っていた。時行は鯛を見て目を輝かせている。南北朝時代は弧次郎達が必死に強行偵察までしてくれて食べれた鯛が今では日本中どこでも食べれるのだ。
そんな時行の隣で中川は警戒している。どうやってこんな豪勢な食事を1人100円の旅費で用意できたのだろうか?しかし、周りはそんなこと気にせず食べている。
「もういい!」
「中川さん!?」
突然、中川が食べ始めた。そこに両津が来る。
「中川!一杯飲め!」
「そのドン・ペリニヨン、560万しますよね。」
「さすが中川。ドンペリも詳しい。ここだけの話…ワケありだ。」
隣から聞こえる会話に時行が止まる。すると、時行達の前に伊勢海老、フォアグラが追加された。そんなこと気にせず中川は食べながら両津から注いでもらっている。
「いただきましょう。」
「良い飲みっぷりだな中川!」
「世の中、知らない方がいいこともありますからね。」
「中川さんが変わった…」
両津が中川に飲ませ続ける。その様子に時行は戦いている。別のところでは良い感じ(?)に酔った署員達が騒いでいる。
「裸踊りいきまーす!」
「甘いな新人!裸で踊るなんてありきたりの芸などつまらん。お手本を見せてやる!」
脱ごうとした署員に喝を入れる中川。相当酔っていた。両津を突き飛ばし全裸になると宴会場をカサカサ這いずり回った。男性署員達は笑い女性署員達は中川の奇妙な動きに困惑している。
そんな状況が続き中川が倒れた後、両津達は露天風呂に向かった。露天風呂も広々としている。最初は怪しんでいた署員達はもう誰も1人100円の旅費のことなど考えていなかった。
「気持ちいいですね。」
「どうやって…」
「もう考えるの止めよう…」
一方、麗子達も露天風呂に入っていた。
「大きい~!」
「気持ちいい~!」
小町と奈緒子が並んで入っている。麗子とマリアも一緒に入る。
「気持ちいいですわ。」
「露天風呂がたまに血のように赤く染まるなんて言われなかったら最高だったのに。」
露天風呂に入る婦警達。しかし、早矢だけは周りをキョロキョロ見回し警戒している様子だった。
「どうしたんだ早矢?」
「さっきから誰かに見られている気が…」
「まさか、あの原始人?」
「いえ。人というより…」
早矢が言い切る前に麗子の前の湯船が突然赤く染まった。それこそ血のような赤色だった。麗子達が「きゃあ!」と叫ぶ。その叫び声は両津達にも聞こえていた。
「なんだ!?」
「どうした!?」
両津が塀をよじ登って確認しようと顔を出した瞬間に纏が桶を両津に投げつけた。
「見るなカンキチ!」
「何があったか確認しようとしただけだ!」
「お湯が赤くなったのよ!」
「ゴリラのせいでしょ!」
「わしは知らん!」
「温泉が赤く染まるって本当だったんだ。」
パニックになる麗子達。時行も気になり上がろうとした瞬間、白濁したお湯の中から狐のお面を被った少年が鼻血を出しながら現れた。
「玄蕃~!」
「現場?」
時行が驚いて叫ぶも他の人には見えていない。時行はビックリしたまま女風呂へ逃げる。
「時行君!?」
驚く婦警達。時行はそのまま露天風呂から逃げ出し…
後日
「あれから旅館内を5時間も全裸で逃げ続けてたのですか?」
「全裸逃亡ド変態稚児と呼ばれても文句言えんだろ。」
「玄蕃~!」
派出所では顔を真っ赤にさせながら木刀を振り回す時行がいた。
一方、地獄
「何ちゃっかり地獄から抜け出してんだ玄蕃!」
「サイテー!」
「令和やべぇぞ!おっぱいボインボインで色っぽい姉ちゃんがわんさかだぞ!」
逃若党にリンチされている玄蕃がいた。