逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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歴史は紡がれる

 両津達は中川財閥が所有する歴史資料館に来ていた。時行に見てほしい物があるのだ。関係者以外立入禁止の廊下を歩く。その先の扉を開けると左右にずらりと資料が保管されていた。

 

「こちらです。」

 

 案内役の男性が迎えに来る。彼の後ろを歩きながら資料を見る。昭和、明治、江戸、安土桃山、そして南北朝の資料の前で止まった。

 

「こちらが南北朝時代の資料になります。」

「ありがとうございます。」

「それでは、私はここで。何かありましたらすぐにご連絡を。」

 

 男性は一礼して去って行く。その時、時行は自分をジーと見ていた気がした。

 

「あの人は…」

「あの人は君が持っていた鬼丸の鑑定をしてくれた調査チームの人だよ。だから、君が南北朝の人物ということも知っている。」

 

 中川が教えてくれた。両津は並べられた資料とにらめっこしているが理解出来ていなかった。すると、変わった刀に目が止まった。✧の形をした金棒みたいな武器でその先に刀の刃が着いている。時行はその武器を見た瞬間、涙を流した。

 

「亜矢子…」

「やっぱり南北朝時代の武器みたいですね。」

「この時代はこんなのが流行ってたのか。」

 

 両津が驚く。時行は目の前にある武器四方獣を見て思い出に耽る。両津達は話しかけにくいと思いしばらく1人にする。その間に他の資料を調べていた。

 

「それにしても少な過ぎねぇか?」

「仕方ありませんよ。そもそも太平記しかちゃんとした資料がない上にその太平記もあやふやなところが多くなかなか調査が進まないんです。」

 

 両津が資料を見ながら文句を言う。実際、中川の言う通り南北朝時代を記載した資料は少なく突拍子もないものが多いため詳しく調べることが困難である。そのため、当事者である時行に来てもらったのだ。

 時行を待ちながら資料を調べていく。すると、時行が戻って来た。涙を拭った跡があり目が赤い。それでも時行は凛とした顔をしている。

 

「お待たせしました。」

「大丈夫ですよ。」

 

 時行を連れて様々な刀が置いてあるところへと戻る。亜矢子の四方獣の他にも正宗が作ったとされる刀が数多く並べられていた。その中でも一際目立つ刀があった。刀というには異形すぎた。手に持つ部分すらない。

 

「時行君、この刀は何か分かるかい?」

(秕さんのだ!)

 

 その刀を見た瞬間、時行は吹いた。その反応を見て知っている物だと確信する両津。

 

「時行、これどうやって使うやつだ?」

「それは…麗子さん。少し手伝ってくれませんか?」

「いいけど…」

 

 時行と麗子が調査チームが作ったレプリカを持って奥へと消えて行く。そこから麗子の戸惑う声がする。2人が待っていると刀を足に装備した麗子が現れた。

 

「ちょ、ちょっと恥ずかしいわね。」

「やっぱり形的に足に装着する物だと思ったのですがそれでどうやって戦うのかが解明出来ずオーパーツ扱いになっていたんですよ。」

 

 形的に足を上げないといけない状態に麗子は恥ずかしがる。両津は麗子の股をジーと見る。スカートが捲れてパンツが見える。

 

「麗子、その体勢だとパンツが見えるぞ。」

「いやぁ!」

「うおっ!」

 

 麗子が両津を蹴る。しかし、レプリカだが秕の武器を着けているため殺傷力の高い蹴りが両津を襲う。両津はなんとか避けるも他の資料がズタボロに斬り裂かれた。声が出ない両津達。

 

「そうやって使います。」

「こんなことが出来る人がいるんですね。」

「恐ろしい時代だ。」

 

 使い方が分かったがこんなことが実際に出来る人間が南北朝時代にいたのかと驚愕する。武器を外した麗子が攣りかけた足を伸ばしている。時行は久しぶりの秕を見た感じだと懐かしんでいる。そこに中川がレプリカを持ってくる。七支刀に似た異形の刀だ。

 

「これはどんな刀なのでしょうか?」

「ガーとやってバーと斬るやつです。」

「さっきと全然反応が違うぞ!」

 

 露骨に嫌な顔をする時行。何があったのか聞きたいが聞き辛い雰囲気がしているため聞けない。話を変えようと中川が様々な書状を持ってきた。

 

「これとかはどうです?後醍醐天皇が君に送った綸旨と言われてますけど。」

「はい。私が少数精鋭を率いて敵に奇襲するために書いてくださった綸旨です。この綸旨のおかげで誰の指揮下に入ることなく遊軍として動けます。なので私には官位も元服もありません。」

「珍しいですね。」

 

 それから時行はまるでアルバムを見るように資料を見始めた。もう遠い昔のことだがこの前のように記憶が蘇ってくる。時行は目をウルウルさせている。時行は無邪気に笑い涙を拭う。

 

「しかし、凄いですね。これだけの資料が今も残っているなんて。」

「時は過ぎていきます。しかし、僕達は歴史が何をしてきたかを忘れるわけにはいきません。栄光も反省も全てを繋げることで歴史が繋がっていきます。1つ1つの出来事は小さく細い糸のように大したものではありません。しかし、それらを紡いでいくと大きな歴史になるのです。僕達は歴史を途切れさせないために資料として残していくんです。これからの未来、今僕達がやっていることが紡がれていくと信じて今を残しています。」

 

 中川の言葉が刺さる。時行が今こうして懐かしく思えるのもあの時代の人達が後世に残そうと形にしてくれたからだ。時行は綸旨や誰かが残してくれた書物を読んでいく。両津達も後ろから時行と一緒に読んでいる。すると、時行がいきなり書物を閉じた。

 

「時行?」

「両さん…これ燃やしましょう。」

「いきなりどうした!?」

 

 顔を赤くさせる時行。書物もビリビリに破こうとするので慌てて書物を取り上げる。時行が暴れる。両津は時行を抑えながら書物を読む。最初に鎌倉を奪還したところだ。

 

「え〜、何々…『全裸逃亡ド変態稚児の鼓舞によって…』…え?」

 

 両津達はとんでもないものを見た目で時行を見る。時行はプルプル震えている。間違いない。時行が全裸逃亡ド変態稚児と呼ばれていたと確信する。

 

「と、時行君…」

「時行君…」

「時行、お前…」

「ち、違いますー!!」

 

 時行がさらに顔を真っ赤にさせて叫ぶ。

 

「海パン刑事の時から思っていたがたまにとんでもない性癖を見せてくるよな。まさか…」

「南北朝時代の時はこんなことしていたの?」

「とんでもないものが紡がれていましたね。」

「誤解です!こ、これは私の郎党が勝手に尾ひれを付けたもので…」

 

 ドン引きしている両津達に時行は必死に弁明するのであった。

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