逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行VS両津 将棋対決!

 いつもの派出所

 そこでは時行と両津が汗を流しながら何かしていた。

 

「りょ、両津さん…そこは…」

「時行、覚悟しろ。…王手!」

「…ま、参りました。」

 

 将棋だった。両津は勝って気分がいいのか駒をジャラジャラ鳴らしながら笑っていた。時行は将棋盤の前で項垂れる。それを中川と麗子が見ている。

 

「両ちゃん、大人げないわよ。」

「そうですよ。手加減してあげましょう。」

「うるさい!こちとら檸檬にもボロ負けしてんだぞ!今更形振り構ってられるか!」

 

 両津が中川と麗子に向かって叫ぶ。時行がもう一回と両津に懇願する。それからも時行は両津に惨敗し超神田寿司へと帰って行った。

 時行は帰るとすぐに檸檬に土下座した。檸檬も突然のことで困惑している。

 

「なんじゃ?」

「お願いします!私に将棋を教えてください!」

「本当にいきなりじゃな。」

 

 時行が訳を話す。檸檬は納得したのか呆れ顔で頷いた。

 

「なるほどのぉ。カンキチにコテンパンにされて嘆いておるってところか。」

「は、はい…」

「檸檬、言い方キツすぎない?」

 

 檸檬は将棋の準備をすると時行の実力をしるために勝負を仕掛けてきた。時行は困惑している。檸檬の盤面には王将と歩しかなかった。

 

「あ、あの…」

「先手は譲るぞ。」

 

 時行はさすがに敗けはしないだろうと始めた。しかし、歩しか動いてない上に取られた駒すら使われることなく惨敗した。時行は心が折れたのか涙を流している。さすがの纏も時行に同情している。

 

「檸檬、やり過ぎじゃないか?」

「これぐらいが丁度よいのじゃ。」

 

 檸檬は時行を膝枕に乗せる。纏がなんかドギマギしている。

 

「れ、檸檬さん…」

「時行よ。まずお主はカンキチと一緒で一手先しか読んでおらん。だから、次の手が簡単に分かる。」

「は、はい…」

「夏春都は相手が一手指しただけで王手まで見えておるぞ。」

「す、凄すぎます。」

 

 時行は檸檬の顔をじっと見る。檸檬が微笑む。気を取り直してもう一回将棋をする。

 

「実戦を重ねること。これが一番いい練習じゃ。」

「はい!よろしくお願いします師匠!」

 

 時行の猛特訓が始まった。しかし、すぐに何手先が分かるようになれるわけもなくなかなか上手くいかない。檸檬の真似をしてみるがすぐに返される。

 

「お主は読みやすい。」

「うっ…」

「相手の手が読めないなら自分の得意な手に持ち込むのも1つの手じゃ。」

「得意な手?」

「すなわち、相手を誘導させるのじゃ。自分が思い描く戦法に相手を連れ込む。そうすれば相手の動きなどすぐに分かるぞ。」

「は、はぁ。」

「まぁ、すぐに出るのなら苦労はせん。ゆっくり考えるのじゃ。」

 

 檸檬の特訓が続く。しばらくして練習が終わり檸檬は仕事に戻る。時行は部屋に1人残り将棋の練習をする。どうすれば上手くなるのかが分からない。そこに夏春都が入ってくる。

 

「困ってるのかい?」

「は、はい。」

 

 夏春都は将棋盤を見て理解した。時行の前に座り将棋を指す。

 

「あんたは将棋というゲームに囚われすぎだよ。」

「え、ええっと…」

「一郎から聞いたよ。あんた、逃げるのが得意なんだってね。将棋は将を取られると負けだよ。つまり、将がいる限り負けじゃない。生き残る戦い方が得意なのだろ?」

「逃げて…生き残る…」

 

 その時、時行に電流が走る。将棋の盤面を戦場に、玉将を自分に見立てる。すると、自分の得意な手が浮かび上がってきた。将棋も同じだ。自分が体験してきた戦場を思い浮かべる。時行の目がだんだんキラキラしてくる。

 

「迷いは晴れたかい?」

「はい!ありがとうございます!」

「なら頑張りな。頑張った人には必ず結果が着いてくるもんだよ。」

 

 時行がお礼を言う。夏春都が部屋を出る。時行はもう一度将棋を始めた。その目にはいつものキラキラがあった。

 

 後日、時行は両津に再び将棋勝負を挑んだ。

 

「いいぞ!」

 

 勝負が始まる。最初はいつも通り両津が優勢だった。時行は守りを固めながらも攻めていく。しかし、駒が次々と取られていく。そして、両津の飛車が王手をかけた。

 

「王手だ!」

(来た!ここからが逃げ…私の得意な手!)

 

 時行は玉将を逃がす。それを追いかける両津の飛車。とうとう時行の玉将が追い詰められた。両津はいつものニヤニヤした表情で煽る。

 

「どうだ時行。これでまたわしの勝ちだ。」

「いえ、ここからです。」

 

 そう言って時行は両津の飛車を角で取った。両津は固まる。時行が攻めの時に仕掛けていた角にまんまとハマったのだ。まさに死角。意識外からの角に両津は唖然としている。

 敵が勝ちを確信した時、騙されているとは思わない。両津は時行の作った罠を疑うことなく飛車単独で突撃させていた。時行の逃げ誘導が上手くハマったのだ。両津は尋常じゃない冷や汗を掻く。

 

「時行…待っ…」

「ダメですよ先輩。」

「そうよ両ちゃん。待ったは無しよ。」

 

 2人に咎められ両津は別の駒を出す。しかし、その手は時行が読んでいた手だ。ここから時行の反撃が始まる。分断され各個撃破されていく両津の駒。将棋という戦場を時行が支配した。両津の駒がどんどん取られていく。

 もう勝敗は着いた。両津の王将が逃げようとするも既に塞がれている。最後に時行が取った飛車で王手をかけた。

 

「王手です!」

「ま、参りました。」

 

 とうとう両津が降参した。勝った時行に中川と麗子が駆け寄る。

 

「凄いじゃない時行君!」

「大金星ですよ!」

「ありがとうございます!」

「くそ〜!何故だ!何故この数日で時行がここまで強くなったんだ〜!?」

 

 勝って嬉しい時行と負けて悔しい両津であった。

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