逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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伐採屋両さん

 いつものように派出所に入る時行。そこにはチェーンソーを持っている両津、左近寺、ボルボがいた。3人は地図を見てブツブツ言っている。

 

「あ、あの両さん?」

「時行か。丁度いい。お前も一緒に来い。」

「え、あ、え、え、え〜!?」

 

 両津達に連れてかれる時行だった。両津達が向かったのは古いお寺だった。多分、南北朝の時に建てられた寺だと思われるが時行には分からなかった。

 

「ここで何を?」

「伐採だ。」

「はい?」

 

 時行が?を浮かべると両津がスマホを見せた。大木が朽ちて倒れ通行人が怪我したというニュースだ。

 

「最近、各地でこういう倒木による事故が相次いでいる。その原因の多くは虫などによる空洞化や寿命だ。特に寺や参道の樹木は同じ時期に植えられた物が多いから朽ちるのもほぼ同じ時期だ。だから、朽ちて倒れる前に伐採するのがわしらの仕事だ。」

「警察官ってそんなこともするのですね。」

「本来はダメなんだけどな…」

「ウチの署はそういうところガバガバだな。」

 

 後ろでボルボと左近寺がツッコむ。そこに寺の住職がやってきた。両津は早速商談に入る。時行は周りの木を見回す。すると、一本の木が気になり近付く。木を見上げ触る。

 

「それで伐採して欲しい木は?」

「あの木でございます。」

 

 住職が時行が触っている木を指差す。両津達は準備して時行のところへと行く。時行は目を瞑りながら木に触っている。両津達は黙って見守っている。しばらくすると時行は目を開け両津を見た。

 

「この木…もうすぐ寿命ですね。」

「だから伐採する。」

 

 時行は頷くと木に向かって合掌した。両津達も時行を真似て合掌する。静かな時間が続く。

 

「ありがとうございます。」

「いいってことよ。…よし。やるか。」

「「おう。」」

 

 両津達はそう言って伐採に入る。風情もへったくれもないチェーンソーの音が鳴り響く。両津が木を切り左近寺とボルボが引っ張って倒す。時行は真顔で見ていた。

 

「さっきまでの雰囲気はなんだったの!?」

「それはそれ。これはこれだ。」

 

 木の伐採を終えた両津達はすぐに木を解体する。中はスカスカで朽ちていた。

 

「時行の言う通り寿命だな。」

「凄いですね。見ただけで分かるのですか?」

「え、ええ。なんとなくですけど…」

 

 時行と住職の会話を聞いた両津は笑う。これは使える。両津は次の伐採場所にも時行を連れて来た。今度は公園内の木だ。先月倒木事故が起きたばかりで近隣住民から依頼があった。

 

「市の対応が遅れてるらしい。」

「どこも大変だな。」

 

 両津達は公園内を探索する。しかし、木の数が多く調べるだけでも一苦労だ。そこで両津は時行に依頼する。

 

「時行、この中に伐採が必要な木があるか探してくれ。」

「両津、いくらなんでも無理があるだろ。」

「わ、分かりました。」

「断っていいんだぞ時行。」

 

 時行が歩きながら木を観て触る。目を瞑り音を聞く。その姿はどこか神聖な感じすら覚える。依頼した近隣住民達も時行を見ている。すると、終わったのか両津達のところに戻ってきた。

 

「木そのものに問題はありません。ただ…」

「ただなんだ?」

「あの木の枝に虫食いが出来ているみたいです。」

 

 時行が案内した木を見る。ただの木にしか見えない。問題があるようには見えないが両津が木に登って時行が話した枝を見る。その時、ミシミシと音が鳴った。マズいと思い降りようと試みるも折れた枝と一緒に両津が落ちた。

 

「両津どうだった?」

「時行の言ってることは合ってたか?」

「まずわしの心配をしろ!」

 

 両津が枝を拾い上げて見る。すると、カミキリムシが枝を食っていた。時行の言っていることが的中していたのだ。それを見た近隣住民達は拍手する。

 

「凄いな。」

「何者なんだ時行。」

 

 ボルボと左近寺も驚く。実際その後に両津達が簡単に調べても他の木に異常は見られなかった。時行の新たな才能を知った両津はますます調子に乗る。

 

「お前ら、時行がいれば伐採の効率がアップだ。その上調査にかかる費用もゼロだ。」

「時行に働かせすぎだろ。」

「まだ子供だぞ。」

 

 ボルボと左近寺が反対するも両津に押し切られ時行を伐採屋に勧誘した。次の仕事でも時行が見事に問題のある木を発見し対処が出来た。両津はこの出来事を利用し商売を始める。時行のおかげで時間も費用もかなり節約出来た。

 その日はみんなで居酒屋で飲みまくった。お酒を飲んで酔った左近寺がオレンジジュースを飲んでいる時行に聞く。

 

「なぁ、なんで問題ある木とない木が見分けられるんだ?」

「なんと言いますか…木に宿る光…みたいなのが薄っすらと見えてくるのです。」

「神秘ってやつか。感じてみたいものだ。」

「不可思議だな。」

「全く理解できん。」

 

 やっぱりかと思う時行。あの日、雫と共に見た光が時々見えてくる。説明しても両さん達は分からないだろう。そんな光がたまに見える。そういえばその日、変な誤解されていた。忘れよう。

 時行は楽しく飲む両津達に混ざり飲み会を楽しんだ。次の日からも両津達は荒稼ぎした。木の状態が分かる上に可愛いと時行はあっという間に人気者になる。噂は中川達にも届く。

 

「両津の奴、また変な副業を始めよって。」

「また時行君連れてるわね。」

「先輩が運営する伐採屋なんですがかなり人気になってますね。」

「そもそも法外ギリギリの値段なのに何故そこまで人気なのだ?」

 

 大原部長が質問する。

 

「これも時行君人気が凄まじいですね。可愛い上に見ただけで木の状態が分かると評判です。」

「何なんだ時行君。」

「樹木医もびっくりね。」

 

 両津の荒稼ぎに文句を言う大原部長。すると、何か思い付いたのか大原部長が笑った。

 翌日、時行が両津に依頼があると言った。両津はすぐに乗り向かう。そこには依頼人達がいた。

 

「来てくれてありがとうございます!」

「それで伐採する木は?」

「こちらです。」

 

 男性が案内したのは街路樹が並んだ道だった。かなりの数の街路樹が並んでいる。

 

「腐ってしまった木と新しい木を変えたいのですが市に頼んでも調査だけでも時間がかなりかかると言われまして…」

「なるほど。そこで時行か。」

 

 両津が時行に頼む。時行が真ん中に立って街路樹を見る。全ての街路樹に光が灯っていない。

 

「両さん…」

「どうだ時行?」

「全ての木が朽ちかけています。」

 

 時行の発言に両津はずっこける。

 

「全部か!」

「全部です。」

 

 両津達は唖然とする。それでも金のためと街路樹を片っ端から切り倒していく。案の定全ての街路樹が腐ってたり空洞化していた。全て街路樹を処理した両津達。重労働にヘトヘトだ。依頼人達は大喜びしている。

 

「両津…さすがにキツかったぞ。」

「だが…これで依頼料が…」

「あの、大原さんがこれはボランティアだと言っていましたよ。」

 

 時行の発言に両津達は目を点にする。

 

「おい、それ本当か?」

「はい。」

「だから、あの人達は喜んでいたのか。」

「俺達の苦労が無一文かよ。」

「一銭も入らねぇ。」

 

 頑張ったのにその報酬がないことに憤る両津。左近寺とボルボは倒れたまま動けない。

 

「でも、皆さんの笑顔が見れたので良かったじゃないですか!」

「時行、両津は笑顔より金だ。」

「部長〜〜!」

 

 後日、大原部長の自宅に大量の朽ちた街路樹が落ちていた。大原部長とその奥さんが驚いている。

 

「あ、あなた…」

「両津の仕業だな。」

 

 後日

 

「両津はどこだ〜〜。腐れ両津はど〜こ〜に〜い〜る〜。」

「両さんなら樹木の神秘を感じたいと言って白神山地という場所に行きました!」

 

 土岐頼遠の格好で大太刀を振り回し派出所に突撃してきた大原部長に時行はそう答えるのであった。

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