「北条時行君、君は類いまれなる勇気を持って…」
両津達は今新葛飾署にいる。時行が誘拐犯逮捕のきっかけを作り亜矢を助けたことを表彰していた。時行が屯田署長から表彰状を受け取る。みんな拍手している。
「ありがとうございます。」
「うむ。それと、君には1日署長をしてもらいたい。」
「1日署長?」
「そうだ。」
屯田署長が時行に新葛飾署の1日署長を提案する。時行はよく分かっていないが快く受けた。表彰式が終わると時行は両津のところに向かった。
「両さん。1日署長とはどのようなものなのですか?」
「署長。つまりこの中で一番偉い役職を体験出来るというものだ。凄い栄誉なことだぞ。」
「そうですよ。受けて損はありません。」
両津と中川が時行に薦める。
「時行も南北朝で部隊を率いたことあるだろ。そんな感じでOKだ。」
「確かに数万の軍勢を率いたことならありますけど。」
「規模が全然違うぞおい。」
「さすが将来幕府のトップになるはずだった方ですね。」
両津と中川は改めて時行の凄さを知る。時行は署長室に入ると制服に着替えた。両津の真似して敬礼をする。屯田署長がニコニコで時行を見ている。
「よく似合っておるぞ。」
「ありがとうございます。」
屯田署長が時行を署長席に座らせる。時行は初めて座る署長席に興奮していた。燥いでいる時行から少し離れた両津が屯田署長とコソコソ話をしていた。
「時行を1日署長にした理由は?」
「イメージアップだ。お前のせいで評判が下がりまくりだからな。」
屯田署長に睨まれ両津は目を反らす。そこに撮影機材を持ってきた署員達が入ってきた。時行の1日署長ポスターを作る予定だ。時行は屯田署長に言われるまま撮影に協力した。それを見ていた両津は考えていた。
(時行を使えば…)
両津は笑う。多分、いや絶対悪巧みだろう。そんなことなど知らない時行は1日署長としての準備を始めた。ポスターの写真を撮りYouTubeチャンネルにあげる動画を撮り仕事を一通り教えてもらった。
翌日、テレビが時行を取材に来た。既に有名人になっている時行の1日署長だから取材陣も大勢いた。屯田署長はこれでイメージアップ間違いなしと喜んでいる。
「両津、問題はないと思うが時行君の保護者としてしっかりするように。」
「は、はい。」
「上手くいけばボーナスアップだ。」
「署長!両津勘吉!しっかりとやらせていただきます!」
両津が敬礼する。取材が終わり時行が署内に入る。両津も時行を追って入る。時行は会う人全員に挨拶していた。みんな笑顔で返す。特に交通課の女性陣からの声援がものすごかった。
「可愛い!」
「本当にお人形みたい!」
「やっぱりゴリラに相応しくない!」
「あんな原始人に時行君が合うわけない!」
「まだ言うかお前ら!」
たまらず両津が出てくる。両津を見た瞬間、全員が両津を睨んだ。すかさず小町と奈緒子が前に出る。
「いくら部長の命令でもあんたが親ってのは絶対反対!」
「あの子の上品さ見なさいよ!絶対下品なあんたに合うわけがないでしょ!」
「じゃあお前らは時行の上品さに勝てるか?」
両津の反論に2人とも黙る。両津が他の女性陣を見るも下を向いてしまう。
「いいか。確かにわしはどちらかと言うと下品だ。それを置いといてもお前らが時行の上品さに敵うわけがない。この中で時行の上品さに勝てるのは早矢しかいない!」
そう言って早矢を指差す。早矢は呼ばれたとこちらを見る。早矢を見た女性陣は全員膝を着いてしまう。
「た、確かに…」
「早矢さん以外が時行君に勝てるわけがなかった。」
「なんなら新葛飾署内でも時行に上品さで勝てるのは早矢だけだろうな。」
早矢が時行を見ている。時行も早矢を見ている。そこに大原部長が来て時行を呼んだ。後ろ姿からも出てくる上品さに女性陣は完敗している。男性署員達も時行に見惚れていた。
「雑、お前の出番はこれだけだ。」
「えぇ!?」
両津はそのその内の1人の肩に手を置いて辛辣な一言を浴びせた。時行は大原部長の元で簡単な仕事を済ませる。仕事と言っても大原部長が渡す書類をいろんな人に届けるだけだった。両津がその姿を遠くから見ていると取材陣の1人が両津に近付いてきた。
「両さん。」
「お前か。どうした?」
「実は新葛飾署の婦警特集をしたいんだけどここの婦警ってガードが固すぎなんだよね。そこで両さんにお願いしたいんだ。」
「なんでわしに?」
「両さんって時行君の保護者なんでしょ?」
記者が両津に耳元でコソコソ話す。それを聞いた両津はニヤリと笑う。
「なるほど。でも時行のこともあるしタダと言うわけには…」
「もちろん、お礼は弾みますよ。」
記者は両津に札束が入った封筒を渡す。両津はすぐに懐にしまって笑う。
「お主も悪よのぉ。」
「両さんこそ。」
両津は記者と別れると早速時行のところへと向かった。時行は午前中の仕事を済ませて汗を掻いていた。両津は自販機で買ったお茶を時行に渡す。
「ありがとうございます!」
「いいってことよ。それより時行、お前に頼みがある。」
「なんでしょうか?」
「これを着けて婦警の更衣室に入って婦警の服を持ってきてほしい。」
「なんでですか?」
時行が怪しむ。それでも両津は下がらない。
「これもイメージアップのためだ。新葛飾署はわしだけじゃなく婦警もイメージダウンの原因になっている。お前も見ただろ。あの婦警達のわしに対する態度。」
「た、確かにいいとは言えませんけど。」
「だからだ。お前には1日署長の権限であいつらにインタビューする。あいつらのイメージアップが成功すれば新葛飾署のイメージもアップするというわけだ。」
「は、はぁ…」
時行は渋々了承する。
「サンキュー。それと、おつかいも頼む。」
「まだあるんですか?」
「そうだ。手錠とうな重特盛を頼む。」
「それは…」
「手錠はこの前犯人逮捕の時に誤って壊してしまってな。これがバレると始末書ものだ。だから、新品を持ってきてほしい。壊れた手錠は後でわしがなんとかする。うな重は単純にわしが食べたいからだ。領収書を新葛飾署にすれば問題ない。」
怪しいことだらけだが頼られるのが嬉しいのか時行は頬を赤らめて了承した。早速、時行は署長室でうな重特盛を頼む。もちろん言われた通りに領収書は新葛飾署にした。次に時行は手錠の管理をしている署員のところに向かった。
「手錠ですか?」
「は、はい!その…なんと言いますか…見て…みたいなんて…」
「いいですよ。署長の頼みですから。」
署員は快く貸してくれた。時行は良心の呵責でおしつぶされそうになる。それを我慢して女子更衣室に向かった。扉をノックする。出てきたのは小町だった。着替えの途中なのか下着姿だ。
「す、すみません!」
「時行君!いいよ!時行君なら大歓迎!」
小町は時行を更衣室へ連れて行く。中には奈緒子や早矢の他に纏や麗子もいた。みんな下着姿だが恥ずかしがる様子はなかった。代わりに時行は赤面して目を瞑っている。
「どうしたの時行君?」
「そ、その…」
両津からの頼みだとは言うなと強く言われた時行は言葉を選ぶ。
「み、皆さんのことをイ、インタビューしたいと思いまして!」
「そうなの!いいよ!なんでも聞いて!」
時行が小町達にインタビューする。この時、時行を含めた誰も気付いていない。時行の胸ポケットには隠しカメラが入っており両津が覗いていた。
「よし。いいぞ時行。これは裏で高く売れるぞ。」
時行は両津が教えた通りにインタビューする。誰も疑うことなく親身に答えてくれた。こうしてインタビューが終わる。時行はお礼を言ってお辞儀した。
「いいのよ!これぐらい!」
「本当に原始人に似合わないぐらいいい子よね。」
「そ、そうでした!」
「「「?」」」
時行は忘れかけてたおつかいを思い出した。
「さ、最後にふ、服!制服を貸してはくれないのでしょうか!?」
緊張のあまり変になる時行。でも、小町達は快く使っていない新品の制服を貸してくれた。時行はもう一度お礼を言って更衣室を出る。すぐに両津の元へと走る。
「両さん!」
「よくやった時行!わしの言った通りに出来たじゃないか!」
両津がまるで一部始終を見ていたように話すも時行はそれどころではなかった。時行は婦警の制服を両津に渡す。
「これ、何に使うのですか?」
「婦警特集に使いたいと言ってきた記者がいてな。」
両津はお礼にと時行にお金を渡す。両津が去って行く。時行は一安心と残りの仕事を済ましていく。こうして、時行の1日署長が終わり帰ろうとする。すると、小町達が話しているのを見つけた。何の話だろうと近寄る。
「まさか時行君が…」
自分のことについて話していた。時行は隠れて話を盗み聞きする。
「うな重食べて手錠借りて私達にインタビューして婦警の制服を借りる。」
「うな重は精が出る物ですわ。」
「私達にインタビューは私達のことをよく知ろうとしている。」
「婦警の制服を借りたのも何かに使うため?」
「そして、手錠…もしかして時行、私達でいやらしいことを…」
纏の言葉でみんな絶句する。時行も絶句する。みんな、時行が自分達を手錠で拘束してエッチなことをしている想像をしてしまい赤面する。
「そ、そんなわけないでしょ!あの原始人ならともかく!」
「でも、そう考えると辻褄が合ってしまう。」
「署長権限でそんなことするなんて…」
「時行君って…たまに私達じゃ考えられないことをするわね。」
みんなの時行への評価が大変なことになる。時行も顔が溶けてしまうぐらい戸惑っている。
「大丈夫よ!時行君なら私は受け入れる!」
「そうね!私も!どれだけド変態署になっても頑張る!」
「私も弓とド変態を極めていきます。」
「早矢、ド変態は極めなくていい。」
時行の顔が無になる。そして、消えていく。
翌日
「両さーん!両さんはどこですかー!!」
「先輩なら1日アイドルプロデューサーをしてくると言って秋葉原に行きましたよ。」
赤面しながら木刀を振り回して派出所に突撃してきた時行に中川はそう答えたのだった。