一学期が終わり夏休みに入る頃、時行は派出所に遊びに行くと両津が麗子の愛犬と何かしていた。手には機械がある。
「両さん、何しているんですか?」
「時行か。懐かしい物を見つけたから試してみてるところだ。」
両津が麗子の愛犬に機械を向ける。愛犬がワンと鳴くと機械に何か表示された。時行が見ると『お腹空いた』と表示されている。
「これは…」
「バウリンガルだ。簡単に言えば犬と話せる機械だ。」
「凄い!」
時行はキラキラした目でバウリンガルを見る。
「犬と話すことが出来るのですか!?」
「精度は低いがな。タカラが開発した玩具で首に着けた装置が鳴いた時の振動を読み取りこいつに送る。一昔前に流行った玩具だ。」
「これがあれば犬追物で無双できます。」
「そうだった。お前にとっては全てが新しかったな。」
時行はバウリンガルを持ってクルクル回っている。両津達にとってはもう大した玩具ではないが時行にとっては画期的なアイテムだ。
「これ、もらっていいですか!?」
「構わんぞ。わしにとってはもう要らん物だからな。」
時行はバウリンガルを貰うとそのまま走り出した。向かった先は学校。そう、ここで飼っているモモに使ってみたいのだ。静と渚がモモの世話をしている。そこに時行がバウリンガルを持ってきた。
「渚!静!これ貰ってきたよ!」
「何ですかそれ?」
「バウリンガルだって!」
「す、すっごい前に流行っていた物ですね。」
時行は早速モモに試してみる。キラキラした目でモモを見る。すると、モモがワンと鳴いた。時行がなんて言ったのかバウリンガルを見る。
『散歩、行きたい』
「おぉ!ちゃんと動いてる!」
「散歩…確かにしてない。」
「じゃあ行こう!」
時行達は先生に許可をとってモモを散歩させる。途中、小型犬を散歩させている女性がいた。その小型犬にモモが反応し鳴いた。時行はなんて言ったのか気になってバウリンガルを見る。
『こんにちは』
「凄いモモ。ちゃんと挨拶したよ。」
時行が驚く。女性も軽く会釈して散歩を続けた。近くの公園に着く。モモは広場で走り回る。それを時行が追いかける。よく見るとバウリンガルを前に突き出している。凄いハマっていた。
「モモ!何か言って!」
「ワン!」
『遊びたい』
「私もだ!」
時行がボールを投げる。モモが元気良く走って取りに行く。それを繰り返していた。木陰から見ていた2人も一緒に参加してモモと遊ぶ。
「モモ、どうだ!?」
『楽しい』
「そうか!」
「意外と機能してますね。」
はじめて使うところを見た渚が驚いている。すると、静がモモも前にしゃがんで頭を撫でながら聞いた。
「ねぇ。私達のこと、どう思う?」
『友達』
モモが鳴く。バウリンガルを見て3人共喜ぶ。時行がまたボールを投げようとする。すると、モモが投げる前にボールを噛んでモモが投げた。おぉーと驚く3人。モモが時行を見て鳴いた。
『とってきて』
時行は目を擦ってもう一回見る。変わってない。モモを見ると舌を出して頷いている。時行は急いでボールを取りに行く。時行がボールを取って戻って来るとまた投げた。今度は渚を見て鳴く。
『とってきて』
渚も目を擦ってもう一回見る。やっぱり変わらない。モモを見ても舌を出して頷いていた。渚もボールを取りに走る。ヘトヘトになって戻って来た。その様子を静はスマホで撮影していた。
「これ、売れる。」
「「何に!?」」
静が微笑みながら動画をチェックする。モモも満足しているのか尻尾を振っている。そからもモモが投げては時行と渚が取りに行くという逆転現象が起きた。時行が戻って来た時、モモが一点を見つめて鳴いた。
『あの人あやしい』
「あの人?」
時行達がモモと同じ方向を見る。その先には帽子を深く被った男がベンチの前に立っていた。さっきから周りをキョロキョロ見ている。すると、ベンチに置いてあったカバンから財布を抜き取った。
「ドロボー。」
「捕まえましょう!」
時行達は急いで男に駆け寄る。
「すみませーん!」
「ん?」
「さっき、財布を盗みませんでした?」
「はぁ?」
もちろんだが男はとぼけている。
「証拠はあるのかよ?」
「盗むところを見ました!」
「それに盗んだ財布持ってるでしょ。」
「でまかせ言ってんじゃねぇ!」
「なら、わしらが調べようか。」
男が振り向くと両津と麗子がいた。
「両さん!」
「パトロール中に騒がしいと思ったらなんだ?」
「この人、財布盗んだ。」
「ほぉ…」
両津が男に近寄る。男は下がるが時行と渚が後ろに張り付いて逃さない。両津は男を身体検査する。すると、懐から女性物の財布が出てきた。
「これはお前のか?随分と女らしいな。」
「男が女らしい財布持ってちゃいけねえかよ!」
男が怒鳴る。すると、ベンチの方で女性が騒いでいた。財布がないと言っている。両津は財布を麗子に渡した。
「麗子。」
「えぇ。」
麗子は女性に財布を確認してもらう。中には女性の免許証が入っていた。それを見た瞬間、男は両津を突き飛ばして逃げた。時行が追いかけようとした時、モモがダッシュして男の腕に噛みついた。
「いてぇ!」
「逮捕だ!」
両津が男にのしかかり手錠をかける。
「ナイスだったぞ。」
両津がモモの頭を撫でる。モモが元気よく鳴く。
『ありがとう』
「いい子じゃないか。」
両津は応援を呼び男を引き渡す。解決し一安心する。両津がモモを可愛がる。
「そのバウリンガル、ちゃんと機能しているみたいだな。」
「はい!そうだ!」
時行は何か思い付いたのかバウリンガルを自分の首に装着した。
「これって人にも使えるのでしょうか?」
「試したことないから分からん。」
試しに時行がワンと鳴いた。
『私は全裸で走るのが大好きです』
「「•••ん?」」
両津と渚が時行とバウリンガルを交互に見る。時行に気になりバウリンガルを見る。すると、顔を真っ赤にさせた。その様子を静は動画に収めている。
「時行…お前…」
「そうなんですね…」
「違いますよ!これがおかしいんです!」
「バウリンガルはちゃんと機能する。」
動画を撮りながら微笑む静、時行を見てドン引きする両津達、必死に言い訳する時行、そんなみんなを見てワンッと鳴いたモモであった。
『すごく楽しい』