「コリコリしてて美味しいです。」
ある日、時行は超神田寿司でイカを食べていた。
「鎌倉にいた頃は食べなかったのか?」
「はい。そもそも魚やワカメぐらいしか海産物は食べてないです。」
イカが気に入ったのかパクパク食べていく。そんな時、丁度ニュースでイカのことが流れていた。両津と時行がテレビを見る。
『今年のイカの漁獲量は去年よりも16%も低い…』
「イカって減っているんですか?」
「そうだ。数自体は多いが獲りにくいし養殖も難しいからな。」
時行は箸を止める。
「私が独り占めするのも良くない気がします。」
「大丈夫だ。時行がそんなこと気にする必要はない。」
両津が笑いながら喋る。すると、何か閃いたのか悪い顔をした。時行はもう慣れたのか気にせずお茶を飲む。
「時行。」
「お断りします。」
「イカの養殖してみないか?」
「詳しく話を聞かせてください。」
翌日、両津と時行は飛鷹二徹の船である島に移動していた。島の片隅に大きな網で囲った施設がある。中に入ると大量のイカがいた。時行が食べていたアオリイカだ。
「両さん、これは?」
「昔、マグロの養殖で使っていたところを改造したイカ養殖場だ。そもそもイカの養殖が難しい理由はこいつら我儘なんだよ。海水じゃないといかんとか生きたエサしか食わんとかとにかく養殖に向いていない。そこで初めてイカの養殖に成功した日本の大学と共同で作ったのがこの養殖場よ!」
「両さんってなんでもしますね。」
「両津、そろそろエサの時間だ。」
二徹が両津達を生簀から遠ざける。すると、海中にあった扉が開き小さな魚が飛び出してきた。それを食べるイカ達。時行が生き生きしたイカ達を見ていると両津が隣にきた。
「常に海水は交換して他の養殖場で育てた魚を定期的に放つ。さらに、人工のエサも与えたり海水の温度を変えたりしてストレスを与えている。こうすることで我儘なイカ達を少しずつ逆境に強くさせる。」
時行が生簀を覗いているとイカの1匹が時行に墨を吐いた。時行は驚きながらも墨を避ける。
「びっくりしたー!」
「すげぇ。あれも避けたぞ。」
「両津が子供を育てることになるとは珍しいこともあるもんだな。」
「どいつもこいつも同じようなことを言うな。」
生簀の中を興味津々に見る時行。二徹が生簀からイカを獲る。これからこのイカを調理して食べようというのだ。時行はワクワクしながら待つ。二徹がイカを刺し身にして出した。時行が早速いただく。
「美味しいです!」
「これでイカの養殖問題は解決だな。」
「ああ。やることが多いがな。」
その日、両津達は何事も無く帰った。数日後、また例の養殖場に行くとイカが大きくなっていた。普通のアオリイカの数倍というデカさだ。二徹までも驚いている。
「両さん、これ…」
「ストレスに強くなり過ぎたか。」
「ここまで育つとは想像してなかった。」
両津がイカを獲ろうとするも一苦労だった。なんとかして引き上げるも調理も一苦労だ。時行と二徹も協力してなんとか刺し身に出来た。2人でいただく。すると、2人に電流が走った。
「美味いぞ!」
「なんでしょうか?この食感、コリコリの中に弾力が合って醤油と凄く絡みます。」
「あのデカさでその旨さか。これは大成功の部類だな。」
「時行、これは間違いなく売れるぞ!」
「はい!これはイケます!」
両津はこのイカをダイオウアオリイカと命名しすぐに卸業者に販売した。ダイオウアオリイカはあっという間に人気となる。両津は調子に乗りさらに大きなアオリイカを作ることにする。どんな環境でも育ちなんでも食べる最強のアオリイカだ。
それからまた数日後、ダイオウアオリイカはすくすくと育ち10mを超える巨大なイカとなった。さすがに今の生簀じゃ狭いのでさらに生簀を広げる。これには研究者達も驚いている。
「これはまさに食べれるダイオウイカですね。」
「そうだろ!イカは刺し身も上手いがゲソ天、焼きイカ、ゲソ飯、踊り食いまで出来る。これで食料問題などあっという間に解決だ!」
両津が大笑いする。時行もダイオウアオリイカを見て凄いと感じている。見惚れていた時行の足元に触手が伸びている。触手が時行の足を掴み生簀に引きずる。
「うわぁ!」
「なんだ!?」
両津が異変を感じて生簀を見る。そこにはダイオウアオリイカに襲われている時行がいた。逃げようにも体験したことない触手が逃さない。両津が助けようと網を伸ばす。しかし、届かない。触手は時行の身体中を弄る。
「ま、待ってください!ダメです!そ、そこは…あっ、ああああ///」
「時行!お前ヤバい性癖に目覚めてるぞ!」
触手に擽られ顔を真っ赤にして妖艶な声で笑う時行。何か感じてしまっている。両津が時行を助ける物が何かないか探している。その隙に触手がボタンまで伸びる。
「マズい!そのボタンはここと海を繋げるゲートの開閉ボタン!」
両津が気付くがもう遅い。触手はボタンを押しゲートが開く。両津がボタンをもう一回押そうと走る。そこに触手が伸びて両津を捕らえた。
「しまったぁ!」
「両さ〜ん!」
研究員達は既に逃げてしまい2人を助ける人が居なかった。2人はそのままダイオウアオリイカの群れと共に大海原へと消えてしまった。
後日
『突如、太平洋に出現したダイオウイカの集団が次々と漁船を襲撃した事件ですが動画にはダイオウイカに捕まっている2人の日本人の姿が確認されました。』
「クラーケンの誕生ですね。」
「まったく両津の奴め。そのままイカのエサになってしまえ。」
「巻き込まれた時行君が可哀想。」
ニュースを見て呆れる大原部長達であった。