8月の満月が綺麗な夜
両津達は派出所から満月を見ていた。
「9月の中秋の名月もいいですけど8月の満月も綺麗ですね。」
「鎌倉でも綺麗な満月はよく見えました。」
「月だけはどんだけ時代が流れても変わらないのがいいな。」
「先輩は一時期月を支配して表面変えましたよね。」
中川に言われて目を反らす両津。そんなことまでしたのかと時行は目を丸くしている。そこに大原部長が来た。
「みんな揃っているな。」
「どうしたんですか部長。」
「実は今日特殊刑事が来ることになった。」
「両さん!籠城しましょう!」
「既に拒絶反応が出てるな。」
箒で武装する時行を両津が落ち着かせる。
「安心しろ時行。満月の夜にくる特殊刑事はあいつらしかいない。確かに変態だがまだマシな変態だ。」
「マシな変態ってなんですか?」
両津が時行に説明していると満月から影が見えてきた。その影はだんだんと大きくなりこちらに向かってきた。旧日本軍の夜間戦闘機月光が両津達の前に着陸する。時行が驚いていると月光から2人の男性が降りてきた。2人とも見た目は普通の背広をした中年男性だった。それを見た時行は涙を流している。
「ふ、普通の人だ!」
「両さん…」
「何も言うな寺井。この後の展開はもう読めてる。」
喜ぶ時行に対して両津達は体験しているため時行を温かい目で見ていた。時行が喜んでいると月光刑事が前に出てきた。
「はじめまして。私は月光刑事こと聖羅無々です。」
「同じく聖羅美茄子です。」
「はい!北条時行です!」
時行が月光刑事と握手する。すると、懐からステッキを取り出した。時行の目が点になる。展開を知っている両津達は時行を不憫に思いながら頷く。
「ムーンライトパワー!」
「え!?なんですか!?」
「来るぞ…来るぞ…」
突然月光刑事が叫ぶ。それに合わせて美茄子刑事がスマホで曲を再生しライトを点け月光刑事の前に垂幕を用意した。月光刑事の影はクルクル回ったりピョンピョン跳んでいる。突然のことに時行は困惑している。両津達は始まったと観念している。
「メイクアップ!」
そう言って月光刑事が着替え始めた。
「説明しよう。月光刑事はコスチュームを変えることにより7つの特殊能力を発揮するのだ。では、私も。」
美茄子刑事が月光刑事の隣で着替えを始める。時行がソワソワしていると垂幕が退きセーラー服姿の2人が現れた。
「月の光は私のエナジー。月よりの使者月光刑事!」
「同じく美茄子刑事!」
「「只今見参!」」
「•••」
時行は2人を指差して両津達を見る。さっきとは違う涙を流していた。
「あ、あの…」
「そういうことだ。」
両津が諦めろと時行に言う。後ろで中川達も両津に賛同して頷く。時行が震えていると月光刑事が近付いてきた。手には子供用のセーラー服がある。
「さぁ、君もこれを着て真っ裸刑事聖羅寿日太として私達と共に夜空を交通犯罪から守ろうではないか。」
「嫌です!」
「諦めろ時行。抵抗しても結局はこうなる。」
時行が両津を見ると美茄子からセーラー服を渡されていた。中川達もセーラー服を持っている。時行が信じられないものを見たような目をしている。時行もとうとう観念したのか両津達と一緒にセーラー服に着替えた。
「似合っているぞ聖羅寿日太。」
「全然嬉しくありません。」
「今までで一番マシだろ。麗子以外を見ろ。悲惨だぞ。」
時行が両津に言われた通りに見ると麗子以外は変態と呼んでいいレベルのセーラー服を着た両津達がいた。それに対して時行は今どきの女子中学生と言われたら納得するレベルに似合っていた。
「両さん。毎回こんなことしているのですか?」
「わしは毎回だ。」
両津に同情する。そこに緊急通報が月光刑事のところに入った。
『亀有高速で爆走している暴走族あり!既にあおり運転を繰り返し民間人に被害が出ている模様!…』
「よし!行くぞ!聖羅太郎!聖羅寿日太!」
「あいつらは!?」
呼ばれなかった中川達はホッとしている。両津が文句を言っていると月光刑事が鞭を渡してきた。
「またあれをやるのか?」
「そうだ。」
時行も鞭を渡されている。月光刑事がステッキから鞭を伸ばしてきた。
「儀式を始める。」
「儀式?」
「見てろ時行。そして、忘れろ。」
「聖羅〜月光!出撃!月に代わってぇ!…お仕置きよ!」
月光刑事が両津と時行に鞭を打つ。両津は背中にくらい時行は避けた。負けじと両津も鞭を振るう。それに合わせて時行も鞭を振るった。
「月に代わってえぇ!お仕置きよ!!」
「お仕置きよ!」
「時行君、様になってますね。」
「彼の名誉のために言わないでおこう。」
2人の鞭が月光刑事の背中に命中する。次に美茄子刑事がトゲ鉄球付の鞭を振るった。両津はなんとか凌ぐも後ろからきた月光刑事の鞭をくらいそのまま2人の鞭を浴び続けた。その間も時行は2人の鞭から避け続ける。
「凄いな…私達のお仕置きを全て躱している。」
「さすが逃げ上手の若君ですね。」
「そ、そろそろ行きましょうよ。」
「そうだな。これで儀式は終わりだ。」
「なんで毎回こうなる。」
儀式が終わりボロボロの両津が月光の下を見ると急遽取り付けられたカプセルがあった。両津は嫌な予感がした。と、いうより嫌な確信をした。
「おい、まさかまたこれか?」
「そうだ。」
「わしと時行をここに入れようってか!?」
「いや、寿日太は違うぞ。」
「なんでだよ!?贔屓してるだろ!」
このカプセルが特等席だ。両津が文句を言うと後部座席に乗った美茄子刑事が時行を招いていた。
「寿日太はここだ。私の膝の上だ。」
「•••」
「両さん、ここが嫌なんですよね?」
「すまん時行。さすがのわしもあそこは無理だ。」
時行が渋々美茄子刑事の前に座り両津が下の特等席に入る。
「先輩、無事を祈っています。」
「わしに何かあったら時行を頼む。」
「あの…お尻に何か当たっています。」
「私のレバーだ。」
美茄子刑事の回答に時行がゾッとする。
「発進!」
「いやだ〜!」
「怖い!怖い!怖い!怖い!やっぱりこれは怖い!」
月光が発進する。そのまま飛び立ち暴走族を追う。高速道路に近付くと複数の暴走族が車やバイクで走っている。他の車を追い抜いたりパッシングしたりしていた。パトカーが追うも暴走族達は止まらない。
「いたぞ。このまま急降下して近付く!」
「大丈夫なんですか!?」
月光が暴走族に近付く。
「なんだ!?」
「なんで飛行機がこんなところに来るんだよ!?」
暴走族達は驚いている。月光が暴走族達の上に来る。バイクに乗っている暴走族と両津の目が合う。
「おい!今すぐ止めろ!」
「うおっ!変態だ!」
暴走族はバットでカプセルを攻撃する。それに合わせて他の暴走族もカプセルを攻撃する。
「おい!止めろ!これ緩いんだぞ!」
両津が叫ぶとカプセルを止めてあるネジがガタガタし始めた。両津が慌ててカプセルから出るとカプセルが落下しバラバラになって砕けていった。
「相変わらずテキトーに付けやがって。」
両津が這い上がってくる。両津は後部座席から時行を出す。
「両さん!?」
「時行、お前がリーダーの車に乗って止めろ。」
「無茶ですよ!」
「無茶でもやるんだ!」
「最悪だぁ!」
両津がリーダーの車に向けて時行を投げる。時行もヤケクソで飛び乗った。
「なんだ!?」
リーダーが窓から覗く。その瞬間、バランスを崩してしまった時行がリーダーの顔を蹴ってしまった。
「止めてください!」
「ふざけるなクソガキ!」
リーダーは時行を振り落とそうとさらにスピードを上げる。前にいる車を抜かす。運転手が驚く。車の上にセーラー服の時行がいる。後部座席でそれを見た静が時行をスマホで撮影した。
「面白い写真が撮れた。」
時行は踏ん張っている。周りの暴走族達も時行を落とそうと攻撃するも時行は全て避ける。その間に月光が暴走族に近付きプロペラで攻撃する。これにはさすがに恐怖したのか次々と倒れていく。
「な、何なんだあれ…」
「派手ですね…」
プロペラがだんだん時行に近付く。
「あれ!?私がいますよ!」
「大丈夫だ!」
「どこが!?」
時行が叫ぶと月光からフック付ワイヤーが飛び出してきた。フックには両津が捕まっていて他の暴走族を蹴り倒していた。そのまま突っ込んでくるので時行が両津の手に捕まるとプロペラでリーダーの車の天井を破壊した。
「相変わらず恐ろしい。」
「この人達がいたら鎌倉奪還がもっと楽に出来たかも。」
暴走族達は全員降参し警察に捕まった。2人はフックに吊られたまま満月へと消えていった。
後日
「今まで一番疲れた気がします。」
「これからもあんなのが来るから慣れろ。」
「もう経験したくありません。」
ぐったりしている時行と両津。そこにダンボールを抱えた中川がやってくる。
「先輩、特殊刑事課から報酬が届きましたよ。」
「どうせ特殊刑事課人形だろ。」
「そ、そうなんですが…」
中川がダンボールから出したのは真っ裸刑事フィギュアが入った箱だった。側面には1万円と記載されている。さらに、時行が着ていたセーラー服もある。
「『等身大時行君フィギュア真っ裸刑事聖羅寿日太バージョンと月光刑事バージョンと美茄子刑事バージョンを用意した。好きに着せ替えしてくれたまへ。』って書いてますけど。」
「他の特殊刑事課よりも高値で売られてるぞ。」
「要りませ〜〜ん!!」
特殊刑事からの報酬であるフィギュアを赤面しながら叩きつける時行であった。