それは突然訪れた。
いつものように派出所にいる両津達。そこに突然1人の男が現れた。
「やぁ!スーパー貧乏人!久しぶり!この私、スーパー金持ちの白鳥麗次が来てやったぞ!」
「なんですかこの人?」
「ただのバカだ。」
時行の質問に辛辣な回答をする両津。中川達もいつものことだと気にしていない様子。白鳥は時行を見つけるとフッと笑い懐から一万円札をばら撒いた。
「受け取りたまえ綺麗な貧乏人君よ!」
「あいつ、鎌倉幕府トップの子供を貧乏人呼ばわりしたぞ。」
「無知って恐ろしいですね。」
時行は素直に白鳥がばら撒いた一万円札を拾う。
「時行、拾わなくていい。それはコピーで作った偽札だ。」
「え?」
「見ろ。本物の一万円札は渋沢栄一の顔が動く。」
そう言って両津は本物の一万円札を時行に見せる。確かに時行が持っている一万円札の渋沢栄一は全く動かない。時行の興味は白鳥から一万円札に向かう。
「最近のお金は凄いですね。」
「元々は偽造防止が目的だがここまでやるのは日本ぐらいだ。日本の札は世界一偽造しにくいで有名だからな。例えば…」
「お札じゃなく私の話をしろー!」
両津のお札豆知識を中断させる白鳥。仕方なく時行が聞く。
「え、え〜と…あなたは?」
「よく聞いてくれた!私は白鳥鉄工所御曹司で麗子さんのフィアンセだ!」
「フィアンセってなんですか?」
「婚約者、つまり結婚相手だ。」
「おめでとうございます!」
「違うわよ。」
キラキラした目で祝辞を言う時行に麗子がきっぱりと否定した。そんな麗子に白鳥が近寄る。
「さぁ麗子さん。僕の新しいポルシェで日本一周でも…」
「これのどこが新しいんだ?」
両津がポルシェをバンバン叩く。さらにはいつの間にか子供達がポルシェに落書きをしていた。白鳥が慌てて子供達を追い払い両津を遠ざける。
「止めろ貧乏人共!それは最新鋭のEV車なんだぞ!」
「何が最新だ。既にポルシェのEV車はあるだろうが。」
「こいつは太陽光による自家発電が可能なのだ!」
「なんでそんな車にお前が乗ってるんだよ。」
「白鳥鉄工所が大手電機メーカーと契約を結んだのだ!」
確かによく見るとポルシェの屋根部分にソーラーパネルがあった。しかも、シールみたいに貼り付けるタイプのソーラーパネルだ。
「これでエンストする心配はゼロだ!」
「気にしてたのか。」
白鳥は落書きを一生懸命取ると麗子をポルシェに乗せる。そこに両津が時行を乗せた。
「両さん!?」
「時行、こいつと麗子だけじゃ心配だ。しかし、わしは関わりたくない。だから、お前が麗子を守れ。」
「え、ええ〜!」
両津が無理矢理ポルシェの奥に乗せる。座るところじゃないので無理な体勢になってしまう。白鳥は不機嫌そうな顔をしている。
「これは二人乗りだが君ならスーパー貧乏人よりはマシだ。」
「ちょっと待ってください。嫌な予感が…」
時行が言い切る前にポルシェを発進させた。時行の叫び声が両津のところまで聞こえてくる。
「時行なら麗子を連れて逃げるぐらい朝飯前だろ。」
「面倒事を時行君に押し付けた…」
ホッとする両津と時行を憐れむ中川であった。
一方の時行は気分が悪くなったのか黙って外の景色を見ていた。
「大丈夫、時行君?」
「あははは…大丈夫です。今、弧次郎が馬に乗って助けに来てくれました。」
「時行君、それ幻覚よ。」
慣れない爆走に時行は参ってしまっている。麗子が近くのパーキングエリアに停めて時行を落ち着かせる。
「大丈夫、時行君?」
「マリアさんより酷いかも…」
「あんなところに乗るからだ。」
白鳥がやれやれと思いつつも水を時行に渡す。一休みするとまたポルシェに乗る。すると、時行はポルシェの屋根に正座した。
「これで行きましょう。」
「行けるわけないだろ!」
「時行君、さすがにそれはダメよ。」
時行は抵抗するも最終的に同じところに座ることになった。そのまま再び走る。高速道路をビュンビュンかっ飛ばす。さすがに慣れてきたのか質問する余裕すら出てきた。
「あの…これどこに行っているのですか?」
「どこってもちろん湘南に決まってあるだろう。あの綺麗な海を麗子さんと共に…」
「道が違うわよ。」
麗子の言葉にポルシェ内が静まり返る。麗子がスマホで今いる場所を検索すると長野県にいた。湘南とは全然違う方向に向かっている。
「あの…」
「フッ…よくあることさ。」
「よくあるんですか!?」
長野県の山奥を走行しながら喋る。時行が早く戻ろうと進言する。しかし、この辺りにパーキングエリアなど無くUターン出来る場所がない。仕方なく進むがいつの間にか高速を降りていたのか変な道に入る。
「あの…これって迷ってませんか?」
「迷ってるわ。」
時行の心配は命中していた。どこか分からない山奥を進むポルシェ。もう夜になっている。すると、突然ポルシェが止まった。白鳥が何度もエンジンを掛け直すも動かない。
「…動かん。」
「ええ!?」
麗子が代わりにエンジンをかけるも動かない。白鳥が説明書を読みながらいろいろ試すも動かない。一旦出て車を調べてみる。
「多分、充電切れだろう。」
「どうするんですか!?」
「安心したまえ綺麗な貧乏人君。これは自家発電も出来るEV車だ。時間が経てば動くようになる。」
「ほ、本当ですか…」
麗子が助けを呼ぼうにも圏外。周りに民家らしき灯りもない。車が通ってくる気配すらなかった。残された3人は各々の方法で時間を潰す。時行は木に登って欠けた月を眺める。雲1つない綺麗な夜空だ。
時行が夜空を眺めていると白鳥が呼んだ。時行はジャンプして降りる。白鳥は時行の身体能力に驚いている。
「そういえば君はなんだい?あのスーパー貧乏人と同じ感じがするが…」
「何故両さんをそんな呼び方で?」
「そのままだ。いつも借金する奴など貧乏人を超えたスーパー貧乏人だ。」
「私は両さんの子です。」
「あのスーパー貧乏人にこんな高貴そうな子供が!?」
白鳥の驚きのあまり顎が外れる。時行ははぁとため息を着いている。顎を治した白鳥が聞く。
「君があのスーパー貧乏人の子供とはな。」
「子供と言っても家族を失った私を両さんが引き取ってくれたのです。」
「君も壮絶な人生を歩んできたのだろう。」
「はい。」
2人で月を眺める。
「私もスーパー貧乏人と仕事をしたことがあってな。車をダメにしたり散々な結果になった。まぁ、どの道私は超スーパー大金持ちになるのだがな。」
「あなたはそんなに悪い人に見えません。何故でしょう。あの人に見えてくる。」
時行が頭を抱えている。白鳥が笑っている。両津をスーパー貧乏人と罵りながらも両津と良好な関係を結んでいる白鳥を見て時行は人を見下すが根はいい人なのかなと思った。
白鳥が両津との思い出を話す。大富豪したりポルシェ付きキャンピングカーでキャンプしたり彼もハチャメチャな人だった。しばらく会話をしてポルシェに戻る。仲良くなっている感じの2人に麗子が驚く。
「あら?いつの間に仲良くなったのよ?」
「高貴な者同士仲良くなるのは不思議じゃない。」
「ま、まぁそんな感じで。」
麗子が意外に思っている。
「彼なら私と麗子さんの子供に相応しい!」
「それはお断りします。」
「あれ!?」
白鳥が残念そうに時行を見る。
「それで?これ、いつになったら動くのよ?」
麗子に言われてポルシェを見る。全然変わらない。白鳥が動かそうと試みるも全然動かない。もう1回説明書を読む。
「これは…自家発電するには予め太陽光発電で溜めた電気を増幅させるらしい。」
「ってことは?」
「太陽光発電で得た電気が全て無くなったら自家発電出来ないということだ。」
白鳥の発言に時行と麗子が青ざめる。
「それじゃあ、私達はここに…」
「大丈夫だ!私のスマホで…充電、切れてる。」
「どうするのよ!」
暗い森の中で3人の叫び声が響いていた。
後日
「それは大変だったな。」
「大変なんてレベルじゃないわよ!」
「さすがに私も厳しかったです。」
両津が笑い話にしている。時行も疲れたと思っていたが白鳥とは仲良くなれたのかなと思ってもいる。すると、何故かボロボロの服を着た見すぼらしい姿の白鳥が現れた。それを見て時行は目を丸くしている。
「どうしたのですか!?」
「ははは…契約を打ち切られてね。会社から切られてしまったよ。」
「時行、いつものことだ。心配するだけ無駄だ。」
涙目になっている白鳥を不憫に思う時行であった。
逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜が50回を突入した記念としてアンケートしたいと思います。皆さんはどんな時行君が見たいですか?
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