ある日、両津は本田と一緒に月刊サファイアを読んでいた。時行も後ろから読んでいる。2人ともメヌエットとイア作品を読んで気難しい顔をしていた。
「これは?」
「いわゆる少女漫画というやつだ。恋愛系の漫画が多い。が、最近は週刊漫画でも恋愛系が増えているから月刊の漫画は衰えていく一方だ。」
「菜々ちゃんのメヌエットも最近落ち気味で…」
本田が泣いている。両津が月刊サファイアを読んでいると時行を見た。時行は首を傾げる。両津はニヤリと笑う。時行は嫌な予感がしていた。両津は時行と本田を連れて派出所を出た。
向かった先は普通のマンションだった。ある部屋に入る。そこには乙姫菜々がいた。彼女は両津達の登場に驚いている。彼女の周りには似た感じの女性達とイケメンがいた。両津がそのイケメンに近付く。
「久しぶり竜戦士!」
「何の用ですか?」
「月刊サファイアの人気をわしが上げてやろう。」
「却下。」
即答する竜戦士。
「覚えてますか?あなたのロボ刑事番長のせいで人気がガタ落ちになったことがあるんですよ。そんなあなたに頼るなんて…」
「そうか。主人公はこいつにしようと思うんだが。」
そう言って両津は体をずらして時行を見せる。その時、竜戦士の体に電流が走る。時行を見て震える。時行が首を傾げる。竜戦士は頭を抱えて膝を着いた。
「なんという主人公力だ。故郷を奪われた少年が故郷を奪還するという物語まで見えてきた。」
「なんですかこの人!?何故そこまで!?」
「凄いな竜戦士。」
時行が驚く。両津が竜戦士に再び聞く。竜戦士は両津と時行を交互に見て苦虫を噛み潰したような顔で了承した。両津は早速『武士刑事番長』というタイトルで漫画を描き始める。
「両さんって本当に多才ですよね。」
「ムカつくぐらいにな。」
竜戦士が両津を睨む。過去に相当嫌な事があったのだろうか?時行は気になりつつも聞かなかった。両津があっさり描き上げる。時行達が見る。過去からタイムスリップしてきた主人公の少年が刑事としてある学園に入学しクラスメイトの少女と恋に落ちるという内容だった。絵は相変わらず少女漫画には向かないが内容はまだマシだった。
「前のロボ刑事番長よりはマシですね。」
「両さん、これって…」
「お前がモデルだからな。多少参考にした。まぁ気にするな。こんなことが現実に起きているなんて普通は誰も思わない。」
両津が時行に耳打ちする。本田や乙姫は両津の漫画を見て唸っているが竜戦士は両津の漫画を見てため息をする。両津のやることに心配しかないのだ。
「まずは読み切りとして出します。連載は読み切りの結果次第です。」
「それでいいぞ!」
両津は時行を連れて出て行った。それから1週間後に竜戦士のところに訪れる。竜戦士はまた苦虫を噛み潰したような顔をしている。両津はニヤニヤしながら聞く。
「どうだった?」
「…人気ありますね。月刊サファイア復活とまで言われてます。」
竜戦士が頭を抱える。両津が嬉しそうに月刊サファイアを読む。かなりの人気があった。特に主人公の南条時也が可愛いと評判だった。約束通り両津は武士刑事番長の連載を始める。最初は人気だった。しかし、武士刑事番長の批判もちらほら出てきた。時行は批判に心を痛めるが両津は全く気にしていない。
「両さん。嫌な手紙がいっぱい来てますよ。」
「気にするな時行。万人に受ける漫画など存在しない。少なからず自分と合わないや嫌いなんて言う奴はいる。少数の批判など気にする必要はない。そういう奴もいる程度に考えればいい。」
両津は時行に週刊漫画を見せる。
「漫画家に一番必要なのは自分を失わないことだ。批判や嫌がらせに負けて漫画の方向性を変えるとその漫画はつまらなくなる。最後まで自分を貫く漫画家が最高の漫画家になれる。」
両津はさらに漫画を時行に渡す。
「世の中には40年間一切休載無しで週刊漫画を描き続けた漫画家やデビューしてから3連続でアニメ化した上にもし打ち切りになってもいいように計算して描く漫画家もいる。」
「す、凄いですね。」
時行が驚く。竜戦士も一応頷いてはいた。そこは両津と同じ考えのようだ。
「批判する人もいるがちゃんと評価してくれる人もいる。漫画家には他人の評価だけではなく自分の評価も必要だ。」
「だろ。敏腕編集者と同じ意見とは漫画家冥利に尽きる。」
「両さんは警察官なんですよね?」
両津が笑いながらスマホを取り出し時行に見せる。
「それに最近じゃネットに投稿した小説から漫画化なんて時代だ。恋愛物、冒険物、バトル物とあるが今の主流は異世界転生系だ。それもチート能力で無双する物、現代知識で好き勝手やる物、領地開拓物、恋愛物、ハーレム物、復讐物と変わってきている。転生先も伝説の子孫から落ちこぼれ、悪役令嬢、モンスターと様々だ。しかし、漫画家は流行りに乗るだけじゃダメだ。流行りを作らないといかん!これからは逆異世界転生が流行る!異世界の人間が現代の日本に転生するのだ!」
両津が熱く語る。決して周りの評価に左右されない漫画家が一番大成すると。それを描いた乙姫達も頷いている。右肩下がりの現状に落ち込んでいた彼女達にとって両津の漫画論は心に響いていたのだ。
その日も両津は武士刑事番長を描いている。一休みしてお便りを見ているとあるお便りが目に止まった。『ロボ刑事番長のようなお下劣系を期待しています。』と書かれていた。両津はお便りを見ていくうちに意外とお下劣系が好きな人がいることに気付いた。
「これは…やるか。」
そこからの武士刑事番長は急に路線変更となりお下劣な部分が増えていった。主人公の性格もだんだん露出狂の変態になっていく。その結果、武士刑事番長の人気がどんどん落ちていき最終的に打ち切りになってしまった。
「こ、これが私…?」
「ちょっと変わったかもしれんな。はははは…」
「先輩、周りの評価に左右されてるじゃないですか。」
「やっぱりこの人に任せるんじゃなかった…」
そこには武士刑事番長を読んで絶句する時行、言い訳する両津、汚物を見るような目を向ける女性漫画家達、青ざめ頭を抱える竜戦士がいた。
逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜が50回を突入した記念としてアンケートしたいと思います。皆さんはどんな時行君が見たいですか?
-
カッコいい時行君
-
可愛い時行君
-
エロい時行君
-
真っ裸刑事
-
その他(コメントお願いします。)