逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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季節外れの花火大会

 ある日の新葛飾署では両津と屯田署長が何か話し合っていた。

 

「署長!今年こそ花火大会をしましょう!」

「しかし、両津君。もう秋だよ。」

「だからなんですか!?日本のあちこちで花火大会が中止になっていく今だからこそ花火の魅力を日本中に知らせるべきです!最近は音がうるさいだの眩しいだの近隣迷惑だのクレームが多いですがそんなのただ文句が言いたいだけの目立ちたがりですよ!」

「両津君、そこまで言わなくても。」

 

 両津が熱弁を振るう。

 

「花火ならわしに任せてください!知り合いの花火師が今年使うことがなくなった花火を処分すると言ってましたのでそれを安く買ってきます。これを葛飾の地域密着イベントとして売り出しましょう!」

「わ、分かった。君に任せるよ。」

「はい!」

 

 両津はニヤリと笑い敬礼した。後日、両津は時行と中川を連れて花火工場に向かった。

 

「ここは?」

「花火工場だ。時行は花火を見たことあるか?」

「いえ。ありません。」

「やっぱりな。花火は江戸時代から始まった娯楽だからな。」

 

 両津が花火師に声をかける。

 

「待たせたな!」

「両さんか。本当なのか?」

「もちろんだ。それにお前達も雇いたい。」

「本当かい!」

「近日、季節外れの花火大会を新葛飾署で主催するからそこで残った花火をバーンと全部打ち上げたい。」

「確かに。処分するぐらいならそれに使おう!」

「それと…」

 

 両津が花火師と商談している。その間、時行は中川と一緒に花火玉を見ている。

 

「花火とはどういう物なのでしょうか?」

「花火は火薬や発色剤を調合したもので火を付けると音と共にきれいな火花が夜空に咲くんだよ。例えばこの笛。これに火が着くことで音が鳴るんだ。」

「これが…」

 

 試しに時行が笛を吹こうとするのを中川が止める。

 

「人の息じゃ鳴らないですよ。」

「そうなんですね。花火…どんなものか見てみたいです。」

「明々後日見れるぞ。」

 

 両津は商談が終わったようで2人のところに来た。両津は花火師達に手を振って帰る。

 

「中川、運搬の手配は頼んだぞ。」

「分かりました。」

「時行、明日を楽しみにしていろよ。」

「はい!」

 

 当日

 新葛飾署主催で季節外れの葛飾納涼花火大会が開催された。派手な宣伝や最近見れなかった効果もありかなりの見物客が来ていた。

 花火師達が中川財閥のクルーザーから花火を打ち上げる。花火師と同じクルーザーに乗っていた両津は時行に真下から花火を見せた。時行は初めて見る花火に夢中になっていた。

 

「これが花火よ。時間かけて作った物が数秒で消えていく。その儚さも花火の魅力の1つだ。」

「綺麗…です。」

「だろ。あれは菊、あれは牡丹、あれが柳、今のが千輪だ。花火もいろいろ種類があってそれぞれ組み合わせれば何通りの花火を見ることが出来る。」

 

 時行は改めて今の時代の凄さを知る。

 

「ここはわしらだけの特等席だからな。存分に楽しんでくれ。わしはちょっと用事があるからこの場を離れる。そこで待っていろよ。」

「はい。」

 

 両津がその場から離れる。時行は両津の言いつけ通りにその場で花火を見物している。そこに中川がやってきた。中川も時行の隣で花火を見上げる。

 

「綺麗ですよね花火。」

「はい。夜空を彩る可憐で儚い花。まるで私みたいです。」

 

 時行の顔がどこか切ない。

 

「日本の花火も今はだんだん廃れていってます。職人の減少、天候やコロナやクレームによる花火大会の中止、夏限定の風物詩。それが重なり日本の花火がだんだん見れなくなっています。僕達はこの風物詩を守る義務があります。これも歴史の1つなんですから。」

 

 中川も時行と同じように花火を眺めている。一方の両津は花火師に何か指示出していた。花火師が両津が言った花火玉を打ち上げる。すると、大きな爆発と共に火花が龍のように夜空へと舞い上がって行った。それを見た見物客達は大盛り上がりしている。

 

「どうだ!?」

「凄いな両さん!あんな花火は初めてだ!」

「あれがわしが開発した花火“昇龍閃”だ。」

 

 両津が次々と昇龍閃を打ち上げさせる。夜空を舞う火花の龍に会場は大盛り上がりだ。両津はある程度昇龍閃を打ち上げるとどこかに電話した。

 

「どうですか?わしの昇龍閃?」

『イイですね!是非ウチに売ってください!』

「はい〜!毎度あり〜!」

 

 両津は商売していた。実はこの花火大会も両津が作った花火を売り込むためのものだった。両津はニコニコでスマホを切る。

 

「日本の花火は海外では大人気だからな。それに海外じゃ1年中どこでも花火が上がる。需要が枯渇することはない。」

 

 両津は昇龍閃を眺めながら時行のところへと戻って行く。時行は昇龍閃に夢中になっていた。

 

「凄いだろ時行。」

「はい!あんなに派手な花火もあるのですね。」

「あれはわしが作った。」

「本当ですか!?凄いです!」

「もっと凄いのを見せてやる。」

 

 両津が手を上げる。それを合図に1つの花火が打ち上がった。その花火が咲くと3つの三角形が夜空に輝いた。それを見た時行は涙が出そうになった。

 

「あれは…」

「三つ鱗。北条家の家紋だ。急いで作ったから出来が心配だったが上手く出来て良かったよ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 時行は泣き始める。夜空に浮かぶ北条の家紋三つ鱗が綺麗に輝く。その周りを昇龍閃が舞う。

 

「花火は一瞬で消える儚いものだ。しかし、その一瞬で人々の思い出に一生残る。これだから花火は美しい。」

「そう…ですね…」

 

 時行は涙を拭い三つ鱗の花火を眺める。すると、昇龍閃にいくつかがこちらに向かってきた。目が点になる両津達。

 

「あれ?先輩、こっちに…」

「まずいぞ!逃げろ!」

「さっきまでの感動が〜!」

 

 両津達は急いで逃げる。そこに昇龍閃が落ちる。時行は火花をも避けながらクルーザーから海へと飛び込む。中川も後を追って海に飛び込んだ。両津も海に飛び込もうとすると昇龍閃が他の花火玉に命中するのを見てしまった。

 

「まずい!」

「両津さん!爆発する!」

 

 クルーザーから大量の花火が暴発する。その中にあった昇龍閃が見物客達のところまで飛んできた。昇龍閃と一緒に両津も吹き飛ぶ。

 

「逃げろー!」

「花火がこっちに来た!」

 

 パニックになる見物客達。昇龍閃は他のクルーザーや漁船にも命中し破壊していく。花火大会は一変して昇龍閃による破壊活動に変わる。

 この結果、クルーザー、漁船、港、近くにあった建物に甚大な被害を及ぼすことになり総額約150億円の請求が両津にくることになった。

逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜が50回を突入した記念としてアンケートしたいと思います。皆さんはどんな時行君が見たいですか?

  • カッコいい時行君
  • 可愛い時行君
  • エロい時行君
  • 真っ裸刑事
  • その他(コメントお願いします。)
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